lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

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三十六話

「フローズンクラウド!」

 

ケレニスの足元より氷が結晶化されるほど急激な冷却が行われる。

 

「ファイアーボール!」

 

足元に火の玉を投げつけ冷却を阻止するもその隙を見逃す相手ではない。

一瞬で距離を詰められ氷の杖が突き出される。

体を捻りながらフェニックスへ攻撃の指示を出すが既にアイスクイーンの姿は無くフェニックスの背後へ回っていた。

 

「アイスランス」

 

回避が間に合わずフェニックスはまともに翼へ氷柱を受け落下していく。

落下するフェニックスを仕留めるべく次々とアイスランスを放つが全てケレニスのファイアーウォールによって防がれ、その炎の壁を突き破りフェニックスが体当たりするようにアイスクイーンへ接近する。

フェニックスから業火が吐き出されアイスクイーンに迫る。

その炎は先程までの凝縮され威力を高めたものではなく広範囲にわたるものだ。

その威力を見切ったアイスクイーンは炎へ突っ込み全身を少し融解させながらフェニックスの開いた口へ氷の杖を突き刺す。

カウンターとなったその杖は喉の奥へと滑るように入り込み首の途中から杖の先を見せる程にまで突き刺さった。

流石のフェニックスもこれは堪えたようで声にならない悲鳴を上げアイスクイーンから距離をとろうと必死に後退するがそれを許してくれる相手ではなかった。

瞬時に次の氷の杖を作り出したアイスクイーンはケレニスの攻撃を受けながらフェニックスの頭部を突き刺そうと杖を繰り出すが、フェニックスが頭部を下げたため掠りもせず失敗に終わる。

フェニックスが頭を下げたのは偶然。

炎が吐けないため杖を吐き出そうと下げただけで狙ったものではない。

しかしその偶然が勝負に影響を大きく与えることとなる。

これまでフェニックスを倒すべくダメージを無視しケレニスの攻撃を遮ることなく受けてきていた体はフェニックスの予想外の動きに対応することができなかった。

 

 

 

 

 

「試してみたいことがあるのですが」

 

リーダーを集め作戦を練るナターシャへナイルが語りかける。

 

「恐らくあの飛翔しているように見えるのはホーリーウォークの魔法によるものと思われます。我らでは数センチ浮くだけのものですが魔力があれば可能なのかもしれません。それをキャンセレーションで消してしまうのはどうでしょうか」

 

成る程。

ホーリーウォークであるのならばキャンセレーションで消すことは可能だ。

しかしあの上空までどうすれば辿り着くことができるのか。

 

「あの上空までどうするのかという点ですがテレポートコントロールリングの効果を使えば可能だと思います」

 

マヌエラは納得とばかりに相槌を打つ。

 

「たしかに目視できる場所なら標がなくとも可能ね。私が持っているから数人連れて行ける。成功すれば完全に途切れたホーリーウォークを次に唱えるまで5秒、いけるわ」

 

ホーリーウォークは通常、数センチ体を浮かせ足場が砂利などで悪くとも全力で走ることができる魔法である。

雪道でも浮いているためスムーズに移動ができるので体力の低いウィザードには重宝される。

そういった魔法のためアイスクイーンやケレニスが飛翔しているのを見てホーリーウォークだとは誰も思わなかったであろう。

それに気付いたのはフィオナであった。

彼女の優れた魔力感知によりわかったことである。

過ぎ去った後に僅かに残った魔力を感じ取りホーリーウォークではないかとナイルに告げたのだ。

ナイルはそれを疑うことなくキャンセレーションによる打ち消しを思い浮かべ、マヌエラがバジリスクを伴って現れたことからテレポートコントロールリングを所有している確信のもと進言したのであった。

 

 

作戦が決まった。

まず部隊を戦闘の間下に展開させマヌエラが上級ウィザードを数名連れケレニスの背後にマステレポートする。

上級ウィザード達はテレポートする前にキャンセレーションの魔法を詠唱しておきいつでも発動できるようにしておくことが大切だ。

キャンセレーションを唱えたら直ぐ様テレポートで適当な場所に退避させる。

落下するであろうケレニスを追ってフェニックスも地上付近までくるであろう。

そこをエルフの弓で先制し地上まで落としあとは地上部隊で攻撃をする。

 

大雑把にはこんな感じだがタイミングを間違えれば空中で動けないウィザード達は全滅するであろう。

ナターシャはマヌエラを、ナイルを信じイスマイルへ部隊を展開させるよう指示を出した。

 

 

 

 

 

 

フェニックスへの攻撃が空振りに終わり大きな隙を見せたアイスクイーンに思いも掛けない攻撃が襲いかかる。

いつの間に召喚したのか炎の魔神イフリートが三体、地上付近から炎の槍をアイスクイーンへ向け放ったのだ。

地上に展開した部隊は身近に現れたイフリートに驚くもイスマイルの指揮によりイフリートへ攻撃を開始する。

アイスクイーンはその槍を体を捻って避けようとするもダメージが蓄積された体は思うように動かず一本の槍が腹部を貫いた。

ケレニスは止めとばかりにメテオストライクの詠唱へ集中するがその隙を見逃すマヌエラではない。

ケレニスの背後に現れたウィザード達はキャンセレーションを次々と唱えテレポートで退避していった。

思いもよらないキャンセレーションにケレニスにかかっていたホーリーウォークの魔法が解け落下していく。

メテオストライクの詠唱を中断しホーリーウォークの詠唱を始めるケレニス。

そのケレニスを守ろうとフェニックスが地上目掛けて飛翔してくるのを確認するとエルフ達より弓矢が放たれた。

その矢は真っ直ぐフェニックスへ吸い込まれるように突き刺さっていく。

地上の戦士、ウィザードはイフリートを押さえ込み奮闘しているためフェニックスの相手はエルフのみで行うことになりそうだ。

元々剣を得意とするエルフは弓から剣へ持ち替えフェニックスへと襲いかかった。

 

腹部を貫かれたアイスクイーンは少し残っていた理性が完全に飛び、残った魔力を命をかけ爆発させ地上で戦う人間もろとも葬り去ろうとフリージングブリザードを唱える準備にはいる。

 

『マリエンヌよ。独りでは寂しいだろう、俺も連れていってくれ』

 

アイスクイーンの脳裏にタラスからの言葉が浮かび動きが止まる。

 

マリエンヌ。

愛する彼のみ知っている私のほんとうの名前。

何年前だろう。

まだ人に近づこうと完全に力を封印していない時。

一人の青年に心を奪われた。

人と魔、その両方を持つ私を愛してくれた彼。

彼のために人の姿を保つよう力を封印した。

いつだったか魔界へ引き戻されそうになったあのときの言葉。

愛するタラス。

彼を守りたい。

愛するオーレンの民。

彼等を守りたい。

私は何をしようとした?

コロス

誰を?

この地に生きるもの全て

彼等は敵ではない

あの忌々しいウィザードをコロスためだ

ダメだ

コロス

ダメ!

・・・

・・

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