暗殺者のヒーローアカデミア   作:ジョジョラー

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第1話 入国、からの入試

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜! ようやく着いた……やっぱじっと座ってんのって退屈だよなー」

 

 空港で大きな欠伸をし、瞳に生理的な涙を浮かばせながら、伸びをする。

 人々は公共の場で1人大きな声を出す青年に視線を向け、そして次の瞬間にはその容姿の美しさに釘付けになった。美しい銀髪は惜しみなくキューティクルに覆われており、ツリ目気味のぱっちりとした目はまるでサファイヤのように光を反射してきらめいて、その目で見つめるだけで一体何人の女性が恋に落ちるのだろうか。10人中10人が美青年だと答えるであろう、生粋の美青年であった。

 

 ──彼の名前は、キルア=ゾルディック。

 母国であるパドギア共和国から何回かの乗り継ぎを経て、ようやく日本にたどり着くことができた、本日日本の最高峰、雄英高校ヒーロー科の入学試験を受ける受験生である。

 

(いやー、一時はどうなるかと思ったけど、マジでスマホって便利だよなー。こりゃ手放せないな)

 

 周りからは彼の美しい容姿に惹かれ主に女性からの視線が集まっているのだが、そんなことは少しも気に止めずに目的地までのルートを自身のスマホで検索しながら歩く。

 途中、最寄りのコンビニエンスストアでお気に入りのお菓子、チョコロボくんの箱をシャカシャカと振りながら、タクシーに乗り込んで目的地へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここか、まあまあデカイな」

 

 キルアはヒーローの頭文字であるHを型どった巨大な建物、試験会場の雄英高校を見上げて呟いた。

 周りにいた受験生はぎょっとした顔でキルアを見るが、それも仕方がないだろう。何せ、この規模の建物を「まあまあ」と評したのだから。

 キルアは自分の家がとんでもなく豪邸だということ、そしてほとんどの時間を家に引きこもって訓練に費やしていたことから、一般的な日本人の感覚とはズレているところがあった。

 隣で転びかけた緑のもじゃもじゃ頭の青年が宙を浮くのを横目に見ながら、キルアは入試の説明を受けるために建物の中に歩を進めた。

 

 

 

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!!』

 

 キルアは、一瞬何が起きているのか理解出来ずに固まった。

 試験の説明会がこれから行われるという場面で、まるでDJのようにレスポンスを求めるサングラスの男。キルアはこの男がプロヒーロー、プレゼントマイクであることを知らない。

 しかし知っていようがついていけないのは周りも同じようで、1人壇上で入試の説明を始めようという男以外は、誰一人として声を上げることは無い。どうやら、今回は世間からズレているのはキルアではなかったようだ。

 先程隣で見かけたモジャモジャ頭がブツブツ言っているのが少し気になりはしたが、配布された資料に目を通す。

 

(ふーん、仮装敵4種類……種類によってポイントが違うって訳か。ま、楽勝だね。思ったより大したことなさそうでガッカリだぜ)

 

『演習場には仮想敵を3()()・多数配置してあり、それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある!』

 

「……3種?」

「質問よろしいでしょうか!!」

 

 資料から目を離し、声の聞こえた方へと目を向ける。

 声を上げたのはメガネをかけたThe・優等生といった感じの男子だ。だが、勉強ばかりしていそうな見た目とは裏腹に、制服の下に鍛え上げた肉体が隠れていることをキルアはしっかりと見抜いていた。

 

「プリントには4()()の敵が記載されております! 誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態! 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

 

(長々と喋ってるけど、結局資料と説明が違うんだけど、どういうこと? ってことだろ? 頭固そーなヤツ)

 

 飛行機の疲れもあり、思わず欠伸をして体を伸ばした。

 

「──ついでにそこの縮れ毛の君!」

「!?」

「……ん?」

 

 真面目眼鏡が突然こちらを振り向いて大声を出すので、キルアも伸びをしたままの体制で固まる。

 どうやら、眼鏡は隣のモジャモジャ君のことを指さして言っているようだった。

 

「先程からボソボソと……気が散る!! 物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ! ──隣の君もだ! 欠伸なんかして、やる気がないなら出ていってもらおう!」

 

「すみません……」

「はーい」

 

 大勢の前で注意を受けて縮こまっている隣と違って、キルアは間の抜けた返事を返す。

 ──その態度で真面目くんを含めた何人かからは鋭い視線を向けられたが、全く気にする事はない。

 

『オーケーオーケー、受験番号7111くん、ナイスなお便りサンキューな! 4種目の敵は0P! そいつは言わばお邪魔虫! スーパーマリオブラザーズやったことあるか?』

 

 スーパーマリオは、ゲーム好きなキルアにとって馴染み深く日本を代表するものだ。当然知っており、もちろん好きなので自然と耳が傾く。

 

『あれのドッスンみたいなもんさ! 各会場に1体、所狭しと大暴れしているギミックよ!』

 

「なる程……避けて通るステージギミックか」

「まんまゲームみてぇな話だぜこりゃ」

「有難うございます! 失礼致しました!」

 

 大声で叫んで直角に礼をする眼鏡の後ろ姿を見ながら、笑みを深める。

 ここでそんなことを言ったらそれこそ追い出されるだろうが、キルアは別にヒーローになりたくてわざわざ日本まで来た訳では無い。ヒーローになりたいのなら、そのままパドギアの実家にいればなれるのだ。

「面白そうだから」という理由で試験を受けるキルアは、無駄だろうがそのギミックをぶっ壊すつもりである。壊したって、減点される訳では無いのだから。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 ラフな格好に着替えて試験会場に着いたキルアは、リラックスして首や手首を回していた。

 周りも準備体操をしたり、他の受験生に睨みをきかせていたりしているが、キルアほど余裕があるものは誰一人として居ない。みんな余計な力が入ったり他を気にしすぎていて、これでは最高のパフォーマンスはできないだろう。

 

『はい、スタートー』

 

 故に、この緩い戦闘開始の合図に反応できたのはキルアただ1人だけだった。

 合図と同時に凄まじい勢いで飛び出し、ロボットはキルアが視界に入った瞬間に、あるいは認識すらできないうちに壊されていく。

 

『標的ほそ…… 』

 

 仮想敵は、プログラムされた言葉を最後まで言うことすら出来ない。

 キルアは暗殺術である蛇活の応用で自身の腕の関節を自在に曲げ、ロボの首の関節部分に巻き付けてねじ切った。

 それも一瞬の出来事であり、普通の人間にはキルアが通り過ぎただけでロボの首が取れたように見えるだろう。

 敵を倒す為に個性を使わずとも次々に仮想敵をスクラップにしていき、周りがキルアに追いついた頃には、会場のロボットの約3分の1が既に壊されていた。

 敵に対して個性を使う必要すらなく、時折移動に使うのみである。

 

「つまんねーの」

 

 彼と同じ会場になった受験生は、運が悪かったと言う他ない。

 目の前でポイントをかっさらわれ、圧倒的な実力差を見せつけられた。最早今更ポイントを取ろうと足掻くものはおらず、呆けた表情でキルアの早業を見ることしかできなかった。

 しかし、運も実力のうちという言葉のとおり、それは他の受験生に幸運を引き寄せるだけの実力がなかったというだけの事。倍率300を超える弱肉強食の世界の中で、自らの不運を嘆いても仕方がないのだ。

 

(どんくらい稼いだっけ? ……まあ、この会場のロボほとんどを壊せば、間違いなく合格出来るんだから別にいっか)

 

 周りが諦め始めている上に、もう会場のロボがいなくなって既に合格確実のキルアは退屈だ。

 あとは、これから現れる()()()()を待つしかない。それがキルアの退屈を少しでも和らげてくれることを祈るばかりだ。

 

 

 

「────! キタキタ!」

 

 会場中に響き渡る、金属が激しく軋む音。

 説明会で言っていた、0P、倒すことになんのメリットもない4種目の敵が現れた。

 

「きゃあああ!!」

「に、逃げろ! 敵うわけない!!」

「お、おい! ぶつかってくんなよ!」

 

 受験生たちはパニックを起こし、我先にと0P敵から逃げていく。

 その姿は他人を救う、他のために自分を犠牲にするヒーローとは到底思えないもの。まだ15そこそこの彼らには難しい話ではあるが、ヒーローになりたい者に相応しい行動ではなかった。キルアによって合格が不可能になり、もうどうせ受からないのだからというやけくそな気持ちもあったのだろう。

 だがそんな中で1人、一切逃げず、むしろ待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべる者がいた。

 

「ようやく、オレの個性を使うに相応しいやつが出てきたって感じかな」

 

 そう、何を隠そう、先程までは個性を使わず、己の身体能力のみで会場のほとんどのロボットを破壊していたのだ。

 ちょうど周りの受験生が一人に残らず居なくなったところで、キルアの頭上に巨大ロボの足が迫ってきた。

 このままでは踏み潰されてしまうが、もちろん彼がそうなることはありえない。

 

「いくぜ……」

 

 キルアの体が、電流を帯びてバチバチと音を立てる。銀色の髪も逆だって、まるで彼の全身が、彼自体がカミナリになったかのようだった。

 踏みつける巨大ロボの足を、残光を残して回避し、次の瞬間には上空高く、ロボよりも高い位置にいた。

 

落雷(ナルカミ)!!」

 

 キルアの体からロボに向かって、凄まじい光と音を轟かせながらカミナリが落ちる。

 その光は背を向けて一目散に逃げていた他の受験生の足を止めさせ、呆けた表情でその場に足を縫いつける程であった。

 

「なんだ、結局こいつも大したことないじゃん」

 

 そう愚痴を零しながら歩いてくるキルアに、全員が自然と道を開ける。

 ──彼が去った後に残されたのは、現実を受け入れることの出来ない受験生たち。それから、プスプスと黒い煙をあげ、所々が溶けて動かなくなった巨大ギミックだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





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