でも後書きに書いた予定通りにはできませんでした…。いつものことだけど…。
今回は前回の続きでクリスティーンに手伝って貰ってオリヴィランの狙いを探るために、3名の同級生にも協力して貰ってます。
最初の予定と違うことになるのはいつものことだけど…。
あとデステゴロが結構可哀想な目にあってます。
クリスティーン絡みで。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
「…おーい、だいじょうぶか?」
事故現場の調査に参加することになっているヒーローがデステゴロに声を掛けた。
デステゴロは地べたに座り込んで膝を抱えグズグズと泣いていた。
昨日の今日で何があったのか。昨晩まで作業時間が同じだったヒーローや作業職員の一部は知っていたので彼の身に起こったことはすぐに知れ渡った。
意思を持つ極悪美人なスポーツカーに強制ドライブデートに連れ回された男として。
誰も乗っていない勝手に動くクラシックなスポーツカーが早く乗れとクラクションを鳴らして、渋々デステゴロが乗るとすぐにドアを締めて急発進、ドリフトして夜の街へ消えたこと。その際に中のデステゴロが絶叫、悲鳴をあげていたことも。
警察の方でスピード違反車にその赤いスポーツカーはいなかったからどこの道をドライブしたのかは分からないから連れて行かれた本人に聞くしかないがその本人が泣いてばかりで話しにならないのだ。
ついでに出勤の道中でたまに見かけることができる海外のスポーツカーが視界に入ると露骨にビビっていたりもする。赤い色の車を見てもビビる。
「どんなとんでもねー地雷女に引っかかって酷い目に遭わされたんだろ?」
「いや女ってか…、車だったじゃん…。しかも型の古い時代遅れで…スッゲー主張強い赤塗装の…、ギャンっ!?」
車の知識はあるが古い車には興味が無いヒーローのひとりが件の車であるクリスティーンのことを口に出した瞬間、背後から話題に上がっていたクリスティーンに轢かれた。
「ひいっ!? どこから来やがったんだコイツーーー!?」
「ギャーーーー! 出たーーー!」
轢かれて吹っ飛び腰を押さえて悶えるヒーローに追撃せず悲鳴を上げるデステゴロに気づいたらしいクリスティーンは方向転換し、『また会えたね』っと言わんばかりに機嫌良さそうにエンジンを吹かしライトをチカチカと点灯させた。
デステゴロは半べそ顔で尻もちをついたまま後ろへ後ずさる。
距離を取ろうとするデステゴロを前にクリスティーンはその空いた距離を縮めようとゆっくりと車輪が回ろうとしたその時。
「落ち着こう。悪口言われるの嫌いなのは分かるけど、轢き殺すほど短気はダメ。」
『この気の短さがたまらんねーんだ。鼻先でケツをドーーーン!てな。』
「ドSでドM……。」
内側から聞こえて感じるザラゾスのニタニタ色欲にドン引きする出久がクリスティーンを止めた。
どうやって車とあーんなことやこーんなことするのかは知りたくないがザラゾスに取り憑かれた立場上嫌でもザラゾスのそういう感覚や記憶も流れ込んできてしまう。ザラゾスがワザとやっているのか、ザラゾスの力で生きている状態を保たれている状態であるせいで流れてくるのを防げないのか。詳しく聞く気力は今の出久には起きない。
それよりもやるべきことがある。
「クリスティーンさん。手伝う約束だから。お願いします。デステゴロさんをまたデートに誘うのはそのあとで。」
「マジ勘弁してください…。」
「あなたのお尻と座った時の重心が気に入ったそうです。」
「こんな嬉しくない美人からの好印象なんて知りたくなかった!!」
「体から始まる関係もアリだと思いますよ。」
「彼女できるのはいいが! なのに、なんで車ーーーーー!?」
「からかうのはいいから、こっち来てくれる?」
泣き叫ぶデステゴロを放って置いて出久はクリスティーンに話しかけた。
クリスティーンは渋々といった様子で出久と一緒にこの場から離れていった。
取り残されたデステゴロは両手と両膝を地面につけてさめざめと泣いていた。ついさっきクリスティーンに轢かれたがなんとか回復したヒーローと成り行きを見ていることしかできなかったもうひとりのヒーローはただただデステゴロに同情の視線を向けることしかできなかった。
***
大型工事車両が瓦礫をすごい勢いで片付けていく。
しかしその車両には誰も乗っていない。ハンドルやペダルが勝手に動いていた。
ショベルカー、ブルドーザー、ダンプカーなどなど、様々な姿へと可変して作業を黙々と手際よく、素早くしていく。
「す、すごい…。」
「あれだけあった瓦礫が…。」
「とてつもない…な…。
麗日と八百万と障子がそれを見ていてただただ驚いていた。
「雄英のお三人、学業を休んで参加しもらってすまないね…。」
「いえ! だいじょうぶです! インターンってことでお誘いもらえて光栄ですから!」
麗日と八百万の現場への参加を雄英に申請したヒーロー達が申し訳なさそうに言った言葉に二人は首を横に振って今回の参加への意欲を語った。障子も返事が遅れたが参加することに前向きな言葉を返した。
凄惨な事件現場であることはニュースやネット情報で見聞きしているし、参加までの事前説明でも知らされていた。
少しずつ片付けられ、救助活動と遺体の収容なども早急に行われていたため二人が参加したときにはほぼ終わっていた。生存確認ができていない行方不明者は別にして……。あとはもう生存者救出ではない。
レスキューを主とするヒーローを目指す麗日としてはこういう凄惨な現場での作業に参加するのは覚悟の上だった。だからこそ早い段階で参加できることはまたとないチャンス。
今回のインターンという形での参加にはプロヒーローからの申請という形がとられたが、詳細はまた別の事情が絡む。
実はプロヒーローが自主的に申請をしたのではなく、ゴーストライダーがプロヒーローに頼んで三人に今回の事件現場に来てもらうよう働きかけたのだ。
ほぼプロ免許の権限を付与される特別免許を持つゴーストライダーでもすべてがプロヒーローと同じではない。あくまで“ほぼ”だ。機密の一部の取り扱いや仲間に仲間への協力を求める場合の申請書類の権限などの一部が使えない。そのため必要な人材とはいえ学生の身である仲間に協力を求める場合に仲介者としてプロヒーローに頼むしか無かった。
人が足りないので猫の手も借りたいほどだが学生を参加させることに難色を示されたため、予め用意していた資料をもとに今回の事件の根深いところに説明し早期解決のため了承を得た。
無人のショベルカーがある場所を掘っていたが、やがてガチンッと固い物を引っかけた音が鳴ってショベルカーが止まった。
「見つかった?」
ショベルカーがシャベル部分を持ち上げて形を変えていく横で出久が掘られた箇所を覗き見た。
出久の横でショベルカーになっていたクリスティーンがもとの車の姿へと変わった。
『雑っ。』
ザラゾスがボソッと言った。
歪な黒い金属の塊が土に突き刺さるように穴の中央にある。
釘かネジのような尖った形のソレは飛行機が高層建築物に突っ込むという惨い事件の前後に何者かによって土の中に埋め込まれた代物だ。
土の中とはいえ都会のど真ん中だ。水道や下水などの配管や電線を通すために工事で土を掘り返したり、建造物を建てるために地盤を整えるための工事だってされているはずだ。実際この辺りの過去の地盤工事に関する記録と照らし合わせてもこの金属の塊の存在については明記されていないため後から埋められたことが分かる。もし動かせない事情があってそのままだとしたら必ず公式の記録に残っていないと厳罰では済まないだろう。
ショベルカーでつついても動かない強固な力で埋まったいる黒い金属の塊の傍に出久は障子を手招きした。
「どうするんだ?」
「障子くん、いくつくぐらい口を作れる?」
「口がたくさん必要なのか?」
「できればたくさん。たぶん…、10個以上はいるかもしれない…。」
「そんなに? いったいなにをするんだ?」
「口を貸して貰えれば…、まあぶっちゃけ体を少し貸してもらうってことなんだけど…。イタコって分かる?」
「ああ…、確か死者の声を口で代弁する…霊能力者だったか? それを俺に? 俺にはそういうことは…。」
「イタコはあくまで一例。本人の意思で降霊させるやり方の他にも、他人の体に降霊させて言葉を言わせるってやり方もある。ただ…、今回のは…、幽霊じゃない。」
「…悪い予感しかしないんだが。」
「小さい土地神や昔にいた地主や住んでいた人間達の思念のゴチャゴチャした激流って感じかな? こんなのまともに触れたら運が良くて生きてても気が狂った状態になるか、最悪中味が別人に成り代わられて終わるか……らしい。」
「……遺書を書いた方がいいか?」
「全力で守るから。後遺症は絶対残さない。一発で終わらせるから。」
「う、うん…。」
出久の説明で青ざめる障子に頭を深く下げる出久。
「緑谷さん! 言われたとおりの記録用の装置の準備が終わりましたわ!」
出久に頼まれた音声記録装置を創造して設置し終えた八百万が声を掛けた。
「一発で終わらせたいから一音でも残さず記録したい。それはだいじょうぶ?」
「電源が切れなければ問題はありません。」
「マイクの準備は?」
「準備オーケー! いつでもどうぞ!」
今回のゴーストライダーの頼みを聞いた音声の記録に協力している関係者が両腕で丸印を作った。
「障子くん。」
「……分かった。」
あとは障子の承諾が必要なため出久が顔を向けると、出久を信用して決心した障子が頷いた。
金属の塊の前に腰を下ろしてもらい、背中側に出久が立って両肩に手を乗せる。
「じゃあ、両手を…。」
「分かった。」
呼吸を整えて意を決して障子が両手を意思に触れさせた。
その瞬間に高圧電流を頭に流されたような衝撃が一瞬障子の体を襲った。
跳ね上がるが両手が最初から金属の塊の一部みたいにぴったりと引っ付いて離れず、出久が無理矢理に障子の体をその場に押さえて座った状態にさせる。
障子の両目の瞳が激しく動いていて焦点なんてあったものじゃないが、やがて白目状態に。
障子の個性で生成された無数の口が開かれる。
そこから漏れるのは人間の声なのか何なのか不明の声と言葉。男なのか女なのか子供なのか、獣なのかすらも分からない意味不明な言葉が無数にある口から一斉に出るものだから聞き取るなんてできない。障子の声ではないことは間違いなく、言葉の発し方や発音、喋る速度も違うため余計に意味不明さを際立たせている。
この場でこの声を聴いていた人間達は出久以外は顔色を悪くしていた。意味不明な言葉、正体が分からない声達、耐えきれずに耳を両手で塞いでこの声から逃れようとする者達も出て、ついには声をかき消すように自分で叫び声をあげる者さえ出てしまった。しかしそれは想定済みなのでまだ正気の者が取り押さえたり口を塞いだりしてとにかく記録だけは中断させないよう耐えた。
時間にすれば十分程度なのだが、恐ろしく長く感じられるこの不気味な声の合唱の記録は一瞬燃え上がったゴーストライダーの炎によって終了した。
金属の塊から引き離された障子を後ろから支えた出久が指を鳴らして装置のスイッチを止めた。
「障子くん? だいじょうぶ?」
「……うぅっ、……ああ…、なんとか…。」
ぐったりしていた障子だったがやや間を置いて頭を片手でさすりながら目を開けた。
「体の調子は? 頭が痛い?」
「少しクラクラするような感じがする…。痛みは…そこまでじゃない…。」
「気分はどう?」
「絶叫マシンで上も下も分からないほど振り回せたような……。」
「目が回ったような感じ?」
「そうかもな。」
「念のため病院に。」
「いやそこまでは…。」
「診断書出さないと相澤先生が怒るから。」
「分かった。」
今回参加させるにあたり相澤からきつめにそう言われていたので出久は障子に言い聞かせ、相澤からそう言われていたならと後のことを考えて障子は頷いた。
立ち上がろうとすると力が思うように入らずふらつく障子を軽々と抱え上げて穴から出ると待機してもらっていた救護班の担架に乗せて病院に急行してもらった。
そのあと掘り起こした場所を事件の根底の問題が解決するまで保存してもらう手配と囲いをするのを手伝い、麗日に重量物の運搬を個性で早く終わらせるよう手伝って貰って想定以上の早業で終わらせた。
やることを終えた出久達はクリスティーンを連れて離れるのだが……。
「あれ? デステゴロさんは?」
「帰りましたよ。急用ができたとかで。」
『逃げたな。』
「逃げたんだ。」
ザラゾスと出久の思ったことと言葉が重なった。
『クリス、どうする?』
ザラゾスが声を掛けるとクリスティーンは少しの間黙っていたようだが、憤慨したようにクラクションを激しく鳴らして周囲を驚かせた。
『そーかそーか。じゃあ明日にでも朝イチで出待ちしてやれ。きっと泣いて喜ぶぞ。』
「…逃げなきゃ傷は浅く済んだのに。」
出久は携帯端末を取り出し、プロヒーロー同士の連絡網用のメールアドレスからデステゴロ宛にクリスティーンから逃げた結果で起こるであろう不幸を警告しておいた。
そのメール送信後、すぐに返信がきた。内容はクリスティーンのところへすぐに行くということだった。
タクシー(自費)で大急ぎで駆けつけたデステゴロだったが、それでも三十分以上はかかった。息を切らして走ってきたがそこにはもうクリスティーンの姿は無かった。出久達もいなかった。
現場での作業のために出動していたヒーローから出久から託されたメモを渡され、その内容にデステゴロは一瞬で青ざめるどころか真っ白になり白目を剥いて倒れた。
【朝 迎えに行く 逃げたら 分かってる?】
わざわざ血文字みたいな赤黒いインクで不気味な筆記体で書かれた文字列。
それはクリスティーンの意思を文字にして書いてあげたものだった。
後の話であるが、命に代えられないと諦めたデステゴロはクリスティーンの望むままにドライブデートを何度か重ねるのだが、美しいクラシックなスポーツカーに無骨なパワー型ヒーローという組み合わせに目を付けた写真家に被写体になって欲しいと依頼され、もうなるようになれと投げやりに請けてクリスティーンと共に写真を撮ったのだが、これが車雑誌に載ると主な購読者層である車マニアを中心に話題を呼び、なぜか色んなシチュエーションでクリスティーンとの組み合わせで写真を撮るという仕事が舞い込むこととなる。
そのおかげで収入が潤っただけじゃなく低迷していたヒーローとしての知名度もまあまあ上がり、美人モデルやらアイドルから頻繁に声を掛けられたりして鼻を伸ばすきっかけにもなるのだがその都度どこからともなく現れるクリスティーンに背後から轢かれて倒れるか吹っ飛ばされる姿がバズってしまって『嫉妬深い美人(車)に死ぬ程愛されたヒーロー』として独身街道が固められる傾向に持ち込まれ枕を濡らすことになるのはそう遠くない未来である。
あれ?
予定してなかったデステゴロとクリスティーンの絡みがメインになってしまった……。
なんでこんな絡めるようにしてしまったのか…、勢いって怖い。
これはパワーアップイベントではないですね。
むしろ地雷な怖い美女(車)に気に入られちゃった男の不運イベントだ。
障子を正体不明の思念の声を聞き出すための触媒にしたのは、単に彼の個性ならたくさんの口が作れるので無数にある思念の声を音にして取り出せるという思いつきからです。
酷い目に遭わせるつもりなんてなかった……。
触媒になっている間の障子は出久の全力の補助で意識を完璧に守られ精神面の問題もなく、脳などの重要部分へのダメージもありません。ただ膨大な情報量を一気に体に流されて受け止めた衝撃で目眩やだるさは残りましたがすぐ回復はします。
次回は記録した声を解析して、オリヴィランに繋がる情報を知る流れにしたいです。
もしかしたら全然違う話しになる可能性もありますが……。
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