lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

39 / 46
三十九話

イフリートを斬り付けようと剣を振るう向こう側。

他のイフリートの上空に突然人が現れ落下していく。

一瞬意識をそちらに奪われるがイフリートの硬い皮膚に剣を叩きつける。

アレンがいくら叩いても駄目だったその皮膚を切り裂いた。

流石というべきキャスタの剣捌きはダメージを与えることに成功している。

それでも致命傷を与えるのは難しくイフリートの勢いが衰えることはないが。

 

「なんだあれは・・・」

 

ヒットアンドアウェイで攻撃していたキャスタは一歩下がり自分が見た者が本物なのかどうか考える。

見間違えでなければ村の攻防戦で一緒にいた青年だ。

距離はあるが彼だという自信はある。

どうやったのかはわからないが落下の衝撃で大ダメージを狙ってるのか

 

こりゃ負けてられないね

 

一人頷き目の前のイフリートに再度斬りかかって行った。

 

 

 

 

最初はイフリートへの攻撃へ参加していたが埒が明かない状況を変えようと、少し離れた場所から戦場全体を見渡していたナターシャも上空に出現した人物を見ていた。

最初は驚いたが次第に笑みが浮かべる。

そして満面の笑みを浮かべたナターシャは隣にいたナイルへ語りかける。

 

「アレンさんが打破してくれそうです」

 

その笑顔に目を奪われたナイルは言葉がなく「俺はロリコンじゃない!」と叫びだしそうになるのを必死に抑えていた。

 

 

 

 

フェニックスを相手にしていたハスランはアレンの姿を上空に確認すると剣から弓へと持ち替えイフリートへと照準を合わせる。

すると周囲のエルフもそれに気付きイフリートへ照準を変える。

前衛のエルフはフェニックスを引き付けるように激しく攻撃を展開していく。

それを瞬時に成し得る彼等は一流の集まりだ。

 

一瞬でいい

彼が交わる瞬間イフリートの動きを止めるため届いてくれ

 

弓を構え一瞬を逃さないよう集中していた。

 

 

 

 

アレンを見つけたアーニャとエレナはいきなり消えたアレンを上空に確認した。

何をしようとしているのか瞬時に判断した二人は別々に動いた。

アーニャはフィジカルエンチャントの魔法をアレンにかけ筋力と素早さをUPさせる。

相手の能力や身体的特徴を知る者がかけたほうが効果が大きいフィジカルエンチャントの魔法はアレンにかける場合、アーニャにとって他の誰よりも一番良く知り一番効果が大きいと信じている。

その後イフリートの意識を自分へと向けるよう奮闘するガンド達戦士の支援へと向かう。

エレナは遠く離れた場所からイフリートを狙うハスランを見つけ風の精霊魔法でハスランの弓に精霊の加護を纏わす。

 

ありがとう

 

ハスランが笑みを浮かべ呟いたように見え、笑顔を返すと自身も弓を構えタイミングを待った。

 

 

 

落下中にフィジカルエンチャントの魔法をかけられたアレンは大きく身体能力が向上するのを感じアーニャだとすぐにわかった。

力がわきあがるのを感じたアレンはイフリートの頭を狙うため集中する。

ガンドが斧を振るいイフリートの腕を斬りつける。

確実にダメージを与えてはいるもののその腕力、技術を持ってしても致命的なダメージを与えることは適わずイフリートは集って来た蝿を払うかのように炎の槍を振り回す。

歯を食いしばり直撃に備えるアレン。

ガンド達の奮闘虚しくその直撃の寸前、イフリートが上を向き目が合った。

 

バレた!

 

恐怖に全身が強張るのを感じるが今更どうすることもできずそのまま突貫するしかない。

イフリートが避けようと体を捻る素振りをしたときだ。

ハスランの放った矢がイフリートの側頭部に当り、次々とフェニックス側のエルフから矢が飛来する。

傷を付けることはなかったが一瞬だが動きを止めることに成功した。

そして別方向からエレナの放った矢が間を置かずイフリートの動きを牽制する。

ほんの一瞬。

瞬きする位の時間のこと。

偶然ではなくそのときを狙って待っていた二人だからこそ出来た行為だった。

その一瞬の時間はアレンにとっては大きな時間だった。

ツーハンドソードはイフリートの肩口に深く入り込みそのまま肩口から左腕を切り離す。

イフリートの苦悶の咆哮が聞こえアレンは着地と同時に間髪を入れずガラリと開いた左腹部をなぎ払うようにツーハンドソードを滑らす。

着地の衝撃で体中が痛むが関係ないとばかりに力一杯振り回す。

イフリートの腹部に当たったツーハンドソードが甲高い音を上げながら中腹から折れアレンはたたらを踏んだ。

そして次の瞬間自分の拳の4倍はありそうなイフリートの拳が迫り、腹部へとまともに食らったアレンは大きく吹き飛ばされた。

 

 

「アレン!」

 

アーニャは魔法を中断し駆け寄る。

アレンを庇うようにイフリートの前にガンドが立ち塞がった。

周囲の者達も駆け寄りガンドを中心に壁を作る。

痛みを感じるのか怒り狂ったイフリートがアレンに向け炎の槍を飛ばすがガンド等戦士によって防がれる。

アレンによって受けたダメージは大きかったのだろう先程までの難攻不落という印象ではなくなったイフリートは雄叫びを挙げると何の前触れも無く綺麗さっぱり消え去った。

それは他のイフリート、フェニックスも同様で戦場から戦闘音が消え戦士達の勝利の咆哮が響き渡っていた。

 

戦士達が勝利に酔いしれる中、アレンはアーニャに抱かれたまま意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

アレンが意識を取り戻したのは戦闘が終結し2日後のことだった。

 

「ここは・・・?」

 

ベッドに寝ており見慣れない風景に戸惑う。

体を起こすと腹部に激痛が走ったのを切欠に自分がイフリートから攻撃を受けたのを思い出した。

 

「と、いうことは本当に終わったのか」

 

自分が生きているということは撃退できたのだろう。

ここは病院かなにかだろうか。

痛む体に鞭を打ち起き上がると窓から外の風景を見た。

 

「ここは・・・?」

 

見たこともない風景であるが優雅な感じがする。

その風景に見入ってると誰かが部屋に入ってきたようだ。

 

「アレン!気が付いたのね!」

 

アーニャが駆け寄り体は大丈夫かと聞いてくる。

その前にここはどこかと尋ねるとハイネだと言う。

どうも象牙の塔の村は修繕工事に入っており住民達もハイネでの生活を余儀なくされているようだった。

しかもゾンビ達は完全には消えておらず平和だったオーレンの地を徘徊しているらしい。

ゾンビからの安全も完全には取れておらず住人が村へ戻れるのは時間がかかるだろう。

 

しつこく痛むところはないかと聞いてくるアーニャに腹部が痛むと言うとヒールをかけてくれた。

完全に痛みがなくなることはなかったがその気持ちが嬉しくアレンはお礼を言った。

 

「アーニャ、ありがとう。最後の魔法も感謝してる」

 

 

 

それからエレナ、ガンド、サミエルの3人がお見舞いに訪れアレンの意識回復を祝った。

そのとき戦闘のその後の話を聞いた。

何故だか敵モンスターは突然消え、その後すぐに意識を失ったらしい。

原因は不明だがアレンが致命傷を与えたのが原因ではないかと推測はしているみたい。

敵にとってオーレンは弱体化する場所であり、あれ以上の戦闘は困難だと判断した結果ではないだろうかということだ。

ケレニスが撤退したのも大きいのだろう。

戦闘に参加した者達のほとんどが無傷では済まず死者も出たとのこと。

生き残れたのは運がよかったのかもしれない。

自由に動けるようになるまで一週間ほどかかると医者に言われ入院生活になるようだ。

その間はアーニャが主に付き添いエレナは情報収集に努める。

サミエルはアレンの無事な顔を見た後元のパーティーへ復帰していき、ガンドは折れたツーハンドソードを手に取り「修繕可能か確認してやろう」とギランに戻っていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。