自分はかつて主人公だった   作:定道

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27話 みんなあつまれ!えいえんのよる!

「ユーリ君!!ダンデさんのメインの技構成は覚えた!?絶対に避けなきゃいけないパターンも含めてだよ!?」

 

「は、はい、何とか……」

 

 本当はちょっと怪しい、残念ながらポケモンはゲームの様に技を4つしか覚えられない訳ではない。

 だが、どちらかというとトレーナー側の都合で主に使う技は4つに落ち着く。多彩な種類の技のOPを強化しながら指示するのは難しいからだ。

 しかし、ダンデさんは6匹の手持ちはそれぞれが8つの十分に強化された技を使いこなす。コンビネーションも含めると覚えきれない。

 

「アニキの多彩なタイプを使いこなす戦術は凄いぞ!10年間無敗のチャンピオンの理由の一つだ、簡単には攻略できないぞ!」

 

 ホップの自慢気な言葉に心の底から同意する。凄いよな、10年間無敗のチャンピオンなんて。

 僕なんか4年程度しか続かなかったし、数日前はユウリに実質的負けた様なものだ。くまきちの頑張りが勝利を引き寄せたのだ。

 

「でもさー、明日には決勝戦なんだからもう止めた方が良くない?今から知識だけ詰めてもかえって動きが悪くなるんじゃない?ユーリってかなり本能で戦うタイプだからさ」

 

「マサル、それは違う。僕は緻密な計算と戦術で勝利するトレーナーだよ」

 

「僕も昔はそう思ってたけどさー、ユーリと友達になって分かったよ。ユーリは意外とあんまり深く考えてないよね。少なくともポケモンバトルについてはさ」

 

「ぐ、ぐう………」

 

 反論したいけど勝てそうにない、この場にいる皆は少なくとも僕の倍ぐらいはバトルについて考察していた。今までトレーナーの先輩面して纏ったメッキはボロボロだ。主な理由は知ったかぶりがばれて来たためだ。

 

「ユウリ、マサルの言う通りにそこまでにしない?ソニアさんから貰った差し入れでも食べて休憩しよう?」

 

「むぅ、マリィがそう言うなら……」

 

 助かった、ありがとうマリィ。

しかもお茶を淹れる準備を始めている。優しさの塊だな、天使かな?

 

「俺も手伝うぞマリィ、ヤンチャム印の中華まんにはお茶が必須だからな」

 

「ありがとホップ。じゃあ、テーブルにカップ並べて」

 

 流石ホップだ自然に誰かの手助けができる。おやつタイムならユウリも少し落ち着くだろう。ユウリの指導は為になるけど圧が強めで少し怖い。

 

「うーん………でもユーリ君。やっぱり、行き当たりばったりはだめだよ?未来視に頼りすぎると絶対に負ける、私でもある程度対策できたんだからダンデさんは絶対仕上げてくるよ」

 

「そうだね、ジムリーダーの3人もある程度形になっていた。チャンピオンともなればそれ以上は確実だよね」

 

 ファイナルトーナメント1戦目のルリナさん、2戦目のオニオン、3戦目のキバナさん達との戦い。ユウリ程ではなかったが未来視が外される場面が数回あった。

 

 ユウリは未来視破りのタネをあっさり教えてくれた、どうやら僕はOPの流ればかりに目を向けていたらしい。OPの同調と反した指示を別の手段で伝えられた場合、それに気づけていなかったようだ。

 

 だけど未来視を使う時はOP以外を深く観察できない。超能力で五感を強化していた昔なら気付けたかもしれないが、そもそも今の公式戦で超能力を使えないので根本的な解決はできない。

 

「まー要所で使うのが1番じゃないの?ダンデさんから見ればいつ未来視が来るか分からないってだけでも辛いと思うよ?」

 

「なるほど、それもそうか………相手の目線か」

 

 ポケモンバトル中の相手の思考、あんまり考えたことが無かった。今までは全部避けて当てる事だけに集中していた。

 相手の嫌がる事をして相手が戦いにくい様に誘導するのも効果的か。

 でも、それって凄い頭を使いそう。そもそも知識がないと取れない戦術も多いだろう。

 

「ポケモントレーナーって、難しいなあ………」

 

「い、いまさら!?ここまで来て出てくる答えがそれなの!?」

 

 頭を抱えて唸っているユウリには悪いが偽りのない本音だ。もしかして僕はトレーナーとしては素人レベルだったのかもしれない、もう少し知識を重要視すべきだった。

 スクールを初等部の途中で抜けたからなあ………スクールに入り直すべきか?

 

「ユーリよ、迷っているようだな」

 

 レックスがマリィのお茶を手渡してくれる、今日のレックスはやたら機嫌がいい。

 

「だが、良いことだ。今日は皆と共に語って模索している。手紙を読んでからのユーリは1人で悩んでいたからな」

 

「レックス………」

 

 そうだ、今日の僕は決勝戦を前にして集まってくれたホップ達のおかげで暗示を気にせずに悩んでいる。友達といる事で僕が救われているのが嬉しいのだろう、レックス達は信じると言ってくれたが気になっているはずだ。

 

「さて、ソニア殿の差し入れも頂くとしよう。余はあんまんが大好物である」

 

「そうだね、いだきます」

 

 お茶の準備も終わり、みんなでおやつタイムだ。今は皆と居ることを楽しもう。

 

「そういえば兄さん、なんでホップと一度ハロンタウンに帰ったの?」

 

「母さんがお告げがどうとか言ってさ、まどろみの森まで行って来たよ」

 

「お、お告げ?お母さん大丈夫だった?」

 

「大丈夫だったよ、それにお告げってのも案外本当だったのかも」

 

「マサル、本当に大丈夫と?変な勧誘とかされてない?最近変な神を崇める集団がスパイクタウンでも出没してるからね」

 

「平気だぞ!本当に剣と盾があったからな!」

 

「あ、あんまり怪しい事には首を突っ込まない方がいいよ?」

 

 自分で行って説得力はないが、忠告はしておくべきだろう。ホップ達は正義感が強いから不安がある、悪の組織と対立してしまうのではないかと。

 まあ、ガラルに特有の大きな悪の組織は居ないみたいだ。この前のスパイクタウンの事件以来は他の地方の組織も事件を起こしていない。

 

 強いて言うならエール団か?彼らも実態はジムトレーナー兼マリィファンクラブだ、迷惑行為はしていたが悪の組織と呼べるような集団ではない。

 僕もスパイクタウンに居た時に名誉団員にして貰った、記念に貰ったマリィグッズは大事に保管してある。

 

「午後はどうする?流石に解散しよっか?」

 

 マサルが僕に問いかける、ユウリの勢いを悪く思っているのだろう。

 

「いや、もしみんなに予定が無いなら一緒に居てくれた方が嬉しい、その方がリラックスできそうなんだ」

 

「構わないぞ、俺はアニキも応援するけどユーリも応援してるからな、ユーリがいいなら付き合うぞ」

 

「ま、マリィも応援してる。マリィのエールは効き目ばっちりやけんね」

 

「じゃあ午後はダンデさんのバトルビデオでも見る?ユーリ君もイメージが湧くでしょ、皆で観れば気付く事もあるかもしれないし」

 

「みんな、ありがとう」

 

 明日はファイナルトーナメントの決勝戦、こういう時は1人で集中したいとトレーナーもいるだろう。最後の調整をするトレーナーもいるだろう。

 だけど、僕にはこれが正しい気がした。ホップがもしよかったら皆で会わないかと提案したのは僕の不穏さを感じ取って気を使ってくれたのだろう。

 

 自分の為に誰かが集まってくれる、言葉にすればそれだけの行為だがとても満たされる。

 ユウリは何が何でも僕を勝たせたいらしくてダンデさん対策会になったが、それでも嬉しい。

 

 でも、ミカンは今1人きりだろう。それを思うと僕の奥底で叫びたくなるような激情が生まれる。

 大丈夫だ、もう少し、もう少しだけ我慢すればいい。ダンデさんに勝てばミカンに会える。

 

「うむ!みんなと共に食べるあんまんは美味である!粒あんとなればなおさらだ!なあユーリよ?」

 

「レックス、あんまんにはこしあんだよ。それしか許されてはいない、間違っているよ」

 

 許せるものと、許せないものは確かに存在する。

 

「なんと!?」

 

 もう少しだけ、まずは明日だ。何があろうと僕は必ず勝利する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガラル地方のジムチャレンジ、その終着点でもあるファイナルトーナメントの決勝戦。未来視のユーリと無敗のチャンピオンダンデが激突する決着の日。

 

 眼下に見えるスタジアムからこの距離でも熱狂が伝わって来る、最高の盛り上がりだ。ここではない他の地方の人々もモニター越しにこの熱狂を共有している事だろう。

 

 とても素晴らしい。素晴らしい盛り上がり、素晴らしい注目度、観測者は多ければ多い程に集まる感情は大きくなる。ムゲンダイナへの恐れはブラックナイトをより濃く、より深くさせる。

 夜が深いほど革新の光はより美しく輝く、見る者の心により深く刻まれるだろう。

 

 ローズタワーの頂上、ここからは肉眼でもスタジアムが見える。もちろん設置された各種のモニターと計器でスタジアムの様子は余すところなく観測できる。

 だが、ユーリ君の輝きだけはこの目で直接見たい。わたくしの願いを叶えつつ様々な条件を満たせるのがこの場所だ。

 それにこの場所は空もよく見える。ブラックナイトを、黒き夜を観測するのにも特等席だろう。

 

「アクロマ君、準備はどうだい?こちらは準備万端さ、胸の高鳴りが抑えられないよ」

 

 委員長がわたくしに問いかける、様々な意味での最終確認だろう。わたくしと委員長は少しだけ共通点がある、お互いはがねつかいとして分かり合っている部分が僅かだが存在する。

 

「問題ありませんよ委員長。研究所のウカッツさんもスタンバイ完了です、わたくしもいつでも始められます」

 

 今、この場にはわたくしと委員長しかいない。いつも委員長の側にいる彼女ですら委員長はこの場所には立ち入りを許しはしなかった。

 それが彼女を案じての事なのか、単純に邪魔だったのかは分からない。わたくしにとってはどちらでも影響はない、興味も薄い。居ても少しやりづらくなるだけだ。

 

 スタジアムから拡声されたチャンピオンの声が聞こえる、それを聞きながらも闘志を高めるユーリ君の様子も見える。

 やはり、彼女に手紙を書いて貰ったのは正解だった。あのユウリという少女のポテンシャルは素晴らしい、それ故に勝利への関心が薄れているユーリ君では敗北の可能性があった。

 だから負けられない理由を提供してあげた。

 

 やはり愛とキズナは素晴らしい、ユーリ君は彼女を案じる心で愛とキズナを怒りに変換して見事に勝利を収めた。

 やはりキズナに裏打ちされた激情こそが鍵なのだ。激しい感情は人とポケモンを強くする、時には限界すら超える。

 

 この世で1番の才能が、この世で最も尊いキズナによって限界を超える、その瞬間はもうすぐだ。

 

 高鳴る鼓動が止まらない、精神の高揚が抑えられない。

 

 ああ、ユーリ君、そしてミカンさん。貴方達の輝きをようやくこの目で観測できる。

 

「さて、時間だね。愛するガラルのみんなに教えてあげなくちゃねえ。今からガラル史上最も恐ろしくて最も素晴らしい夜が始まる事を」

 

 委員長が中継用のドローンの前で襟を正す。これから委員長は宣言する、ガラルと全世界に向かって始まりを告げる。

 それは重要なプロセスだ、宣言された人々は事態をより正確に把握する。原因であるムゲンダイナ達への感情がより正確な指向性をもって注がれる。

 

 かつてガラルを治めた豊穣の王が信仰を力に変えた様に、ムゲンダイナは人々の畏れによって力を増す。

 人々が恐怖すればそれだけ多くのガラル粒子を生み出して、ブラックナイトは広がり続けるだろう。

 

 人の感情に限界など無い、想いは力だ。だからこそムゲンダイナは限界を知らずにムゲンダイエネルギーを増幅させるだろう。

 そのエネルギーはブラックナイトに注がれる。ポケモンの天候操作やフィールド技に近いムゲンダイが生み出す特殊な空間、それがブラックナイト。

 恐怖によってもたらされる無尽蔵のOPによってそれは永続性を手に入れる。

 

 そして、永遠と無限を打ち破るのは光だ。真のキズナを手に入れたユーリ君の光が無限の闇を切り開く。

 その光景に世界中の人々は希望と可能性を見出す、それを自覚した後にわたくしの装置で進化を促してあげるのだ。

 

 世界は可能性に満ち溢れるだろう、進化の術を知るだろう。ユーリ君に次ぐ強力な力を持った者が次々と現れるはずだ。世代を重ねればそれはより顕著になる、まさしく人類は今日を契機に革新する。

 

 それを観測できるわたくしはなんて幸せな研究者だろう、ユーリ君には精一杯の感謝の気持ちを伝えたい。もちろん彼女にも。

 

『ヤッホー、ダンデ君にユーリ君。そして愛するガラルのみなさん、世界中のみなさん。今日はみんなに大切なお知らせをします』

 

 突如スタジアムのモニターに映し出されるローズ委員長、バトル直前の予定にない光景にスタジアムは困惑の雰囲気で包まれる。

 

『突然ですが、決勝戦は中止です。これからそれよりもっと大事な催しが始まります、今日はガラルの未来を決める重要な一日になります』

 

 困惑はさらに拡がる、それとは対象的に委員長は喜びを全身で表現している。

 

『今からガラルは暗闇に包まれます、そしてガラル粒子によって生み出された実態を持つ幻影。キョダイなポケモン達がシュートスタジアムを目指してやって来ます』

 

 困惑の中から悲鳴や恐怖の声が混じる。心苦しいが必要なプロセスだ、耐えてもらおう。

 

『それを可能にするのはムゲンダイエネルギー!!それを生み出すのはかつて流星と共にガラルにやって来たポケモン!!ムゲンダイナです!!』

 

『みんな疑問に思っているでしょう!!何故こんな事をするのか!!何故今なのかと!!』

 

『今でなくては駄目なのです!!ガラルの恐怖が!!世界の恐怖がムゲンダイナを強くします!!みんな恐れてください!!』

 

『でも大丈夫!!今このスタジアムには!!我らの無敵のチャンピオンダンデが!!未来視のユーリが!!ジムリーダーを始めとする猛者たちが揃っています!!』

 

『みんなで協力してムゲンダイナを捕獲しましょう!!恐怖を受けて無限のエネルギーを手に入れた4匹のムゲンダイナをガラルは手に入れるのです!!』

 

『みんなで恐怖を乗り越えれば希望があります!!私達の制御下におちたムゲンダイナはガラルに無限のエネルギーをもたらします!!この先1000年!!さらにその先まで!!ガラル繁栄の光は永遠に輝きます!!』

 

『さあみなさん!!空をご覧ください!!暗闇の雲に包まれた夜が始まります!!4匹のムゲンダイナがナックルシティからやって来ます!!』

 

 ナックルシティの方角から凄まじい勢いで暗黒が迫ってくる、青い空をみるみると塗りつぶしていく。

 

『大丈夫!!信じてください!!僕らの無敵のチャンピオンは絶対には負けません!!だから安心して恐怖してください!!』

 

 スタジアムに不安と希望に縋る人々の叫びが響く。だが、ぎりぎりで暴動やパニックには陥っていない。

 素晴らしい、やはり人とポケモンは強い。希望があると分かっていれば自分を見失わない、恐怖に耐える事ができる。

 

『私も戦います!!ガラルの永遠の為に!!では!!』

 

 委員長が一瞬だけこちらを見た、やはり委員長はわたくしと同じだ。

 

『ガラルのみんな!!!ブラックナイトを始めちゃうよお!!!』

 

 委員長は宣言と同時に中継を切る。それからたっぷり一分は余韻に浸った後にわたくしに向き直る。

 

「待たせたね、アクロマ君。僕達も始めようか?」

 

「始める?何の事ですか委員長?」

 

 互いに分かっている。分かっていても体裁は必要だ、これがわたくしが委員長へ向ける最後の忠誠の証。

 

「悲しいねえ……悲しすぎるよ、そういうのよくないんじゃないの?レインボーロケット団のアクロマ君?」

 

 委員長、いやローズさんは有能な男だ。わたくしの数々の偽装を看破しているだろう。証拠がある訳でもない、証拠を残したわけでもない。

 でも、お互いに分かっている相容れない部分があったから。同じはがねつかいとして相手の心の中の冷たい鋼を感じ取った。

 それは、わたくしとローズさんのキズナと呼んでいいのかもしれない。

 

「アクロマ君残念だよ、本当に残念だ。だけど僕はユーリ君に凍って貰うよ。永遠の幸せの眠りの中でユーリ君は大好きなジムチャレンジを永遠に続けるはずさ、心配はいらない」

 

 委員長がボールを手に取る、わたくしも自身の相棒を手に取る。

 

「エーテル財団との取引、生物に負担をかけない冷凍保存技術をユーリ君に施して彼を永遠にする。更にダイマックスアドベンチャーで検証したガラル粒子による実態を持った幻影を作り出す技術」

 

「そう、それで永遠のユーリ君を作り出すのさ。ユーリ君は大好きなガラルの為に永遠にムゲンダイナを操ってくれる。流石アクロマ君、分かっているねえ」

 

 わたくしから言わせれば可能性を閉ざす愚かな行為、それをローズさんは目指しているのだろう。目指すところがわかれば自ずと手段は見えてくる。

 

「アクロマ君は違うよねえ、ユーリ君のもっともっと強いところが見たいんだろう?そのためにムゲンダイナを一つに、かつて二人の王によって分かたれる前の姿が必要なんでしょう?」

 

「ええ、ローズさん。何時だって人とポケモンは試練を乗り越えた時に成長します。経験値は相手が強ければ強いほど多くなる、当然の事です」

 

 直接のポケモンバトルは何時ぶりか?鍛錬を怠ってはいないが久方ぶりの実践のひりつきがわたくしを刺激する。

 

「強すぎるエネルギーを僕とガラルは必要としていない。考え直さないかい?アクロマ君?」

 

「ふふ、どちらにせよユーリ君に眠って貰われても困ります。キズナは他者と触れ合ってこそ輝くのですから」

 

「ふむ、そういうものかい?僕は輝きを自分の記憶の中に持っている、ちょっとわからないなあ」

 

「ですが気付いているでしょうローズさん?同じはがねつかいとして私と貴方は譲れない物を感じ合っている」

 

「それはわかるよ、はがねつかいはみんな一緒さ。硬くて冷たい鋼の心をみんな持っている、決して溶けずに相容れない自分だけのビジョンを」

 

 思わず気分が高揚する、相容れない事を共有し合ったわたくし達は今から素晴らしいポケモンバトルができるだろう。

 

「何を言ってんだ!!!このド・アホウ共は!!!」

 

 突然の上空からの大声、目線を向ける。

 

 アーマーガアから2つの人影が飛び降りて来る、飛び降りてここに着地するつもりか?

 無駄だ、このローズタワーの頂上は超能力の膜で覆われている。更には膜の外はモンスターボールの起動を阻害するフィールドを張っている、邪魔者がこの特等席に座る事はできない。

 

「ボールが起動しねえ!?」

 

「儂に任せろ!!ゆくぞ!!一撃の型“暗黒強打“!!」

 

 超音波の様な破裂音が響き、超能力の膜が破られた。あくタイプの技なら可能性はあるが、それを人間がなすとは。

 

 2つの人影が着地する。一人は華麗にもう一人は受け身を失敗している。

 

「無事か!!ピオニーよ!?」

 

「おうよ!!爺さん!!痛えけど男はド・根性だぜ!!」

 

 闖入者は二人とも元チャンピオン、マスタードとピオニーだ。随分と豪華なゲストがやって来た、こんな強引な方法でここまでやって来るとは。

 

「何しに来たのかなあ?えーと………ピオニー、僕の弟のピオニー。それにマスタードさん、何か御用ですか?」

 

「抜け抜けと言いおる、お主は…………」

 

「おう!!馬鹿野郎!!お前をぶん殴りに来てやったぜ!!」」

 

 ローズさんに指を突きつけて宣言したピオニーが、続けてわたくしにも指を指す。

 

「お前もだ!!へんてこな髪型しやがって!!面を見ればわかるぜ!!どうせお前も悪巧みしてんだろう!!ついでにぶっ飛ばす!!」

 

 よく言われるが、わたくしは気に入っている。気にしてなどいない。わたくしは揺るがない。

 

「もう一つ!!お前らははがねつかいの風上にも置けねえ!!何が冷たい鋼の心だ!!」

 

「おや?間違っていないでしょう?貴方もはがねつかいなら……」

 

「鋼はガチンコだ!!ぶつかり合って熱くなる!!熱で溶ければ混ざり合う!!そんな事も分からないくせに鋼を語るんじゃねえ!!」

 

 相容れない、そういう意味ではわたくしのポリシーに反しない。好きにすればいい。

 

「ガラルを真っ暗にしやがって!!許せねえぜ!!これじゃあ日光浴ができねえだろう!!元に戻せ馬鹿野郎!!」

 

「それから!!………すまねえ爺さん、何か言おうとしてたか?」

 

「フハハ!お主が言いたい事を全て言ってくれた!ゆくぞピオニー!」

 

「おうよ!!観念しろよ野郎共!!」

 

「うーん、どうしようかアクロマ君?まずは彼等にお帰り願おうか?」

 

「そうですねローズさん、彼等が組むのは中々に脅威です。目的は一致しています」

 

 予定外ではある、だが想定は出ていない。

 

 ブラックナイトは始まったばかりだ、焦る必要はない。

 

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