いじめたいわけじゃないんだ!
なんか全体的に腐向けっぽいけど、違いますよ!
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
「……これが…、心操だと?」
相澤が僅かに声を震わせる。
人目に付かぬよう場所は屋上だが、いるのは出久、爆豪、轟、そして相澤とオールマイトだけだ。
心操は、出久に背中を支えられて上体を起こされた状態になっている。その目からはホロホロと涙ばかりが零れている。
「緑谷少年…。」
「………はい。」
「………ザラゾスの仕業か?」
「……。おそらく。」
出久の言葉を聞きオールマイトは拳を血が出るほど握りしめた。
「…ザラゾスには…聞こえているか?」
「はい…。」
「……ザラゾス…! 貴様はなんてことを!」
『……それがどうした?』
すると出久の口からザラゾスの声が出た。
その声を聞いて泣いているだけだった心操がビクッと震え身を動かしたため出久の手から離れてしまい床に倒れた。
「なぜ心操を…。」
相澤が冷静を装いながら怒りの感情のある目をザラゾスに向けた。
ザラゾスは、肩をすくめた。
『理由? 珍しい魂だったからな。それだけだ。』
「珍しい?」
『心操ってガキは、生まれつきの魂が少しばかり天使の性質に近かった。』
「てんし!?」
『たまーにいるのさ。魂に混ざりモンがある人間ってのは。心操の場合は、たまたま天使だったってだけの話だ。天使ってのは、どちらかというと力の性質が人間に近くってな。普通に生きてりゃ何の影響も無く気づかず一生を終えてた程度だが、最近の凶事で魂を揺さぶられたんだろう。アホのボンボンに見つかる前でよかったぜ。』
「ぼんぼん? ブラックハートのことか?」
『そうだ。いやぁ、ラッキーだった。』
「…どういうことだ?」
『天使ってのは、今も昔も…楽しい“オモチャ”だ。アイツも見つけてたら喜び勇んでたんじゃねーの?』
「お…。」
絶句するオールマイトと相澤にザラゾスは笑う。
『天使は堅物で、潔癖だ。堕とす過程も…、堕としてからも…、本当にイイんだぜ? 羽根をむしって飛べなくさせて地面で泣き叫ぶのも、堕ちていくのを嫌がって抵抗するのも、堕ちても神に救いを求めて無駄に足掻くのも…。最高に面白くて楽しい!』
「っ…! 悪魔め!!」
『ああ、悪魔だが?』
「彼を人間に戻せ!」
『それは無理な相談だ。コイツは、モドキとは違う。元々あった素質をちょっといじっただけだが、地獄の力が入ったこともあるが…、ここまで馴染むのが早いのは…。ん?』
『……ーろしてやる…!』
『ああ?』
床の上で翼になった腕でなんとか上体を起こし顔を上げた心操がザラゾスを睨みあげる。
『殺してやる? 文字通り手も足も無くなったうえに、ロクに空の飛び方も分からねぇ体でどうするんだ? なあ?』
『ぐっ!』
心操の髪の毛を掴み無理矢理持ち上げるザラゾスが視線を合わせた。
「やめろ!」
オールマイトと相澤がザラゾスの手から心操を引き離した。
『あー、でも…、人間の姿に自由に戻れるようなれば、歩くのも走るのも殴る蹴るも自由だ。だが今の体じゃダメだ。人間辞めたばかりの体を調整して、訓練が必要だ。それとも、そんな不自由な体のまま地面に這いつくばってるだけでいたいか? 這いつくばるばかりで死ぬこともできやしない。悪魔に穢された魂がまともに死ねると思うか?』
『ーーーちくしょう…。』
『憎むも恨むも絶望するも自由だ。だが…、お前が自力で再び立ち上がるには、俺を頼るしかないのさ。もし、その魂を、こんな姿を他の悪魔が見つけたら…、どうなるんだろうなぁ? ま、そうなっちまった奴は何度も見たことあるぜ? ああ、それはそれは哀れだったな…。本当に可哀想なことになっちまう。あらゆる手段で身も心も何もかも穢されて、犯されて、しまいにゃ飽きればゴミ屑のように捨てられて…、欠片の救いもありゃしない。哀れで可哀想な人天使(ひとてんし)…。せいぜい、飽きるまで可愛がってやるよ。』
そしてザラゾスは、引っ込み出久の意識が浮上した。
「相澤先生…、オールマイト…。ザラゾスは……。」
「…考えられる限り最悪だ。」
「……心操少年を…、人間には戻せないのだね?」
「………はい。…ですが、擬態という形で人間の姿になることは可能かと。」
「だが根本的な解決ではない。」
「はい……。人間としての老化も、無くなっているかと思います。体の動かし方…、力の使い方が分からないと擬態すらできないと思います。心操君。」
『……。』
「……復讐したい?」
『!」
「緑谷少年!」
「心操君に聞いてるんです。復讐したいかどうか…、でもそれは…、自分の手で…。そのためには諦めて地面に這いつくばってたらできない。死を選んだら…、ザラゾスには届かない。どう転んでザラゾスを喜ばせるのなら、いっそのこと、両手両足が無くても、喉笛を噛みきるというのは?」
『……。』
「君は…どうしたい?」
『……。』
「俺の近くにいれば、ザラゾスに近い場所にいられる。機を見て喉笛は狙えると思う。もし…、何が何でも復讐したいって気持ちがあるのなら…。俺は復讐の精霊として、ザラゾスに復讐する。」
「緑谷少年、それは…。」
ザラゾスが出久の生死に大きく関わっていることを知っているオールマイトは、出久が死を選んででも復讐を果たそうとしていることを危惧した。
「楽になりたいのなら…、穢された魂もろとも焼くことだって出来る。」
出久はそう言って手から炎を出した。
「心操…。」
『……してやる…。』
相澤が心配していると、心操が声を絞り出した。
『泥水啜ろうが…、石にかじりついてでも…復讐してやる!』
「…分かった。」
でもまずは…、っと出久が心操に近寄った。
そして片膝をつき、視線を合わせた。
「まずは、その体(力)を自分のモノにすることからだ。…いい?」
出久がそう聞くと、心操は黙ったまま目を伏せ、頷くと心操がフウッと意識を失い倒れ掛かっり出久が抱きとめる。
おそらく精神的にも肉体的にも限界だったのだろう。その後ぐったりと出久の腕の中で動かなくなった。
「……ひとまず、どこかに心操君を隠さないといけません。この姿を知られたらマズい。」
「そ、そうだね! ひとまず……………………………、どこに? 相澤君! どこかいい隠し場所ってあったかな!?」
「この大きさだ。運ぶにしても目立だたないようには…。」
翼も下半身も大きく、ヒレの長さを含めなくても頭から足(魚の尾っぽ?)までの長さだけで見れば2メートル以上はある。(かと言ってウナギとかみたいに細長いわけではない)
『…物を収納するのにうってつけな魔術があるぞ?』
「……。」
『このままこの吹きさらしの場所で過ごすのか? ここにいてもいずれ見つかるぞ?』
「っ……。空間を操作する魔術を使います。」
「そんなことができるのかい!」
「物を収納して運ぶ魔術の応用ですけど、一旦ソコに…。」
出久がそう言った時、屋上に繋がるドアが開いた。
「あっ、オールマイト先生! 相澤先生! こんなところにいたんですか!」
「あっ…、うん! ごめんね!」
ドアから現れたセメントスに慌ててそう返事をするオールマイト。
ドアが開かれる直前には、慌てて開いた収納魔術の中に心操を突っ込んで隠していたのでギリギリで見られていない。
その後、根津も加えて一部の教師に事情説明をし、半ば強引な形ではあるが心操のA組への編入が急遽決まった。
だが心操が人間の形に擬態できないのではまともに学校生活も送れないため、せめて擬態できるまでは人前に出ないことになった。
どれくらいかかるか分からないので、心操のいた普通科や編入予定のA組などには、心操の個性が強まってしまいその制御のためしばらく特別病棟で訓練するから面会もできないということで説明した。
もちろん、真実を知っている爆豪と轟は口止めされている。
出久も数日心操の個性の制御のための訓練に付き合ってということを理由に授業を休んだ。
………間違ってはいないが。
「…………早く擬態ができるように頑張ろうね。」
『~~~~!!』
「ごめんね。早く体が馴染むように荒治療みたいなものだけどいじくった方がいいんだよ。轟君、ちょっと上半身押さえて。」
「こうか?」
『~~~! ~~~~!!』
「かっちゃんも頭を押さえつけといて。」
「…チッ!」
バサバサと翼を動かし、ビターンビタンと魚のヒレを床にたたきつけて暴れる心操の体に問答無用で指を突っ込んで、神経や筋肉や骨、内臓、皮膚などすべてを調整する出久。
いじくるたびに心操が泣き叫ぶものだから、猿ぐつわを噛まされている。
轟と爆豪は授業が終わったら手伝わされていた。
「なあ、緑谷。」
「なに?」
「…心操のこの姿…、どこかで見覚えがある気がする。」
「ああ…それは、きっと神話とか絵画に描かれる『セイレーン』に似てるからだと思うよ。」
セイレーン。
ギリシャ神話に登場する、美しい歌声で船乗り達を惑わすとされる海の怪物。
サイレン(SIREN)の語源。
様々な説があるが、多くの場合腕が鳥の翼の女性だとされる。
羽が鱗と間違われて下半身が魚として描かれたとか?
「……なるほど。心操君の個性は肉声を使う個性。元々の能力に合わせてこの姿にしたのか…。」
『よく分かったな。中々いいだろ? 天使性質のおかげでこの形にしやすかったぜ?』
ザラゾスがニヤニヤしていて、出久はギリッと唇を噛んだ。
「手ぇ止めるのか、続けるのかどっちかにしろ! 泡吹いてんぞ!」
「あっ。」
「クソ…、ザラゾスめ…。余計な奴引き入れやがって…。半分野郎だけでも邪魔なのによぉ…。」
「えっ?」
「なんでもねーよ!」
爆豪はそう言ってそっぽを向いた。
***
心操の体の調整は順調…といえば順調ではあった。
だが早く体を馴染ませて擬態できるようにさせるために急いでいるので結果荒っぽい調整となり、心操を苦しめた。
しかも意識が無い状態でやってもちゃんと神経や筋肉が繋がっているか、それ以外の感覚があるかどうか分からないため、あえて意識がある状態でやらなければならない。簡単に言うなら麻酔無し手術だ。
初日からやっているが、慣れることはない。むしろ痛いより、変に気持ちいい…時があってそっちの方がイヤらしい。
それ以外にイヤなことは…。
「水飲める?」
心操を起こして背中を支えた出久がペットボトルの水を口に近づける。
『……。』
「死なないけど、せめて一口でも食べないと体力がもたないよ? 何か食べられそうな物ある?」
『……フッ…。』
すると心操が自虐的に笑った。
『介助されねーとロクに水ひとつ飲めやしないし、手も足もないからバランスが取れなくて体を支えられない…。』
「バランスは慣れれば取れるようになるはずだよ。」
『けどペットボトルは持てない。』
「……。」
『なんでだよぉ…。』
心操の目から涙が零れる。散々泣いたが涙は尽きることはない。
『俺はヒーローに憧れたんだこんな個性でも…誰かを救いたいって役立てたいって思ったんだだから…。』
「うん…。」
『なのにひでぇよ…こんな形で……………………………ーーろしてやる…! 絶対に…殺してやる!』
「うん…。」
『殺してやる…、殺してやる…。』
こうした心操の嘆きの叫びも繰り返されている。
泣いて、叫ぶしかできないのだ。手足を異形にされ、舌を噛んでも死ぬことさえできない体だから。
『緑谷…お前も…。』
「うん…。」
ザラゾスへの憎しみはソレを宿す出久にも向けられた。出久はソレを静かに受け止める。
『…嘘だ……。違う…ごめん…。』
けれどすぐに謝罪の言葉が絞り出される。
心操は分かっているし、聞いている。
出久が好き好んでザラゾスを宿すことになったのではないことを。ザラゾスと切り離されれば死ぬことも。
『ごめん…、ごめん…。』
「だいじょうぶ。」
ほろほろと泣きながら謝罪を口にする心操の頬を出久は撫でた。ガラスのように温度のない心操の頬と反対に、伝う涙は熱い。
「…水飲んで、一切れでイイからパンを食べて。それで…少し眠ろう。調整した体を休めないといけない。」
『…ん……。』
一口に千切られた菓子パンを口に入れられ、水で流し込む。
それからゆっくりと横にされて額に出久が手を当てて眠らせた。
「……えらい甘やかしようだな?」
「かっちゃん。」
食料やペットボトルが入った袋を持って来た爆豪が眉間にしわを寄せて入って来た。
「ザラゾスのやったことに責任を感じてやがるのか?」
「……。」
「…てめーがやったんじゃねーだろうが。」
「ザラゾスを…。」
「ああ?」
「ザラゾスを止められる力があれば…、心操君がこんなことにはならなかった。」
「…なんでソイツにそこまで関心を向けてんだよ?」
「えっ?」
「なんて顔してやがる…。いつも鉄仮面みたいなくせに…。」
「そう、かな?」
「……ゴーストライダーになる前のお前の顔…。」
「えっ?」
「ああ…、クソ!」
「おっと。」
爆豪が投げつけてきた袋を受け止めると、爆豪は背中を向けて出て行ってしまった。
残された出久はポカーンとした。
無理矢理人間辞めさせられてしまい、不安定になる心操。
そんな心操に自己責任を強く感じる出久。
そんな出久から意識を向けられている心操が気に入らない爆豪。
なんだこれ……。(心の底から)
次回、爆豪がやらかします。
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