lineage もうひとつの物語   作:りねゆざ

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四十六話

「坊主、姿が見えたら合図をだす。ブレイブポーションを飲み一気にいくぞ!サミエルは冒険者の救助と手当てを、テオはサポートじゃ!」

 

走りながら三人から質問がないのを確認する。

 

「撤退の合図は見逃すな!何時出すかわからんぞ!」

 

前を見据え走り続けるアレンは頷きブレイブポーションを取り出す。

 

声のする方向へ進み、右折したとき此方へ向かってくる三人の人影が見えた。

一人が後方を牽制し、一人は怪我をしているのだろうもう一人の肩を借りてゆっくりと此方へ向かって来ているのがわかる。

その前方にはアリの列が見えるが先程のように大アリであるソルジャーだけではなく小アリも混ざっているのが見える。

数は多いが戦力的に見れば先程の攻防よりかは幾分マシであろうと瞬時に判断を下す。

 

「間に合ったようだ。坊主いくぞ!」

 

一段階加速したアレンとガンドの二人はテオ、サミエルの二人を置き去りに、更には驚きと嬉しさを浮かべた怪我人に肩を貸す戦士を抜き去り、剣を振るい懸命に仲間を逃がそうとしている戦士に迫っている大アリを斬り伏せた。

 

「坊主!しばし踏ん張れ!治療が終わり次第引き上げるぞ!」

 

返事とばかりにアリの頭を切り飛ばすアレン。

それを垣間見たガンドは気負いの無い様子に安堵し目の前に集中する。

 

「ありがとうございます!もう駄目だと思いました」

 

隣に並ぶ形になった戦士も勿論無傷とはいかずチェーンメイルが所々千切れ、振るっていた剣は刃こぼれし、仲間を護り何度もその身を護ったであろうラージシールドは原型を留めておらず、その表情は限界を示し血に濡れている。

 

「おぬしは一時下がって回復をするんじゃ!テオ!ヒールをかけてやれ!」

 

ガンドの指示通りグレーターヒールをかけたテオドロスは弓矢で牽制しつつ前方のアリ達の様子を監察する。

 

「もう少しでちょっと途切れます!そこで撤退しましょう!」

 

目の前のアリに集中していたガンド、アレンの二人はその言葉を聞き己を奮い起たせ殲滅速度を上げていく。

 

グレートソードをアリの眉間から体に向かって突き刺しそのまま横に振り回す。

その振り回した遠心力で弾き飛ばしたアリを横から向かってきたアリにぶつけそのまま体を一回転させ前方のアリもろとも横殴りに叩き切る。

即死させることのできなかったアリが前足で攻撃してくるが左腕のアイアングローブで受け顔面を蹴り飛ばす。

 

"あの乱戦でちゃんと成長しておるわい"

 

危なげなく戦うその姿に一瞬笑みを浮かべたガンドは次の指示を出した。

 

「テオ!サミエルの治療が終わり次第撤退をサポート!こちらは隙をみて引くことにする!坊主踏ん張れよ!」

 

「「了解!」」

 

テオとアレンの返事が重なり全員の士気が上がるのを感じる。

 

"無事にいけそうじゃわい"

 

重量のあるグレートアックスを軽々と振り回しながらガンドはアリを足止め、倒していく。

 

それから数分経ったところでテオから撤退の合図がはいる。

背後の仲間達の気配が遠ざかりアリ達の切れ目が近付いたところでアレンとガンドは目線で合図を送り会うと最後の一匹を叩き伏せアリの死骸に背を向けると一気に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何もこないとは思うがエレナさんはあいつらが向かった通路を。俺とイオで反対側を見張ろう。アーニャちゃんは真ん中でどちらにでも対処できるようにしててくれ」

 

そうしてウォレス達は各々の役割を果たすべく配置についた。

 

「大丈夫かな」

 

アレンの消えた通路を見ながらアーニャは呟く。

 

「ガンドさんがいるから無茶しないでしょうし大丈夫でしょ。」

 

エレナは通路の先を見据えたままアーニャを安心させるように呟きに応えた。

 

「アレン君もここにきて成長している。先程のような大群はわからんが多少ならばなんとでもなるさ。それに頼りになる仲間もいるんだ。アレン君以外は眼中にないかもしれんがもう少し見てやってくれないかな。」

 

アーニャ達の会話が聞こえたのであろうウォレスが振り向くことなくアーニャを茶化す。

 

「誰もアレンって言ってないじゃん」

 

焦ったように言うアーニャは顔を俯かせて恥ずかしそうに振舞う。

場所が場所なだけに大声を上げて笑う訳にもいかず他の3人は押し殺したように喉の奥で笑い声をあげる。

 

「くっくっく。ま、まぁ冗談はそのくらいにて集中し――――」

 

「隊長、何か来ると精霊が言っています」

 

イオニアが何かを察知しそう告げる。

イオニアは土の精霊使いである。

精霊の中でも土の精霊はダンジョンように土に囲まれた場所で活発に活動し契約者に語りかけてくる。

そのほとんどは遊びの誘い等の他愛もない話であるが今回は危険を知らせてきた。

先程の囲まれた場合でも危険を知らせてくることのなかった精霊が知らせてきたのである。

そして”何か”という表現を使ったということは今まで出会ったアリ以外の何かということだ。

 

「精霊が騒いでいます。我々もあちらに向かったほうがいいかと」

 

ウォレスは逡巡するも即座に判断を下す。

 

「よし、すぐに移動を開始する。エレナ、アーニャ、イオ、俺の順に進むぞ。イオはすぐにテオと連絡を取り状況を確認するんだ。そして帰還を促せ」

 

「了解」

 

歩きながらテオに会話石で言葉を送るイオニア。

 

『テオ、そちらの状況を教えて』

 

眉間に皺を寄せ懸命に語りかけるイオニア。

 

返答が無い。

 

『テオ、こちらに向かっているならイエスだけでも』

 

『テオ―――』

 

数秒待ったが返答は無く焦りが生まれる。

 

「どうして!」

 

つい口に出てしまった言葉。

 

「どうした?何かあったのか」

 

ウォレスも焦り問いかける。

 

「返答がありません。それほどの事態なのかテオが・・・」

 

「くそっ。前衛にはやりたくなかったがアーニャちゃん、ガンドへ頼む。俺はサミエルへ問いかけよう」

 

二人で問いかけるが返答がないのは同じなようである。

 

「サミエルも駄目か。残りはアレン君だが・・・」

 

「帰還しましょう」

 

エレナの提案に驚く3人。

 

「あちらに何かあったにせよ助けを求める動きがあったわけではありません。一度帰還し、アリ穴入り口の安全を確保しあちらの帰還を待つほうがいいかと」

 

「駄目よ!何かあったのなら助けに行かないと!せめて返事がきてからでも!」

 

アーニャは必死に反対する。

 

「落ち着いて。デスナイトが出現したメインランドケイブの話を思い出してちょうだい。帰還できなかったって言ってたでしょ。今回は会話石の邪魔が入ってるのかもしれない」

 

”それに今回も帰還できない可能性もある・・・”

 

それを口にすることはせず側道から出てきた小アリにカタナを突き刺しながら続ける。

 

「ここに帰還スクロールを貼り付けておけばわかるでしょう。」

 

それでもアーニャは納得しているようにはみえない。

 

「皆を信じましょう」

 

ウォレス、イオは頷き、アーニャは渋々それに従うことにした。

 

「それなら急ぎましょう。精霊がさっきより騒がしいの」

 

イオの言葉にウォレスがカウントダウンを開始し全員で帰還スクロールの詠唱を始める。

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

「帰還できない!」

 

最初に声に出したのはアーニャである。

 

帰還スクロールの魔力が開放されないのが感じられたのだ。

 

「邪魔されてる・・・」

 

「ちっ」

 

エレナは最悪の考えが当たってしまった事に思わず舌打ちしてしまう。

 

「前に進むか後方を迎え撃つか・・・」

 

ウォレスは振り返り後方から迫る脅威に目を向ける。

 

「ここで迎え撃とう。あちらの状況がわからない以上合流したとして挟み撃ちは避けねばならん」

 

幸いにも大き目の広場であり、遮蔽物である大きめの岩も数がある。

 

エレナ、イオは岩の陰から弓を構え、アーニャは岩に完全に隠れ魔法の詠唱に入りウォレスは正面から迎え撃つ体制をとった。

 

ライトの魔法で照らされた通路の先に影ができる。

 

「きたぞ」

 

ウォレスは剣を持つ手に力を入れ予備の盾を構える。

 

「でかい・・・・」

 

それは通路を一杯まで塞ぎ、見るものを圧倒する威圧を放ち、立ち尽くすウォレスに近づいていった。

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