lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

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四十三話

宴会の翌日、アレンは吐き気と頭痛に苛まれながらアーニャの説教を受けていた。

 

「子供じゃないんだから倒れるまで呑むんじゃないの!」

 

「ごめん。だけど勧められたら断れないじゃないか・・・」

 

「何?言い訳?酔った勢いで膝枕してもらって鼻の下伸ばしてたあんたが?」

 

アーニャの鋭い目に射抜かれ冷や汗を流しながら早く終わらないかなーなどと考えていた。

しかしアレンの望みも叶うことなく小一時間程続いた説教を終え、動くこともままならずテントの陰で休んでいる。

宴会の最中に紹介されたグルガンディの残りのメンバーを眺めながら頭痛に眉を潜める。

二人ともエルフであり男性のテオドロス、女性のイオニアと名乗った。

テオとイオって呼んでほしいと言っていたな。

弓を背負い腰に片手剣を提げているのをみるとエレナと同じような戦闘スタイルなのだろう。

エルフである二人は当然の如く美男美女でありオアシスを背景に佇む姿は絵になるなと思いつつ自然とイオニアの太股に視線がいく。

そう、昨夜あの太股に介抱されたのだ。

至極の時間であったのは言うまでもない。

自然と頬が緩むのを抑えアーニャの冷たい視線に耐えながら頭痛と戦うのだった。

 

 

その夜、人数が倍になった一行は前衛にアレンとウォレス、その後ろにテオドロスとイオニア、アーニャとサミエル、最後尾にエレナとガンドという布陣で進むことが決まった。

殆どがウォレスとガンドの話し合いで決まり他のメンバーはそれを聞いただけなのだが。

 

「いいか、アリ穴は後方からの襲撃が他と比べ多い。そこでガンドとエレナさんに最後尾を任せる。戦闘している最中もガンドは参加せず後方の見張りを行う。エレナさんは基本的に弓をもってもらうことになるが後方からの襲撃には剣で対応してくれ。挟まれた場合はアーニャさんがイオと交代しアーニャさんは前を、イオは後方に集中するように。テオはアーニャさんの支援を、イオはサミエルの支援だ」

 

全員が頷いたのを確認しウォレスはさらに続ける。

 

「これは過剰といっていい布陣でもある。だが四階からは未開の地だ。新種のモンスターがいる可能性もあるし即席のパーティーということもあって最初に慣れておこうということだ。なに、心配するな。これだけのメンバーが揃っているんだ。滅多なことは起こらないだろうよ」

 

ここでも全員を見渡し確認をとる。

 

「そして戦利品だが戦闘が終わり次第イオとテオの二人で採取する。その間他のメンバーは周囲に注意してくれ。恐らく大量に祝福されたテレポートスクロールが手に入るはずだ。それらはこの箱に入れ後で分配とする。何か質問は?」

 

全員が納得したのを確認すると終わりを告げ各々就寝となった。

そのときイオニアがアレンの寝床に潜り込む事件が起きたがアレンだけがアーニャに責められていた。

 

 

 

「イオニア、あの二人をからかってはダメよ。面白いけど後が面倒なんだから」

 

「ごめんなさい。お姉様」

 

というやり取りがあったとかなかったとか。

 

 

 

宴会のあった夜から二日後、ホワイトナイツとグルガンディの合同パーティーはアリ穴四階階段へと向かう。

 

「そっちに行ったぞ。エレナちゃん」

 

「ええ」

 

そう言うや否やエレナはスッとカタナを抜き放ち構える。

そのカタナは見る者の目を奪う妖しげな雰囲気を纏い鈍くとも美しい光を放っていた。

小アリというが中型犬ほどの大きさをもつアリがエレナの足元へ食らいつこうと迫ったその瞬間、カタナがスッと弧を描くようにしかし最も最短距離を動きその頭部を切り離した。

 

「文句のない使い手になったようじゃな」

 

ガンドは心底関心を示しエレナの持つカタナに目を吸い寄せられた。

テオドロスやサミエルに至ってはエレナの美しさを際立たせるカタナの妖しさにぼうっとしてしまう程だ。

 

「素晴らしい・・・」

 

ウォレスもその切れ味と洗練された美しさにポツリと漏らした。

 

 

 

道その後も程はモンスターとの戦闘が続いたものの順調に進み予定通りその日のうちに四階への階段へとたどり着くことができた。

 

「さて、金は払ってきた。そこの横にある広場へいこうか」

 

ウォレスは慣れた感じで部屋となった広場へと向かっていく。

モンスターの襲撃に備えなくていいのかと疑問に思いそれとなくガンドへ尋ねるアレン。

 

「あぁ、坊主は知らんか。階段の工事のために結界が張られておるんじゃ。常にウィザードが魔力を注いでおるから安全なんじゃよ。支払った料金にここの使用料も含まれておるしウィザードや大工の賃金もそこから賄われることになる」

 

アーニャやエレナも知らなかったらしく関心している。

 

「しかしじゃ、モンスターに追い掛けられて逃げ入った場合結界の効果はないから注意することじゃ」

 

要するにこの場所の気配を消す結界なのだろう。

たしかにガンドは階段に近寄らず周囲を警戒していたな。

あれはモンスターに覚られていないか確認していたのか。

そういえばオアシスもモンスターを連れ込んだらダメだと言われたのを思い出す。

まだまだ自分は冒険者として未熟だなと考えガンドの存在に更に頼もしさを覚えた。

それはアーニャ、エレナも同じ様に感じていた。

 

ちょっとした部屋は他に2つのパーティーが休んでおり挨拶を交わすと隅へ円陣を組むように腰を下ろした。

奥の壁に未完成のフロアマップが貼ってある。

それを眺め思った以上に調査が進んでいないことに気がついた。

 

「さっき聞いたが今のところ新種の発見はないそうじゃ。だがアリの数が格段に増えるらしい。調査が進んでいないのはそのためじゃろう。だが今日の様子からすると布陣は変わらずでいいと思うがどうじゃ?」

 

ガンドはウォレスに意見を促し、写し取ったフロア地図を中心に広げる。

 

「俺もそれでいいと思う。即席とは思えん戦いぶりだったからな。それで俺たちのパーティーはこの階段後ろの通路を探索することとなった。現在もう2つのパーティーが階段を降りて右側の通路を探索ているようだ。そしてそこのパーティーが右側を請け負っているらしい。」

 

たしかに右側と左側には書き込まれた通路がある。

逆に後ろ側は殆ど書き込まれていない。

成る程ここは単なる休憩所だけではなく請け負う場所を決めたり情報交換の場所でもあるのか。

たしかに同じ場所を探索するより効率がいい。

過去の冒険者達が造り上げたシステムに尊敬を覚える。

 

「そして新種を発見した場合だが・・・」

 

そこでガンドに目線を移すウォレス。

 

「そこからはワシが説明しよう。まずウォレスが新種かどうかを判断する。悪いが坊主では判断がつかんじゃろう。乱戦の場合は身を守る事が先決じゃが余裕があれば五体満足に近い状態で倒してくれ。どの部位が金になるかわからんからな。その後の判断はワシがしよう。こうみえて鑑定には自信があるんじゃ。そして弱点を探るために一旦距離をとることもある。その場合はウォレスの指示があるからそれに従ってくれればええ。」

 

「新種がいれば一気に金持ちだぞ。まだ流通していない物を売るんだから希少価値でかなりの値になるだろう。これが新エリアを探索する目的だ」

 

そう言ってウォレスは一つのアミュレットを皆に見せた。

 

「これはまだ存在を知られる前の駆け出しの頃にオークから奪ったものだ。100万アデナで買うと言われた品だよ。記念として売らなかったけどな」

 

今でも希少価値の高いもので買うとすれば20万はするものだ。

それが初期は5倍の値がついたというのだから驚きだ。

今回新種が発見できればアーニャやエレナの装備品を新調できるかもしれない。

否応なしに高まる期待を胸に抱き床についた。

 

そして明くる朝、アレンの寝床に潜り込んでいたイオニアの事件で一悶着した後メンバーは四階へ向け出発していくのだった。

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