〇〇泊地所属軽空母「ほうしょう」   作:堀井 椎斗

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堀井 椎斗です。
前作も感想ありがとうございます。もう「続きを楽しみにしている」という声を聞くだけで一時的にキラキラモードになれます。まぁ、お仕事してる間に赤疲労になってしまうのが問題ですが((
今回はいよいよ辿り着いた泊地でのお話です。


10話 宿毛湾泊地

宿毛湾泊地。

かつては太平洋上での演習から帰投した艦隊が、一時的に休息するためのスポットだった。また、立地的に都合が良いこともあって全速航行試験の海域にもなったり、あるいは二・二六事件の際に演習のために停泊していた艦隊が出撃したポイントでもある。

そんな泊地は今、簡易的ではあるが庁舎や工廠などが立ち並んでいる。側から見れば、一鎮守府と言っても差し支えないほどには発展を遂げていた。

時間は既に21時を過ぎている。目線を下ろしてみればやっとの思いだろう、母港へ帰投してきた飛鷹率いる第二遠征艦隊の姿が見える。そこには遠征に出した5人の他に、帰投中の報告であった見慣れぬ艤装を纏う鳳翔らしき姿があった。

庁舎の2階、執務室から腕を組みつつ彼女達を見下ろす背の高い艦娘ー「長門」はこれから起きるであろう様々な事を案じていた。

 

 

到着後、艤装を解除した飛鷹たち5人から今回の遠征について報告を聞く。

航空基地の機種転換は無事終了し、古くなった九六艦戦を持ち帰ってきた事。途中の接敵はなくほぼ決めた通りのルートで行けた事。

 

そして、道中で軽空母「ほうしょう」を“保護”した事。

 

その時の事細かな情報ももちろん伝えられ、秋雲の書き残したスケッチで視覚的に状況が分かるように更に説明が入った。

 

「うむ...分かった。今回もよく頑張ってくれたな。ただ隼鷹...お前また任務中に呑んでやらかしたのか...しばらく禁酒令と酒没収だな。」

「...え゛?」

 

隼鷹からしてみれば残酷でしかない指示に思わず変な声が漏れる。

 

「え、も何も...これじゃまるで遠征任務をしに来たのか遠征で呑んだくれて邪魔しに来たのか分からんじゃないか...とにかく、この処置に異論は認めんぞ。」

「うあぁぁん!こんな仕打ちなんて嫌だあぁっ!」

 

自業自得である。

 

「それから響も...大発に何を積んで来たかと思えば、ボーキサイトじゃなくてウォッカじゃないか...艦隊運営に関係ないものを持ち帰らなくて良いんだぞ。しかも飲んでるし...」

「おまけにこの破けたページは何だ?すごく小さいが『響がやりました』と書いてあるし...何があったんだ一体?」

 

破かれたスケッチブックの端切れ、そこに秋雲がいつの間にやら書き込んだのだろう、『響がやりました』とまるで新聞の書かれている本文の文字の大きさ並みに小さく書かれている。

 

「んあぁ〜、それね。敵意があるのかもしれないって勘違いしたほうしょうさんが、艦載機をこっちに飛ばしてきた時に、酔っ払った響がウォッカと紙で即席火炎瓶を作って対空戦を展開しようとしてた訳よ〜。それの名残!」

 

秋雲がその時の状況を簡単に説明する。まぁ何も描いてなかったページだからそこは良かったけどねぇ〜、と後付けで独り言のように呟いた。

それを聞いた長門がやれやれといった表情になり。

 

「...まぁ迷惑かけた隼鷹よりはまだマシな方だろうから良いだろう。良く言って機転を効かせたやり方だからな。お咎めなしだ。」

Супасиба(スパシーバ)。」

「えぇぇちょちょっと!?響だって酒飲んでたのに何でこんなに扱いが違うのぉぉ!?」

「少しぐらいはやったことを振り返らんか!?」

 

 

執務室の扉越し、廊下で呼ばれるのを待つほうしょうは、聞こえてくるそのやり取りに少しだけ笑いそうになってしまった。ここの泊地はいつもこんな感じなのだろうか?

笑いを飛ばすように咳払いをしてまたしばらく待っていると、両開きの扉が片方だけ開く。

 

「ほうしょうさん、長門さんと話する時間だよ。...艤装をぶつけないように気を付けてね?」

「...扉の枠が小さく見えるので、少し心配ですね。」

 

時雨の呼び掛けに苦笑いを浮かべながらドア枠を見る。自分の身長から見れば、頭をぶつけないかヒヤッとするぐらいの高さだ。これが日本人サイズということだろう。まさか自分が自分の頭を心配しなきゃいけない日が来るとは。

しかも今回は、どんな艤装を付けているのか見たいというものだから、艤装を装備した状態でここにいる。日本人サイズのドア枠に下手したら甲板の後部あたりがぶつかってしまうかもしれない。

もし本当にぶつかりそうになったら、少し屈んで行くとしようか...そう思って、開け放たれた扉の前へ一歩踏み出した矢先。

 

「あぇ...うわわぁっ!?」

 

声が聞こえたと同時に後ろから思い切り追突されて、押し倒された状態で執務室にいる艦娘達へ姿を現した。何やら背中が熱いし濡れている。

 

「あぅ、えっ?あぁ、あああ〜〜〜〜っ!!」

「...またこぼしたのかい、五月雨...。」

 

またか、と仕方なさそうな顔で見る時雨と倒れたほうしょうの後ろであたふたする五月雨。

狙ったかのようなタイミングだが、どうやら淹れたお茶を持ち運んできた時に何かで足を引っ掛け、そのまま前にバランスを崩して倒れ込んできたようだ。あたり一面の床がお茶で濡れ、茶飲みが数個散乱している。あまりに不本意な出来事に思わずほうしょうはジト目になってしまった。

 


 

「改めまして...はじめまして。日本国海上自衛隊 第一護衛隊所属 CVL-1『ほうしょう』です。不束者ですが、よろしくお願い致します。」

「はじめまして、だな。私は戦艦『長門』だ。よろしく頼む。まずは何だ...隼鷹(こいつ)が迷惑をかけたようで、申し訳ない...。」

 

隼鷹の頭を押さえて無理やり頭を下げさせ、長門も自ら頭を下げる。いててて、と隼鷹の悲痛な声が聞こえてくるが気にせずにおいた。先程背中からのシャワーを浴びせた五月雨も一緒に横で頭を下げている。

 

「あぁいえ...こちらから以後気をつけるように申しましたので、今後は突飛な行動は慎むと思っています...メイビー。」

「...何かやりっ放しな感じがしなくもないが...それは置いておくとしよう。それにしても、ある程度時雨や秋雲のスケッチから貴艦や組織のことを見聞きしたが、見慣れない艤装だ...。」

 

地面に足をつけた状態で見れば、それが艦これ世界でどんなに特異な存在かがよく分かる。

軽空母と名乗っていたが、身長や艤装だけを見れば護衛空母と装甲空母を足して2で割った容姿に近い。左腕に付けられた甲板はフラットで灰色。専ら大鷹や神鷹が付けているような甲板に似ているが、木材を使用している感じはなく装甲が張ってあるような見た目に、艦尾の着艦標識はなくほぼ長方形。中央からやや左に逸れたところに黄色のラインが引いてあり、所々にアスタリスクの半分を描いたようなマークがある。

右腰元に矢筒がついているが、矢羽が灰色に塗られたものが12本入っている。矢羽の色が違うのは少し気になるが、他の艦娘でも矢を用いて艦載機を発艦させる事はやっているのでそこまで違和感はない。それよりも気になるのが、左腰元に付けられたポーチである。ただのポーチであれば良いのだが、その中に日の丸が描かれた白の小さな畳まれた何かが入っている。それも何かしらの艦載機になるのだろうか?

また矢の発射方法は弓ではなくクロスボウ。しかもカプセルの形状をした何かがその上についている。肩に12cm30連装噴進砲に似たような箱上のものが載っているが、それにも同様にカプセルの何かが付いている。軽空母なのにクロスボウを持っている、それだけでも訳が分からないのにほぼ全ての艤装が見慣れない、知らないもので混乱してくる。

顔には少し太枠の黒縁眼鏡がかかっているが、うっすらと何か鏡面に映っている。口元にはマイクがあり、片耳イヤフォンから伸びているようだ。

身長はもはや翔鶴や瑞鶴、加賀の身長に近い。これで軽空母だと言うのだから、正規空母ではどこまでの身長になるのだろうか?

 

「...あの〜、先ほどから私の装備を見てるようですが、何か問題が?」

「いや、問題しかない。こんな分からないものだらけの艤装を見させられてずっと混乱しっ放しだ。...まぁ、細かいところや性能については明石に見てもらった方がいいだろう。」

 

咳払い一つついた後、長門から「本題」が切り出される。

 

「さて、貴艦についての扱いだが今は『保護』という扱いになっている。他の鎮守府から迷子になってしまったり、任務中に逸れてしまった場合にこちらで『保護』をして、休憩・準備をさせた後に元の鎮守府に帰すのだが...別世界から飛んできたんだ、所属鎮守府というものも無いだろう。そこで我々の泊地、宿毛湾泊地の所属として是非来て欲しい。此処でなくとも、他の鎮守府で拾ってもらうのもよし、海上をひたすらに放浪するのもよしだが...正直それをするぐらいであれば、此処に居てもらった方が良いと私は思う。外はあまり良い噂は聞かないからな。出来る範囲であれば貴艦の要望も聞き入れよう。全ては貴艦の判断に任せる。」

 

周りの妖精さん達に目を配ってみる。艦長妖精さんはやはり艦である私の一存に託すようだ。他の妖精さん達からは、殆どが此処に居付くべきという声が上がっている。中には放浪はもう疲れた、という声も聞こえるが。

 

「...正直海の上を放浪したところで、補給がなければ何も出来ずに沈んでしまうだけです。他の鎮守府にも行ったところで、此処のように快く拾って貰えるとも限りません。それであれば、此処に居させてもらいたいと思います。本当によろしいのであれば、どうぞよろしくお願いします。」

 

長門に向かって深く一礼をする。

 

「...ありがたい、これなら奴らと足並みが揃えられる...」

「...? 奴らとは...深海棲艦のことでしょうか?」

「あ、あぁいや、何でもない...気にするな。」

 

小さい声ながらも聞こえて来た呟きに反応すると、それに触れないでくれと言わんばかりにはぐらかした。...少し何か事情がありそうだ。ただ今すぐに触れようとするのはナンセンスだろうか。ひとまずスルーすることにした。

 

「ともかくだ。私たちは歓迎しよう。空母戦力はあまり居なかったから助かる。」

「厚かましいようですが、早速一つお願いを聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

「む、なんだ?」

「この泊地の所属にはなりますが...表向きではあくまで「日本国 海上自衛隊」の一員としてありたいので、ある程度の単独行動権を与えてもらってもよろしいですか?」

「単独、か...まぁ、許可はするが行動中に接敵が起きてもすぐに助けは出せない。そこは念頭に置いて行動をしてほしい。あとは...艦隊の出撃メンバーに加わった際はそちらが優先だ。それも承知しておいてくれ。」

「分かりました。多大なご配慮、ありがとうございます。」

 

 

「改めて...ようこそ、宿毛湾泊地へ。我々は貴艦『ほうしょう』の入港を歓迎する。」




書いていたらまさかの4000文字オーバーになりました((
むしろ文量このぐらいを目指した方が良いですか?
中々執筆が難しいところであります...。

次回は前話でちょこっと出た「もう一人の私」のお話です。
どうぞお楽しみにしていただければ幸いです。

泊地内でほうしょうと他艦娘の交流(主にボードゲーム)を番外編で書く、と言ったら読みたいですか?

  • 書かれてたら是非読みたい
  • 番外編は正直いらない、本編だけ読みたい
  • 本編と番外編1:1で書け
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