lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

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三十三話

『準備が整いました』

 

そうナターシャへ会話石を通してハイネのリーダーであるダンガスより連絡が入った。

直ぐ様ナターシャは動ける者を集め村の中央広場まで駆けると声を張り上げた。

 

「部隊が到着します!広場を空けてください!」

 

各々が広場を走り回り場所を確保しダンガスへそれを伝える。

すると次々とテレポートしてくるハイネ、オーレンの部隊達。

その中心に現れたのは砂漠の王者バシリスクだ。

その体躯は緑色の鱗に覆われトカゲのような姿をしているが巨大で尾を合わせば馬車5台分に相当し、その姿は砂漠の王者と言われるのが納得できるものであった。

テイミングモンスターというモンスターを操ることができる魔法を使い、ウィザードの比率が高いオーレンとハイネの部隊は砂漠へ赴き捕らえてきたのである。

その魔法の成功率はウィザードの魔力とモンスターの強さによって変わってくる。

バシリスクを捕らえるのは並大抵の事ではないが数にものを言わせたのだろう、確率が1%しかなくても100人で唱えればその効果もでてくるというものだ。

そうやって捕らえたバシリスクは3匹おりオマケというのかスコーピオンも10匹程度連れている。

そしてダンガスとオーレンのリーダーであるマヌエラ率いるオーレン、ハイネの部隊が動き出した。

 

 

 

象牙の搭の地上戦はギランの部隊が有利に進めていた。

搭の内側に陣取るギラン部隊に対しゾンビは外側が主になる。

上空で戦うケレニスとアイスクイーンの魔法の余波は地上のゾンビ達にも影響を与えていたのだ。

時には冷気が襲いかかり、時には爆風で吹き飛ばされないにしても動きを制限されていたのだ。

 

 

「その人間としての身体では限界でしょう。そろそろ本気を出されてはどうですか?」

 

「冗談じゃない。今でも本気だよ」

 

余裕の笑みをもつケレニスとは対象的にアイスクイーンには疲労が見てとれた。

 

「そのままですと後で後悔しますよ?」

 

「ふん。制御できない力は自分の力ではないということさ」

 

だからこれが本気だ!とフリージングブリザードを唱え急激に気温を下げていく。

その冷気は通常のブリザードとは段違いに強く早い。

ケレニスはそれに反応しファイアーウォールを唱え自分を囲うように展開するがアイスクイーンのフリージングブリザードのほうが強力だったようでケレニスの法衣を徐々に凍結させていく。

舌打ちをしたケレニスは自らが作り出した炎の中へ飛び込み凍結を解除するとアイスクイーンの懐まで一気に加速した。

標的のケレニスがこちらに向かってくるのを感じアイスランスを連続して放つがケレニスは杖で弾いていく。

その間に氷で杖を作り出したアイスクイーンは突き出されたケレニスの杖を流す。

ケレニスにとっては想定内のことでそのままの勢いで体当たりをしバランスを崩したアイスクイーンに右手を当て至近距離でサンバーストを唱えた。

脇腹にサンバーストを受けたアイスクイーンは痛みに怯むことなく杖でケレニスの右腕を叩く。

 

「ヴァンパイアリックタッチ」

 

ケレニスから巨大な手が出現しアイスクイーンに向けて伸ばされ避けようと体を捻るが肩の部分が僅かだが触れてしまった。

途端に体力を奪われアイスクイーンは重力に引かれ落下していった。

体力を奪ったケレニスは叩き折られ本来曲がらない方向に曲がってしまった右腕を回復させ後を追うように高度を下げていった。

 

 

下でケレニスとアイスクイーンの戦いを見ていたタラスはアイスクイーンが落下するのを見て戦慄した。

絶対的な魔力を持つアイスクイーンが負けるなど考えたことすらないことだったのだ。

アイスクイーンが死んではいないとはいえ今敵にこちらを攻められると一瞬で落ちてしまうだろう。

それはノイマンも同じだったようで即座に門を閉ざすようタラスへ進言した。

 

「タラス殿!あれに攻められれば終わりです!籠城しましょう!」

 

タラスはアイスクイーンを助ける算段を考えていたがノイマンの言葉で現実に引き戻された。

空中にいる敵がくるまでにゾンビ達を押し返しアイスクイーンを助けるなど間に合うはずもない。

それができるならここまでの間にゾンビ達を駆逐できている。

 

「わかりました。門を閉ざして籠城しましょう」

 

ノイマンが部隊に門を閉ざすよう指示を出したとき部隊とゾンビの間にローブを纏った女性が降り立った。

それと同時にゾンビの進撃も止まっている。

邪悪な魔力を放つ女性に近くにいた戦士が斬りかかるが一瞬にして炎に包まれ息絶えた。

それを見た周りの戦士達は動けなくなっていた。

 

「何者だ!」

 

ノイマンは震えを堪えるように声をかける。

 

「ケレニス・・・」

 

タラスが驚いたように呟き一歩前に出た。

 

「ごきげんようタラス様。突然で申し訳ありませんが少しだけ痛い思いをしていただきます」

 

させるか!とノイマン達は斬りかかるが吹き飛ばされ意識を手放していく。

不敵に笑うケレニスに死を覚悟したタラスは何も言わず睨み付け会話石でアイスクイーンに語りかけた。

 

『今は逃げ機会を待て』

 

返答はなかったが確実に伝わったはずだ。

自分が死ねば次はアイスクイーンに襲いかかるだろう。

ノイマン達を相手にしていないのがわかるのだ。

少しでも時間を稼ぎアイスクイーンが逃げる時間を作る。

そのためだけに最後の悪足掻きと杖を構え魔法を繰り出す。

 

「コールライトニング!」

 

流石は校長ということはあってかアイスクイーンに及ばないもののその魔力は強力だ。

電撃がケレニスに直撃し右側面に回り込みながら更に魔法を繰り出す。

 

「ダークネス」

 

静かに呟いたときケレニスの立つ地面から黒い霧が昇り立つ。

この魔法がもし成功すれば相手は盲目になるはずだった。

そして間髪入れずにもうひとつ魔法を唱えた。

 

「カーズパラライズ」

 

相手を麻痺にする魔法だ。

ダークネス、カーズパラライズ共にケレニス相手では成功率は限りなく低いがゼロではない。

動かないケレニスにマナスタッフで殴り付けようと後方から迫ったとき、突然目の前が真っ暗になりそして全身に痺れが走りタラスは倒れこんだ。

 

「状態異常魔法はこうやって使うのです」

 

ケレニスがタラスと同じようにダークネスとカーズパラライズを唱えた結果だった。

コールライトニングを放ってから時間にして約5秒。

その僅かな時間を稼ぎ校長タラスは地に伏せた。

 

 

オーレン地方に降る雪は戦いの痕跡を消し新たに痕跡を作り吹雪となっていった。

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