ヒロアカ×ゴーストライダーネタ  連載版   作:蜜柑ブタ

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勢い執筆しました。

今回は長く書けた。



今回もオリジナルエピソードになります。

前回の続き。


一部残酷で、犯罪理由が胸くそ悪い描写があります。
苦手な方はご注意!!

モブ犯人が逆恨みでシンリンカムイに復讐しようとして…?
前回謎の壺をフェスに持ち込んだ人物です。

せっかく前回轟と爆豪を出したのにたいして意味ない感じです……。


ひょっとしたら書き直すかも……。






それでもOKって方だけどうぞ。







いいですね?







SS80  逆恨みで堕ちた人間と地震蟲の失敗作

 

 

 

『さーーー皆様お待たせしました!! これより米俵持ち運びレースを開催します!! 事前に応募されました選ばれた一般出走者によるレースと、ゲストヒーローによるレースの2種で行われます! 1位でゴールをされた方には優勝賞品として日本一の高級ブランド米1年分と年間最優秀賞受賞の和牛・国産豚・国産鶏、季節の美味しいお魚、ご当地ご飯のお供セットをお贈りします! ヒーロー出走レース参加ヒーロー様には優勝賞品として所属事務所食堂へ無料で高級ブランド米とお肉とお魚とお野菜を1年契約で提供をお約束します! 昨今の食品の値上げで事務所の運営がヒーヒー状態で頑張られている中、生きる上でもっとも大事な“食”は大きな楽しみでしょう! 1年限りですが食費だけでも気にせず頑張って貰いたいものです!』

 

 

「…………世知辛いわぁ。」

 実況者の言葉が貧乏家庭の麗日に刺さり、なんとも言えない気持ちになった。

「食事は肉体的にも精神的にも大事だもんね。」

「そうやな…。お腹空くって本当に辛いもん…。」

「…麗日さんのお父さんとお母さんは、自分達の食べる分を我慢してでも子供には幸せを掴んで欲しいって強い気持ちがあるから乗り越えられたんだろうね。」

「えっ?」

「二人はね、麗日さんを雄英に送り出したこと…、後悔なんてしてないから。」

「!」

「次に会えるときに思いっきり笑顔でたくさん甘えていいと思うよ? 娘が不幸せだって思ったらその方がずっと辛いから。」

「……うん!」

 麗日は、こみ上げてきた感情による涙を腕で乱暴に拭った。

「そのために今日は思う存分食べて満足したらいいと思うよ。」

「………えっと…、緑谷くん…。」

「なに?」

「……最初に食べたお餅…、もっかい食べていい?」

「いいよ。たっぷり食べたら良いよ。」

「ありがとう!」

『……。』

「…ねえ、ザラゾス。なにを企んでるの?」

 遠慮している麗日を発破し、満足いくよう導いた出久だったがその一方でザラゾスの様子がおかしいことに気づいていた。

『俺がなにかしたわけじゃないぞ?』

「何か起こるの?」

『そーだな。』

「はっきりして。」

 もったいぶるザラゾスに出久が問い続けている間に、フェスの午後に催されるイベントが進んでいく。

 まず一般から選考された人達が参加する米俵を抱えてのレース。その次がゲストとして呼ばれたヒーロー達が米俵…だけじゃあ面白くないので重りがプラスされてうえで障害物付きでのレースだ。

 一般のレースが無事に終わり、続いてヒーローのレース。レースのための走行路が準備され、実況中継による出場ゲストヒーロー達のパフォーマンスとスポンサー宣伝などがされ、いよいよレースがスタートした。

「どけやあぁぁぁぁぁ!!」

「後輩にはまだ負けるわけにはいかない!! 生活かかってるんだ!!」

 米イコール植物繋がりでゲストとして呼ばれていたシンリンカムイが足りない出場者の飛び入りとして参加させられた爆豪の爆速ターボを妨害しながらスタート。

 しかしその二人を追い越す氷の波を滑って進む轟。その氷を踏み割りながら特有の高笑いと共に突進してくるオールマイト。

 世知辛い話だが、ここ最近のヒーローを取り巻く収入面はかなり厳しい状況だった。仕事がないわけじゃないがただでさえ人材が多すぎて飽和したヒーロー業、よっぽどの実力者や強いタレント力などがないと簡単にクビになるぐらいギリギリ。シンリンカムイは若手ヒーローなせいもありクビ候補に足を突っ込んでいるような状況になっていた。

 そこでなんとか首を繋げるために今回の仕事で活躍してパフォーマンスによる自己宣伝と、あと事務所への大きな土産として1年間分の高品質な食料供給を持ち帰ろうとしているのだ。

 ヒーローとしての立場やそこにいることで得られる優越感。それにしがみつくことばかりに執着する有様は、他のヒーロー達にも共通していた。

 そんな彼らにはそこにたどり着くまでに大変な努力と周囲の助けがあったことなど頭にはないだろう。今のシンリンカムイを過去のシンリンカムイが見たら何を思うだろうか。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

『嘆かわしい………………か…? なあ、“染み”。』

 

 

 フェスの会場がある同じ町にある高層建築物のてっぺんで、しゃがみ込んでフェスの会場を眺めるように高所からの景色を見つめるステインの姿を持つブラックハートが問う。

 それはブラックハートが憑依したことで表層で出られなくなったステインの意識に向けたものだ。

 しかし深い深いところへ沈んで押し込められてしまったステインからの答えはない。聞こえているか分からない。

『は~~~~~、な~~~んでこの俺が英雄思想のために動かにゃならねーーんだよ。…………契約だからしかたないにしてもな。』

 つくづく選んだ場所を間違えたとばかりに嘆くブラックハート。だが無理矢理だったとはいえ契約は契約だ。悪魔としての信念とやり方は守るべきだと頭を切り替え、ブラックハートは立ち上がる。

『さてと……、ちゃんと放出できんのか? あのゴミは…。』

 ブラックハートは、目を細めフェスの会場の方を改めて見た。

『ま、うまく作るのに成功しててもしなくてもどっちでもいいが…。壺の中味さえあの土地に流せるだけでいい。』

 ブラックハートの視線の先には、リュックの中に壺を収めた状態でフェスの会場の中央へ移動しているパーカーを被った男がいた。

 賑やかな周囲は気づかない。

 男が背負っているリュックの外側の下から、ポタリポタリと赤黒い液体が染み出てきているのを。リュックの中の壺の封の隙間からその液体が泡立っていることを。

 だがあと少しというところで男は突然ふらつき、地面に両膝と両手をついた。

 さすがにそれに気づいた人達が慌てて男に駆け寄りだいじょうぶかと声を掛けたり、フェスの係員に声を掛けて助けを呼んでいたりしていたが、男は乱暴に心配して手を貸そうとした人を振り払ってパーカーの下の目でギロリッと睨んだ。

 その目は目玉が飛び出しそうなほど見開かれて血走り、怒りと狂気の恐ろしい感情がギラついている。

 男が助けようとした親切を振り払ったことを窘めようとする人もいたが、男は突然奇声ををあげ足をもつれさせながら走り出そうとした。

 だがすぐにまた足がうまく動かなくなり、その場にうつ伏せで倒れた。

 その瞬間、リュックの中の壺の封が破れ、中に詰っていた物が解放された。

 

 

 壺の中味が解放され、中から出てきたモノによってフェスが行われている会場の土地に大きな揺れが発生する。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 突然の大地の揺れに歩いていたり、立っていた人々が驚き、そしてお祭りの時に使用される簡単に組み立てられる屋台や簡易テントが揺れに耐えられなくなり倒れそうになる。

 日本は地形の都合上どこで地震が起こっても不思議じゃなく、地震に縁がない外国人だと驚いて怯えてしまう小さい地震が日常で頻発しているのだが多すぎて慣れすぎた日本人でも耐えられない大きな地震だった。

 その地震は当然だがレースの真っ最中だったヒーロー達も感じて足を止めた。

「おおおお!? 地震か!? だがなにかおかしい! おかしいぞ!?」

 オールマイトが揺れに耐えながらこの地震が不自然であることにいち早く気づいた。

 すると揺れがフッと突然止まった。まるで車の急ブレーキでもかけたようにピタリと。

「なんだ? 止まった…?」

「!」

「あ? てめ、どうし……、は?」

 轟が何かに気づいてその方向をぼう然と見ているのに気づいた爆豪がつられてそちらを見て言葉を失った。

 レース会場として空けられていた場所とそう遠くない場所に3メートルぐらいの大きな何かが頭を持ち上げる姿があった。

 それはイモムシだった。

 先端に長い2本の触覚が揺れていて、身体は毒々しい赤紫の斑点模様。更に不気味え気色の悪さを際立たせているのは普通のイモムシなら吸盤のような足がある腹部位にあるのが、無数の人間の手と指であることだ。

 しかしそのイモムシの様子が明らかにおかしい。

 風に乗ってくる腐った肉のような悪臭もそうだが、次の瞬間にイモムシの身体の表面の一部が変色して爛れて地面に落ちた。

「な、なんでだよー!?」

 そのイモムシの傍で座り込んだ状態で驚愕した声をあげている男がいた。

 被っていたパーカーが外れていて蛾のような触角が生えた頭が露わになっていた。

 男の顔の半分には大小様々なでき物ができており、大きさだけ違うがその色はイモムシの斑点と同じだった。

「なんで、なんで…、死にかけてんだよ!? せっかくここまで育てたのに! 大勢殺して、アイツにも復讐するはずだったのに!」

『オイ。』

「は…?」

 座り込んでいた男の背後から彼を人の影が覆い恐ろしい響のある低音に思わず振り返って男は後悔した。

 赤々とした炎で燃える頭蓋骨、黒くてゴツいライダースーツ。

 はい、ゴーストライダーです、ありがとうございました!

 男の顔色がザーッと青ざめた。自分の行いがどのような結果を生み出すかのかを理解するだけの理性はまだあるらしい。

 ゴーストライダーのグローブをまとった手が遠慮無く男の胸ぐらを掴んで無理矢理に立たせた。

『…何をしたのか……、分かっているな?』

「ひっ…ぃい…。」

『分かっていて…、“彼女”をああしたのはお前の意思だ!』

「緑谷くん…?」

 出久(ゴーストライダー)と共にこの場に駆けつけていた麗日がゴーストライダーの言葉に訝しむ。

 そうこうしている間にもイモムシの身体はグズグズに腐って崩れていき、ついに今の体勢を保てなくなり地面に倒れ込んだ。しかし完全に死んではおらず、ピクピクと痙攣している。

 すると。

 

『お…おぉぉおおお…、お、ぃい、ぢゃ……。』

 

 イモムシから苦しみに満ちた女の子の声がした。その声は周囲で立ちすくんでいた人間達の耳にも届いて、どういうことだという混乱が起こり始める。

 グロテスクで奇妙な巨大なイモムシから子供の、それも女の子の声が出てくるなどあまりにもギャップがありすぎる。

『うぅお…、ぉぉ…い、ぃいいじゃあぁぁぁ…ん…。お…、に、ぃジャ……ん…。』

「…おにいちゃん?」

 誰かがその声を聞き取ってその声が何を言いたいのかを思わず口に出していた。

 ゴーストライダーに捕まっている男は、ガクガクガタガタと震え、脂汗をかいて両手で耳を塞いだ。

「違うううううう! 俺じゃない! 俺が悪いんじゃない!! だって! だって! アイツが悪いんだ! アイツがアイツが…電車を止めたせいで俺は!!」

「ゴーストライダー! 犯人確保お手柄だ!」

 そこへシンリンカムイが自身の個性を使って人混みを越えて現れた。

 シンリンカムイの登場に男の様子が一変する。恐怖とも狂気ともつかない混乱の真っ只中だったのに急に憎悪を滾らせてシンリンカムイを睨んだ。

「シンリンカムイーーーーー! お前のせいだーーーーー!!」

「は? なぜ? 私は君とは初対面だが…。」

「うるさいーーーー! お前があの時電車を止めなかったら俺は試験で合格できてたんだーーー! お前が、お前がお前がお前が、お前のせいで全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部悪いんだーーーーーー!!」

 喉から血を吐かんばかりに叫ぶ男はシンリンカムイに憎悪をぶつける。

 しかしシンリンカムイは心当たりがなく、困惑していた。

 ゴーストライダーはそれを見ていて埒があかないと見て、ヒントを出す。

『シンリンカムイ…、お前が新人デビューでヴィランの初逮捕に失敗したことを覚えているのか?』

「は…、それは…、は? まさか…その時のことか?」

 言われて思いだしたシンリンカムイが言葉を零す。それを聞いた男がギラギラと憎悪の表情と眼光をシンリンカムイに向けているためどうやら正解らしい。

「た、確かに…、私はあの時…誤って電車の送電線に個性を絡ませてしまい、そのせいで電車の遅延を起こしたことがあった…。だが賠償はもう終わっていることだし、謝罪会見も、関係者各位そのことを……。」

「あの遅れがあったせいで俺は試験問題が解けなかったんだ!!」

 男は叫ぶ。

 曰く、進学校への試験日に試験会場に向かう電車に乗車していたのだが、シンリンカムイが電車を止めたせいで頭に入れていた試験問題の答えが吹っ飛び、結果不合格の結果になったのだという。

 その受験を学校一本に絞り、そこに受かることだけに全力を注ぎ続けたから、その不合格をきっかけに心が折れてしまい引き籠もりになった。そして復讐のために両親を殺して、実の妹をも犠牲にして地震蟲という地震を引き起こす蟲を製作して今日この日を迎えたという。

 しかしそうして惨劇を起こしてまで実行した復讐の結果はコレだ。

 イモムシ、もとい地震蟲は少しだけ大きな地震を起こしたがすぐに止まり、いきなり崩れて死にかける状態になった。

 男はシンリンカムイへの八つ当たりでしかない憎悪と、その憎悪による身勝手を正当化して家族を犠牲にして復讐をしようとして、それさえも失敗したことをシンリンカムイの責任だと叫ぶ。

「ただの責任転嫁の八つ当たりじゃねーーか!!」

「爆豪少年! 正論だけど言葉は選ぼーね!!」

 爆発を使って飛んで来た爆豪がそうグサリと来る正論を言ってしまい、そのことをオールマイトが窘めるが遅い。

 こじらせ続けて溜まりに溜まった男の狂気が爆発したらしく、ゴーストライダーに捕まったまま口から泡混じりのヨダレを撒き散らして先ほどまで吐き散らしていたシンリンカムイへの憎悪とその理由、そして自分が復讐のために犯した罪をも認めないし受け入れない。

 あまりに聞くに堪えない男の有様にゴーストライダーが男の顎を掴んで顔を近づける。

『…お前の家族は、お前が挫折したからといって見捨てたか? 疎んじたか?』

「う…ぁ…、…れは…。」

『歳の離れた妹は…、お前にどれだけ八つ当たりで殴られても、物を投げつけられても、…お前にたいしてどうしていた?』

「あ…。」

 男の顔から狂気が剥がれ落ちたようになり、目を大きく見開き真っ青を通り越して白くなった顔に涙が浮かんだ。

 脳裏に浮かんだのは、痣だらけになっても自分を慰めるために笑顔で頭を撫でてくる愛らしい少女の姿。

「あ…ああ…………あああああああ! 俺は…、俺は! 違う! 家族は何にも悪い事なんてしない! 母さんも、父さんも! 妹だって…死んでいいはずがないんだ! だって妹はすごく可愛くて良い子で……、不幸になっていいはずが……。」

『お…おぉ…にぃ…いい、じゃ…んん…。』

「ヒッ!?」

『聞こえているだろう? お前が生きたまま蟲のエサにして地震蟲にした、お前の妹がお前を呼ぶ声が。』

「ああああああああああああああああああああああああ!! 違うううううううううううううううううううううううう!! お、俺じゃ、おおおお、れじゃないいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 男は泣きわめき、耳を両手で塞いで頭を振り乱した。

『…………俺の目を見ろ!!』

 もはや救いの余地はない。そう見切りを付けたゴーストライダーのペナンスステアの力が男の精神を襲った。

 男は己が犯した罪の痛みと悲しみと絶望に耐えきれずに、精神を崩壊させた。受けた罪の苦痛のほとんどが妹のものだったことも精神が耐えられなくなった原因かもしれない。

『死んでから地獄に落ちて、やっと自覚できるんじゃねーか?』

 生きている間にこの愚かな男が自分の罪を認めるのは死後であるとザラゾスは言う。地獄と強い繋がりを持つザラゾスがこう言うのだそうなるのだろう。

 男が廃人となった影響か死にかけていた出来損ないの地震蟲の命が尽きる速度が増した。血縁関係の繋がりが強い肉親から作られた蟲だからこの男の健康状態に影響されるのだろう。どっちみち助からない、生きることさえできない運命にあった出来損ないの地震蟲の命がついに尽きる、その瞬間だった。

 どこからか小さな何かが地震蟲の溶けかけた胴体に当たった。

 その瞬間に当たった箇所から炎が燃え上がり溶けて広がった地震蟲の全体に広がった。

 命が尽きる直後だったのにその一撃で地震蟲が断末魔の悲鳴を上げてまだ形が残っている部位だけで暴れた。尽きる直後の命だったが永遠の安息に落ちる直後で灼熱地獄に放り込まれてそれによる混乱と苦痛に残りの命の力で必死に苦痛から逃れようともがき苦しむ。

『ーーー!』

 十秒とせずゴーストライダーの鎖が地震蟲を焼く炎を消すために伸びるが、その鎖が炎に触れた途端に脆くなって崩れて落ちた。

『な…。』

『ほう? これは…。』

 ゴーストライダーが驚いているのとは対照的にザラゾスは感心したように声を漏らす。

 消せなかった炎は地震蟲を燃やし勢いをつけていく、暴れていた地震蟲は悲鳴さえもう出せなくなりついに力尽きた。

『これの消し方はこうだ。』

『!』

 ザラゾスがゴーストライダーの片腕を使い再度鎖を放つと今度は崩れることなく鎖が炎を絡め取って消し去った。

 後に残ったのは黒焦げになった出来損ないの地震蟲の亡骸だけ。そしてそのことについて廃人になった男はもう認識できない。

『……ねえ、ザラゾス。これはどういう…?』

『まがい物だろうとまがい物なりの使い方ってのがあるからなぁ…。』

 ザラゾスの呟きのあとに地面が揺れ始めた。

 出来損ないの地震蟲が起こした地震が横揺れだったとしたら、次の地震は縦揺れだ。

 徐々に強くなる地震は出来損ないの地震蟲が起こした地震の比ではない。

「お、おおお!? ゴーストライダー! なにが起こって…!?」

「緑谷!」

「ーーーなんか来る!?」

 立っていられなくなったオールマイトが地面に這いつくばる傍ら、轟と爆豪が何かの気配を感じてゴーストライダーに顔を向けた。

 フェスの会場の地面が盛り上がる。実際には地面は動いていないが実体のない物が地面から出てきて巨体を顕した。

 出来損ないの地震蟲の倍以上巨大で形状はイモムシよりはイモムシとムカデを掛け合わせた体とムカデのような無数の足を持っていた。体の色や模様も違いまったくの別物のように見えるが、だが頭の先端にある長い触覚は出来損ないの地震蟲によく似ていた。

『コイツは…。』

『まがい物に触発されて本物が来たってことだ。』

『本物? これが…地震蟲。』

『コイツはこの日本という地でかーなり大昔から抑え込む封印に要石を使い続けられてるらしいが、誰かが大人しくしてたのをワザと叩き起こしたってところだな。』

『なにを理由に…。それよりも!』

『ややこしいが、ここに出てきたのはコイツの力がまがい物の傍で少し目に見えるようになってるに過ぎない。これからこうやって動きますよーって。本体はまだちょっと身を捩ろうとするかしないかってところか。動かれたらデカい地震が来るぞ? こんな大都会で大地震が起こったらどーなるか、火を見るよりも明らかだろ?』

『どうしたらいい?』

『そんなもん………………、元の位置に押し込むだけだろ? タイミングよくデカい体の魔獣もいるしな。』

『多部さん!』

 ザラゾスの言葉によって何をすべきかすぐに理解したゴーストライダーが多部を呼んだ。

 出来損ないの地震蟲の時にすでに近くでゴーストライダーの補助が出来るよう待機していた治崎達の中にいた多部が反応し、治崎が行けと合図し多部が飛び出して行った。

『地震蟲を押さえて!』

 まだ細かい制御方法は身につけていないが大雑把になら使うことはできる。

 飛び出して行った多部が地震蟲に向かっていく最中、多部の背後に大きな魔方陣が光を弾かせながら出現し多部の体に大きな変化が起こる。

 腹を中心に大きく裂け、そこを中心に一気に膨張して紫色のような体表を持つ巨体へと変貌していく。

 裂けた腹の部位が巨大な口へと変形し、唇の無い大きな口に並んだ白い歯、多部の頭部以外に多部と同じぐらいの大きさの3つの別の頭が生じるがそれは人間に近いようで違う生き物だ。

 巨大な複数の手足と胴体が地震蟲の上にのし掛かり地震蟲の頭の下辺りを大きな口で噛んでまるで肉食獣が獲物の喉笛を噛んで押さえ込むようにした。

 そうすると地震が弱まる。完全な形で身動きが取れない地震蟲ではベヘモスを振り切れず簡単に抑え込まれるのだ。

 ちなみにここにいるベヘモスは多部を触媒に人間界に出現していて制限がかかっているので、実物の地震蟲に比べると小さかったりする。

「これが…ベヘモスか!」

 治崎が初めて見る『地獄の大食漢ベヘモス』に驚いていた。

 今表層に出ている本物の地震蟲の一部より明らかにデカい。その巨体に多部がオマケで引っ付いているようなおかしな状況だが今は細かい制御抜きでベヘモスを使っている状態なので致し方ない。強いて言うなら深海に住む大きなメスに口から融合している小さなオスという生態の魚のような…。

 自分より巨大なベヘモスに地面に押え付けられた地震蟲は身を捩って脱出をはかろうとしていたが、そこへゴーストライダーが跳躍してきて地震蟲の頭の先端にしがみつく。

 そして右拳を振り上げた。鎖と炎を纏わせて。

『ここは居心地が悪いと知れ!』

 そう叫んでから地震蟲の頭の先端部位に拳を突き刺した。突き刺した部分から炎が漏れて地震蟲がもがき苦しんだ。

 完全に脅しだが仕方が無い。ハッキリ言って地震蟲に罪はない。地震蟲は出来損ないの地震蟲に磁石のように引っ張られてちょっと出てきてしまっただけなのだから。

 少しだけ何者かのダメ押しがあって本物が動く事態になったが……、地震蟲は利用されただけでむしろ被害者。

 地震蟲が地面へと沈んでいき、突き刺していたゴーストライダーの腕が抜け、地震蟲を押え付けていたベヘモスが残った。

 地震も止まり、ゴーストライダーがベヘモスに向き直り片手を出す。その動きでベヘモスにたいして頭を下に下げろと示しており、それを察したベヘモス(多部)が上体を下げて口の下辺りをゴーストライダーの手に触れるようにさせた。

 逆再生するようにベヘモスが縮んでいき最後に元通りの多部になった。

『……ご苦労様。ありがとう。』

「俺…役に立てた?」

『もちろん。すごく助かった。』

「ほんとう!?」

 多部は目を潤ませて泣き笑った。

 恐らく彼にとって人生で初めて誰かの役に立てて褒められた嬉しいことだったのだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 結局お米料理フェスは、突然の地震による被災で半壊することになった。

 万が一の非常時に対応できるよう予めの備えはしてあった、だがまさか個性云々ではなく呪術の類いを応用した人身を犠牲にする呪いによる災害が起こるなんて現代社会で想像もされないことだった。

 出来損ないの地震蟲よりも、その後に出現した本物の地震蟲による被害の方が大きかったのは言うまでもなく、飲食店や販売店、展示物、何よりこのフェスに来客していた客と会場スタッフ達が被った害が大きかった。

 幸いにも死者は出なかったが人が多いことで起こったパニックによる怪我と、地震で倒れる会場の備品や店の簡易テントが倒れたときに巻き込まれるなどで負った怪我。地震が止まった後、その場で医療スタッフが応急処置をし救急車で病院へと搬送されたがこれまた幸いなことに骨にヒビは少し入った者はいても骨折ほどの大怪我人は出なかった。

 出来損ないの地震蟲をこの会場に放った張本人で家族殺しを行った男はゴーストライダーのペナンスステアで廃人になり、そのまま警察へと引き渡された。事情聴取もできないためこのまま精神病棟のある刑務所行きだろう。後日に彼と彼の家族が住んでいた実家から殺害現場である証拠と、殺害に利用された凶器と、怪しい呪術の儀式の跡が発見された。両親と思われる遺体の骨の一部は発見され大量の血痕も両親のものと判明したが、歳の離れた妹だけは発見されなかった。

 犯人の男は鍵付きのSNSを日記代わりにして地震蟲を使った大量虐殺とシンリンカムイへの復讐までの計画も綴っていて、殺害された家族の姿が見られなくなった時の近所の人達からの証言との照合も取れて事件が単独犯であることも分かっていった。

 会場で片付けられることになった出来損ないの地震蟲の亡骸を崩す際に黒焦げた炭状態の中から幼い子供の白骨が出てきて、回収後に調べられ犯人である男の妹であるという結果が出された。

 男がやった呪術について詳しい話を出久を通じてザラゾスに求められた、それによると蠱毒を悪い感じにアレンジした粗悪だと語った。

 そして出来損ないの地震蟲を燃やした炎は、神の気を持つ神聖な力の炎だったため悪魔の力の鎖を崩すことができたという。しかし力としては脆弱だったためザラゾスほどの強者なら消すのは簡単だったらしい。

 

 

 

「緑谷くん…、私ね、ちょっとだけ思った。」

「なに?」

「あの犯人…、誰かのせいにして何もかも押しつけたいって気持ち…、分からなくもないって…思っちゃったんや…。」

「…そう思うのは悪いことじゃないと思う。」

「……それで思い出した。神野事件の時にね…、ヴィラン連合のひとりに私の家族への誹謗中傷とか見せながら、言われたこと…。『腐っていると思いませんか? 守るに値しないと思いません? ヒーロー志望のあなたにはお辛いでしょう?』って…。この世の中が酷いって…意味なのは分かってた…。でもそれでも信じたいって、守りたいって、頑張りたいって、だからヒーローになりたいって思った。でも…、あの犯人さんの動機とやったこと……、それ知って…、あんな人でも法律で生きることが保障されるし、廃人にならなくっても裁判の判決し次第で無罪になるってこともあるってことも、そう考えたら……、なんでだろう……、なんて言ったらいいか上手く言えないけど…。」

「…頑張るの……、嫌になった?」

「!」

「嫌になって投げ出して、逃げるって選択肢も悪いことじゃないんだよ。受け止めて、受け止めすぎて辛いばかりで押しつぶされてしまうだけが生きることじゃないから。でも、麗日さんは、たくさん考えて悩んで…、でもどうしたいかってことは答えは出てるんじゃない?」

「……も~、緑谷くんには敵わんわ…。辛いよ…、悲しいよ…、でも…、でも…! 私はヒーローになりたいんや!! あの犯人さんみたいに他の誰かがならないように、どうしたらいいかまだ分からないけど、それでも誰かが悪いことをしてしまうほど辛いのを助けられるなら!!」

「うん。同じ事が繰り返されたらいけないね。そのためにできること一緒に考える?」

「えっ!?」

「俺とは嫌?」

「そ、そんなことないよ! ただビックリしただけだから!」

「そっか。それならよかった。これからのこともだけど、麗日さん、残念だったね……。」

「えっ?」

「お餅…残念だったね。」

「あっ…、考えないように…してたのにぃぃぃ…。」

「ごめん…。」

 フェスが中止になり麗日人生で至高だったお餅が食べられなくなってしまったことを思い出した麗日はその場に崩れ落ちて泣いた。

 

 余談だが、事件の事後処理が大方終わったあとに、出久が麗日が大感動していたあの店の商品である大福と柏餅をスーパーで発見し麗日に買って帰ったところ泣きながら抱きつかれてものすごく感謝され、ついでにフェス参加の別地方の飲食店の一部がお餅とお団子が売りの甘味処を開店したため、仕切り直しだとザラゾスに茶化されつつ出久が麗日に甘味処へのお出かけにと誘ったのだが麗日が顔真っ赤にして鼻血を噴き出させてぶっ倒れ、峰田にリア充殺す!っと血涙流されて罵倒されるとかちょい事件になってしまったのは別の話である。

 ちなみにスーパーで売られていた理由はフェスのために用意していた材料がたくさん残ってしまい大きな損失になってしまい、それをなんとかしなければとフェス開催者がお餅の店以外の他の参加店舗のことも考えて損失を少しでも少なくするためにスーパーなどの販売店に残った材料から作った商品を販売するようかけあい短期間だけだが大々的な売り場を作ってもらったからだ。

 これには商品を販売している大元の店の宣伝もかねている。

 フェスは最初の日の事件によって残りの開催日も中止になったが関係者達の頑張りで損失を軽減することに成功し、SNSなどを通じて通販による販売も盛況になり、一部商品が予約待ちとなるぐらいになったとか。

 

 

 

 

 




大きな事件になってしまったのでお米料理フェスは中止に。
麗日とのお出かけイベントも色々とおじゃんなったけど、最後の方で仕切り直しのように甘味処へ誘う出久。赤面して倒れる麗日。
たぶん寮に帰還後にお仕置きくらった轟と爆豪がまた邪魔しに来る。で、またお仕置きループ。

地震蟲についてはある漫画作品を見て初めて知りました。
ナマズと地震の関係についての話はよく耳にしましたが、江戸時代前は地震蟲の方の話が主流だったらしいとか。
地震蟲の姿はネット情報を参考にしつつ捏造しています。
出来損ないの地震蟲は、それっぽい力と蟲って共通点だけありますが本物とは程遠いです。

出来損ないの地震蟲にトドメを刺して本物を呼び寄せるのに利用した何者かは次回ぐらいからオリジナルエピソードのヴィランとして登場させようかと考えています。
ちなみにブラックハートではない。

出来損ないの地震蟲を作ったシンリンカムイに逆恨みする男については、過去の胸くそ悪い事件を参考に考えました。
思い込みとそれによる逆恨みの狂気は恐ろしすぎます……。

多部から出現したベヘモスの姿の描写は、『地獄の大食漢ベヘモス』の元ネタにした漫画の描写を参考にしています。
ちなみに本来のベヘモスよりは小さいという設定にしています。

次の短編のネタにするなら?

  • 妖怪ウォッチ
  • すまっしゅ!!
  • それ以外の怪異や、妖怪など
  • SCP
  • いや、連載の続き書けよ
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