lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

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四十一話

ウィンダウッドとシルバーナイトタウンの間に広がる砂漠。

照りつける太陽の日差しを遮る物は殆どなく、行き交う人々の体力を容赦なく奪っていく。

獰猛なモンスターの棲息する砂漠中央に大きなオアシスがあるものの街道は無く、人々の多くはモンスターの弱めな南側を行き交っている。

それでも屈強な戦士達の護衛を外すことはできないが。

そんな砂漠のオアシスを目指し進む四人組がいた。

 

「アーニャ、方向間違ってないよね?」

 

「ええ。大丈夫よ」

 

フードの奥から笑顔で返すと地図上の現在地を指し示す。

アーニャはダンジョンのマッピング技術も高度であったが地上におけるものも同様にかなり高度な技術をもっていた。

コンパスを使うにあたって偏差を正確に把握しておりその精度は上級者相手にも負けることはないであろう。

(コンパスが示す北と実際の真北には場所によっても違うが若干の差がある。日本国においては沖縄で西側に約5度、北海道では約9~10度の差がある。これを偏差という)

そのアーニャが言うのだから疑う者はいない。

 

「お嬢ちゃんが言うのなら間違いはないだろうな。もうじきに着くだろう。わっはっはっ」

 

オーレン戦役後に新たにパーティーへ加入したガンドは巨大な戦斧を肩に担ぎながら笑い声をあげる。

エレナもそれに同意を示しアレンへ声をかけた。

 

「そうよ。焦っちゃダメよアレン君」

 

「別に疑っているわけじゃ・・・・」

 

恥ずかしいのか振り向くことなく呟くと皆を手振りで静止させる。

 

「きたね。先頭にスコーピオン、その後に大蟻二匹ほど。蟻二匹を最初引き付けるからスコーピオンをよろしく」

 

三人は頷くと各々の武器を構えアーニャは魔法の詠唱に入った。

アレンは光輝くグレートソードを構えると一気に駆け出しスコーピオンのハサミによる攻撃を潜り抜けると大蟻二匹へとグレートソードを叩きつける。

背中よりスコーピオンの尾が迫るもエレナの矢によって防がれ、アレンは焦ることなくそのまま大蟻へと攻撃を繰り出す。

アレンに集中している隙にガンドの斧が硬い殻に覆われたスコーピオンの体を意図も簡単に叩き割る。

その割れた殻の隙間へここぞとばかりにアーニャが魔法を炸裂させた。

 

「サンバースト!」

 

殻の外側は熱に強くとも生物である限り直接の熱のダメージから逃れることはできない。

更にエレナ、ガンドの攻撃が続きスコーピオンが苦悶の声をあげる。

 

「ちょっと貰うねー」

 

アーニャはマナスタッフでスコーピオンを叩き魔法力を吸収していく。

こうやって戦闘中に魔法力を吸収し回復することによって、不要な休憩を避け長旅がスムーズにいくようになっていた。

ガンドとエレナも止めを刺すことなくアーニャの回復が終わるまで攻撃を受け止め流している。

その様はオーレン戦役の頃からすればかなりの成長具合が窺え、この半年間の修練がいかに有用だったのかが見てとれるだろう。

難なくスコーピオンを倒した三人は大蟻へ向かうも既に一匹は倒され残った一匹も時間の問題だと思われた。

それでも少しはと三人も攻撃を仕掛け戦闘は終了した。

 

「おつかれさま。あんたはやっぱり大剣が似合ってるわね」

 

「そ、そうかな?」

 

アーニャの言葉にアレンは照れ笑いを浮かべ、数日前に出来上がったまだ輝きの色褪せないグレートソードを見つめていた。

 

 

 

────アレン退院翌日のハイネ宿屋

 

退院祝いをしようとアーニャ、エレナが部屋のテーブルにオードブルを並べアレンの向かい側に二人で並ぶ。

 

「退院おめでとう!」

 

アーニャの掛け声で小さな宴席が始まりアレンは終始嬉しそうな照れたような笑みを浮かべていた。

昼間からアルコールを摂りアーニャの頬がほんのり赤く染まった頃、一人の男が部屋を訪れた。

 

「楽しそうな所を悪かった。明日にでも出直してくるわい」

 

そう言って出ていこうとするガンドを引き留め参加させる形で席に着かすアレン。

 

「悪いな坊主。早速なんだが・・・」

 

折れたツーハンドソードをアレンに手渡し残念そうに話だした。

 

「そいつは普通のツーハンドソードじゃないそうだ。誰か腕利きの職人の手が入っていて修復は可能だが通常のモノに戻ってしまうから買ったほうがいいようだぞ。わかるなら手を入れた職人に頼んだほうがいいと言われたわい。職人に覚えはないか?」

 

ノール。

 

あの時、手に持った感動は忘れようがない。

自分の手足のような感覚を初めて感じたのだ。

 

「ノールとはまた変わった知り合いじゃないか。そっちに相談してみてはどうかな?」

 

「わかりました。ありがとうございました」

 

アレンはツーハンドソードに布を巻き付けるとガンドも一緒にどうかと誘い四人での宴席が再開された。

 

 

宴も酣となりアレンとアーニャをほんのり顔を紅くしたエレナがからかって二人が俯き一瞬だが場が鎮まったときだった。

 

「はっはっはっ!こんなに笑ったのは久々じゃわい!アレン、儂をパーティーに入れてはくれんか」

 

ガンドの突然の申し出に呆然とする三人。

恐らくガンドの強さは上級冒険者の中でも上位にあたる。

そんな人が未熟なパーティーへ加入したいと頼んできたのだ。

思いもよらない申し出に言葉が出ないのも仕方ないだろう。

しかし誰かが話し出さないといけない。

 

「それは願ってもない話ですが俺たちのような未熟で小さなパーティーにどうして?ガンドさんならもっと古い大きなパーティーでも受け入れてくれるのではないですか?」

 

我に戻ったアレンの言葉は尤もなものだ。

エレナ、アーニャも同じ気持ちでガンドを見詰める。

 

「何、おまえ達が気に入ったのだ。それに・・・坊主、おまえ達はまだまだ鍛えれば強くなる。儂にその手伝いをさせてはもらえんか。」

 

穏やかに話すガンドにアレンは立ち上がり

 

よろしくお願いします!

 

と頭を下げ

 

アーニャは

 

「よろしくねガンドさん」

 

と握手を求め

 

エレナは

 

「お手柔らかにね」

 

と杯を交わすのだった。

 

 

 

ガンドが加入した翌日、アレンはガンドと共にシルバーナイトタウンへやってきていた。

女性陣はギランの拠点に戻り、お留守番と称したガールズトークに花を咲かせている。

忘れずにガンドのエンブレム作製をしてくれるのか不安が残るアレンだった。

 

シルバーナイトタウンの北東部、森の中にあるノールの小さなコミュニティ。

久し振りの来訪を歓迎されたアレンはガンドを紹介し早速ツーハンドソードの修復を依頼した。

 

「ふむ。修復は可能だが少々時間がかかるな。」

 

折れたツーハンドソードを手に取るノール。

 

「まだ老朽化には早いが何を斬ろうとしたらこうなる」

 

「炎の魔神です。腕を切り落としたのですがこの有り様です」

 

「ほう・・・」っと目を細めツーハンドソードを眺めていた目をアレンに移すと

 

「これで魔神を斬ったか。そうか・・・」

 

一瞬の間が空き次の言葉を待った。

 

「よし。こいつを元にグレートソードを作ってやろう。柄をそのまま使うから違和感はないじゃろう。時間がかかるがかまわんか?」

 

「是非!ありがとうございます!」

 

修復を半分諦めていたところに修復どころか生まれ変わらせて貰えるという申し出にアレンはハイテンションになり何度もお礼を述べ、お金を差し出した。

 

「これで足りるでしょうか?」

 

ノールは金額を確認することなく受け取ると「十分だ」と一言伝えガンドに向けても提案した。

 

「おまえさんの斧も鍛えてやろう。何、そんなに時間はかからんわい。後日暇なときにきてくれればええ。それまでそこの壁に掛けてある得物のどれでも好きなもの持っていくがいい」

 

その申し出を受けたガンドはシルバーアックスを、アレンは片手剣のグラディウスを手に取った。

そのどちらも磨かれ鍛え上げられているのがよくわかる。

そしてアレンはグラディウスを選ぶとき気になったモノを手に持ち鞘から刀身を抜き出した。

 

「片刃?」

 

「そいつはカタナという異国のソードだ。町の武器屋でもレプリカは販売しているが見たことはないか?そいつは本物で余りの美しさに冒険者から買い取ったんだがな、気に入ったか?」

 

「吸い寄せられるようだ・・・」

 

「ワシにも見せてくれ」

 

ガンドに手渡すがアレンの視線はカタナに吸い寄せられたままだ。

 

「これは素晴らしい。確かにその辺の商店のものとは違う。扱いがかなり難しそうだが使いこなせばかなりのモノになるだろうな。まぁワシや坊主には無理だな」

 

ガンドはカタナをアレンに手渡すと言葉を続けた

 

「ワシも使ったことはないんだがな。坊主が持っているグラディウス等のよく見るあるソードは叩き斬るといった感じだろう?カタナは刀身が弧を描いておるのがわかると思うが、それは滑らせて斬るといったもんなんだ。テクニックが必要で扱いが難しいが『斬る』ということにかけては一番らしいぞ」

 

ガンドの言葉を聞きながらアレンはカタナを見詰めている。

 

「どうも製法も違うようでな。型に流し込んで作るのではなく幾重にも金属が折り重なっておるようなのじゃ。とてもしなやかで切れ味は抜群といった具合になっとる。商店で売っているのは型に流し込んで作っておるからそいつは別格じゃな」

 

続いてノールの説明を受けたアレンは目線をカタナからノールに移す。

 

「なるほど、俺には無理そうですが使いこなせそうな人物に心当りがあります。よければコレ、売ってもらえませんか?」

 

ノールは少し迷ったようだが承諾すると金額を提示した。

 

「買値が20万アデナだったがどうする?」

 

アレンにとってとても払える額ではないのは明白である。

それはガンドも理解しておりアレンの肩を叩くと皮袋をテーブルへ置く。

 

「これが20万アデナとは信じられん。40万はしたんじゃないか?この中に40万はないが30万程あるはずだ。それでも足りないが斧の手数料込みと思って受け取ってほしい」

 

ノールはガンドとしばらく目線を合わせ頷きあうと豪快な笑い声をあげ皮袋を手に取った。

 

その後アレンは二人に頭を下げ礼を言いコミュニティの挨拶回りへと向かう。

いく先々で熱烈な歓迎を受け夜はコミュニティあげての宴会となり、ガンドと二人ベロベロに酔っ払ってしまい翌日もギランへ戻れず二日酔いでダウンしてしまう。

その翌日ガンドは借りたシルバーアックスを使うことなく返し、鍛え上げられたグレートアックスを手に二人はギランへと戻っていった。

 

そしてグレートソードが出来上がるまでホワイトナイツのメンバーは各地で腕を磨くことになる。

 

 

半年後ハイネ滞在中にノールから連絡を受けたアレンはグレートソードを受け取り新たな情報を得てメンバーと合流した。

 

「砂漠の蟻の巣で新しい階層が発見されたみたい。どう?行ってみない?」

 

「あんたがリーダーなんだからあんたが決めなさいよ」

 

アーニャの一言で次の目的地は砂漠、蟻の巣へと決まり、準備すべくギランへとテレポートしていった。

 

 

 

 

グレートソードの作製に半年もかかったのはデザインを決めるのにノールのコミュニティが半分に割れ、なかなか決着しなかったからであるのを知ったアレンは苦笑いを浮かべただけだという。

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