lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

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三十八話

何かに引っ張られる!

このままでは・・・・

 

暴走しようとする魔族の血と戦いながらアイスクイーンは自我が何かに引っ張られるのを感じ最後の力を振り絞ってテレポートの魔法の詠唱に入る。

ギリギリで踏み止まっていたアイスクイーンであったが最後まで発動しなかったが多少影響を与えたケレニスの魔法により堕ちようとしていた。

もうすぐ自由にしてやるから少しだけ大人しくしろ

自分の中にある魔族の血へ語りかけクリスタルケイブ最奥、アイスクイーンの居城へとテレポートしていった。

 

 

 

アイスクイーンの居城では4人のメイドが忙しなく動き回っていた。

 

一人は視線も鋭くアイスクイーンに対しても強気で接する人間でいえば20台後半後あたりに見えるスラリとした美しい容姿をもつカーンティ。

アイスクイーンの無断外泊のときは鬼の形相で怒り狂ったという。

 

二人目は温和な雰囲気を醸し出し肉付きの良い世の男性が好みそうな体系の20台前半あたりに見える美しい容姿をもつマラティ。

タラスの初訪問時にはタラスの目線を引き付けアイスクイーンの嫉妬をくらったとか。

 

三人目は少しだけ少女の面影を残したちょっとどこか抜けたような感じの10代後半に見える可愛らしい容姿をもつアニラ。

象牙の村へ買い物に出かけては長時間戻って来ずカーンティの怒りをいつも買っている。

本人は村人に呼び止められ少しお喋りしていただけと言っているが実は自分から冒険者を捕まえて積極的に話してもらっているのだが。

 

四人目は10代前半の少女のような愛らしい姿を持ったヴィマラ。

その容姿からは想像も付かないほどの魔法の使い手で居城のあるクリスタルケイブの治安維持を行っている。

全員一流の冒険者並みの魔力を持つが4人の中で一番戦闘向きであるのは彼女であろう。

 

その4人が地上で行われている戦闘を心配しながら主人のため居城の掃除をしている。

 

「アニラ、早くしてちょうだい」

 

カーンティは苛立ちながら床の霜を除去しているアニラを急かす。

 

「まぁまぁ、カーンティ落ち着いて。アイスクイーン様が赴いておられるので大丈夫ですよ」

 

天井から伸びる氷柱を除去しながらマラティはカーンティを諌める。

 

「心配なのは分かるけど私に当たらないで欲しいわ」

 

「あんたは一言余計なんだって」

 

ヴィマラはアニラに注意をする。

 

「なんなら私が加勢に行ってこようか?」

 

カーンティに向かって発言するも恐らく全員に向けられた言葉だろう。

 

この地でここまで大規模な戦闘は過去にエルモア国との戦闘以来であり全員心配でたまらないのだ。

一番戦闘に特化しているヴィマラも落ち着いてはいるが加勢に行きたくて仕方ないのだ。

メイド長であるカーンティの許しさえあればすぐにでも参加してくるつもりだ。

しばらくカーンティは考え込んだが首を振り却下した。

 

「いえ、アイスクイーン様を信じましょう。アニラ、ごめんなさいね」

 

「私も心配だもの。苛つくのも仕方ないかもね」

 

突然の謝罪にびっくりしたアニラだがカーンティの気持ちもわかり謝罪を受け入れた。

 

「私達に出来ることはここを住み心地の良い場所に保つこと。そうでしょカーンティ」

 

マラティの言葉に頷いたカーンティと二人は心配事を忘れるかのように仕事に集中していった。

 

 

 

居城へ戻ったボロボロになったアイスクイーンにメイド達は驚きアイスクイーンの元へ駆け寄る。

 

「アイスクイーン様!」

 

いつも帰還するときは事前に魔法による連絡がありメイド達は迎え入れ準備をしている。

その連絡もできないくらい消耗しているのだろう様子は痛々しいばかりだ。

メイド達はアイスクイーンの様子を見て治療を開始しようとするがそれを手で払い除け指示を出す。

 

「ここを封印するんだ!私が出られないようにしろ!」

 

勢いよく叫んだが突然頭を押さえ苦悶を浮かべながら言葉を吐き出す。

 

「間も・なく私は消える・だろう。術が完成次第おまえ・達はこの・場から撤退・するんだ」

 

最初は慌てていたメイド達だがすぐに封印術を行うべく準備にはいる。

そのとき人の姿であった4人は瞬時に氷の彫刻のような姿に変化をしていた。

 

通常、こういう場合は双方向において出入りの出来ない術を使う。

だが今回はアイスクイーンが出られないようにすることが目的であって人間の来訪を妨げることがないよう敢えて一方通行の術を組み上げた。

象牙の搭のウィザード達がやったような魔族のみ通さない術式は魔族にはできないための一方通行な術式。

瞬時に何があったのかを悟り一言も発する事なく一方通行の術式をくみ上げていく様は流石というべきだろう。

主従関係、横の繋がりがしっかりと信頼によって結ばれているのがよくわかる。

その忠実なメイド達ではあったが命令の後半部分については実行しようとしていなかった。

結界の外側である居城になっている正方形に近い大広間の入り口に一人が立ち、残り3人も残りの壁に立つ。

丁度4人で部屋を囲う形になっていた。

そして中の3人各々が背後の壁に陣を描き、入り口のメイドは入り口を塞ぐ様に空中へ陣を展開する。

4人は魔力を高め合図もなく同時に魔力を開放した。

大広間全体が淡く光り輝き何も見えなくなるほどに光が充満した。

光が落ち着き封印式が完成し最後の仕上げへと入る直前、アイスクイーンは力を振り絞り周りを見渡した。

 

 

こっちの世界に来てからずっと、魔界に絶望しニンゲント暮らしてから数百年一緒に暮らしてきたメイド達

彼女たちには世話になったな

どうか人間界で自由に暮らし、幸せになって欲しい

そして人々を助けてやってほしい

 

 

涙というものを初めて流したアイスクイーンはそれに気付くこともなく術式の完成を待った。

 

 

タラス、何時かまた会おう

 

 

外側に残ったメイドはヴィマラであり人間との連絡係、残り3人はアイスクイーンのお世話役として一緒に封印されることを選択した。

一緒に封印されようとするメイドに気付いたがアイスクイーンにはそれを止める手段が残されておらず、唯呟く様に命令するのみであった。

 

「何をしている・・おまえたちも早く・・・」

 

メイドの決意は固くその声は届かない。

 

「馬鹿が・・・・」

 

人間達ならアイスクイーンを救ってくれると信じ、祈りを込めた4人のメイドは封印術を完成させた。

 

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