自分はかつて主人公だった   作:定道

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6話 151匹じゃ物足りない

「ねえ、その黄色くて丸いポケモン。何ていう種族なの?」

 

「最近発見された、マルマインの進化形のマルエレキだぜ!ニックネームはエレンだぜ!」

 

「エレッ!?」

 

 すまぬ……すまぬ……

 

「そうなんだー、そっちの馬ポケモン達は?」

 

「ポニータからこおりのいしと、やみのいしで分岐進化するブリザップとレイスップだぜ!」

 

「バシロッス」

 

「バクロッス」

 

 マサル君、ポケモンに関してぐいぐい来るなあ。

 

「じゃあこのふわふわな子は?」

 

 ふわふわちゃんは……何だ?俺が聞きたい。

 

「その子はふわふわちゃんだぜ!種族は……」

 

「種族は?」

 

「ふ、ふわふわポケモンだぜ!」

 

「ふわふわポケモン?」

 

「そ、そうだぜ!フワンテの進化前の姿、ふわふわポケモンのフワワだぜ!」

 

「きゅぴー!」

 

 やべっ、ふわふわちゃんが信じてしまった。後で訂正しなきゃ。

 

「へーすごいなあ、聞いたことがないポケモンばかりだ」

 

 まずいな、保険をかけておくか。

 

「カントーの一部の地域でしかこの姿になれないぜ!ガラルでは無理なんだぜ!」

 

「あー、リーフィアやグレイシアと同じで特定の場所のOPが必要ってやつ?」

 

「まさしくそれだぜ!」

 

「なあなあサトシ、レックスはどうなんだ?」

 

「えっ、レックスは……」

 

 ホップの問いかけに、答えが詰まる。レックスって何だ?既存のポケモンに当てはめるなら?

 

「ふしッ、フシギダネが進化する時に稀に誕生する、フシギダロだぜ!」

 

「なんと!余の出生にそんな秘密が!」

 

 いや、違うよレックス。

 

「ええ!そんなポケモンがいるのか?!驚きだぞ」

 

「ええ?ヌケニンと同じって事?」

 

「そうなんだぜ、ツボミが取れて、下の部分が生えてくるんだぜ!」

 

「むう、そのようなことが」

 

 はぁ……嘘つくのって難しいな。

 

 

 

 

 

 ホップとマサルの質問のラッシュをなんとか捌きつつ、研究所へと移動をはじめる

 ホップとマサル、2人とのポケモン談義は大いに盛り上がっている。

 そして1人だけ、話に参加出来ていない人物がいる。

 

 マサルの双子の妹のユウリだ、最初の自己紹介以来、口を開いていない。

 話を振ってあげた方が良い気がするけど、上手いやり方が思い浮かばない。微妙に隔意と敵意を感じるからだ。

 

 やっぱりこの格好は女子受けが悪いのかなぁ?格好良いんだけどなあ……

 今の俺はサトシだから「へえ、あんたもユウリって言うんだ」からはじまる会話コンボが使えない、どうしたものか。

 

「そういえば、ユウリ!」

 

 ホップからのキラーパスにユウリの肩がビクンとはねる、ついでに自分が呼ばれたかと思った僕の心もドキリとはねる。

 

「な、何?どうしたのホップ?」

 

「ユウリって、フワンテが好きだったよな?」

 

 そーなの?

 

「えっフワンテ?」

 

 ちがうの?

 

「んん?だってこの前フワンテのぬいぐるみあげたら凄い喜んでたじゃないか?」

 

「あっ、あれは、その、」

 

 ほほぉ、素敵やん。あたふたしてるユウリは可愛いが、助け舟を出してやろう。

 

「フワンテが好きならふわふわちゃんを撫ででもいいぜ!優しくしてあげてほしいぜ!」

 

「きゅぴー♪」

 

 ユウリの返答を待たずに、ふわふわちゃんがユウリに突撃する。

 

「わわっ、ええっ?」

 

 胸に飛び込んで来た、ふわふわちゃんに戸惑うユウリ。

 恐る恐るふわふわちゃんを撫でると、その表情は笑顔に変わる。ふわふわちゃんの撫で心地は四天王最強だ。

 

「何だ、やっぱり好きだったんじゃないか。勘違いしたかと思ったぞ」

 

「そーだねえ、ユウリは素直に好きって言えないから」

 

 今すげぇ青春してる気がする……これもサトシの力なのかな?

 

 それから研究所につくまでの道のりは、4人で大いに盛り上がった。

 

 

 

 そしてマグノリア博士研究所に到着した、オシャレな研究所だな。ブラッシータウンの建物にしては垢抜けた感じがする。

 

「すみませーん!ソニアー!いませんかー!?」

 

 呼び鈴を使わずに直接呼びかけるストロングスタイル、流石ホップだ。

 

「もー、うるさいよー。呼び鈴使えって何時も言ってるでしょう」

 

 扉の向こうから聞こえてきたのは若い女の人の声。あれ?どっかで聞いたことがあるような?

 

「はいはい、今日は何の用事なの?」

 

「イヌヌワン!」

 

 扉から現れたのは、昨日ポケモンセンター前で僕に声をかけてきたおとなのおねえさんだった。

 ジャケットを脱いだおねえさんの緑のセーターは……へそ出し!?反則だろ!?

 

「あれっ、1人じゃないの?友達……って!ええぇ!?」

 

 やばい、おねえさんが僕を見て驚いた。昨日の羞恥心が甦る。

 

「何で!?何で甲冑!?それに馬!?何そのポケモン!?」

 

 あっ……そっちか。

 

「3人は俺の友達だぞ、今日は研究所を見学したくて来たんだ」

 

「はっ!?その騎士もあんたの友達なの!?何処で見付けて来るの!?そんなの!?」

 

 そんなのって……まずいぞ、おねえさんに不審人物と見なされている。身の潔白を証明しなければ………ガンピさん、力を貸してくれ!

 

「失礼!お嬢さん!」

 

 突然の俺の大声に周りの動きが止まる。

 

「ワレはマサラタウンのサトシ!ホップとは昨日、町で往生している所を助力してもらったのだ!その際に友誼を結んだ!!」

 

「ワレ?」

 

「ホップと語らい、ワレがポケモンマスターを目指している事を告げた折に!ホップが研究所に便宜を図ってくれると申し出てくれたのだ!!」

 

「ポケモンマスター?」

 

「ビミョーに違うぞ?」

 

「ポケモンマスターを目指すワレは!ダイマックスなる力の源が知りたい!そのために高名なマグノリア博士に話を聞きたいのだ!」

 

「そーなの?」

 

「そこははじめて聞いたぞ?」

 

「故に!どうか!どうか!どうか!ワレに教えを授けてはくださらぬか!!」

 

 イースから降りた僕は道路で頭を垂れる、ジョウト式土下座スタイルだ。

 

「ちょっ、ちょっと!止めてよ!研究所の前で恥ずかしいでしょう!?」

 

「頼み申す!頼み申す!」

 

 レックス達が次々と土下座を始める、円卓の力が今ここに1つとなる!

 

「どうかー!どうかー!頼み申すー!」

 

「ムイムイ」

 

「バシロッス」

 

「バクロッス」

 

「エレレー」

 

「きゅぴー」

 

「わかった!わかったから!?とにかく中に入って!?」

 

 やったぜ!!

 

 

 

「はー、まったくもう。ご近所に噂されたらどうするのよ、ただでさえ視線がきびしい感じなのにさあ」

 

 すみません、ゴリ押しに弱そうだったから。

 

「申し訳無い!お詫びといっては何だが、これを受け取ってくれ!」

 

 例のミアレガレットを差し出す、これなら好感度を取り戻せるはずだ。

 

「えっ?今どこから?」

 

 あまりにも早すぎる倉庫からの取り出し、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね、だ。

 

「あっ!このロゴマーク!?ミアレペロッパフ本店の奴?ウソ?予約すると2年待ちなのに?3箱も!?」

 

「イヌヌワン!」

 

 現地調達ッス、できたてをどうぞ。

 

「どうか召し上がってくれ!せめてものお詫びだ!」

 

 ポケモン世界の超科学力は、食品の保管技術にも影響を及ぼしている。

 3年程度なら出来立てをそのままで保管して食べる事が出来る、僕の倉庫と併用すれば10年はいける。

 

「きゃー!今お茶入れてくるね、皆で食べよう!」

 

 おねえさんはルンルンで台所に消えて行った、ちょろいぜ。

 

「なあサトシ、それ凄く高いやつだろ?大丈夫なのか?」

 

 ホップは気遣いの鬼やなあ。でも大丈夫、金目の物をたんまり持ってるし、ズミさんに駄々をこねれば再入手は比較的容易だ。痴れ者めって言われるだろうけど。

 

「大丈夫だぜ!美味しいものは皆で食べるのが一番だぜ!」

 

 そうだよな?タケシ?

 

「そ、そうか?口調が戻ったぞ?」

 

「……情緒狂ってない?」

 

「まーそういう年頃じゃん、僕等はさ」

 

 ちょっぴり傷付く、これが力の代償か?

 

 

 

 

 皆でミアレガレットに舌鼓を打ちながら、自己紹介を済ませる。

 おとなのおねえさんはソニアと言う名前で、マグノリア博士のお孫さんだそうだ。

 そしてふわふわちゃんと楽しそうに戯れているイヌヌワンがワンパチ。

 

「それで?サトシさんはダイマックスの何が知りたいの?」

 

 なんだかんだと聞かれたら、答えてやるのが。

 

「複数種のポケモンのダイマックスをサイコパワーで探った所、特定のOPの波動を感じた!どのポケモンにも共通して同じ反応をだ!」

 

「はえ?」

 

「サイコパワー?」

 

 共通の波動とは恐らく……

 

「ゆえにワレはこう結論づけた!ダイマックスとは恐らく一匹のポケモンからもたらさせた力であると!」

 

 そして、そのポケモンは間違い無く伝説級、伝承災害級の大物のはずだ。

 

「ワレが知りたいのはそのポケモンの正体である!そして叶うのであればそのポケモンに会ってみたい!」

 

 メガ進化とは違う形でポケモンにエネルギーを送るダイマックス、その根源たるポケモンのOPを模倣すれば、僕の願いは叶うかもしれない。

 

 5つのボールの中で眠る、相棒達を目覚めさせることが。

 

「待って!そんな訳がない!だってダイマックスはねがいぼしで作ったダイマックスバンドで起こる現象で」

 

 それは知っている、ネットである程度は調べた。僕が知りたいのはもっと深い部分だ。

 

「ねがいぼし!それは恐らくポケモンの一部である!」

 

 フリーズ村に保管されていたねがいぼしのOPは観察済みだ、あの反応はポケモン由来に間違いない。

 

「ええ!?」

 

「正確にはそのポケモン自身がダイマックスをした時の身体の欠片、実体化したエネルギーで出来たそれは、今もダイマックスし続けている!ワレはそう推測する!」

 

「まさか!?そんな訳……まって、じゃあブラックナイトの正体は」

 

「ブラックナイト?それがポケモンの名前であるか!」

 

 凄く強そうな名前だ!黒くて格好良いは強い!これはこの世の真理だ!

 

「興味深い話をしていますね、私にも聞かせてもらえませんか?」

 

 声の先にはマグノリア博士が居た、ネットの写真とは違って厳しい眼差しで僕を見ていた。

 

 

 

「さて、サトシさんとお呼びしても良いですか?」

 

「わ、ワレッ……は、はい、大丈夫です」

 

 ここまで落ち着いて理知的な雰囲気の人に、あのテンションで喋るのは無理だ。心が耐えきれない。

 

「私の名前はマグノリアと申します、この研究所でダイマックスの研究をしているものです」

 

 先生に怒られているような落ち着かない感覚、僕自身の後ろめたさのせいか。

 

「あっ、ご、ご丁寧にどうも、ゆっ、サトシです……マグノリア博士のお話を聞きたくて来ました」

 

「……また口調が違う」

 

「ユウリに似てるね」

 

「最初はあんな感じだったぞ?」

 

「そうなの?」

 

 やめてくれ、その確認は俺に効く……

 

「先ほどのソニアに語っていた貴方の仮説を拝聴させてもらいました、その上で確認させていただきたい事が何点かあります」

 

「な、なんでしょうか」

 

「まずは1つ、貴方はサイコパワーでOPを調べたと仰っていましたが、それは貴方自身の力ですか?」

 

 ど、どうする?とりあえず否定して……駄目だ、この人はエスパーじゃないはずだけど嘘が通用しない気がする。

 

「そっ、そうです。自分で調べました」

 

「ポケモンのOPの波動を正確に感知するテレパス、非常に高度な技術です。エスパー協会が定めるクラス4以上の超能力者にしか使用できません」

 

「えっ、あっ?」

 

 そ、そうだっけ?クラス2ぐらいから誰でも出来るんじゃないの?

 

「そして、現在ガラル地方に居るクラス4以上の超能力者は全部で14名。エスパー協会の確認ではそうなっています」

 

「あっ、あっ」

 

 そ、そういえば、そんな事を協会はやっていた様な……

 

「そしてその14人全てがマクロコスモスに席を置いてます。貴方はマクロコスモスの社員ですか?」

 

 マ、マクロコスモス?社員?僕が!?

 

「ちごっ、違いますっ」

 

「そうですか、では貴方はどうやってガラル地方に入国したのですか」

 

「はっ、ぷてらとほ、ほえっルオーでラプラスといかだっ」

 

「プテラ?」

 

「ホエルオー?」

 

「ラプラス?」

 

「あーイカダってまさか…」

 

「つまり貴方はエスパー協会の目をかいくぐって、このガラル地方にやって来たクラス4以上の超能力者。そういうことですね」

 

 あっ、あっ、違う……ちがくない……

 

「そしてその甲冑、イッシュ地方の意匠です。」

 

「こ、これっえぬっ、」

 

「ダイマックスの力を求め、イッシュ地方の甲冑を身に纏い、エスパー協会が把握していない高ランクの超能力者、さらに貴方はポケモンをボールに入れずに連れ歩いてる」

 

 あっ、あっ……

 

「イッシュで3年前に壊滅したはずのある組織、最近残党の動きが活発化しているそうです」

 

「はっ、はえっ!?」

 

「ポケモンの支配からの解放を掲げるプラズマ団、それが貴方の正体ではないですか?」

 

「はへぇっ!!?」

 

「待ってほしいぞ!!博士!!」

 

 ほ、ホップ、助け……

 

「サトシはカントー地方のマサラタウンから来たんだ!!プラズマ団なんかじゃないぞ!!」

 

 あっ……あぁ!?

 

「本人が自称しただけでしょう、証拠はありません」

 

 ふぇっ……

 

「証拠ならあるぞ!!」

 

 あるぇっ……あるの!!?

 

「サトシのポケモン達だ!!そいつらは最近発見された種族でカントーでしかその姿になれない!!」

 

 ぁぁっ……

 

「カントーだけの種族?彼らが?」

 

「そうだぞ!!」

 

「エレンはマルマインの進化形!!マルエレキだ!!」

 

「マルマインのOPの成長係数の値は、マルマインが最終進化形態であることを示しています。7年前にオーキド博士が論文を発表しています」

 

 ぁぁ…

 

「リ、リーザとイースはポニータから進化した、ブリザップとレイスップだ!!」

 

「分岐進化するポケモンは、分岐適応するタイプの遺伝子を保有しています。ポニータが保有しているのは、ほのお、みず、はがねフェアリーの4つだけです」

 

 ぁ…

 

「……ふわふわちゃんは!フワンテに進化するふわふわポケモンのフワワだぞ!」

 

「見たところ、その子はエスパータイプ、エスパーが進化してゴーストタイプに進化するに事は不可能であると言うのが進化学では通説です」

 

 ぁ

 

「っッ!レックス!レックスは!」

 

 ……ごめんホップ。

 

「そのポケモンは?」

 

「フシギダネが進化した時……ツボミから……」

 

 ……ごめん。

 

「ホップもうおやめなさい。私はあなたを傷つけたい訳ではありません」

 

 ホップは俯き、他の人間の視線が僕に集まる。傷つけてしまった、僕のくだらない嘘がホップを傷つけた。……何か、何か言わなくては。

 

「どうしたのですか?反論はないとでも?」

 

「あっ、ぼ、ぼくっ」

 

 言葉がを形にできない、鼻の奥がツンとしてくる。

 

「言い訳はしないと?未来を担う純粋な子供達を騙すのは楽しかったですか!?」

 

 マグノリア博士の怒気が、僕の怯えを加速させる。

 

「こべぇ……ごべんなさぃ……」

 

 感情と涙が溢れてくる、自分の意思で止められない。

 

「ッく!?そんな態度で!?」

 

「マグノリア博士よ、少し待ってはもらえないか?」

 

 レックスのテレパシーが、場に響き渡る。

 

「これは!?」

 

「えっ!えぇー!?」

 

「おー?」

 

「なに!?」

 

「貴方の理路整然とした疑念、そこから生まれる怒り、もっともである」

 

 レックス?

 

「だが、余の友は少々誤解されやすい質でな、その疑念は濡れ衣である」

 

 ありがとう……

 

「それにこやつは少し臆病なのだ、優しい奴でもある。余に弁明をさせてはくれぬか?」

 

 ありがとう、レックス。

 

「それは」

 

「だが、まずはその鎧を外すとしよう。潔白を証明するのに姿を隠したままではいかん」

 

 レックスのねんりきが僕の甲冑を優しく外し、僕の姿が顕となる。

 

「子供!?」

 

「あっ!昨日の子!」

 

「まっしろ?」

 

「えー!?まさか!?」

 

「そしてまずは名を明かすのだ、全ての偽りを捨てねば誠意は伝わらない」

 

 そうだね、レックス。

 

「みぃ、皆、ぼ、ぼくの名前は……サトシじゃ……ないです」

 

「まさか……あなたは!?」

 

「え!?そこから!?」

 

「おー!?まじか!?」

 

 僕は、僕の名前は。

 

「ゅっ、ユゥリ……」

 

「えっ?わたし!?」

 

 ち、ちがう、そうじゃない。

 

「ぼぉ、ぼくの!ぼくのなまえはユーリです!」

 

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