自分はかつて主人公だった   作:定道

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46話 一番いいのを頼む

 

 アローラ地方にあるメレメレ島の1番道路、そこで僕はピンチを迎えていた。

 

 謎の僕っ娘超能力者とのサイキックバトルが始まる寸前だ、どうしてこうなった? さっきまでは話をすれば見逃してやる的な雰囲気を出していたのに、僕が名乗った直後から殺気と怒りがビンビンだ。

 

 恐らくこの子は僕より高ランクの超能力者だ、最強かどうかはこの際置いておくにしても僕より強いのは間違いない。

 いくらリノを纏っていても、相手も同じネクロズマを使ってくるのであれば勝ち目は薄い。あの白いネクロズマの推定OPは7900、リノよりレベルが10近く上だろう。

 カプ・テテフに認められたと言う割にはZパワーを少量しか感じないがそれでもこちらの方が不利だ。

 

 とにかく怒りを鎮めなくては。みんなを連れて逃げるだけならぎりぎり何とかなりそうではあるが、今後の事を考えるなら穏便に済ませるのが一番だ。

 それに今日は戦闘は無しと約束したのだ、早々と反故にするのは避けたい。

 

「ふざけた名乗りをしやがって、どうせお前もどこかの実験体だろ? そんな狂った行為はZパワーを制御するための実験以外にあり得ない。廃人になる前に捨て駒として僕にけしかけられてるんだよお、憐れなのはお前の方だ」

 

「何!? そうなのかU!?」

「そんな!? 酷い……」

「な、何で言ってくれなかったの……それじゃあUは……」

 

「え……そ、そーなの!?」

 

 もしかして僕は2番目? 僕はいつの間にか自分をユーリだと思い込んでいる実験体になっていたのか?

 いや、それはないだろう。あそこまで言われると自分の方が間違っているんじゃないかと不安になったがそんなはずはない。

 

「いやいや違うよ、えーと……ユリさん? 僕は実験体でも貴女を害しに来た訳でもないです、本当に話が聞きたいだけなんです」

 

「いい加減にしろ。じゃあ何でUなんてふざけた名前を名乗ったんだ? どうせ僕を怒らせる為にそう名乗れと言われたんだろ? 作戦は大成功だよ、生まれてから3番目にイラついたよ」

 

 そ、そこまで? 何がそんなに気に食わなかったんだ? 確かに僕もNが両手広げてNですって名乗ってきた時は少しイラッとした、だけど3番目は言い過ぎでしょ?

 

「これは自分で考えた名前でして……Uはウルトラの頭文字です、格好良いでしょ?」

 

「殺すぞ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 怖い……キレたナイフでガラスの十代、触れる物全てを傷付ける反抗期だ。

 真っ白な髪に赤と青のオッドアイ、美人だけどちょっと拗らせているビジュアル、やっぱりこの子も14歳だろうな。

 

「早く本当の目的と名前を教えろ、僕は気が長い方じゃないんだ」

 

 いや、分かるよ。強い超能力を持っているとオラ付きたくなる気持ちは痛い程良く分かるよ? 組織だ何だと関わりを持つと何でも陰謀だとか実験体だとか言いたくなるのも良く分かる。悪の組織とかエスパー協会とかは人工超能力者の強化人間を造ってると僕も思わなくもない。

 昔怪しいおじさんがこちらの様子を探っていて、貴様……組織の人間だな? と声をかけたら只のきんのたまおじさんで恥をかいた覚えがある。

 よく考えたら間違ってなかったけどその時は恥ずかしい思いをした、それとなくこの子にも教えてあげなくては。

 

「お前……もしかして名前が無いのか? だとしたら悪かったな、実験体が与えられたコードを誇りたくなるのは仕方がない。でもちゃんとした名前を手に入れた方が良いぞ? アテがないなら僕が考えてやっても良い」

 

 なんか急に優しい、でも早めに勘違いを正さないと泥沼になりそうなのでここは仕掛けるしかない。

 

 両手を上げつつ膝を地面に付ける、突然の僕の行動に少しだけ緊張が走るがそのまま頭と両手を地面へと勢いよく下げる。

 これこそが土下座の姿勢だ。ジョウト出身の僕が出来る精一杯の謝罪を示すスタイル、ガラルでマリィにも通じたからアローラでも伝わるだろう。

 

「申し訳ありません! 本名はちゃんと存在します! だけど諸事情により名乗れません! 怖がらせてしまってすみませんでした! どうかお許し下さい!」

 

「なっ何だそれは!?」

「あの姿勢は? 一体何なのでしょう?」

 

 よし、掴みはOKだ、やっぱりユリは想定外の事態に弱い。自惚れ屋さんは大体そうだ、かつての自分と同じだから良く分かる。

 

「なんスカこのポーズ? 伸びをするニャースの構えっスカ?」

「知ってるッス、ドゲザスタイルって構えでこの後ハラキリって技に繋げるッス。カントー映画で見たッス」

 

 いや、腹は切らないよ? そんな危険なコンボを披露するつもりはない、生涯に一度しか使えないじゃんそんな技。

 

「フッ……分かったU、お前がそこまでの覚悟を見せるのなら俺も黙ってはいられない」

 

 ちょっと誤解してるグラジオの言葉が聞こえてきた、顔を傾けて彼を見上げる。フードと仮面を取って汗だくな顔が出てきた。

 アローラの気候でその格好をすれば普通はそうなる、僕は超能力で体温調整と気流操作出来るからリノを纏っていても蒸れたりしない。

 

「そ、そんな!? グラジオ兄様!?」

 

 めちゃめちゃ驚いてるなリーリエちゃん、僕もユウキがあの格好で出てきたら同じぐらい驚くか? どうかな……父さんがあんな格好をしていたら死ぬほど驚く自信はあるけど。

 

「ああ、久しぶりだなリーリエ。少し背が伸びたな……お前が健やかで安心したよ」

 

「はい、私も兄様がお元気そうで嬉しいです。ですがどうして兄様がアローラに? やはり母様を止めるためなのですか?」

 

「そうだリーリエ、俺達とこいつ等はスカル団という組織に所属している。善良な組織……とは言い切れないが命を軽視した実験などは行ったりしない。現在の主な活動はウルトラビーストの保護だ、それにはこのUの力が大きな助けになっている。だから信じてくれ、接触の仕方を誤ったのは認めるがお前達を傷付ける意図はなかった」

 

「兄様……」

 

 いい流れだ、やっぱり兄妹のキズナは強い。このまま穏便に場を収めて和解しよう。

 

「待ちなよリーリエ、やっぱり怪しい。お兄さんはその男の超能力で操られているのかもしれない、そうでなきゃ南国で黒いコートなんて着ないよ」

 

「た、確かに……兄様は白い服がお好きでした。自分から望んでこんなヘンテコな格好をするとは思えません! きっと洗脳されて無理矢理着せられているはずです!」

 

「なっ!? ヘンテコ!?」

 

 いや、格好良いよ? 確かに南国で着る服のチョイスとしては最悪だけどさ……

 

「リーリエ大丈夫だよ、僕なら洗脳されていても治してあげられる。だからコイツ等を拘束するね? 少し手荒になるけど許してほしい」

 

「ユリさん……ごめんなさい、私のワガママでいつもユリさんに頼って迷惑をかけています……」

 

「気にしないでいいよ、じゃあ変わりに今日の夕飯はZヌードルがいいな。そうすれば許してあげる」

 

「はい! でも野菜も食べなきゃだめですよ?」

 

 なんかイチャついているけど隙がない、最後の手段だが無理矢理逃げるしかないな。流石に拘束されてからじゃ離脱は難しい。

 

 

「待ちたまえ君たち!! 争いは止めるんだ!! 君たちは互いを誤解している!!」

 

 

 やたら大きくて通る叫び声、その場の全員が声の元へと顔を向けた。

 そこには不審者がいた、赤を基調にした覆面を被った上半身裸の男がポーズを決めて立っていた。1番道路の段差の上の草むらでプロレスラーが己の筋肉を見せ付けている

 TPOを弁えない筋肉にトキメキと優しさは感じない、筋肉は然るべき場所でこそ輝きを放つのだ。

 

「ろ、ロイヤルマスクッス!! 何でこんな所に!?」

 

 ロイヤルマスク……ああ、リラさんから貰った覆面の人か。アローラで有名なプロレスラーなのかな? アローラでは草むらからああいうタイプのおじさんが飛び出して来るのか。

 

「トウッ!!」

 

 その場からロイヤルマスクが跳躍する、空中で捻りと回転を加えつつ僕達の中心へと見事に着地した。

 

「ユリくん!! 彼等は君たちに害意を持っていない!! どうか落ち着いてほしい!!」

 

「えぇ……何やってんの」

「だ、誰なんですか!? ユリさんのお知り合いですか!?」

 

 ユリはロイヤルマスクを知っているようだが、リーリエちゃんは知らないみたいだ。

 説得してくれるのは有り難いが正体が分からない人物に助けられるのは不気味だな……きんのたまおじさん達の亜種ってとこだな。

 

「僕はロイヤルマスク!! ユリくんとリーリエくんの事はククイ博士から頼まれていてね!! 異変を感じたから駆けつけたんだ!!」

 

「博士のお知り合い? ユリさん、本当なんでしょうか?」

「あー、うん、間違いないよ……」

 

 良かった、ユリから戦闘の気配が消えて呆れた雰囲気になった。どうやらロイヤルマスクはユリにとって信用出来る人物らしい、こんな見た目でどうやって信頼を得たのかは謎だ。

 

「そしてスカル団の諸君!! 君たちの事はハラさんから聞いている!! だから君たちが悪意を持って二人に近付いた訳じゃないのは分かる!! だけどリーリエくんを怯えさせたのは頂けないな!! 人に会うときに正体を隠すのはマナー違反だぜ!!」

 

 クソ! 我慢だ! 今ツッコミを入れると話が拗れる、正論なのに間違いはないから素直に謝ろう。

 

「も、申し訳ありませんでした」

「ご、ごめんなさいッス……謝るから後でサインが欲しいッス!」

「リーリエちゃん、怖がらせてごめんッス。グラジオの妹さんなら大丈夫かと思ったッス」

「ヘンテコ……馬鹿な……」

 

「よし!! これで諍いは終わりにしよう!! 君たちは共にアローラを救う同士だ!! 仲直りの握手をしようぜ!!」

 

「それは嫌だよ、コイツとは同士なんかじゃない。この男はカプに認められていないだろ? ならただの部外者だ。ネクロズマを取り上げた方がいい、それがコイツ等のためでもある」

 

 多分ユリは本気でそう思っているのだろう、それが正しいと心をから思っている。だけどその言葉を認める訳にはいかない。

 

「悪いけどリノを誰かに渡したりなんかしない。リノは僕に助けを求めて僕はその手を取った、途中で投げ出したりはしないよ。それがポケモントレーナーとしての僕の矜持だ」

 

「へえ、雑魚の癖に言うじゃないか。やっぱり力で分からせてやる必要があるみたいだね」

 

「ユリくん!! 昨日の夜にカプ達の間で話し合いがあった!! カプ・ブルルはスカル団という組織を認め、そこに所属する彼を正式に器として推すと断言した!! 彼を止めるなら正式な場でなければならない!! カプ・テテフから掟は聞いているだろう?」

 

「なっ……本当なの? 僕を止める為に嘘をついていないよね?」

 

「ああ、ハラさんから確かにそう聞いた!! 誓って嘘は付いていない!! 君なら分かるだろう?」

 

 僕も初耳だ、AさんとA2さんも驚いている。一度も会った事がないのになんで認められたのだろう? ウルトラビーストを保護したのが認められたのか?

 そもそも器って何だ? このロイヤルマスクさんなら教えてくれそるかもしれない。

 

「すみませんロイヤルマスクさん、器とは何ですか? ネクロズマの事でしょうか? 僕達はZパワーについて知りたくて話を聞きにきました、可能な限り教えて欲しいです」

 

「Uくん!! カプ達の話し合いでもう一つ決まった事がある!! 4日後に器に選ばれた人物とその関係者達を集めて話し合いをする事になった!! 目的はお互いの情報の共有と現状の正しい把握、そしてそれぞれの目指す所をハッキリとさせる事だ!! キミの疑問はその場で解消されるからもう少し待ってくれ!! 私はそれを話す許可を得ていない!!」

 

 4日後に話し合い? こっちのスケジュールを完全に無視している。

 カプ達は勝手だな……誰がその話し合いに参加するのか確かめるか。

 

「あの、誰が集まって、どこで行われるのか具体的に教えてくれませんか? 言える範囲で構わないので」

 

「集まるメンバーか!! まずはカプ・テテフに認められたユリくん!! そしてカプ・レヒレに認められたルザミーネさん!! そしてカプ・ブルルに認められたキミだ!! 全員がネクロズマを相棒としている者達だ!!」

 

「Uに加えて母さんまで? 話し合いを行うだと?」

「母様が!? ユリさんまで……」

 

 あれ、3人だとおかしいぞ? あの危険なカプ・コケコは誰も推していないのか? 判断基準が厳しそうだから決まってないのかな。

 

「ロイヤルマスクさん、カプ・コケコが選んだ人はいないんですか?」

 

「ああ!! カプ・コケコが選ぶ予定の人物はまだアローラにいない!! 今回の会合は代理の人間が参加する!! その人物は然るべき時に必ずやって来るらしいから安心してくれ!!」

 

 然るべき時……カプ達も未来を知っているのか、そうでなければ断言出来るとは思えない。流石に適当な言い訳ではないだろう、暴力的だが仮にも神と崇められるポケモンだ。

 

「そして会場はアーカラ島コニコシティのアイナ食堂だ!! 会合は昼食を取りながらの予定だからお腹を空かせて来てくれ!! 会費は1人1040円!! カプ達の分も頼むぜ!!」

 

 食堂で昼食を取りながらする話か? しかもお金……ブルルの分を僕が払うのはなんか釈然としないな、勝手に参加を決めて1040円まで人に払わせるのつもりかカプ共は。

 

「ゆ、ユリさん! お小遣い足りますか!? この前ブティックで沢山お買い物してお金が無いって言ってましたよね!?」

 

「よ、余裕だよ、そんな端金で僕が悩むはずないだろ?」

 

 ほら、こういう事もあるんだよ。ちゃんと子供の経済力も考慮しなきゃだめだよね。この世界じゃポケモンバトルでお小遣いを半分巻き上げたり出来ないんだからさ、トレーナーだからって気軽に稼げる訳じゃない。

 

「そして4人だ!! 自分の協力者を4名まで会合に参加させていい!!」

 

「4人? なんか意味のある数字なんですか?」

 

 掟でそう決まっているとか? 島の数も守り神も4だしアローラでは特別な数字なのかもしれない。

 

「それは分からないな!! カプ・コケコがそう決めたらしいぞ!! アイナ食堂の席が足りないからじゃないかな?」

 

 じゃあもっと広い会場にしろよ、自分は代理人を用意する癖にやりたい放題だな……どうせならスカル団全員で参加したかった。

 

「さ、更に4人? えーと……4160円? あれ? 5200円?」

 

「ユリさん! 5人と1匹で6240円です!」

 

 税込みだよね? アローラの消費税って幾らだっけ、確か4%だったよね。ユリはだいぶテンパっている。

 

「そして器と操り人の戦闘行為は禁止だ!! 所属している組織や関係者も同様だぞ!! 話し合いでアローラの今後を決めようぜ!!」

 

「えぇ……?」

 

 アローラの今後を僕達だけの話し合いで決めていいのか? 絶対よくないよな? この島の行く末を決める権利は島の住人全員にあるんじゃないのか?

 

「U、俺も会合に参加させてくれ! 母さんの真意が知りたいんだ、頼む!」

 

「もちろんだよグラジオ。君が参加してくれれば心強い、僕からもお願いするよ」

 

 他の3人は誰に頼むべきか、多分ポケモンは認められないだろうからスカル団の人達に頼むしかない。

 出来ればグズマさんとリラさんには来て貰いたい、事情に詳しくて頼りになるあの2人なら他の人達にやり込められる事もなくなるだろう。

 

「ユリさん? 私と博士達を入れても3人です……その、一緒に来てくれる人に心当たりはありますか?」

 

「よ、余裕だね……僕はこう見えて顔が広い、一声かければ100人は来るよ。リーリエには来て貰いたいけど、博士達はどうしても参加したいって言ったらでいいんじゃない? まあ、一応声はかけてあげるけどさ」

 

 ユリとリーリエちゃんがコソコソ話し合いをしている、聞かなかった事にしてあげよう。別に4人揃わなくてもいいと思うけどな。

 

「後で正式に知らせが届くはずだ!! ハラさんが今朝から頑張ってポケ太郎でお知らせの書類を作っている!! もう少し待ってあげてくれ!!」

 

 ポケ太郎……父さんも愛用しているワープロソフトだ、アンノーンフォントが使えるのはアルフ遺跡のライセンスを取ってるこれだけだと嬉しそうに話していたから覚えている。そんなフォントは使う機会はないと思うけど妙な愛好者の多いソフトだ。

 ハラさんも使い手なのか、書類作成までコケコにやらされる島キングって大変そうだな。

 

「おい! ロイヤルマスク! 今日はお前に免じて引いてやる! 3日後だな!? 1人につき1040円だな!? 間違いないな!? デザートは別料金とか言うなよ!?」

 

 最強の超能力者はだいぶ焦っている、もはや僕の事なんて眼中になさそうだ。

 

「ああ!! にく、やさい、さかな、スペシャルの4つの定食どれも同じ値段だ!! デザートは定食に付いてくるから追加の料金は無い!! 希望のメニューをお知らせの紙に書いてハラさんの家のポストに入れておいてくれ!!」

 

 め、面倒くさいぞ……メールじゃだめか? 町内会の集まりみたいだ、それともこれがアローラのスタンダードなのか?

 

「リーリエ! この前アーカラ島でナマコブシ投げのバイトを募集しているって言ってたよね!? まだ募集しているかな!?」

 

「た、多分まだ募集していると思います。観光客が増えて人手が幾らあっても足りないって言ってました」

 

 なんだその謎のバイトは、観光客にナマコを投げるのか? アローラの伝統行事で豊漁の祈りとか? ナマコぶつけられて嬉しいか?

 

「よし!……おいお前! 3日後までに身の振り方を考えておけよ、相手の力量を推し量るのも実力の内だぞ!」

 

 ユリは僕にそう言い放ちリーリエちゃんの手を握った、サイコパワーの具合から“テレポート“するつもりだろう。

 

「兄様……また3日後にお会いしましょう、久しぶりに家族が揃いますね」

 

 そして二人はその場から消えた、ナマコを投げにアーカラ島まで転移したのだろう。アローラにはまだまだ謎が多い。

 

「サインは2枚書いて欲しいッス、アルケとリラって名前でお願いするッス」

 

 気が付けばAさんがロイヤルマスクさんにサインをねだっている。そう言えばリラさんもファンっぽかったな、マスクを渡して来る時にやたら熱が込められていた。

 

「いいとも!! これからも応援してくれ!! ロイヤルマスクの力の源はみんなの声援だからね!!」

 

 この人はアローラ出身だよな、肌の色と言葉の訛りがそれっぽい。だとしたら聞きたい事がある。

 

「ロイヤルマスクさん、貴方はアローラの今後を決める話し合いの主役がアローラの外の人間でいいんですか? 島の行く末を委ねていいと本気で思っているんですか?」

 

 ロイヤルマスクさんが僕に向き直った、少しだけ引き締まった雰囲気で言葉を探している。そして力強い声音で語ってくれた。

 

「詳しくは言えないけど器に選ばれるのは必ず外からやって来た人間だ、どんな方向にしろアローラを変えられるのは島の外から吹く風なのさ。何かを変える新しい風、それこそがアローラの風だ。僕は今のアローラにはそれが必要だと感じている、だからこそ話し合いに賛成なんだ。僕が言えるのはこれくらいかな」

 

 多分この人は誠実だ、本気で思っている事を言える範囲で答えてくれたのだ。ふざけた見た目だけど本気でアローラの事を信じている。

 

「答えてくれてありがとうございました。少し失礼な質問でした、申し訳ありません」

 

「気にする事はないさ、君はアローラの事を考えて僕に質問してくれた。それは僕にとって嬉しい事さ」

 

 ここまで詳しい事情をハラさんから聞けるのは、この人のアローラを思う気持ちが本物だからだろう。

グズマさん達が保守的で変化を嫌うと言っていたアローラの気質とは反対だが、それこそが今のアローラには必要だと憂いているのか。

 

「そうそう、ハラさんは外部から強力な助っ人を呼んだみたいだぜ? 君もそれに負けないくらい信頼出来る仲間を連れて来てくれよ」

 

 外部から強力な助っ人か、それは手強そうだ。でも問題は無い、恐れる必要なんてありはしない。

 

「大丈夫ですよ、僕にはスカル団の仲間達がいますからね。彼等は最高の仲間達です、強力な助っ人にも負けませんよ」

 

「いいね! これは期待できそうだ! 4日後を楽しみにしてるぜ!」

 

 ロイヤルマスクさんはニッコリ笑うと飛び上がって段差の上の草むらに消えて行った。虫に刺されそうだな……

 

「フッ……ロイヤルマスクか、中々手強そうな奴だ、お前もそう思うだろうU?」

 

 グラジオが僕に問い掛けてくる、その口元には自信有りげな笑みを浮かべている。

 

「フッ……だが、僕達スカル団に敗北は無い、君もそう思っているだろうグラジオ?」

 

「フッ……」

「フッ……」

 

「はあ、メレメレ島の探索は中止ッスね。急いでアジトに戻らなきゃまずいッス」

「まあ何とかなるッス、お馬鹿二人も元気みたいッス。私達も明るく楽しくやるッス」

 

 それが一番いいことだと思う、何かに取り組む時に明るく楽しくできるのならそれが最善だ。

 

 メレメレ海から風が吹いた、これもアローラの風だ。変化の始まりを告げる風が僕達を通り抜けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の乗っている大型のクルーザーが青い海を軽快に進んで行く、腰掛けている椅子一つにしてもイチイチ高級品だ。座り心地が良いのは結構な事だがここまで贅沢なクルーザーの作りと調度品には少し呆れてしまう。

 カトレアは本当に唸る様な金持ちだ、一代やそこらで成り上がった奴等とは訳が違う由緒正しい家のご令嬢、家の物ではなくて個人の持ち物だと言うのも恐ろしい。

 

 この船の目的地はアローラだ、訪問の目的はアローラがリーグを設置するのに相応しいのかを査察する事。表向きにはそういう名目だが、今世界で起こっている異変を知る者達はそれを信じないだろう。

 

「カトレア、みんなでアローラなんてワクワクするわね。コウキとヒカリがいないのは残念だけどお土産を沢山買って帰りましょう」

 

「ええ、アタクシも楽しみ。ナマコブシ投げ……エレガントな響き」

 

 俺達はアローラに観光に行くわけじゃねえと言ってやりたい、ウキウキでバカンス気分のこいつらには悪いが真面目にやれと言いたい。

 だが、カトレアはこの船を出してくれたし、シロナは絡まれると面倒くさい。ここはぐっと我慢するべきだろう、既に水着を着ている事にも触れない事にする。

 

「レッド君、Zクリスタルの特異性、そしてZリングに使われている原石の希少性は分かってくれたかな? アローラでしか発見されていないこの石達は本当に素晴らしい物だ。それをよく理解しないとね、Z技を求めるなら必須の知識さ」

 

「……あ、うん」

 

 レッドはダイゴに延々と石の話を聞かされている、あそこに迂闊に近付くと大怪我してしまう。どいつもこいつも仕事の話をする気がなさそうだ。苛立ちと不安が募ってくる。

 

「どうしたグリーンさん、折角のアローラなのにそんな顔をしてはもったいないぞ? アローラには独自のポケモンや文化が沢山ある、君には柔軟な心でそれを見極めて欲しい」

 

「アデクさんよ、年長者のアンタがビシッと言ってくれねえかな? 浮かれてるコイツらに喝を入れてくれ、ついでに自分自身にもな」

 

 アロハシャツを着て星型のサングラスを付けているこの老人に期待するのは無駄な気もする、だが一応言っておく事にしよう。

 もっとストイックなイメージがあったけどチャンピオンを引退して変わったのか? マスタードも昔はお固いチャンピオンだったらしいし、反動があるのかもしれない。

 

「ふむ、手厳しいな……だがリーグからの要請もかなり曖昧だろう? 異変を見極めて柔軟に対応し、可能と判断すれば介入して事を収めろ。これでは何も言っていないのと変わらんな」

 

 そんな事は分かっている、だけどアローラの様子を外部から探るのは難しい。カプと呼ばれるポケモン達とZパワーによる守りによってどの組織もアローラの満足な情報収集ができていない。

 科学だろうが超能力だろうが跳ね除けるふしぎな守り、直接乗り込んでも島に悪意を持てばカプ達がたちどころに飛んでくる。“テレポート“を始めとする空間転移すら許さない鉄壁の島々だ。

 

 唯一アローラに受け入れられているエーテル財団もリーグには非協力的だ、情報はほとんど流れて来ない。

 あの島で何が起こるのか? それとも既に起こった後なのか? それすら掴めていないのが現状だ。

 

「リーグ本部だって馬鹿ばかりじゃねえ、扱いにくい俺達をかき集めてまでアローラに送り込むのはそれ程の戦力が必要になると見積もったからだ。ブラックナイトが終わった直後に世界各地でウルトラホールの出現が一斉に無くなった現象は何故かアローラだけが例外、それを成した奴がアローラに居るのならリーグの懸念は見当外れとも言い切れねえ」

 

 問題は島で動くタイミングだ、査察の名目で来ている以上はカプ達は手を出して来ないと島キングは言ったらしい。だが有事の際に俺達がトレーナーとして振る舞った時のカプ達の動きは未知数、事態の全貌を見極めて適切な場面で動かなくてはカプ達と共倒れになる可能性だってある。

 

「ふむ……わしは昔、旅の途中でアローラを訪れたことがある。当時は強さこそがトレーナーにとっての1番の資質であると考えていたワシはあの島でZ技を習得する事は出来なかった、カプ達に認められなかったからだ」

 

 なんだ? 昔話と説教が始まるのか? トレーナーにとって大事な物は強さだけじゃないとか言い始めるのか?

 生憎とそれはじーさんの言葉だけで間に合っている、俺が懸念しているのは心構えではなく現実の対処法だ。

 

「トレーナーとして正しい心が足りなかったからだと当時は納得した、強さを求める余りにポケモンと向き合う事が疎かになっていたと認識を改めた」

 

 ほらな、老人は大体こういう話をする。

 

「だがそれも間違いだった、結局わしの力が足りなかったからカプ達に認められなかった。外部の人間が彼等に認められるには卓越した力量が必要、それだけの話だった。自分の決めた強さを信じきれないわしは純粋に力が足りなかった」

 

「で? アデクさんは結局何が言いたいんだよ」

 

「お前さんは十分な力量を持っている、当時のわしなど遥かに超えた強くて多彩な力だ。自分の力は自分で決めるもの、気負ってしまえば本来の自分を出せない」

 

 腹が立つけど年の功だな、俺が迷っている事を見抜いている。気取らせたつもりはなかったんだけどな。

 

「新しい世代はどんどん育って、わし等の時代よりも遥かにハイレベルだ。この船に乗っている者達は特にそうだな、みな素晴らしいトレーナーだ。過去より今の方が優れて進んでいるのは紛れも無い事実、だから気負い過ぎるなと言いたいのだよ」

 

「そりゃあ、どうも」

 

 当然だ、技術も理論も日々積み重ねられて行く。別に過去を蔑ろにするつもりは無いが今を生きる人間の方が技量が上なのは道理だろう。

 

「あの島でトレーナーは己と向き合わされる。その時に必要なのは視野を広く持つことに加えて己の強さを見失わない事だ、それだけは忘れんでくれ」

 

 逸っているのは認めるよ、だけど仕方ないだろう? アクロマの行方も、サカキの行方もまるで掴めていない。

 これではいつまで経ってもカントーに帰るどころではない、俺は早く面倒事をスッキリさせたいんだ。

 

「グリーンさんがあのやんちゃ坊主の為に早く問題を解決したい気持ちは分かる、わしも孫の様な年齢のあの子が狙われている事態をどうにかしたい。だが、その為に君の様な若いトレーナーが倒れる所も見たくもない、年寄りのお節介をどうか許してくれ」

 

 はあ、俺は老人には優しいんだ。そんな事を言われてしまってはもう噛み付く気にもなれない。

 

「分かった、俺の負けだよアデクさん。カリカリしてた俺が悪かったよ」

 

 別にユーリの事なんて気にしてはいない、あのガキは暫くカンムリせつげんに籠もっていればいいのだ。

 今まで散々世間を騒がせたのだから暫く大人しくしていれば良い、そうすれば俺とレッドが馬鹿共をイッソウしておいてやる。

 

「だが、君の様な仲間が一人はいてくれると有り難い。緩みっぱなしでも張り詰め続けてもいかん、チームには多様性が必要だ。それぞれの強みを活かそうではないか」

 

「チームとそれぞれの強みねえ……」

 

 仕事に関係ないお喋りを続ける4人に目を向ける、アデクさんも俺に釣られてそちらを向く。

 

「つまり!! Zクリスタルの生成は理論的には不可能なんだ!! だけど実物としてこの世に存在している!! タイプと技の記憶を封じ込めた奇跡の結晶!! 正にアローラの神秘!!」

 

「……う、うん」

 

「そう言えばアローラのパンケーキを食べるとサイコパワーが得られるって本当かしら? ライチュウが“エスパー“タイプを手に入れたのはそれが原因らしいわね」

 

「あり得る……パンケーキは美味しいから正義、強い超能力は正義にこそ宿る……つまりパンケーキは超能力は同じ物で出来ている?」

 

 まったく最高だね、頼りになる仲間達だよ。

 

「はっはっは、動じてないのは頼もしい。揺るがないのも強さの一つ、そう思うだろ?」

 

「はあ……アデクさんよ、あんたは島の有力者と友人だって言ったよな? 情報は得られそうなのか?」

 

 確か島キングのハラって人物だったな、それぞれの島に一人づついるカプ達の代理人の様な存在だと聞いている。

 

「ああ、メレメレ島の島キングのハラとは古い友人だ。アローラを訪れた時に友となった。そして奴に4日後の食事会に誘われている、何でも島の今後を憂う者達が集まる会合だそうだ。情報共有が目的だと言っていたから何かしら得るものがあるだろう」

 

「情報共有を目的とした食事会ね、俺の方のアテはウラウラ島に住む親戚だ、じーさんの従兄弟でナリヤって名前の研究者が住んでいる。リージョンフォームについて研究しているから島の風土には詳しいだろう、ウルトラホールとアローラの関係性を知っていれば助かるんだけどな」

 

 直接会った事は一度も無い、メールでのやり取りぐらいでしか繋がりは無い。

 だが、親戚を無下に扱うような人物でない事は確かだ。そして姿形があまりにじーさんに似ていて驚いた。

 

「まずはアローラを知る事から始めよう、遠回りに思えるがそれが一番堅実に真相へ辿り着く道だとわしは考えている」

 

 反論しようにもとっかかりがそれしか無い現状では不可能だ、ここは年長者の顔を立てて方針に従うか。

 

「じゃあ俺とアデクさんは情報収集、他の4人共は遊ばせておけばトラブルを引っ掛けてくれるだろう。それが島に付いてからの方針で良いんだな?」

 

「あら、わたくしは? 仲間外れは寂しいですね」

 

 会話に割り込んで来る女の声、高身長でスタイルの良いピンク色の髪に大きなサングラスの女。カロス地方四天王の一人“ほのお“タイプの使い手のパキラだ。

 

「おお、パキラさん。貴女も島に知り合いがいると言っておったな? その伝手から情報収集は可能か? 顔の広い貴女ならわしらとは違う筋から情報が得られるだろう」

 

 アデクさんは穏やかにパキラに語りかける、こういう対応こそが正しいとは分かっていても俺には無理だ。この女に対する嫌悪感を消す事は出来ない。

 

「実はわたくしもアデクさんと同じ食事会に誘われていますの、ルザミーネさんと言う素敵な方から招待を受けています」

 

「はあ!?」

 

 ルザミーネ!? エーテル財団の代表じゃねえか!? 出発前にはそんな話は一言も聞いてねえぞ!?

 

「パキラさんよ、エーテル財団と繋がりがあるなら何で出発前に言わなかったんだ? そうすればもうちょっと対策の立てようもあったはずだぜ?」

 

「あら、申し訳ありません。ルザミーネさんとは個人的なお付き合いですのでエーテル財団という組織とは別の物です。期待させて裏切ってしまっては心苦しいので黙っていました、不快にさせてしまったのなら謝罪します」

 

 白々しい女だ、フレア団でもフラダリに次ぐ立場にいたのに国際警察との司法取引でお咎めなしのこの女は信用ならない。

 今回のリーグからの派遣でカロス地方からの代表としてこの女は選ばれた、もちろんリーグはこの女がフレア団だった事を把握しているはずだが除籍するつもりはないらしい。一体どんなアメを差し出して自分の立場を保障しているのか。

 

「これは驚いた! わしもハラしか顔見知りがいないのは心細かったから助かる。 会合には若い世代も多く参加すると聞いておるから不安だったのだ。孫のバンジロウとの話題もポケモンバトルの事ばかりで最近の子供達が何を好むのかサッパリでな、レッドさんにはポケカノと言うものを勧められたが沢山あってどれを見て良いのかよく分からんのだ」

 

 布教に失敗してるぞレッド、長々と話していた割には全然伝わっていない。熱意が空回りしているぞ。

 

「それなら3期から視聴するのをオススメしますわ、初心者はあそこから入門するのが1番です。ファンの間でも1番話題にされているから間違いありません」

 

「おお! そうなのか! すまんなあパキラさん、古い人間は最新の物を追っかけるのも一苦労でな……そうだ、ついでにメールで写真を送るやり方も教えてくれんか? 最近ポリゴンフォンを持ち始めたのだが操作が難しくてなあ」

 

「え、ええ。ポリゴンフォンを見せて貰ってもいいですか」

 

「さっき取れたマンタインの写真をバンジロウにも見せてやりたくてな、これなんだが……」

 

 老人にやられて1番困る絡まれ方だ、じーさんは機械に強いがマサラタウンの老人共はそうでもない。邪険にもできず中々理解してくれない苦しみを味わうといい。

 

 二人を置いて、海の先を見つめる。今だ島影も見えないこの海の先にアローラはある。

 

 カントー地方から俺とレッド、ホウエン地方からダイゴ、シンオウ地方からシロナ、イッシュ地方からアデクさんとカトレア、そしてカロス地方からパキラ。

 リーグから派遣される戦力としてのトレーナーは7人、ウチ一人は信用出来ないから実質6人と考えた方がいい。

 リーグのトレーナー達も何人か同席しているが一般的なジムトレーナー程度の実力だ、戦闘においては重用は出来ない。基本的にはサポートに回ってもらう予定だ。

 

 そして懸念はカプ達とウルトラホール関係だけではない。ブラックナイトでサカキと共にいた仮面の少年、幻影のポケモン達を生身で生み出して操る力を見せた超能力者。あいつがアローラに居るのが確認されている。

 

「U2か……ネーミングセンスがねえ奴等だよ」

 

 ユーリの力を再現するのを目的としたU2計画の成功例、ユーリとミュウの細胞を合わせて造られた人間とポケモンの中間の生命。サイジック教団によって生み出されてレインボーロケット団へと身を寄せたはずの彼がアローラで目撃された。

 分かっているだけでもU2の能力は、幻影ポケモンを操り、姿形を自由に変えられ、ユーリの限界を超える力を僅かに再現し、ランク15の超能力を持っている。どれか一つとっても放置するには危険な能力だ。

 だが、現地に住むゴールデンボールのメンバーからは、U2はユリと言う名を名乗り人間の少女の様に振る舞っているらしい、悪事を働くどころか超能力で人助けをしているとも言っていた。

 

「お前と同じかもなツヴァイ、きっと皆に感謝されて生きたくなったんだろうな」

 

 ボールの中の相棒に語りかける、俺とレッドと戦いながらカントーを回ったこいつはそれを選んだ。それ以来ずっと相棒として俺を助けてくれる。

 U2もそれならば良い、サカキから離反して正義の味方を本気で目指しているなら俺達と協力出来るはずだ。

 問題はそうでなかった時、今の姿は擬態でレインボーロケット団の目的を達成するためにアローラに居るのだとしたら奴は大きな障害となる。得られる情報からは簡単に無力化出来る相手だとは思えない、傷付けずに拘束するのは不可能だろう。

 

 そして、U2はポケモンとして捕獲が出来る存在なのか? それとも人間の超能力者として対応すべき存在なのか?

 

 憂鬱になる気分を止められない、俺はU2という命に対してどのように向き合えばいいのか答えを出せずにいる。

 ポケモンとして向き合えばいいのか? それとも人間として向き合えばいいのか? そう考える時点でトレーナーとしてのポケモンに対する傲慢さが浮き彫りにされる気分だ。

 

 俺の手の中のボールが揺れる、ハッキリとした意思が伝わって来る。

 

『グリーン、我ハ此処にアリ、ソレダケデ我ハ満タサレタ。U2ニモソレヲ教エテヤッテクレ』

 

 ボールの中のツヴァイから思念……本当に良く出来た相棒だ。

 俺よりも生きてきた時間が短くても俺よりも早く答えに辿り着く、常に己の存在に悩んできたコイツは命の答えを知っていた。

 

「はっ、その通りだな! まだ10歳にもなっていないU2ちゃんに俺達が人生を教えてやるか! 悪い事してたら懲らしめてやればいい! それが先達の務めってやつだ!」

 

 悩むなんてアホ臭い、なんで俺が南国のアローラでぐじぐじ悩まなきゃいけないんだ。異変もU2も、観光のついでに解決するくらいで丁度いい。

 

「折角のアローラだ! サーフィンにダイビングにフィッシング!  観光名所を巡ってアローラグルメも満喫してやる! リーグの指令なんてついでのついでぐらいに片付けてやる!」

 

「あら、急に叫んでどうしたの彼は? 卒なくこなす様に見えて割と情緒不安定なのね」

「うん、ストレスが多いみたい、疲れた感じの思念が伝わって来る」

「可哀想に、趣味がないのかな? アローラに着いたら石集めに誘ってあげようか?」

「……グリーンは溜め込んでたまに爆発させる、優しく見守って欲しい」

 

 ストレス共がヒソヒソ言っているが無視だ! 俺もアローラに着いたらアロハを買うぞ! 目一杯アローラを堪能する!

 

 人生を楽しんでいない大人の説教なんてガキには響かない、希望を説くならまず己が楽しんでいなければ始まらないのだ。

 

 生きるという行為の1番いいところ、他者と分かち合い楽しむ姿を見せてやろう。

 

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