lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

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三十二話

ゾンビの魔法を掻い潜りシルバーロングソードを滑り込ませ上半身と下半身を分離させる。

上下を分離され倒れても尚動くゾンビの頭部めがけシルバーロングソードを突き刺す騎士。

その身はプレートメイルという重量のある鎧に包まれ手足にはアイアン系のグローブにブーツ。

そして片手にタワーシールド、振り回すのは長剣であるシルバーロングソードという無骨な印象を受ける出で立ちとは違い兜の隙間から見える顔は美しく勇ましさが伺える。

その騎士はキャスタ。

戦場にあって目立つ顔立ちとその強さは周囲の士気を上げるのに役立っていた。

次から次へと沸くように襲いくるゾンビに苛立ちながらも重量物を纏っているとは思えぬ動きでゾンビに剣を突き立てていく。

キャスタが倒したゾンビをレミジオというウィザードが魔法で焼き灰にしていく。

 

「レミジオさん!魔法力は?」

 

ゾンビの大剣を盾で受け流しながら叫ぶように話すキャスタに

 

「残り三割程度ってところだ!このまま長引けばやばい!」

 

思った以上に消費している事実がわかり舌打ちをしたキャスタは大剣を持つゾンビを打ち倒した後、正面を見据えたまま一歩後退した。

そして隣で戦っているペアに声をかける。

 

「我等は魔法力回復の為村に戻る!あんたらは孤立しないよう一度下がってくれ!」

 

「俺達も回復に入ろうと思っていたところだ!合わせて下がろう!」

 

前衛であるナイト二人で隙を伺い同じタイミングで動き出す。

キャスタ、レミジオの二人は攻撃を捌きながらジリジリと少しずつ後退していく。

隣のペアも同じように下がっていく。

周囲で戦う者達に下がることを伝えながら後退しゾンビの攻撃が届かない場所までくると一気に村へ引き返した。

 

 

両ペアは雪のない軒下へ移動し民家の壁にもたれるように腰を下ろした。

ウィザードの二人は襲来したゾンビのことについて語り合っている。

前衛の二人は剣の手入れをするため砥石や布を取り出した。

 

「見事な剣捌きですね。感心しました。」

 

そう言ってツーハンドソードから汚れを取り除く隣で戦っていたナイト。

 

「たいしたことはありません。私くらいの腕の奴等はまだまだ大勢いますから」

 

同じくシルバーロングソードの手入れをするキャスタ。

 

「大剣使いの自分としてはあそこまでスマートな戦い方に憧れてしまいますよ」

 

お世辞ではない真剣な気持ちが読み取れたのかキャスタは「有り難う」と一言だけ伝え笑顔でもって答えた。

 

「貴殿もたいしたものじゃないですか 。荒削りだが力強く頼もしい限りでした」

 

「自分はまだまだです。でもそう言ってもらえると精進した甲斐があります」

 

恥ずかしそうにツーハンドソードを弄くる姿は先程まで戦闘していた姿が嘘のように見え、キャスタはまるで弟を見ている気分にさせられた。

そして魔法力の回復が終わり戻ろうと立ち上がった直後、象牙の搭頂上付近で激しい爆発が起こった。

 

「まさかデーモンが!?」

 

タラスの言葉が頭を過りレミジオが大声を張り上げる。

 

「デーモンだと?」

 

キャスタは他の三人と同じように爆発のあった塔の最上階を凝視する。

空は薄暗くなってきており詳細まではわからない。

ただ何か動いているのは確認できた。

 

「何が起こっているかわからないが我々はゾンビ達を処理するのが先決だ。今はギラン部隊に任せよう」

 

そう言うとシルバーロングソードを握り締め戦場へと進み出す。

キャスタの後を三人が追い最前線に戻っていった。

 

 

 

 

 

塔での爆発は村にいる者達全てが確認しておりナイルも例外ではなかった。

ゾンビ襲来直前に見た人影を思い出し不安に駆られる。

すぐにでも駆け付けたい衝動に駆られるがゾンビをどうにかしないと話は進まない。

魔力は回復しており戦場へ戻ろうとフィオナを伺うと既に戦闘体制を整えていた。

 

「行きましょうナイルさん。まずは目の前のことから処理しないとね」

 

この娘の機転の良さには驚かされることが多々ある。

しかしこんなに頼もしいと思ったことは今までなかっただろう。

恐らく自分は余程変な顔をしていたのだろう、フィオナはキョトンとした表情を浮かべ目の前で手を振っている。

 

「ナイルさーん、行きますよー。返事してくれないとイタズラしちゃいますよー」

 

思わず笑ってしまいフィオナも釣られて笑い出す。

 

「わ、悪い。行こうか」

 

「りょーかい!」

 

元気よく返事をするフィオの頭を撫で南門に向けて歩き出す。

 

「うわぁ!ナイルさんやればできるじゃん!」

 

何をだ?

そう思うが口にせず背後にフィオナの気配を感じ振り向くことなく戦場へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

象牙の搭ではゾンビ相手に戦闘が開始されており最初はガルダミスが指揮を取っていたのだが負傷し、今は息子のノイマンの指揮で戦闘が続けられていた。

ガルダミスは文官出身であり戦闘は得意ではないが息子ノイマンはナイト訓練所出身ということもあり危なげなく剣を振るっている。

頭上ではアイスクイーンが正体不明の敵と戦っており先程の大爆発の被害も少なくない。

ノイマンは自分達が地上にいることでアイスクイーンの足枷になるのではないかと危惧し部隊を下げ塔内側の入り口で迎え撃つよう指示を出す。

この動きがアイスクイーンに伝わり笑みがこぼれる。

 

「的確な状況判断だ。有難い」

 

目の前にいる正体不明のウィザードはとてつもなく強い。

万全の状態ではない自分では地上を気にする余裕などないだろう。

 

「流石はアイスクイーン様。あの攻撃でも無事でいらっしゃるとは」

 

「デーモンを復活させて何をするつもりだ?」

 

アイスクイーンは右手に魔力を集中させいつでも戦えるように体制を整える。

 

「暇つぶし」

 

ウィザードはそう一言だけ伝えると瞬時にファイアーボールを唱える。

迫りくる火球を難なくコーンオブコールドの魔法で迎撃したアイスクイーンは情報を引き出そうと更に語りかける。

 

「暇つぶしか。私のいる地で好き勝手されては困るな。で、貴様は何者だ?その強さは人とは思えぬが」

 

「歴とした人ですよ。申し遅れました、私はケレニスという者です」

 

なるほど、反王の暇つぶしか。

 

「陛下の右腕の者だな。国を乱して暇つぶしとは聞いて呆れる。しかし私がいる限りここでは好き勝手させんぞ?」

 

アイスクイーンの物言いはハッタリでもなんでもない。

紛れもなく正論である。

アイスクイーンの魔力はデーモンを凌駕すると謂れ恐らくアデン全土でも最強の部類にあるだろう。

故にモンスターの類いがオーレン地方にはおらず、寒さを除けば一番過ごしやすい場所といえた。

 

「ええ、そうですね。アイスクイーン様が万全の状態なら手を出す真似はしませんし名乗ることもしませんでした。万全なら・・・」

 

口の端を吊り上げ不気味に微笑むケレニスにアイスクイーンは戦慄した。

ここまでの筋書きは全てこいつが仕組んだことなのか。

デーモンを復活させ私と戦わせようと。

もし封印されても何れかは魔力を提供し弱まるであろうという確信が。

タイミングよく現れたエルモア兵のゾンビもケレニスの策略に間違いはないだろう。

 

「そうか、ここまでは貴様の筋書通りか。しかし、あまり舐められては困る!ここで食い止めさせてもらう!」

 

一気に魔力を高めたアイスクイーンは先手必勝とばかりにアイスランスを連続で叩き込む。

ケレニスは瞬時に反応しファイアウォールで防ぎ同時にサンバーストを唱えた。

カウンターマジックでそれを跳ね返すとブリザードを唱え周囲半径20m程に極寒の空気が立ち込めケレニスを凍結させようと気温が一気に下がっていく。

コールライトニングの雷がアイスクイーンに襲いかかりブリザードの詠唱の中断を余儀無くされた。

 

「焦りすぎではありませんか?アイスクイーン様。」

 

「いや、ほんの小手調べだよ。覚悟はいいかい?」

 

こいつはやばいかもしれない。

しかし負ける訳にはいかない。

こいつがいる限りこの地に平和は訪れない。

私が愛したあの人を守るためにも。

 

「ふふふふ。アイスクイーン様にはあちらの世界へ帰ってもらいましょうか」

 

そして二人の魔力は象牙の搭最上階を背景にぶつかり合った。

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