また間が空いてしまった…。
かなり悩みながら書きました…。
今回もオリジナルエピソード。
麗日とのお出かけ。
あとついでに死穢八斎會が登場。一部未登場。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
お米料理フェスの会場近くの風下にはフェスタで提供される料理の匂いがする。
「ふあああああ! 良い匂い! もうたまらへんわ~~~!」
「麗日さん、どうどう…。まだ入場してないから。」
フェスタ会場の最寄りのバス停に降り、バス停がちょうど風下だったことから会場から流れてくる米料理の匂いを嗅ぐことになった。
ご飯を炊いたときや焼いたときの独特の甘い焦げた香りに餅好きの麗日は辛抱たまらないとばかりに悶えた。
「落ち着いて。人が見てるから。」
「はう! ご、ごめん!」
食欲を刺激されて年頃の女の子がしていい顔じゃ無くなっていた麗日を正気に戻させ、フェスタ開催の敷地に入るための入り口へ向かう。
お米料理フェスの開催日は休日であったためそこへ向かう人間が多い。そんな中で出久がさりげなく動く。
「ぶつからないように気をつけよう。」
「ふえ!?」
人混みにぶつからないようにさりげなく麗日の手を握って出久の方へ引っ張られて麗日がびっくりして変な声をあげた。
「? 嫌だった?」
「あ…、そんなこと…ない…。」
「……行こうか。」
「うん…。」
出久は麗日を自然にエスコートしただけだったが、麗日は耳まで真っ赤にして一緒に歩いた。出久が麗日の歩調に合わせているので麗日はとんでもなく歩きやすかった。
そうしてお米料理フェスの開催場所に入った。
お米を使う料理を提供する無数の屋台、お米そのものとお米を使う製品の販売、お米にまつわる資料の展示、お米をモチーフにした遊具とキャラクターなどなど、会場全体が米まみれだ。
このフェスタは、近年減り続けるお米の消費量を増やそうというテーマで政府の農林業の機関が大きく関わっている。そのため堅苦しい部分も多少は見受けられるが米を扱う企業や飲食店、そして真の意味で主役と言える米の生産者である米農家達が協力しての開催決定であった。
なお日本米だけにとどまらずタイ米のような海外で主に生産されている米の種類と、あと古代米と呼ばれる物も料理や販売店に置いてある。
ついでに言うとお米イコールご飯料理だけでとどまらず、アジア圏のお米の麺類も枠に入っている。米粉のパンやお菓子もだ。
「ふああああああ! ここは地上に降りてきた天国~~~!?」
「何から食べたい?」
「まずはコレって決めてるねん! アレや!」
楽しみにしすぎるほど楽しみにしていたこの日に興奮しっぱなしの麗日は今日のために朝ご飯も抜いて空腹スタンバイ万全状態であるのもあり、ギラギラの眼の顔でテントを指差す。
そのテント、もとい店で売られているのはその場で杵で突いて出来たてのお餅と大ぶりのお団子。団子のバリエーションが普段見かけない物もあり、お餅の方も大根おろしなど違う味もあるが団子と同じ味のラインナップだ。出来たてのお餅に納豆という人もいるだろうが、酒などの発酵食品の関係で納豆菌がアウトとされたため外されていた。
お団子も一本一本の団子がでかいが全品を買ってここで食べることは可能だ。米がメインテーマのフェスタなのだからどれもこれも胃にたまるし全品制覇は普通の人間ではおそらく不可能だ。腹持ちもするから大食いでも結構キツイかも知れない。
お餅好きの麗日もそれは理解しているので食べたい物を事前に決めてから今日を迎え、どうしても食べたい物を最初にチョイス。
「このお店のお餅とお団子が神だってお母ちゃんから聞いてたんよ! 実家に来たお客さんから貰ったって聞いて食べたかったけど消費期限短くって私は食べれへんかったの……。だからここで出店するって知った時は…。」
「分かったよ。すごい熱望していたんだね。じゃあ列に並ぼう。」
「あー、楽しみや~!」
出久とのお出かけという羞恥はどこへやらもう麗日の頭は空腹とお餅への欲望でいっぱいだった。
列と言ってもそれほど長くはない。理由はこの店の知名度がまだ低く、割と最近できた店であったからだった。お団子の店は他にもあり、有名店もそこに含まれる。
買った後テントの屋根で日差しを防がれている飲食エリアに移動、まだ午前中だからかそこまで混んでいるというわけではない。これが昼食時ならどうなるか。
紙皿の上に丸くまとめられた出来てのお餅が1皿に二個ずつ、全種類の味を買ったからその分紙皿がかさむ。麗日ひとりだったら運ぶのが大変だったが出久がいたのでなんとかなった。喉に詰らせたときのために飲み物も一緒に。
割り箸で摘まむとそれだけで柔らかさと粘り気が分かるほどの上質なお餅であることが分かり、麗日は目をキラキラさせてビヨーンと伸びたお餅を眺めていた。口の端からヨダレが垂れている。
「…誰も取らないよ。」
「あっ、そうだね! ごめん! そ、それじゃあ、いただきます!」
我に返った麗日が慌ててそう返事をしてから満を持してお餅に食らい付いた。
「ーーーーーーーーーー!! ~~~~~~~!!」
口に入れたお餅を咀嚼して味わい飲み込むまでの間、そして飲み込んでからも言葉が出ない、言葉が見つからないほどの美味の感想をわけが分からない動作のリアクションでジタバタしている麗日。飲食エリアが混んでいなくてよかった。
「美味しかったんだね。」
出久が聞くと麗日は口を手で押さえながら潤んだ目で何度も頷いた。あまりの美味しさに感動しすぎて涙目になっていた。
そこからはものすごい勢いで買ってきたお餅が麗日の胃に収められていった。色々とかけてある物が違うこともあるが、どの味でも美味しかったらしく勢いが止まらない。たぶん常人なら二皿ぐらいでごちそうさましそうな量を数皿、あっという間に完食した。
食べ終わった後、麗日はボーッとしていた。天上の美味を味わった後のようなうっとりした顔をしていた。
『クク…、い~い顔するじゃねぇか。まだ初物だってのに。』
「…………ねえ…。」
『俺は初物はそんな好みじゃねーよ。見た目ならあと10年ぐらいで俺好みだがな。』
ザラゾスが唐突に投下したザラゾスの好みに出久は思わず吹き出した。
えっ? まさかの熟女好き? つまり過去にいた奥さんは年上だったのか?
『おい、コラ。なにを失礼なこと考えてる? 好まないっつっても好きと大好物の違い程度だ。嫁の年代は種族ごとに違ったしな。』
「…ん? ごと?」
××ごとに違った、つまり複数、単体じゃない。
『あ? 誰が今までいた妻が一人だけだったって言った? 長生きすりゃ出会いも縁も色々あんだよ。』
「へー……。」
それで全員死別するまで離縁もせずに添い遂げたと。ザラゾスの実年齢は不明だが古代悪魔の肩書きがあるぐらいだから生半可な年数はじゃないのは間違いないので最初の妻はともかくその他は必然的に年下しかいなかったのでは?
『妻達に会わせてやろうか?』
「…いるの?」
『死んだ後に肉体と魂を燃やして俺の中に入れてる。俺が死ぬ時まで一緒だ。』
「…それって、炎獣……。」
『そーだな、原理はほとんど変わらん。』
炎獣のプロトタイプと言うべきか、ほぼ同じ原理でザラゾスは歴代の妻達を死後に自らの炎で燃やしてその身に取り込み自分が滅ぶときまで手放さないでいるらしい。
ザラゾスの歴代妻達がどんな人物達だったのかは気になる。その出久の心境を直接感じ取っているザラゾスはニヤニヤ笑う。
しかしザラゾスがこう言っていても愛妻家かつ尻に敷かれる旦那だったザラゾスの妻達が実際に顔を出してくれるかどうかは別問題な気がした出久だったが、まるでそれが伝わったかのようなタイミングでザラゾスの笑う気配の奥の方から複数人の女の笑う声が聞こえた気がした。このことからザラゾスの歴代妻達が了承したと思われる。
「…ーーーどりや……、緑谷君!」
「……あっ…。」
意識を内側に向けていた出久がやっと我に返った。
麗日に肩を掴まれて揺らされていた。
「だいじょうぶ?」
「ん、平気だよ。なに?」
「あのね…。」
「どーもっす、緑谷さん!」
どこかで聞き覚えがある男の声が横の方から聞こえたのでそちらに顔を向けると。
「窃野(せつの)さん?」
「あっ、覚えていただいて光栄です!」
死穢八斎會所属で治崎の鉄砲玉のひとりである窃野だった。最後に会った時は治崎の部下の証として身につけているペストマスクを口に付けていた、今は普通のマスクだ。
「こんなところで奇遇ですね。」
「ええ、こっちもビックリしましたよ。」
「それで何か用?」
「えっと……、実は…。」
窃野が出久の耳に顔を寄せてヒソヒソと言葉を伝える。
「……分かった。あとで行くから。」
「ありがとうございます! じゃあ、自分は戻りますんで!」
窃野は深々と頭を下げてから足早にその場から去って行った。
「あの人だれ?」
「壊理ちゃんの家の関係者。」
「…なるほど。」
さすがに直球にヤクザの一員とはこの場では言えなかったが、壊理ちゃんの件に参加していた麗日はすぐに理解した。
「ちょっと行ってくるけど、麗日さんはどうする?」
「私も行っていいの?」
「来るなとは言われてないから。」
というわけで二人である屋台の所へ移動。
「すみません。」
「………あ? ………!?」
屋台の裏側に回り、屋台の裏で作業していた人間達の中で唯一精密部品や食べ物の加工工場のユニフォームみたいにギッチリミッチリ完全防備の人間に話しかけると嫌そうに振り返ってきたその人物は出久の顔を見るなり勢いよくひっくり返りかけその背中を見覚えがある人物達に支えられていた。
「な…なな…ななななな…。」
「落ち着こうか。深呼吸。」
『相変わらずゴーストライダーが絡むと別人のごとくアホになる男だな。』
ザラゾスが苦笑いを浮かべながら呆れたようにそう呟いた。
病的な潔癖で死穢八斎會の若頭の治崎。個性嫌いをこじらせすぎて個性持ちに触るだけで蕁麻疹が発症するほどの潔癖症が野外で飲食系のフェスの手伝いなんてまともにできるわけがない。頑張って頑張ってものすごい完全防備の格好で暑さや息苦しさを我慢してやっとできている有様だ。
屋台裏の関係者以外立ち入り禁止エリアに移動し、用意されていたパイプ椅子に座って頭に被っていた物を外した。重ね着しすぎで通気性が最悪の有様だったせいで自身の汗と汗と呼吸による湿気と体温と気温による熱で顔も髪も湿りきっているため窃野をはじめとした部下達が大急ぎで新品のタオルと未開封のミネラルウォーターを差し出していた。
治崎はビニール手袋をした手でミネラルウォーターを開封すると一気飲みして飲み干し、口のマスクを戻してから出久に向き直った。
「……あの…、なぜここに?」
「出かけるのって悪い?」
「あ、いえ…。」
おずおずと聞いた治崎に出久は淡々と答えた。
「そちらの窃野さんから…、頼みがあるからと…。」
治崎はそれを聞くと視線だけを窃野に向けた。窃野は萎縮して俯いた。
「近いうちにと思っていたが……。」
治崎は視線を戻してため息を吐いた。
「壊理ちゃん以外のことでですよね。」
「そこまで…。」
「クロノさんから大まかなことは聞いています。治崎さんがお忙しいからと。」
「アイツ…。」
「個性が日常生活に支障になるほど強いのを抑えられないかってことですよね。組の立て直しの最中なのに妨害になってきてるって。」
クラミス・ジョーダンが起こした事件で死穢八斎會は壊滅寸前の痛手を受けて慢性的な人員不足状態だった。
最大戦力となる人員は残っていたがそれ以外が不足し、新たな人員の補給と補給した人員の教育、組が受け持っていた仕事(※グレーゾーン?)やそれによって得ていた収益もろもろの回復にはまだ時間がかかる。今は組の貯蓄を崩しているような状態だ。
そんな中で元々重たい問題を抱えていた戦闘員のひとりのことで困ったことになり、個性絡みということで壊理のおまけでダメ元で頼もうとしたのだ。
屋台で提供される料理を食べきれなかったり、落としたりするなどして食べられなくなってしまったなどやむを得ず残してしまう場合はお祭りなどの出店で食べ歩きをする時に困りものだ。その処分のために分別できるダストボックスがあるわけだが、こういう食べ物の有り難みを伝える系フェスでもそれは避けられない。次から次にダストボックスに食べかけなどの料理の残飯が捨てられる。
ところが今回設置されていたダストボックスは、かなり変わった形をしていた。美術的なユニークさと言えば良いのか、ゴミ箱というにはおかしな形だった。
内側に防音の素材を使われているこの残飯用ダストボックス。中に人間が入っていた。
上から落として滑り落ちてくる残飯の受け皿に手を突っ込み、掴みあげて次から次に大きな口に残飯を流し込んで飲み込み続けている。
その勢いはまったく止まらず、やがて残飯が切れると浅い水分しかない受け皿を乱暴に指で殴るように探る。しかし食べられる物がないと分かり、目から涙まで零した。
「お腹…すいたぁ…。」
治崎が率いる鉄砲玉のひとり、多部空満(たべそらみつ)。個性『食』。
その個性の影響で常に空腹に悩まされ、社会に適応できなかった悲しい生い立ちと人生を送っている人間である。
ダストボックスの奥で泣いていた多部を、仲間の宝生(ほうじょう)が呼びに来て表からは見えない出入り口から外に出た。
多部は一般人が入れないエリアに呼ばれ、そこで治崎と共にいる出久を見て目を見開いた。
『……ほ~~? こりゃあまた…、大物が憑いてるじゃねーか。』
「どういうこと?」
多部を見たザラゾスが笑いながらそう言ったので出久が怪訝に思って聞いた。
ザラゾスが出久の中でニヤニヤクスクスと楽しそうに愉快そうに笑っているのを知らず、多部は辛い空腹を感じながらもこれからなにかされるのかという不安を感じてオロオロとしていた。
多部の腹の中に潜むソレは、ザラゾスの気配を感じて震えた。
最後の方は次回への不穏な伏線?です。
多部について考えて考えて…あとアイディアを頂いて……。色々と捏造設定を追加します。
ある意味で多部超強化と、死穢八斎會側の戦力強化になるかも。
お餅の美味しい飯テロ描写にかなり悩みました。
子供の頃食べたつきたてのお餅を思い出しながらこういう形にしました。
ザラゾスの嫁達は、別作品の女性キャラもクロス予定。
大半はオリキャラの予定だけど…。まあ一部は。
次回は、多部に憑いている大物についてザラゾスが正体を明かし対応する予定。
そろそろ夜嵐や真堂とかも出したいがどの場面でどう出すか悩み中。
出番がめっきりないブラックハートやエンデヴァーの方も出したいし…。
次の短編のネタにするなら?
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妖怪ウォッチ
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すまっしゅ!!
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それ以外の怪異や、妖怪など
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SCP
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いや、連載の続き書けよ