lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

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三十四話

ハイネ、オーレンの部隊が去ったあとの広場にテレポートにより現れたエレナとアーニャ。

枯渇した魔力の回復をしたアーニャは顔色が戻りいつもの様子を取り戻していた。

 

「アレンはどっちかわかる?」

 

「わかるわけないでしょ。でもアレン君なら顔見知りのケント部隊の方に行くと思うけど?」

 

「たしかに。イスマイルに見られてたら強制連行されてそうだしね」

 

エレナは頷き西門へ移動しようとアーニャと目線を交わしたときだった。

 

「こっちにも人を!」

 

出入り口の無い負傷者がいる東からの声。

エレナ、アーニャは訝しながらも東へと走り出した。

 

 

 

西門、南門の攻防はバジリスクの参戦により圧倒的有利に進んでいた。

 

「たまげたね。バジリスクを引っ張り出すとは」

 

キャスタはバジリスクとは離れていたがその頼もしさは伝わってきていた。

 

「この短時間でたいしたもんだ!」

 

テイミングモンスターの難しさを知るレミジオ達ウィザードにとっては驚愕だったに違いない。

その分キャスタ以上に頼もしさを感じているだろう。

丸太のような太い尾で叩き飛ばし力強い足で踏み潰す。

ブレスを吐いて動きを封じれば強靭な顎で噛み付いていく。

バジリスクが動く度にゾンビが動かなくなる。

やつらにとっても脅威となったのかバジリスクを倒そうと向かっていくのを叩き斬っていくだけでいいのだ。

それまでの戦闘を思えばキャスタ達前衛にとって味気無いかもしれないが忠実に一体ずつ仕留めるのみである。

それまで戦士とペアを組んでいたウィザード達は数人同時にファイアーボールを唱え一気に焼き付くしていく方針に変わった。

それの効果は絶大なもので順調にゾンビの数を減らすことに成功し魔力に余裕も出てきたようだ。

 

「畳み掛けるぞ!」

 

イスマイルの号令に答えるようにキャスタはゾンビの群へ飛び込み愛剣であるシルバーロングソードを振るい次々と倒していく。

それに負けじと他の戦士達も飛び込みウィザード達は補助魔法を中心に各個撃破へと切り替えた。

それは南門でも同じである。

オーレン、ハイネの部隊到着で拮抗していた戦闘は終息に向かって加速していった。

 

 

 

 

東の野営病院の場所へ走るアーニャ達は村を囲う塀の一部が損壊しているのに気が付き小規模ながら戦闘しているのが確認できた。

前衛は一人しかおらず残りは治療に当たっていた初級のウィザードだろう。

唯一の前衛である剣士は敵の攻撃を捌くのがやっとといった様子でウィザード達は初級魔法で援護しているものの殆ど効果が感じられない。

塀の決壊部分が小さく大量に雪崩れ込んでこれないのが不幸中の幸いというところだろうか。

 

「アーニャ先に!」

 

エレナはそう伝えると立ち止まり弓を構える。

いつ狙いを定めたのかわからない速度で次から次へ放ち剣士が相手をしていたゾンビ二体へ吸い込まれるように矢が刺さり、動きが鈍ったところへ頭部へと命中する。

その二体が倒れると次のゾンビが侵入しようとするがアーニャが一体をファイアーアローで牽制し剣士が剣士がもう一体を切り伏せる。

 

「早く塞ぐ物を持ってきてください!」

 

後から来た二人のほうが自分より強いと判断したウィザード達は剣士の指示を理解すると塀を塞ぐため走り出した。

 

「ご協力感謝します」

 

剣士はゾンビと剣を交えながら二人に告げる。

そのとき初めて剣士の姿を意識した二人は一瞬だが言葉を失った。

剣士はまだ少女の面影を残すがとても美しく二人の目を奪ったのだ。

そう、剣士はナターシャ。

 

「い、いえ、お礼には及びません」

 

二人はナターシャの正体を知らないがその姿にアーニャはいつもの口調ではいられなかった。

先に我を取り戻したのはエレナでレイピアを抜きゾンビに斬りかかる。

 

「ぼうっとしないで対処なさいな」

 

それで正気を取り戻したアーニャは今後のことを思案する。

 

塞ぐにしてもこう次々とくるのでは・・

 

ファイアーウォールを使えば侵入を防げるが塞ぐ作業が出来ない。

それに魔力の消費が激しく長時間もたないのだ。

周囲を見渡すもゾンビの侵攻を防ぐものは思い付かない。

エレナとナターシャが仕留めたゾンビをファイアーアローで焼きながらいい方法はないかと探る。

 

「修繕用の物がありました!」

 

ウィザード達は荷台を引っ張りついでに村人だろう男手を連れてきたようだ。

横目で確認すると太い杭と分厚い板が確認できる。

 

「それを設置するのに要する時間は?」

 

15分。

それが返ってきた答えである。

 

魔力がもつかしら

 

しかしこうなったらやるしかない

腹を括ったアーニャは剣を交える二人に自分の考えを伝えタイミングを図る。

二人が同時にゾンビを切り伏せ横に飛び退いたそのとき

 

「アイスランス!」

 

通常は巨大な円錐形の氷を横に飛ばす魔法だが今回は塀の外側へ上から下へと地面に突き刺さるように放つ。

そして消えてしまう氷を魔力の注入により維持していく。

次第にアーニャの額には汗が浮かび呼吸も荒くなってきていた。

 

早く早く・・・・

 

魔力を放出し続ける身からすれば15分は永遠にも感じられる時間であり精神も磨り減らしていく。

 

集中集中・・・

 

「私のも使ってちょうだい」

 

アーニャの持つマナスタッフに触れたエレナから魔力が流れ込む。

 

「少ないですが私のも」

 

とナターシャもマナスタッフに触れアーニャへと魔力を与えていく。

魔力が供給されているとはいえ喪失感が無くなることはないが永遠とも思えた時間を忘れることができ、塀の修繕作業が終わるまでアイスランスを維持し続けることができた。

 

「二人ともありがとう」

 

振り返りお礼を述べナターシャと握手を交わす。

三人とも疲労が顔に浮かぶがナターシャが一番酷く立っているのがやっとといった状態だ。

エレナと二人でナターシャを支え村の広場へ足を向けるのだった。

 

 

 

 

 

倒れたタラスへ近寄っていくケレニスをギランの部隊が遮ろうとするが

 

「大人しくしていなさいな。フォグオブスリーピング」

 

ケレニスの周囲に霧が発生しその霧に触れた者は深い眠りに堕ちていく。

体が痺れて動かないタラスはその光景をただ見ていることしかできない。

そしてケレニスがタラスへ手を伸ばした時、象牙の塔と村の間で吹雪による竜巻が発生しケレニスの手が止まった。

 

「やれやれ、ようやくですか」

 

そう呟き振り返ると入り口に立っている人物に目を移す。

 

「お初に御目にかかりまして光栄です。氷の女王様」

 

恭しく挨拶をするケレニスに対し睨み付けているのはアイスクイーンだ。

しかしその姿は先程までとは違い全身氷となっており人とはかけ離れた存在となっていた。

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