玲ちゃんにいつものように抱きつこうとして躊躇し、彼女の肩を叩く。
「おはよ、玲ちゃん」
「あ、お、おはようございますっ楽羽さんっっ」
バグってる様も可愛いな、と思い始めたのは、ちょっと重症かもしれない。いやでも、この友人は可愛いのだ。後ろから抱きついて驚かせた時の反応の大きさなんか、からかいがいがあって非常に楽しいし、それだけじゃなく、高嶺の花と呼ばれる美貌を兼ね備え、普段は完璧超人という言葉が似合うにも関わらず謙虚であり、そして裏では廃人プレイヤーというげに恐ろしき存在である。シャンフロなんていう特大コンテンツでオンリーワンをはっているし、私も頼りにしているゲームフレンドだ。
前は、もっと気軽に抱きつけた気がする。なぜか最近、抱きつく事へのハードルが上がってしまった。今は冬で、玲ちゃんはいつも体温が高めだから、きっと抱きついたら暖かいんだろうなぁ、と思うけど、さっきみたいになぜか躊躇してしまう。
「? 楽羽さん? どうかしましたか?」
「うん……」
あー、やっぱり玲ちゃん可愛いなぁ。
なんで私こんなこと悩んでるんだろ。抱きつきたいと思ってるなら抱きつけばいいじゃん。
「あのさ、抱きついてもいい?」
「へ、へぁ?! ど、どうぞ!」
「じゃあ失礼して」
両手をバッと勢いよく広げた彼女をそっと抱きしめる。
あー、やっぱり暖かいなぁ。
自分よりも少しだけ低い彼女から、彼女特有の花みたいな匂いがする。前からずっと思ってたけど、いつ抱きついても玲ちゃんはなぜかいい匂いがする。
ふわふわとした髪が頬に当たり、少しくすぐったい。瑠美に言われるままにしか手入れをしない私と違って、きっと玲ちゃんは色んな事を気にしてるんだろうなー。
「えと、あのっなんっ」
「ん?」
「な、なんでも、ないです……」
またバグった? 玲ちゃん、不定期でバグるのちょっと面白いよね。
あと、なんだかとっても柔らかい。自分が骨っぽいから余計そう感じるのかもしれない。前銭湯に行った時に見たので、ここにとんでもないものを隠し持ってることを私は知ってる。
「なんか、あつい、ね」
「そ、そうですねっ、あつい、です」
体温が共有されているからか、この寒さにも関わらず、のぼせたような感覚さえする。
道の真ん中でなにやってるんだろ。咄嗟に我に返り、パッと手を離す。
「ごめん、行こうか玲ちゃん」
「は、はいっ」
もう抱きついてないから熱は共有されてないはずなのに、不思議と頬の赤みが取れないまま、学校へと歩き出した。
楽羽ちゃん無自覚に玲さんの事を意識し始めて、照れて欲しいの話。楽羽ちゃんは感情が芽生えるとスキンシップに照れるようになると思ってます。にいくらげさんのTwitterにある羽玲イラストを見てください。最高。