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「斉賀さん。それで、海外留学の件についてだが。やはり君のような頭の出来が非常に良い人は海外で医学を学ぶべきだと」
「ですからそちらの方面には興味がありませんので……」
共に帰る為、楽羽を待っていたら石動に捕まってしまった。
玲の進路希望は楽羽と同じ大学一択であり、他には興味が一欠片もないにも関わらず、この石動はなぜか海外の医学系統を進路先に勧めてくる。受験の為か生徒会に誘ってくるのが無くなったものの、進路についての密度が高くなってきた。熱意があるのはわかるのだが、少々煩わしく思ってしまう。
楽羽と『恋人』という関係となり、玲は毎日が夢のようだった。中学のあの雨の日からずっと目で追いかけ続け、少しずつ少しずつフラグを積み重ね、そして今、彼女の隣で並んで歩いていける権利を得た。
本当に現実なのか、と一時間ごとに疑うものの、どうしたってここは現実であり、楽羽と玲が付き合っている事実は変わらない。
「私の彼女に絡むの止めてくれる?」
「え?」
「ら、楽羽さっ」
(か、か、楽羽さんの、か、彼女っ)
スッと間に入ってきた楽羽がそう言い放つ。彼女、そう彼女。玲は楽羽の彼女である。現実だ。驚いた事に現実である。
「冗談言わないで下さいよ。斉賀さんが、貴女の彼女? だって貴女、じょ、女性じゃないですか」
「女の子同士でも付き合うことはあるでしょ」
するりと玲と指を絡め、恋人繋ぎにした手を楽羽が石動に見せつけるように掲げた。表情が固まった石動が、それを見て溢す。
「ほんとう、なのか……?」
「嘘つく必要がどこにあんの?」
「か、かのじょ、ですっ」
楽羽がせせら笑い、玲から手を離して石動に近づき、何かを言ったものの、玲はその言葉が聞こえなかった。石動がピシリと固まっている。
「今度から玲ちゃんに無駄な話に付き合わせないでね」
玲の隣に戻ってきた楽羽が、また玲の手を取る。
「行こ、玲ちゃん」
「ひゅっ、は、はい。すみません失礼しますね」
石動から「あぁ」と返ってきたので礼をして、そのまま楽羽についていった。
◆
玲ちゃんは、モテる。それは純然たる事実だ。
高嶺の花と呼ばれる私の彼女は、非常におモテでいらっしゃる。
生徒会長だったとかいうこいつも、玲ちゃんに惹かれている一人だ。玲ちゃんから話を聞く限り、彼女は気づいてないようだけど。そういう鈍感な所もあるから、私が守らなきゃな、と思ってしまうのだ。
『斉賀さんが』『斉賀さんは』と言いながら、自分と同じ進路にして欲しいなんていう欲望を押し付けんの止めて欲しいんだよね。
玲ちゃんに聞こえないように、彼女だ、と言ってもまだ疑わしげに、信じたくないとでもいうようにしているそいつ近づいて、小声で言い放つ。
「百合の間に挟まろうとする男は殺されるよ?」
「は?」
「何言ってるのかわかんない? お前に入る隙間はねぇっつってんだよボケ」
視界にすら入れなかったやつが何しようとも負け犬の遠吠えにしかならないよ? という意志が伝わったのか、愕然としているそいつの前でまた玲ちゃんの手を取り、鼻で笑った。
手を引いて、さっきの生徒会長だかなんだかが見えなくなった所までくる。
「玲ちゃん、今度から呼び止められてもさっきのやつと話さなくていいからね」
「え?」
「たぶんもう話しかけてこないだろうけど」
不思議そうな顔をする玲ちゃんに笑いかけ、ぎゅっと抱きしめた。
n番煎じ石動くん当て馬回。