出久が感情が薄くなってしまっていて、恋云々が酷い。
G注意?
結婚。
それは、時に人生の墓場などと揶揄されるその人間次第で幸にも不幸にもなる人生の最大級イベント。
生物的に言えば、子孫を残すために番(つがい)になることともとれる。
動物によっては、雌雄の頭数の違いや、その生態系の違いにより、その結ばれ方も異なるが人間の場合は近代だと基本的に一人の男が一人女と添い遂げることである。
しかし時代によっては、身分の高い者は複数人の女性を娶っていた。戦国時代の武将や、戦国の覇者となった徳川家の将軍達も一部を除いて大奥というものが存在したほど、複数人の女性を娶るのが普通であった。
そして時代は様々な変容を重ね、個性という特殊能力者達の時代へ。
複雑化する個性という物を巡って、個性婚などという個性目当ての結婚が横行した時期もあった。またヒーローや、ヴィランといった犯罪やその取り締まりの複雑化などで、晩婚化、または仕事がら未婚…っという問題も浮上し始める。
このままでは、平和以前に人類の衰退と絶滅に繋がると将来を不安視した政府により、発足された試験的な婚姻の法があった。
それが、最大5人までの女性と結ばれて夫婦になれる一夫多妻制だ。
ただし条件はかなり厳しい。
単なる体狙いとか資産や個性狙いなど、そういった邪な者達を振り落とすためだ。
また実際に娶ってもその状態で、夫婦関係を維持できるかどうかも問題なので、定期的に家庭内調査も入ることになっている。もしも格差があり、奥さん同士でのいがみ合いや、イジメや様々なハラスメントの標的になるなど被害者、加害者を生まないためだ。無論、生まれてきた子供のことや子供が出来たできないとかで旦那の愛の奪い合いとか、お世継ぎの争いのようなことがあってもダメだ。
一夫多妻制を昔から法律として取り入れている国などでは、奥さんを平等に愛することが条件にもなっているためそれを真似たのだ。
そんなこんなで、この法律がこの国で発足されてから、いまだに5人娶って添い遂げたという話はまだない。失敗したという話題はあれど……。
制度の許可証を手に入れても、その後についても条件が厳しすぎるという声もあるが、妥当だという声もある。
もちろん、制度に合格しても必ず5人も娶らなければならないわけではない。5人以下でも問題はない。
そう…、一人以上…、二人でも一向に構わないのだ。
***
仮眠室で、オールマイトは、印刷されたその書類を両手で持った状態でガタガタブルブルと震えていた。
【重婚制度 申請書】。
話にはチラッと聞いたことがある程度の文字がデカデカと。さらに申請と。
「み………………………………………緑谷少年?」
「はい。」
「コレ………………………………………マジ? 本気と書いて、マジ?」
「マジです。」
「オーーーウ!!」
オールマイトは、椅子から転がり落ちた。
「教員として子供の人生に関わっていれば、いずれはそういう一大イベントに立ち会うだろうとは思ってたけども、これは予想だにしてないよ!」
「ダメですか?」
「ダメではないけど! けど、君まだ16歳だろ!? 人生まだまだこれから分からないのにこんな大決断しちゃっていいのかなぁ!?」
「はい。申請しても書類が通るまで最悪年単位かかる場合もあるらしいので、早い内がいいみたいで。制度の許可証を持つ分だけなら学生でも問題なしみたいです。」
「そこまで…調べたんだね?」
「はい。」
「親御さん知ってるのかな?」
「いえ。疎遠ですからね。親の一筆が必要な十代じゃなく、必要ない二十代になってからを予定しています。」
「そ、そう…。」
まさか十代婚を目指しているのかと思って不安視していたオールマイトはちょっとホッとした。
いや、それもあるが、それ以上に……。
「緑谷少年! この制度を利用したいということは、娶りたい女性が少なくとも二人以上いるということだね!? 差し支えなければ教えてもらえると…。」
「同級生と、すごく年下です。」
「グハァ! 実際耳にするとクル!! えっ、ちょっと待って、年下? 君より年下? しかもすごく? ちなみにその子何歳?」
「6歳です。」
「ゴゲハ!! アウトーーーーーー!」
オールマイト、腕でバッテン作って絶叫。
「もちろん婚姻可能年齢か、二十歳(はたち)になってからですよ?」
「ほっ……、じゃない! なに!? なんで!? 年の差結婚には偏見無いけど、私さすがに君の趣味が心配になってきたよ!」
「しゅみ?」
「分かってないの…? そ…それで…、お相手の女性達には、このこと(重婚制度)は話してるのかい?」
「いえ、まだです。」
「だろうね! そう思ったよ! 制度を調べたなら知ってるだろうけど同意もなく婚姻届出したら犯罪だからね!」
「はい。」
「うん。君はそういうことしないだろうからだいじょうぶだろうけど。分かった、申請の際の保証人になってあげよう。ただし!」
「はい。」
「きちんとお相手の女性達と話をして決めなさい!」
「はい。」
「うん…。君ならだいじょうぶだと信じてるよ…。」
人間として感情が欠落している出久が果たして結婚して相手を幸せにできるかどうか、オールマイトは猛烈に不安だった。
***
その後、寮に帰った出久は峰田に話しかけた。
「教えてくれてありがとう。」
「いーってことよ。で? もしかして申請書類とか出したのか?」
冗談めかして峰田が聞くと、出久は頷き、峰田を驚かせた。
「マジで!? えっ、マジで!? 本気かよ!?」
「うん。」
「いやまあうん…! 勧めたの俺だけどさすがに責任感じちまうじゃん! で? そのこと二人に話してるのか?」
「まだ。」
「ちゃんと話して、ちゃんと納得してもらえよ? いや、むしろ納得してもらえるよう話せんのか?」
「うーん……。」
腕組みして悩む様を見せる出久に、峰田は頭を抱えた。
「うーんじゃねぇよ! これで拗れて破綻したらどーすんだよ! あの二人的には一緒になるのはだいじょうぶなわけ!?」
「それはだいじょうぶかと思う。文化祭でも仲良くしてた。」
「まあ…二人とも優しい性格ならそうなるか…。温厚な麗日はともかくとして、問題はエリちゃんの方か…?」
「なんで?」
「…俺の部屋来い。」
峰田が自室に出久を呼んだ。
椅子に座らされた出久に、ベットに座った峰田が。
「大雑把には聞いてんだぜ。エリちゃんが指定ヴィランの関係者だってことぐらいは。」
「知ってるんだ。」
「別にヴィランの身内だからって偏見をするわけじゃねーけど、あの時お前が麗日のことどう思ってんのかって聞かれてたときのあの目…、ありゃ狙った獲物を逃がさない捕食者の目だ。ちっちゃいと思って侮ると喰われるぜ?」
「壊理ちゃんってお肉好きだっけ? 俺を喰っても不味いと思うけど。」
「そういう意味じゃねーーー!! 俺は猛烈に不安だーーーー! お前が!」
「なんで?」
ポカンッとしている出久の有様に、峰田は頭をかきむしってウガーっと叫んだ。
そして出久に掴みかかり。
「あのなぁ! 結婚ってのは人生の墓場なんて言われるほど人生を左右することなの! 自分だけの問題じゃなく、相手の人生も背負うことだ! まさかお前そんなことも考えずに軽々しく申請しようとしてやがったのか!?」
「……俺は…。」
「そもそもどういう考えで申請しようってことになったんだ!?」
「二人には…、仲が悪くなって欲しくないって…、その原因が俺なら…。」
「つまりアレか? お前、二人の幸せとか考えてなかったってことか?」
「…そう、なのかな?」
「呆れたぜ…。いいか、結婚ってのは責任持って相手を一生幸せにするとかって約束をするぐらいすっげー大事なことなんだぜ? 緑谷はそれができんのか?」
「……。」
黙ってしまう出久に、峰田は気が遠のきそうになるのを堪え、ハ~っと長いため息を吐いた。
「軽々しく制度のこと教えた俺にも非があるけども…、緑谷がこんなだとは予想外だぜ…。」
「ごめん…。」
「よし分かった! 俺なりに相談に乗ってやるから今一度あの二人の幸せについて考えようぜ! 申請についてはやっといてもいいと思うけど!」
「ありがとう。」
「……心配だ。」
先行きが不安で峰田はがっくりと項垂れた。
これはしっかり相談に乗って支えてやらないと確実に大事になる。
軽い気持ちで重婚の制度のことを教えてしまったが、これは一大事だと、峰田はエロ大好きで自分がモテないが故に他人のリア充話には妬むが、ハッピーエンドが嫌いなわけではないのだ。あんまりにも出久が欠落しているので、峰田なりに責任を感じハッピーエンドにさせるためにも面倒を見てやらなければと思ったのだった。
峰田がそう思っていたとき、寮内で男女の悲鳴が聞こえた。
程なく、寮内に響き渡る担任による緊急の集合の放送。
***
「近隣のペットショップに搬入される予定のエサ用のゴ○ブリを運搬していたトラックが横転事故を起こした。事故は昆虫を操るヴィランによって起こされたようだ。もう言わんでも分かるだろうが……。遠隔操作型の個性であるため現在ヴィランは捜索中。標的された雄英は食料庫を荒らされる前に校内全体にホイホイの設置と配布、殺虫煙を巻く予定だが、各々の部屋などに出たら他人に任せず自分の力で退治できるようになれ。以上。」
『ほ~? ゴ○ブリねぇ…?』
ザラゾスのその呟きを出久はしっかりと聞いた。
「…なにもしないでよ?」
切島達をモドキにした疑いがあるため出久がザラゾスにそう言った。
『なあ? 知ってるか?』
「はあ?」
『かの有名なベルゼブブは、あのちっこい蠅(ハエ)の悪魔だぜ? 害虫ってテメーら人間が区分している虫ってのは、古今東西、今も昔も病を運ぶってんで災いの象徴にされてきた。そのせいか触媒にしやすい。分からねーか? つまり横からつけ入れやすいのさ。例えばブラックハートも。』
「!」
『分かったか?』
「おい、緑谷!?」
背中を向けてダッシュで走り出した出久に皆が驚いた。
出久は走りながら手から炎獣を出した。
炎獣は一斉に鳥や四つ足の獣となり出久の前を飛び、あるいは走る。
先頭を飛んでいた鳥形の炎獣が急に方向転換した。
すると少女の悲鳴が聞こえた。
炎獣達を引き連れて鳥を追うと、その先に頭の1本角から凄まじいエネルギーを放出しながら泣いている壊理を見つけた。壊理の周りには彼女のエネルギーに触れぬよう取り囲む見たこともないほどデカいゴ○ブリ達がいた。
へたり込んでいる壊理の傍には、砕けた炎のイヤリングが落ちていた。
「壊理ちゃん!」
出久が叫ぶとゴ○ブリ達が一斉に出久の方を見た。
そして出久が手で炎獣達に指示を出し、炎獣が巨大ゴ○ブリに襲いかかった。
「来ちゃダメェ!」
壊理が泣きながら叫ぶ。
するとその感情の高ぶりに反応してか角から放出されるエネルギーが増した。それによりゴ○ブリの何割かにエネルギーが当たり、みるみるうちに元の大きさになり、さらに縮んで消滅するまで巻き戻された。さらに周囲にあった雑草まで縮み消えていく。
『こりゃやべぇな。』
ザラゾスもさすがに拙いと思ったらしい。
古代悪魔のザラゾスのそれを言わせるほどなのだ、それだけ壊理の力が強大であるのだろう。
生命の細胞の体を構成するひとつひとつに宿る過去の記憶を揺り起こし、生まれる前まで戻してしまうほどの壊理の力。ザラゾス曰く、過去とは現在を構築する主柱である。過去がなければ現在はあり得ないから。
しかもその力を抑える目的も含めて与えていたお守りであるイヤリングがあんなあっさりと壊れているのだ。ひとたび暴走した時のエネルギーの強大さが分かる。
しかし…。
『なに立ち往生してんだ? お前単体ならヤバかったかもしれねぇが、俺とお前だ。俺を利用するぐらいやってみろ。』
「…壊理ちゃん。」
出久が足を踏み出す。たちまち巻き戻しのエネルギーが襲いかかってくるが、構わず進む。
ただの人間だったなら壊理の父親のようにあっという間に消滅していただろう。しかし、出久がゴーストライダーで、古代悪魔ザラゾスと共生関係にあり、なおかつ一度死んだことでザラゾスに深く干渉されザラゾスと近い関係になったことがここに来て功を奏した。
古代悪魔ってくらいだから……、ザラゾスって人間年齢換算で何歳って話だ。つまりちょっとやそっと巻き戻しされたぐらいでびくともしない。
出久が消えると思って顔を両手で覆って隠し、泣いていた壊理だったが足音と気配が近づいてきて恐る恐る手を外して顔を上げた。
出久が壊理の前で片膝をついてしゃがむ。
「少し…眠ようか。」
「……うん。」
出久が微笑み、頷いた壊理の頬を撫でてコツンと額を合わせた。すると鎖が出久の体から出てきて壊理の個性のエネルギーを吸収し、飛散させるように周囲に広がり、さらに強力な催眠術によって壊理の意識が一気に夢も見ないほど深い眠りに落ち出久はその小さな体を支えた。
壊理が眠ったことで暴走していた個性も止まり周りに広がっていた鎖は燃え尽きるようにグズグズに崩れて消えた。
「…ありがとう。ザラゾス。」
『たいしたことじゃねーよ。』
眠った壊理を抱えて抱きしめながら、出久はザラゾスに感謝した。
するとカサカサ…っと、微かな這う音が聞こえてきたため、出久は壊理を抱えたまま立ち上がり、片手に燃えあがる炎を纏わせた鎖を出した。
「失せろ!」
声を低めて出久が巨大ゴ○ブリの群れに炎を纏わせた鎖を振るった。
そうしてブラックハートにより横からちょっかい出されて巨大化したゴ○ブリ達は、全て出久に駆除され結果的に予想されていた虫を操るヴィランの攻撃を防がれたのだった。
最初のうちは峰田が相談相手として頑張るところまでしかいてなかったですが、それだと物足りなかったのでG騒動と壊理ちゃん暴走をつけました。
合同演習などは、次回からかな?
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