自分はかつて主人公だった   作:定道

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45話 そんな装備で大丈夫か?

 夕暮れの海岸、流木に腰掛けて波の音を聞く。寄せては返す波の音が僕の心を落ち着かせてくれる。

 オレンジ色の夕日に照らされた海はどこか幻想的で美しい、なぜか切ない気持ちを感じさせる黄昏の風景。

 僕の故郷のアサギシティとはまた違った海の表情、南国の美しい海、アローラが観光地として人気なのが納得できる光景だ。

 

 マハロ山道でカプ・コケコと戦いモーテルまで転移した後に、オーキス達はポケリゾートへと帰って行った。あっという間に“テレポート“してしまったので寂しいと思う暇すらなかった。

 そして、グラジオもAさんもA2さんも、僕の正体については何も聞いてこない、オーキス達を目撃された以上バレバレのはずだが話題にすら出さない。色々聞きたい事があるはずだが、スカル団のルールを優先するみたいだ。

 

 ただ、正体については何も言われなかったがAさんとA2さんにめちゃくちゃ怒られた、ポケモンと直接戦うのは危ないからやめなさいと釘を刺されまくった。反論の余地が無い程に正論だったので真摯に受け止めるしかない。

 半べそになるまで怒られたのは何年ぶりだろう、ここ最近では記憶にない。ガラルにたどり着く前には結構怒られていた気がするけど、はいはいと聞き流していたからあんまり印象に残っていない。そういう部分はやっぱりクソガキだったな……

 

 時間が余ったのでテンカラットヒルの捜索を提案したが却下された、今日はモーテルで大人しく休めとのお達しだ。遅めの昼食の後にAさんとA2さんはハウオリシティへと出掛けて行った、スカル団への報告と先程の戦闘で騒ぎになっていないか確認して来るそうだ。

 僕とグラジオに絶対に大人しくしておけと3回は言い聞かせてから出発した、あれがフリではない事は流石の僕にも理解できる。別に悪い事はしていないのに流れ弾を受けて一緒に説教されたグラジオも理解しているだろう。

 

「フッ……いつもより夕日が目に染みるな」

 

 僕の隣でしょんぼりと腰掛けていたグラジオが呟く、染みるのはグラジオも涙目なせいだろう。グラジオはあまり怒られ慣れていない様だ、相手の言葉を割と素直に受け止めてしまう。

 いや、叱責したのがAさんとA2さんだからかもしれない。僕達を怒る2人の目も少し赤かった、それに気付いてしまったからこそ僕と同じ事をグラジオも思ったのかもしれない。

 誰かに心配をかけてしまった自分、自分を心配してくれた人が悲しんでいる事実、それが怒られる事よりも辛いと感じてしまうのだ。

 

「そうだね……綺麗だけどちょっと悲しい気分になるよ」

 

 僕とグラジオから少し離れたところではプルルがヌルの背中にくっついている。困惑するヌルとそれをじっと見詰めるジガルデ、プルルは恐らくヌルが目覚めた力に引き寄せられているのかもしれない。

 

 Zパワーと呼ばれる黄金のオーラ、アローラ特有の力でポケモンの技を強化し、“Z技“と呼ばれる強力な必殺技を繰り出す事ができる。リラさんにも実際にやって見せて貰った、恥ずかしいポーズも含めて凄い力だ。

 トレーナーの行うOPによるポケモンへの補助が瞬間的に数十倍に膨れ上がり、繰り出される技はもはや別物となる。ダイマックスした時の技の強化とも似ているが瞬間的な力はこちらの方が上だろう。

 そしてカプ・コケコが見せた光の巨人の姿も、ウルトラビースト達のビーストオーラもZパワーが元になっているはずだ。アジトのウルトラビースト達と触れ合いながらも漠然と感じていた疑念は今日カプ・コケコと戦って確信に変わった。

 

 だが分からない所もある、Zパワーの源だ。一体Zパワーとは何処からやって来るのか僕の探知でも突き止める事は出来なかった。

 最初はアローラの土地に宿っている力だと思っていた、レックスと同じで人々の信仰を大地という触媒を通してZパワーと呼ばれる力に変換しているのだと思っていた。

 だが違った、大地にも少量は宿ってはいたが流れがほぼ存在しない、大地に走る力の経路が少なすぎるのだ。あの光の巨人を形成する程の力を行使するには絶対に足りない、あれ程強力な力の高まりだったのにも関わらずそこまで力の流れが感じられなかった。まるでその場に突然湧いた様な不自然な発露だ。

 

 ならば力の経路はどこにあるのか? それはウルトラホールから以外には考えにくいだろう。それならば力が突然に湧いた現象にも説明がつく。

 そして力の流れてくる大元には何があるのか? ムゲンダイナのコアの様に強力なエネルギーを生みだす器官を備えているポケモンが存在するのだろうか? はたまた力を送り込んでいるウルトラスペースが存在するのか?

 

 ジガルデに聞いても教えてはくれないだろう、カプ達なら知っているのかもしれないが教えてくれるかは分からない。

 グズマさんなら知っているか? 流石に電話で聞くには重大過ぎる話だ、アジトに帰った時に直接話を聞いてみるしかないだろう。

 

 そして、カプ達に認められていないのにZパワーを使った人物が隣にいる。僕を助けてくれたグラジオとヌルは黄金のオーラを纏っていた、あれは間違いなくZパワーだった。

 だが、それを聞く事は出来ない。ヌルがかなり特別なポケモンなのは分かっている、僕と同じ年齢でアローラ出身ではないグラジオがスカル団に所属しているのに特別な理由が存在するのは察してはいたからだ。

 

 グラジオは僕が正体を隠したいのを察して詮索する様な真似はしなかった、僕がユーリである事にも気付いたはずだが何も言わないでくれている。そんなグラジオの特殊な事情を問う権利は僕にない、正体を隠したままの僕にそれは許されないだろう。

 

「U、何か言いたげな様子だな、俺に聞きたい事があるのだろう?」

 

「……いや、そんな事はないよ」

 

 僕はそんなにわかりやすいかな? リノを纏って顔を隠しているのに考えがバレバレだ、トレーナーとしては危機感を持つべき事態な気がする。

 

「フッ……ならば聞いてくれU、俺はお前に自分の事を話したいと思っている」

 

「グラジオ……」

 

「自分から話す分にはスカル団の掟にも反さない、俺はお前に知ってほしいんだ、友であるお前に俺の目指す物を知ってほしい」

 

 グラジオは海に沈む夕日を見詰めながらそう言った、飾り気のない真っ直ぐな想いが僕の心を揺らす。

 

「でも……僕は隠し事をしている、それでもいいの?」

 

「お前はいつかその理由を話してくれるのだろう? 時が来ればお前は必ずそれを教えてくれるはずだ、お前は理由もなく自分を偽る様な奴ではない。まだ短い付き合いだが俺はそう信じている」

 

「ありがとうグラジオ……約束するよ、時が来たら必ず僕の事を君に話す。だから君の事を教えてほしい、僕も君の事を知りたい」

 

 そしてグラジオは自分の事を、自分の家族にまつわる話をしてくれた。沈む夕日に照らされながら、彼とヌルが目指す物を教えてくれた。

 

 自分がエーテル財団の代表の息子でウルトラビーストに対抗するために造られた実験体のヌルを連れて家を飛び出した事を、代表である母親がウルトラホールとZパワーを手に入れて恐ろしい計画を企んでいる事を、それを止める為の力が欲しくてアローラまでたどり着き紆余曲折あってスカル団に身を寄せた事を、自分の父親がウルトラホールの実験中に穴に飲まれて行方不明な事を、残していったリーリエという名前の妹がいる事を、グラジオは自分の事を沢山語ってくれた。

 

 エーテル財団の代表でグラジオのお母さんでもあるルザミーネさん、彼女の目的はウルトラホールに飲まれて行方不明の夫の発見とアローラ全体を氷漬けにする事、その為の手段としてZパワーを求めているらしい。

 だが、アローラを氷漬けにする理由も方法もグラジオには分からないそうだ。確かにアローラを氷漬けにするなんて意味が分からない、そんな事をしても何も得るものはないだろう。

 ウツロイドの毒でルザミーネさんは錯乱している可能性があるとも言っていた、確かに正気を失っていると考える方が自然な計画だ。しかしプルルに毎日ひっ付かれている僕は毒などは食らっていない、ウツロイドの毒には個体差があるのかもしれない。

 

 それとも裏にプラズマ団がいるのだろうか、アローラを島ごと氷漬けにするなんてキュレムの力を彷彿とさせる、知識にある兵器を造る為の実験でもするつもりなのか? やはり行方不明のアクロマがプラズマ団を率いている可能性は十分あり得る。

 

 真実がどれだとしても力になりたいと思った、狂気へと向かう家族を止めたいと思うグラジオの力になりたい。もう一度家族と向き合おうとしている彼の応援をしたいと思う。僕を信じてくれる友達に手を貸してあげたい。

 不思議な気分だ、顔を隠したままで、自分の事を隠したままでも僕とグラジオは分かり合えた気がする。ガラルで学んだ自分を偽る事に関する学びが少しだけ覆った。

 

「やっぱりZパワーの源を突き止めるべきだね、そこに僕とグラジオの目指す物があるはずだ」

 

 結局はそこに行き着くのだろう、Zパワーの源を突き止めて制御すればウルトラビーストが出現するウルトラホールを閉じる事が出来るはずだ、流れを作っている力そのものを操作できればそれが出来るのは道理だろう。

 ルザミーネさんよりそれを早く手に入れなくてはならない、そうすれば彼女の計画を止められるはずだ。

 そして、ウルトラホールの中でグラジオのお父さんを探索する事も僕なら可能かもしれない、ふわふわちゃんに頼めばウルトラスペース内の移動も出来る、一度経験済みだから間違いない。

 

「Zパワーの源……“かがやきさま“と呼ばれるポケモンかもしれない。ウルトラメガロポリスと呼ばれるウルトラスペースからの来訪者達がエーテル財団に協力している、彼等曰くその“かがやきさま“は光をもたらす神だったらしい、自分達の過ちでその力が失われたとも言っていたがな」

 

 神と呼ばれたポケモンか……相当強力なポケモンはずだ、一体どんな姿をしているのだろう? 多分ピカピカに光ったポケモンだろう。

 

 あれ? そう言えばジガルデがリノの事を輝きを失ったとか言ってたな……でもリノは強いけどZパワーそのものは感じない、ビーストオーラを少し纏っているけど他のウルトラビースト達より少ないぐらいだ。

 事情を聞きたくてもリノもプルルも過去の記憶を失っている、気付いたらテンカラットヒルに居てそれ以前を思い出せないらしい。

 それは他のウルトラビースト達も同様だ、ウルトラホールからやって来た彼等は例外なく記憶を失っている。だからこそ彼等は己の欲求に従って動いていた、失ってしまった物を埋める為に衝動に身を任せていたのだ。

 

「神と呼ばれたポケモンがZパワーの源……でも力を失っているってのは気になるね、Zパワーを放出し尽くしてしまったのかな? “かがやきさま“についてもう少し詳しく教えてくれないかな」

 

 それならばリノが元“かがやきさま“でも説明が付き、光を求めているのも納得がいく。カプ・コケコもリノについて器とか輝きがどうとか言ってた、何かしらの秘密がありそうだ。

 

「すまない、そこまでの情報は得ていない。計画について知っているのはエーテル財団でも一部の人間だけだ、計画は密かに進行していて俺も計画に関する情報を完全に集められた訳ではない、家を出てからはエーテル財団の情報は人伝にしか得られていないので更新は難しい、先程お前に語った物が俺の知るほぼ全ての情報だ」

 

「そっか、エーテル財団側から探るのには限界がありそうだね……気は進まないけど他のカプ達にも話を聞こうか、カプ・コケコは何か知っている感じだったからね」

 

 他の3匹も遺跡に近付いたら襲って来るかな? それともスカル団で唯一Zリングを持っているリラさんに協力してもらえば穏便に話が聞けるか? でも島キングであるハラさんが居ても襲って来たから駄目かな。

 

「いや、それは最後の手段にした方が良い、さっきみたいな事があった以上スカル団の奴等はお前がカプ達に会うのを許さないだろう。他に情報を得るアテがある、アーカラ島のカンタイシティには空間研究所があり、そこには異空間研究で有名なバーネット博士が在席している。ウルトラホール研究の第一人者であった父さんとも交流があった人物だ、俺等の掴んでいない情報を持っているかもしれない」

 

「なるほど……でもグラジオはスカル団入って1年半位だって言ってたよね、その間バーネット博士に話は聞けなかったの?」

 

「問題が二つあった、バーネット博士が母さんに協力している場合は俺の居場所が割れてしまう。バーネット博士は善良な人物らしいが、母さんに夫を探すためだと頼まれれば協力する可能性は十分にあり得る。そのどちらにしても俺が直接話を聞くのは難しい」

 

 なるほど、確かにルザミーネさんの計画を知ってる上で協力している可能性もあるし、計画の部分は知らないで協力している可能性もあるのか。

 そのどちらにしてもグラジオが正面から話を聞けばルザミーネさんまで話が行くだろう。恐ろしい計画があると訴えても家出息子であるグラジオとエーテル財団の代表を務めるルザミーネさんのどちらの言い分を信じるかと言われれば後者に決まっている。

 

「そしてもう一つの問題、バーネット博士はアローラにポケモンリーグを招致しようとしているククイ博士の妻だ。公然とリーグ招致を反対しているスカル団の奴等に接触を頼むのは難しい、だから今まで話を聞けずにいた」

 

 そりゃ話を聞けないか、夫の活動を邪魔する集団に手を貸す妻なんて普通はいない。手を貸してきたらそれはそれで悲しい気持ちになる。

 しかしバーネット博士か、どっかで聞いた事があるような名前な気もするけど一体どこだったかな? 女性の博士なんて一度会えば忘れるはずはないから会った事はないはずだ。

 

「でもアテがあるって事は何か作戦があるんだろう? 聞かせてよグラジオ」

 

 グラジオは作戦をオペレーションと称して考えるのが大好きだ、思い付いては発表してスカル団のみんなに9割は却下されている。だが今日の戦いで使ったオペレーション02の様に割と理に適った作戦も立案するので聞いてみる価値は十分にあるだろう。

 

「フッ……ちょうどお前がスカル団に来た日に情報が入った、ククイ博士の研究所兼自宅に住み込みでバーネット博士に助手が加わったとの情報がな。何でもその助手は島の人間ではなく、俺やお前よりも年下の少女らしい」

 

 住み込みの助手? しかも少女か、なんか訳ありな気配がするな。

 

「そしてその少女は見慣れないポケモンを隠す様に連れていたらしい。キナ臭いと思わないか? 恐らくその少女は十中八九エーテル財団の諜報員だ、接触して反応をみればバーネット博士の立場が分かるかもしれない」

 

「反応を見る? どういうこと?」

 

「エーテル財団の諜報員と名乗って少女と接触する。奴等が情報交換の為に使う符丁を得る伝手がある、上手く立ち回れば少しの間は騙せるはずだ。そこでその少女がバーネット博士に協力する為に送り込まれたのか、研究を探るためのスパイとして送り込まれたのか判断する」

 

 なるほど、前者ならバーネット博士は計画を知って協力している、後者なら知らないままで協力していると言う事か。

 まあ、計画を一部だけを都合の良く知らされて協力しているパターンとか色々あるけど取っ掛かりは得られるはずだ。

 

「じゃあ僕も協力できるね、普通の女の子なら嘘を言っているかどうかは僕の超能力で判断出来る。それを偽る手段を持っていたら彼女は諜報員である可能性は高い」

 

 流石に心を読むまではやるつもりはない。万が一普通の女の子だったら酷いプライバシーの侵害になるし、そもそも直接相手に触れなければそこまで深く読む事はできない。

 だが、直接声を聞けば発言に嘘が混ざっているかどうかを知ることは可能だ、相手が凄腕のトレーナーか強力な超能力者でない場合に限った話だが。

 

「普通の少女なのはあり得ないな。空を飛んでいたり、急に姿を現したり、手を使わずに物を動かしていたとの目撃情報がある。超能力者と見て間違いない」

 

 うーん、超能力者か……それだと発言の真偽が分からないかもしれない。でも流石に僕より上のランクではないだろう、そんな猛者がホイホイ現れるはずがない。

 仮に出てきてもリノを纏った僕なら逃げる事は容易い、リノの鎧は超能力に対する防御と言う意味ではかなり強力だ、襲われても何とかなるだろう。

 

「そっか、じゃあまず僕が接触して大丈夫そうだったらグラジオを呼ぶよ、読心術や催眠術の使い手だったら嘘がばれてしまうからね」

 

「一応クラス6の超能力者にまで通用するA.S.Dを持っている、そこまで用心する必要があるか?」

 

 多分大丈夫だと思うけど念には念を入れた方が良い、近くに入れば僕の超能力で精神攻撃を防げるけど絶対とは言い切れない。特殊な道具を使って来る可能性もある。

 

「念のためだよ、僕はリノを纏っているから大抵の精神攻撃を防げる。様子見をするなら任せてよ」

 

「分かった、お前がそこまで言うならそうしよう。超能力に対する判断ではお前の意見に従うのが1番だろうからな」

 

「じゃあ決まりだね、その流れでオペレーションを成功させよう」

 

 不謹慎だけどちょっとワクワクする、友達と話し合って作戦を練り、実行に移すのは正直楽しい。

 

「フッ……だがオペレーション・ゾロアークには最大の障害が残っている、それを解決しない限りは策を実行に移せない」

 

 ゾロアーク? ああ、諜報員を騙るからか。

 

「障害? まだ何か問題があるの?」

 

 一体何だろう? 連れているポケモンがもの凄く強いとか?

 

「どうやってAとA2に怒られずにこのオペレーション実行の許可が得られるかが問題だ、俺はもう叱られたくない」

 

「そうだね……全力で媚びへつらうか」

 

 結局叱られた、だけど何とか許可はもぎ取った。あの2人はグラジオの涙目に弱い。

 決行は明日の午前中のみ、タイミングが合わなければ実行は見送ってAさんとA2さんの監視下で行う。当然戦闘行為は禁止で相手の誘いに乗らない事を条件にOKを貰った。

 

 

 

 そして次の日の朝、僕達は草むらの陰からメレメレ海の砂浜に建つポケモン研究所を観察していた。傍から見たら通報間違いなしの不審な集団だろう。

 何せ全員が顔を隠した黒ずくめの格好をしているからだ、僕はリノの鎧を纏っているし、グラジオとAさんとA2さんはフードの付いた黒いコートを纏っている。縫い物が得意なグラジオお手製のコートだ、スカル団のコスチュームにするのを狙って大量に制作していたらしい。

 まあスカル団だとバレたくない今の状況にはピッタリの格好だ、丁寧に仮面まで付属しているので面が割れる事もない。

 

「なかなか出て来ないッスね、バーネット博士はアーカラ島の研究所に出勤するからそろそろ出て来ないと遅刻するんじゃないッスか?」

 

 確かに船で他の島に行くならそろそろ良い時間になる、今日は休日なのかな?

 

「今日は休みッスカね? それとも研究所の方に泊まったからこの家にはいないんじゃないッスか?」

 

「いや、排気ファンが動いている、誰か居るのは間違いないだろう」

 

 おっ本当だ、地下から生えてるダクトから風が出て木の枝を揺らしている。研究所にしては小さなログハウスだと思ったけど地下に空間があるのか。

 

「でもククイしかいない可能性もあるッスよね? そしたら最悪ッス、まるでウチらはククイのストーカーッスよ」

 

 どうだろう、僕とグラジオ的には少女を待ち構えている事の方が問題な気もしてきたぞ。昨日は作戦立案でワクワクしてしまったがよく考えるとこの格好で誰かに接触するのは不味くないか?

 

「フッ……これはアローラを守る為の戦いでもある、何も恥じ入る事などない」

 

 知り合いには見せられない戦い方だ、特に家族とミカンには知られたくない。

 

「おっ! 出てきたッスよ、本当に女の子ッス。でも諜報員には見えないッスね、可愛らしい子ッス」

 

 研究所から出てきた女の子、綺麗なブロンドヘアーに大きな白い帽子を被って白いワンピースを着ていた。助手というよりもお嬢様

って感じの女の子だ。モンスターボール柄の大きなショルダーバッグを持っているのが少しアンバランスな印象を受ける。

 

 ん? あのバッグの中にポケモンが入ってるな、探知を妨害する素材で出来たバッグみたいだけど僕の超能力を欺くほどではない。

 モンスターボールに入れていないのはかなり不自然だ、それともボールに入れられないのか? つまりウルトラビーストが隠れている……あの大きさだとベベノムかカミツルギかな?

 そしてあの子からはサイコパワーが感じられない、超能力者ではなさそうだ。もしかして人違いか? でも特殊なバッグを持ってるのは怪しいよな。

 

「グラジオ、あの子は超能力者ではなさそうだよ。だけどバッグの中にポケモンを隠している」

 

「………………」

 

「グラジオ?」

 

 グラジオは返事もせずに少女の方をじっと見ていた、仮面で表情は伺えないがどこか呆けた様な気配を纏っている。

 

「グラジオ? どうしたの? あの子に何か気になる所があるの?

 

「も、問題……ない」

 

 明らかに問題がありそうな反応だ、声が震えている。

 

「もしかして知り合い? 作戦は中止にして普通に話しかける?」

 

「あれは……あれは俺の妹だ、背が伸びた様だが間違いない。妹のリーリエだ」

 

「へぇー言われてみれば似てるッスね、髪の色とか全く同じッス」

 

 本当だ、よく見ると瞳の色も同じだ。顔立ちもどことなく似ているな、美男美女の兄妹だな。

 

「じゃあ普通に話しかけるッス、お兄ちゃんだよーって気さくに行けッス」

 

「いや、駄目だ。リーリエの目的は母さんと同じかもしれない。あの子は母親の言う事に逆らう様な子ではなかったからな」

 

「うっ、ごめんグラジオ……軽卒だったッス」

 

 仮にそうだったら悲しい事態だ、母親だけではなくて妹とまで対立しなくてはいけない。

 

「グラジオ、予定通りに僕がまず接触してみるよ。妹さんは超能力者じゃないんでしょ? 僕が質問すればハッキリするよ、例のエーテル財団の諜報員の符丁を教えて」

 

 普通に聴いても良いかもしれない、貴方はお母さんの計画に賛同しているのかと。心の底から賛同しているのか声音から超能力で読み取れるはずだ、それからグラジオが接触した方が良いだろう。

 

「すまない、U……」

 

「いいさ、それで符丁は?」

 

「ああ、まずお前は“はちみつください“と声をかけろ。そしてリーリエが“貴方にはピンクが足りないから断る“と返事をすれば諜報員確定だ、そうならない事を祈っているがな」

 

「はぁ?」

 

 おいおい、どうしたグラジオ? ショックでおかしくなったのか?

 

「グラジオ? ショックなのは分かるけど真面目にやろうよ、本当の符丁を教えてくれ」

 

「ん? 符丁に間違いないはないぞ? 昨日の夜、ホクラニ天文台の外部協力者からの情報提供があったから間違いない。リラの知り合いで優秀なクラッカーだ、今までも正確な情報をエーテル財団から抜き取ってくれている。符丁がおかしなやり取りなのは偶然の一致を防ぐためだろう、今までも奇抜な符丁が多かったからな」

 

 えっ、本気で言っているのか? どういう事だ? 何でエーテル財団諜報員の符丁がレックスとビートみたいなやり取りになるんだ?

 もしかして僕の存在がバレているのか? そうだとしても意味不明だぞ? 何の意味があるんだ?

 ……駄目だ、考えても答えがでない。とりあえず今はリーリエちゃんに集中しよう。

 

「わかった、行ってくるよみんな。必ずリーリエちゃんの真意を確かめて見せる、任せてくれ」

 

 3人に僕の超能力を施す、僕の視界と聴覚を共有させる。こうすれば僕が見聞きした物が3人にも伝わるだろう。

 

「頼む、U……俺はどんな真実でも受け止める」

「優しく話しかけるッスよ? 怖がらせちゃ駄目ッスよ?」

「無理そうだと判断したら私達も駆けつけるッス、安心するッス」

 

「大丈夫だ、問題ない。大事なのは第一印象さ、僕はそれを知っている」

 

 ガラルで手に入れたコミュニケーションの極意、その全てを見せてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってきます」

「ぴゅーい♪」

 

 未だに寝てる同居人に挨拶をしてから玄関をくぐる、OPを遮断する素材で出来たバッグの中からほしぐもちゃんも鳴き声を上げる。ジッパーの隙間越しに見える表情は明るい、バッグに入って移動するのにようやく慣れてくれたようで一安心だ。

 

 研究所を出た私に降り注ぐ南国の日差し、波の音と共に届くアローラの風。陽気な天気が私の気持ちまで陽気なものへと変えてくれるようだ。

 バーネット博士とククイ博士のお家に滞在する事になって今日で三週間が経過した。お世話になってばかりでは悪いと何とか説得してようやくお弁当作りを任せて貰えた、少しでも博士達の役に立てる様になったのが嬉しい。

 これから空間研究所に居る博士達にお弁当を届けに行く、一緒に住む人の為に働くという行為に私は嬉しくなる。私が失ってしまった家族の形がそこにはある気がするからだ。

 

 1番道路に向かって砂浜を歩く、“虫よけスプレー“は必要ない。私も少しはトレーナーらしくなって来た、ピッピとロコンはもう少ししたら進化させても良いとお墨付きも貰っている。

 本当はほしぐもちゃんも私が育ててあげたい、だけど特殊な力を持つほしぐもちゃんをボールに入れて育成する程の力が今の私にはない。

 でも、少しずつトレーナーとしての力が増しているのを実感している、いつかは必ずほしぐもちゃんの力を引き出せるトレーナーになって見せる。

 

 アローラでの暮らしは私を前向きな気持ちへと変えてくれる、お母様の言いなりで着せ替え人形だった私を少しずつ変化させている。お母様の元に居たままでは絶対に得られなかった心境の変化、アローラでの様々な体験が私を成長させてくれる。

 あと2ヶ月もすれば島巡りにも参加させてもらう予定だ。島巡りにはハウさんも参加するし、ククイ博士のカントー地方での知り合いで、今度アローラに引っ越して来る姉弟も島巡りに参加する予定らしい。

 そしてもちろんあの人も参加する、私がエーテルパラダイスから逃げ出すのを助けてくれた恩人、私をトレーナーとして鍛えてくれた師匠。共に研究所で暮らす、私が勝手に姉の様に思っている大事な人も……

 

「アローラ!」

 

 突然、後ろから元気な挨拶が聞こえた。少し驚いたが私も挨拶を返そうと振り向き挨拶を返す。

 

「あ、アローラ?」

 

 振り向いた私の目に飛び込んで来たのは異形、全身を黒い鎧の様なパーツで包んだ謎の人物がそこには立っていた。

 背丈は私と同じくらい、顔の上半分を隠す仮面の下の口元は笑みを浮かべている。不気味な格好と対象的な笑顔と明るい声音が奇妙さを際立たせていた。

 

 見たことのない人物だ、こんな目立つ人を一度見たら忘れるはずがないので間違いない。一体どこから来たのだろうか? 鎧の隙間から見える肌の色と、先程の発音がネイティブではないアローラの響きからして島の人間ではなさそうだ。

 

「ぴ、ぴゅ……」

 

 ほしぐもちゃんの入っているカバンがほんの少しだけ震え、小さな鳴き声が漏れる。ほしぐもちゃんが怯えている? この人はエーテル財団の追手かもしれない、これ程怯えるほしぐもちゃんは私が研究所で見付けた時以来見た事がない。

 

「いやー、いい天気ですねえ。それにアローラの空気は美味しいなあ、貴女もそう思いませんか?」

 

「え、ええ……そうですね」

 

 不自然な程明るいく馴れ馴れしい態度に警戒心が強まる、仮面越しでも分かる程に私のカバンに注がれる視線も大きな要因だ。先程の鳴き声とても小さく、この距離で聞こえたとは思えない。

 そしてこのカバン越しにほしぐもちゃんの存在を感知するのは特殊な機器や高ランクの超能力者でなければ不可能だとバーネット博士は言っていた。

 なら、この人はそのどちらかを持っているのか? それとも私がほしぐもちゃんを隠しているのを最初から知っていたのか?

 

「家族も連れて来たかったなあ、色々事情があって無理だったんですよ。いやー残念です、本当に残念だなあ。家族はやっぱり仲良くしないとなあ、貴女はどう思いますか? 家族についてどう思っていますか?」

 

 浮かぶのは変わってしまった母様の冷たい顔、去って行く兄様の悲しそうな顔、いなくなってしまった父様の優しい笑顔、そのどれもが私の胸を締め付ける。

 この人は何が言いたいのか、やはり私の正体を知っていて揺さぶりをかけて来ているのか?

 

「あの……私は届け物があるんです、急ぐので失礼します」

 

「いやいや! ちょっとだけ、本当にちょっとだけ時間をください! 遅れそうなら僕の超能力で送り届けてあげますから! 少しだけ! ほんの少しだけですから!」

 

 鎧の不審者が私に歩み寄って来る、それに合わせて私も後退る。強くなった私はどこかに行ってしまった、目の前の鎧の男に怯える私はお母様の着せ替え人形に戻ってしまった。

 

「こ、来ないでください……やめて……」

 

「うっ……怯えないでください、僕は怪しい者じゃありません、本当に聞きたい事があるだけなんです」

 

 鎧の男は一応私の静止に応じてくれた、だけど安心は出来ない。こんな怪しい人を見たのは初めてだ、今気付いたけど黒い鎧は僅かに蠢いている、もしかしてあの鎧はポケモンなのだろうか。

 

「な、何を聞きたいんですか?」

 

「えーと……はちみつください?」

 

「…………」

 

 怖い、言葉は通じているのに話が通じていない気がする。この人の感情も思考も何一つが理解出来ない。恐ろしくて涙が出てきそうだ。

 

「いや! 今のは忘れてください! ちょっとどうかしていました! やっぱりピンクが足りないからですかね!?」

 

 怖い、急に焦りだした、ピンクって何? この人は一体何を言っているの? 

 

「も、もういいですか? 急いでるんです……」

 

 逃げなきゃ、でも刺激するのも危険だ。何とか穏便にこの場を離れなくては。

 

 

「あーっと!? その、ポケモン!? カバンに入ってるポケモンについても教えてほしいんです! そのふわふわちゃんをどこで手に入れたんですかね!」

 

 やっぱり! この人の狙いはほしぐもちゃんだ! 

 

「最初からほしぐもちゃんを狙っていたんですね! あなたみたいな怪しい人にほしぐもちゃんは渡しません! 私が守って見せます!」

 

 怖いけど屈したりはしない! 私は強くなりたいのはこの子のためでもある! 怯えるな! 勇気を出して強い自分になるんだ!

 

「ほ、ほしぐも? なるほど……確かにほしぐもっぽいよな……いや、ふわふわの方がピッタリだよな? うーん……でも良い名前だな……」

 

 何かブツブツ言って考え込んでいる、この隙に逃げなきゃ……

 

「全然だめッス! 問題大ありッス!」

「何が任せろッス! 信じた私達が馬鹿だったッス!」

「くそ、何してやがる俺!」

 

「そ、そんな……」

 

 後ろから黒ずくめのコートを来た3人が叫びながら走って来る、仲間がいたなんて、最初から囲まれていたの?

 これじゃあ逃げられない、目の前が真っ暗になりそうだ。

 

「お、怯える事はないよリーリエちゃん、大丈夫、大丈夫だから」

 

「い、いや……」

 

 私の名前を知っている……やっぱり調べられていたんだ……

 

 涙が溢れる、この後私とほしぐもちゃんはどうなってしまうのか? エーテルパラダイスに連れ戻される? 

 でもこの怪しい格好の人達はエーテル財団の所属にしては黒すぎる、もしかして他の組織の人間なの? そうしたら連れて行かれた先でどんな酷い目に合わさせれしまうのか。

 

「た、助けて……ユリさん……」

 

 思わず名前を呼んでしまう、私をいつも助けてくれる彼女の名前が口からポツリと漏れる。

 

「おい、リーリエを泣かすなよ」

 

 1番聞きたかった声が聞こえると同時に、私の周りに轟音と衝撃波が走る、鎧の男と黒ずくめの3人が土煙へと消えていく。

 私の肩に優しく手が置かれる、この感触が私の心を落ち着かせてくれる。振り向くとそこには私より少しだけ背の高い白い髪の少女が居た、研究所で寝ていたはずの彼女だが私の異変を感じて駆けつけてくれた。

 

「大丈夫リーリエ? 遅くなってごめん」

 

「ゆ、ユリさん……」

 

 初めて会った時も同じように私を助けてくれた、その超能力で追手を蹴散らして私を“テレポート“でアローラまで連れて来てくれた。

 私を助けてくれた理由は同情だと言っていた、悪い親の元に生まれた所が自分と似ていたから放って置けなかったと言っていた。

 

 同情でも憐れみでも良い、この人がそばにいてくれるならそれで十分だ。

 ユリという名前は私が考え、彼女に贈った。自分の名前が嫌いだから他のが欲しいと言った彼女の為に私が精一杯考えた名前、私と名前の由来をお揃いにした、百合の花から名前をとった。

 真っ白で美しい彼女によく似合う名前だと思う、彼女もとても喜んでくれた。

 

「へえ、狂ってるねお前。ネクロズマに自分を取り込ませるなんて狂人の発想だよ。どの組織の人間だ? フレア団かギンガ団の残党か? それとも最近噂のムゲン団か?」

 

 ネクロズマ? もしかしてあの鎧が? 黒いネクロズマ……そんな個体がいたなんて。

 土煙が晴れると黒ずくめの集団がいつの間にか一箇所に集まっていた。4人の周囲には虹色のオーラが展開されている、鎧の男の仕業だろう、ネクロズマを纏っているという事は超能力者で間違いない。

 

「す……エーテル財団の諜報員です、は、はちみつください」

 

「はあ? お前……ああ、例の符丁か。でもお前がエーテル財団の人間のはずがない、あの組織のネクロズマは氷漬けだ、それにあのネクロズマは黒くない、透明だったはずだ」

 

「こ、氷漬けに透明? 何ですかそれ……」

 

 白々しい態度だ、私を調べていたならエーテル財団の事もわかっているはずだろう、無知を装って情報を引き出すつもりか?

 

「惚けるなよ、お前が嘘を付いている事ぐらいなら分かる。いくらネクロズマで防いでいても最強の超能力者である僕の前で偽りは通用しない」

 

 そうだ、ユリさんは最強の超能力者だ。あらゆる嘘を見抜き、どんな敵にも負けないヒーローだ。

 

「さ、最強……だと?」

 

「ああ、しばらく前に馬鹿がガラルでそれを捨てたろ? だから僕が暫定一位だ、文句があるのか?」

 

「な、ないです……」

 

「じゃあ大人しく投降しろ、今なら物凄く痛い程度で済ませてやる。そして洗いざらい喋ってもらうぞ」

 

「あの、ユリさん? あまり乱暴な事は止めてあげてくれませんか?」

 

 鎧の男は完全に萎縮している、今なら素直に言う事を聞いてくれるだろう。なら暴力に訴える必要はない。

 

「大丈夫だよリーリエ、ただの脅し文句だよ。おい! 大人しくするなら暴力はなしだ、まずは名前を教えろ!」

 

 ユリさんは黒コートの3人に向かって指を指して問い掛けた、話の通じそうな人から尋問するつもりなのだろう。

 

「あーっと……Aッス」

「え、A2ッス」

「フッ……Gだ」

 

 絶対に偽名だ、この人達もまともに答えるつもりがないみたいだ。

 

「チッ、お前は? 名前ぐらいはまともに答えてくれよ」

 

 ユリさんが鎧の男に向き直った、彼は何か考え込んでいたようで突然の質問にビクリと身体を揺らした。

 

「な、名前は……ゆ、ゆ」

 

「ゆ?」

 

「ゆ、Uです」

 

 空気が凍った、ユリさんが怒りを露わにしたせいで超能力によるプレッシャーが周囲に漏れてそう錯覚させた。

 ユリさんに対してUと名乗るなんて……鎧の男は私だけではなくユリさんの事も調べていたみたいだ。そうでなくてはそんな挑発的な偽名を名乗るはずがない。

 

「なるほど、私に喧嘩を売っているのか。ネクロズマを持っているから調子に乗っているのか? だとしたら態度を改めた方がいいよ」

 

 ユリさんは腰のモンスターボールからポケモンを繰り出した、出てきたのは白いプリズムの様なポケモン。頼りになるユリさんの相棒。

 

「うえっ!? 白いネクロズマ!?」

 

「そうだよ、テテフにも正式に認められた器のネクロズマだ。どうせお前の狙いはこの子とほしぐもだろ? 昨日コケコと戦っていたのはお前だな? 妙なフィールドで中の様子は見えなかったけど、その様子じゃコケコに認められなかったみたいだな。だからこの子達を奪いに来たんだろ? いい加減惚けるのは止せ」

 

「いやいや誤解です!? 本当に話が聞きたいだけなんです!!」

 

「まだ騙せるつもりなのか? 僕の事を実験動物だと馬鹿にしているのか?」

 

 ユリさんが自分を実験動物なんて自嘲しているのを聞くと悲しくなる。ユリさんは優しい心を持っている、強い力を持っている、もっと自分を誇ってほしい。

 

 U2なんて名前の過去に囚われる必要は無い。今の貴女はユリ、最強の超能力者にしてカプ・テテフに認められし者。ネクロズマのケアと共に輝きを手に入れてアローラを救う人。母様の企みも他の器にだって負けるはずがない。

 そして私の恩人、私の憧れ、私の理想のヒーロー。真っ白で美しい完璧なトレーナー。

 

 だからユリさんのする事は正しい、だって彼女は正義の味方なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

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