1話完結を予定していましたが、書いていたら思っていた以上に増えてしまったので2話ぐらいになるかもです。
今回は猫化したことから始まり、猫化の理由の話。
予定していたラブコメは皆無です。
胸糞悪い表現と、動物虐待の描写があります。
苦手な方はご注意ください。
あとオマケ程度に爆豪の扱いが少し悪いです。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
底の浅い洗濯籠の中から、ミーミーと高い動物の鳴き声が出ていた。
「……。」
「み、緑谷…?」
恐る恐る様子を伺うA組一同。一部抜く。
出久は床に置かれた洗濯籠を見おろして動かない。
普段から表情が乏しいのでなにを考えているのか分からないが、完全に冷静ではないと思われる。
洗濯籠の中には、2匹の猫が入っているのだ。
1匹は、フワフワ白い長毛の小猫。ミーミー鳴いているのはこの子。
1匹は、短毛だが変わった模様と毛色と顔をした猫っぽい何か…と例えた方が正解っぽい見た目。こっちは大きいので小猫ではない。
全然違う年齢で、見た目も違うタイプの猫が毛布が敷かれた洗濯籠の中に入っていた。
白い小猫が必死に籠から出ようとするように鳴きながら籠の側面に前足を伸ばして動き続けているが、もう一方の猫っぽい方は白い小猫に踏まれながら広くない籠の中の毛布の上で四つ足を隠して伏せた体勢でジッとしている。
「緑谷、お前なら分かるだろう?」
相澤が聞くと出久は答える。
「…呪霊の一種……、みたいなものだと思います。」
「ほう? それで麗日と壊理ちゃんが猫にされたと?」
2匹の猫の正体は、麗日と壊理だった。
白い小猫が壊理で、猫っぽいなのかの方が麗日。
どちらも元の姿の特徴が猫の姿に反映されている。壊理は白く長い髪の毛と赤い眼。麗日に至ってはヒーロースーツの姿を猫の姿にデフォルメした感じになってしまっている。
「ただ…。」
「なんだ?」
「呪い…というには、悪意が薄く見えます。」
「どういうことだ?」
「呪いというのは良い意味でも悪い意味も含むんです。受け取り方にもよりますが…。悪気のない善意での失敗のような感じです。」
「悪意のない善意…。」
「それに呪いの大元も、動物ですね。見れば分かりますが…。」
「猫が呪ったということか?」
「心当たりがあります。」
「俺もそれを考えていた。悪質なブリーダーグループの事件だろう?」
数日前にゴーストライダーとして壊滅させたヴィラン組織の事件があったのだ。
猫を中心に血統書付きの様々な種類の猫達を惨く扱い、生ませるだけ生ませて限界とみれば下水道に生きたまま投げ捨てるような所業をし、更に生まれた小猫にも十分な世話と治療をせず売れた端からそのことを伏せてペットショップやネット予約販売で直接人に渡していたというものだった。
ゴーストライダーを求めた無念と恨みを抱いたのは、その組織にいた人間だった。彼は組織が表向きは小さな会社として運営されていたため、その求人に応募して採用されてブリーダーとなったのだが、業務内容の悪質さと劣悪さに最初こそ抗議しようとしたが、高圧的な半グレの運営者達と営業に脅されて元々の小心者な心も相まって数年もの間なにも言えず逆にブラックな業務を押しつけられながら働かされる羽目にもなった。
組織で商品にされていた猫達の世話のほとんどをこなしていたが、あまりの劣悪な環境と惨過ぎる繁殖によって使い捨てられる親猫達、使い潰されてもう生めないと判断されればまだ生きているのに下水道に繋がった穴に放り捨てられていく。
それは商品として不十分と判断された赤ちゃん猫も例外では無かった。商品にならない小猫も生きたまま下水に捨てられた。
数年もの間そんな中で働かされ、良心を引き裂かれる想いをしてきた小心者の彼はついに限界を迎えた。
狂うのではなく、警察に告発をして猫達を救い、二度とこんな残酷なことが後世に起こらないよう教訓として世間に公表しようとしたのだ。
しかし、それは失敗に終わった。あと少しのところで見つかり、激しいリンチの末に瀕死となった彼は猫達を遺棄している下水道に落とされた。
穴の底で積み上がった悪臭を放つ泥のようなものの山に落ちたが、彼の体を受け止めたことで崩れて中に詰っていた物が露出する。
肉が腐った腐臭、白い骨、腐敗が進んでいるがまだ……猫だと認識できる程度に形が残っていたり、次々に積み上がる死体から転がり落ちて潰れず、運悪くいまだに死にきれていない猫の微かな鳴き声と息までもが聞こえた。
泥のような山が下水道に遺棄された数え切れない猫達の死体が積み上がってできたものだと理解した男は、死の間際に怨みの炎を燃やした。同時に今までこの子達を見捨ててしまった、救えたのに救うことすら放棄した己の不甲斐なさによる激しい後悔と、結局最後までなにもできなかったことへの無念を抱きながら意識が闇へと堕ちていった。
その怨みと無念の声を聞きつけて復讐を代行してくれる存在がやってきたことで、彼の無念は晴らされることになる。
ゴーストライダーによってこのヴィラン達は、ペナンスステアで私刑され、全員が牢屋行きとなり、これまでの悪行が世間に公表された。復讐を望んだ小心者だった男を含めて、彼よりも前に告発を企んだが発見されて阻止されて殺されて行方不明者扱いになっていた人間達のことも……。
ゴーストライダーが復讐を代行したことで、内部告発を阻止されて殺された男の無念は晴らされたが、別の呪いが残っていた。
それが猫達の死後に残った念……、怨霊になりかけていた猫達の苦しみ、怒り、悲しみなどなどの感情の集合体。
ゴーストライダーが来なければ、遅かれ早かれ、この猫の呪霊の集合体が化猫のように実体を持ってヴィラン達を様々な呪いで苦しめたり、八つ裂きにするなどして殺していただろう。
しかしゴーストライダーによって先に復讐は果たされた。そのため残った猫達の呪いは行き場のない状態になるわけだ。
ヴィラン達を殺したいほどの怨みはゴーストライダーが受け取って晴らされた。だが大きく膨れ上がった呪いの塊はそれ以外の想いの呪いを持っていた。
その結果が今。麗日と壊理を猫に変えてしまう形でゴーストライダーのところへ出没したのであった。
「これが怨みでないなら、何を求めてこんなことを?」
「……。」
「緑谷?」
「『愛して』。」
「!」
「『撫でて』、『寂しい』、『お腹空いた』、『眠い』、『寒いのはイヤ』、『遊んで』。………読み取れたのはこんな内容です。」
「現場は、最悪な飼育環境だったと聞いている…。そういうことか……。」
猫好きの相澤は、麗日と壊理を猫にした呪いの正体を理解したようで哀れむように目を細めた。
むちゃくちゃな繁殖だけを強いられた大人の猫と、お金に換金されるためだけに親から取りあげられて選別されつつ十分な世話もしてもらえなかった小猫。
大人を目前にした少女である麗日に大人の猫の呪いが。6歳という幼子だからか他に小さい子供がいなかったからか壊理に小猫の呪いが。
それぞれに取り憑いて大きい猫と子猫に変化させた。
猫の呪いが求めたのは、簡単にまとめると、無償の『愛』。人に飼われることで得られる満足と温もりなど、生前に得られなかった、もしまともで優しい人間のもとで飼育されたなら得られたかも知れない幸福が欲しいのだ。
『人間に生産されて、人間に手の上の生き方しか知らない愛玩動物の末路だな。』
ザラゾスが哀れみと嘲りを含めた言葉を吐いたが、外には聞こえていないので聞いた出久が我慢して呪いが求めていることを細かく説明すると、感受性の高いクラスメイト達の何人かが涙しだした。特に口田。
呪いと聞くとどうしても悪い意味で捉えてしまうし、実際そっちの方面ばかりになるのは仕方が無い。しかし呪いの原因と経緯を知ることが解呪や呪いを抑える封印の術になるので理解することは初歩的な手順になるだろう。理解しすぎて逆に呪いに共鳴して呪いに浸食される可能性もあるあるだが……。
まあいずれにせよ、今回麗日と壊理を呪いで猫に変えた呪いは、二人を害するつもりはなく、適任の宿主として選んで幸福を得られたら消えるという性質なので求められた幸福を与えれば二人は元に戻れることが保証できる代物だった。
だからやり方を間違えなければ数日ぐらいで戻れるだろうとザラゾスはコメントしている。
『これで虐待したら呪いが転じて人喰い猫の爆誕だろうなぁ?』
「しないから。」
生前に受けた酷いことをまたされたら、呪いが今度こそ人を殺す怪物になるとザラゾスがニヤニヤ笑って言うものだから出久が絶対そんなことはしないとキッパリ言った。
「生前に受けた酷いことをしない限りは、呪いの宿主になった二人は無事ですから。猫から見て嫌なことされない限りは呪いの反転での暴走などはないと思います。」
「グス……、でもさ…、具体的に幸福ってどーしてやったらいいんだ? 普通に猫を可愛がるみたいにしろってこと?」
鼻水を啜った上鳴が聞いた。
「……家に来たばかりの猫にすること。」
「ねえ、さっきからネコ壊理ちゃんの騒ぎようがすごいけど? もしかしてお腹空かせてないかしら?」
蛙吹がさっきからミーミーと必死に騒いでいるネコ壊理の様子を観察していて、そう言った。
「そういえば小さすぎない? もしかしてお母さん猫のおっぱい飲んでるぐらいの赤ちゃんだったりして!?」
「じゃあ、ミルクか!」
「待て! 牛乳はダメだからな! ちゃんと小猫用じゃなきゃ…。」
「あるぞ。」
「相澤せんせーーー! 準備がいい!!」
ちゃんと小猫用のミルクのパックと、小猫用の哺乳瓶を用意していた相澤であった。
「ミルク…、鍋で温めてから…。」
「パックに説明欄に書いてあるじゃん。」
共有スペースのコンロで小鍋にミルクを入れて温める。温まったら飲める温度になるまで冷ます。
「武器女! テメーの個性でテキトーに猫オモチャぐれー作れ! あと猫グッズ一通りだ!」
「承知していますわ!」
「おっとー、急に爆豪が仕切りだして的確に必要なもん指示出し始めたじゃん? どーした?」
「緑谷からの好感度目当てだろ。絶対。何かしらで好感度チマチマ上げないと道端の小石どころの騒ぎじゃないとかブツブツ暗くなってたの見たから…。」
次の瞬間にそう言っていた上鳴が爆破された。爆豪に。図星だったらしい。
「そーいうところだぞ! そんなことばっかだから好感度ゼロから変動が少ないって分かんねーかなー!?」
「彼が懲りるってこと知ってたら、今こんなことになってないと思うな~…。」
「同意見。」
「左に同じ。」
「だーーまーーーれーーーーやーーーー!!」
「ぎゃーーーー! 緑谷ーーーお助けーーー!!」
「かっちゃん。うるさい。」
「ギャンッ!?」
両手から爆破を起こしながら怒り散らす爆豪の尻を軽く蹴り飛ばして止める出久。
頭から床に倒れて尻を高く上げた状態になって、しばし動かなくなる爆豪。
「もはや、彼はドM気質のいじめっ子が板に付きすぎてる気がする…!☆」
「緑谷限定だろ。」
「情けない…。もっと好かれるやり方があると思うのだが…。」
「無理じゃね? ここまで捻れすぎた執着じゃあ…。」
爆豪のひと暴れでちょっと軽い騒ぎになったが、終息している間に温まったミルクをネコ壊理ちゃんに飲ませる準備ができた。
出久の手のひらの収るサイズのネコ壊理に哺乳瓶の飲み口を向けて、ジタバタしている彼女の口に入れてやるとハッとしたように動きを止めて懸命に哺乳瓶の中のミルクをチュパチュパ飲み始めた。
「もう完全に赤ちゃん猫じゃん…。」
どうやら壊理としての人格はほぼなく、小猫は小猫でも赤ちゃんと呼べるほど弱い姿であることをあらためて理解された。
「できましたわ!」
そうこうしている間に、様々な猫用アイテムを創造し終えた八百万であった。
スマホから閲覧した猫グッズを参照しながら創造したので、種類も豊富でなかなかのクオリティとなっている。
「轟くん、君のじゃない。君は猫違うから。」
それを見て、妙にウズウズしている轟を止める出久。
そうしているとネコ麗日がオモチャに興味を示したのか、オモチャの方に近づいた。
「遊ぶ?」
ネコ壊理のミルクやりを終えた出久が自身の腿の上にネコ壊理を乗せたまま、オモチャのひとつである釣り竿のような形で糸の先端に羽根のような飾りがついたオモチャを手にしてネコ麗日を誘うように動かした。
ネコ麗日はただでさえ大きな目をかっぴらいてオモチャの羽部分に前足を伸ばし、狩猟本能が赴くままにじゃれついた。
そりゃもう激しく、動画サイトの猫の動画の遊んでいる猫そのものだ。
だが個性は使えないようだ。麗日の個性は両手の指にある肉球に物体を触れさせることで発動するものだから。オモチャの羽部分を両前足で捕まえてじゃれついても発動していない。
これだと壊理の方も個性の暴発が起こることは無さそうだ。
ネコ壊理は出久の太ももの上にいるが、添えられた出久の手のひらの上に上半身を移動させて寝る態勢にはいりだしている。
「緑谷! 超うらやま状態ーーー!」
「手の上で寝ちゃいそうになってるって眼福にもほどがある!」
「キュンッ死ねる!」
全部小声。
お腹いっぱいになって眠くなった小猫が人の手の上でウトウト眠ろうとしているのは、猫が好きな人間や可愛い物好きなら門前ものな光景のようだ。
体温の高い出久の手の上は毛布の上より温かくて心地良いのか、寝るときの姿勢を無視できるほどあっという間に夢の中に行こうとしているネコ壊理。
「ネコ麗日には、これだ。」
そう言って相澤が用意したのは、高級猫缶。それも人間でも食べて共有できる値の張る商品だった。
麗日が人間であるため、完全な猫用より人間でも食べられる物の方が影響がないのではという考えでのことだった。
缶詰の蓋をあけると、オモチャで遊びまくって少しバテたネコ麗日が顔を上げて期待に満ちた様子になる。
これまた相澤が用意した猫用食器に開封した部分を下にして、缶詰から外せば缶詰の形のままの中味が皿の上に乗る。
もちろん水を入れた食器も用意されている。
「本当はカリカリの方が栄養面で合理的だが…、元が人間だから猫用は避けてみた。」
「良い判断だと思います。」
さすが現役のプロヒーロー。そして猫好き。人間と猫の食べて良い物と悪い物の知識は豊富だ。
床に置いた食器に盛られた猫缶の中味を一心不乱に食べ進むネコ麗日。
食べ終わり、水も飲んでから顔を前足でクシクシと洗う姿は完璧に猫だ。
それからネコ麗日は出久の足下へ移動し、出久の足に体を擦りつけ始める。
「緑谷。」
「はい。」
「二人の世話と呪いの解呪を任せる。」
「そのつもりでいました。」
「緑谷だけズルいーーーーー!!」
相澤からの言葉に頷く出久に、ブイーングを上げるクラスメイト一同。
「もちろん、俺だけじゃ解呪に時間がかかるので、みんなの助けが欲しいと思ってる。遊ぶときとか。」
「呪いが反転してしまう可能性は何が何でも避けろ。」
相澤の言葉でブーブー言っていた者達がハッとして固まった。
先ほど出久からの説明で、麗日と壊理を猫にしている呪いが惨い虐待を受けて死んでいった猫達から生まれたものだが、生前の嫌なことをまたされてしまったら今度こそ呪いが人を害する物に転じて二人の命はもちろんその周囲も危険であることを思いだしたのだ。
猫飼いのプロでもなければ専門家でもないのだ。人間の勝手で悪気なくやったことが虐待だった場合の危険に気づいたため、単に羨ましいからとブーブー言うのは見当違いだと瞬時に判断できたのだ。
固まる空気の中相澤が言った。
「緑谷(ゴーストライダー)の監督下なら問題ないな?」
「はい。」
「そういうことだから、二人と接するときは緑谷に許可と取れ。」
「先生!!」
可愛いニャンコになった二人と戯れたいという気持ちを汲みつつ、呪いの解呪を早める合理的手段として生徒達の手助けが不可欠と考えてのことだ。
何が良いか悪いかは出久が見ている前でなら十分防げるだろうから。
こうして無償の愛を求める猫の呪いを解くための、短い日々が始まった。
「けど、なんか腑に落ちねぇ…。」
「なにがだ?」
「なんでにひ…、いや二人ともさ、やたら緑谷に懐きすぎじゃなねぇかって…。」
「あー…。」
「そりゃ、あの二人の普段の態度見てたら分かるだろ?」
「だから、二人を選んで呪ったのかしら?」
「かもしれないねー!」
猫化の理由を考えて考えて……、なぜこうなった…。
最近の癖で長々と書いてしまう…。
今回の呪いは、悪質なブリーダーと半グレによる猫を中心とした繁殖による生体の売買をしていたヴィラン組織が原因で生まれてしまったものです。
なんでゴーストライダーが早く気づかなかったのか?
理由は、復讐を願う声が届いていなかったから。小心者だった男の死に際の声でやっと気づいて貰えた。
猫達の呪いはあと少しでゴーストライダーに発見されるところでしたが、呪いとして完成される前に上記の小心者だった男の復讐心を叶えられたから、復讐自体は成就されたので牙を抜かれた状態になり、あとに残ったのは生前に欲しかった物を求める呪いとしてゴーストライダーの近くに移動して事が起こった結果が今回の猫化事件。
現状は無害ですが、もし生前にされた酷いことに繋がる酷いことを少しでもされたら呪いが一気に凶暴化して麗日も壊理も終わるし、周囲にも無差別に害悪を振りまくことになります。
爆豪と轟が除外されたのは、二人とも呪いより強いゴーストライダーの力で呪われてたり、力を埋め込まれてたりしているからです。
呪いたかったけど、呪えなかった。
次回こそラブコメ書きたい!
書けたらいいな……。
次の短編のネタにするなら?
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妖怪ウォッチ
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すまっしゅ!!
-
それ以外の怪異や、妖怪など
-
SCP
-
いや、連載の続き書けよ