お気に入り500件突破してしまいました。ついでに総合評価も900pt突破間際です。上手く書けている自信があまりないのですがどうしましょう((何を?
今回は「もう1人の私」のお話です。序盤は少しだけ時間が遡ります。
最初は異世界に転移したことなんて、分かりもしなかった。
演習4日目の日。ほうしょうを旗艦とした艦隊は、爆弾低気圧が演習海域付近を覆う中、ひたすら演習地点に向けて航行を続けていた。逐一ほうしょうより船体の無事を訊ねる無線が飛んで来ていたのだが、途中からピタリと止んでしまった。何事かと思いきや、異変は次々と起きる。衛星との通信ロスト、先程まですぐ近くにいた僚艦と逸れ、通信も使えない。挙げ句には雷が船体にダイレクトヒット。そこから何故か分からないが、異世界転移でどうやら艦これの世界に来てしまったとCICの妖精さんが言う。どうやら艦これというゲームをやっていたようで、今起きていることとほぼ合致しているらしい。
右手には62口径76mm単装速射砲。ただ一回り小さくなったのとグリップとトリガーが付いており、銃を扱う感覚で使用できる様になっている。太ももには短魚雷発射管。これも一回り小さくなっていて装備していても邪魔にならない程度になっている。背中には排気口近くが黒く塗られた機関部を背負っている。脇腹あたりでどうも固定しているようだが、四角い形状だからかリュックサックを背負っている感覚に近い。そして何故か左腕には錨が巻き付いている。近接攻撃に使え、というお達しなのだろうか?
転移してからも更にドタバタは続いた。どうやら深海棲艦と呼ばれる敵がわんさかいる場所へ転移してしまったようで、ありとあらゆる手段を使って脱出をしなくてはならなかった。最初は接近するなと警告するも、言葉がまるで通じない。立て続けに襲ってくる駆逐イ級や駆逐ロ級を90式艦対艦誘導弾と速射砲で撃沈させ、遠くから飛んでくる大口径の砲弾を急な加減速で狙いをつけさせない様にしながら回避、飛んでくる飛行機には短SAMとCIWSをフル稼働させて撃ち落としていった。
太陽が沈み夜の暗さが包み始める頃、やっと敵の少ない海域まで逃げてきた時には、90式や短SAM、CIWSは全て弾薬切れ。残る主砲の弾薬もあと少ししか残っていなかった。このままでは弾薬が全て尽きてしまう。そうなったら自衛が使えずあとは回避しか手段が残らない。今回こそ相手がまだ弱いものばかりでほぼ無傷で済んだから良いものの、次あのような戦場に巻き込まれたら艦命が危うい。
この先どうしようか相談を持ちかけたところCICの妖精さんから、ひとまず艦娘と呼ばれる、今の自分と同じ様に艤装を背負った少女を探し出して、所属鎮守府に補給をお願いした方が良いのでは、という助言が入った。見知らぬ世界の施設で修理や補給を受けるのはかなり抵抗があるが、今はわがままを言ってられる状況にない。その案を採用して艦娘を探した。
夜は更に更けて暗闇が支配する海の上、レーダーを使って捜索を続けていると、レーダーマップ上に複数の点を発見する。2つの点と、少し離れた場所に6つの点。6つの点は単縦陣でいるので分かりやすいが、2つの点は重なり合っていてよく目を凝らさないと分かりづらい。
艦娘と深海棲艦との戦いである可能性があるのでそちらへ進みつつ、レーダーで様子を伺っていると、CICの妖精さんがその様子を見て声を上げる。
「...これ、ビラ・スタンモーアやせんのさいげんじゃないか...?」
「...?何かしら、その...ビラ・スタンダード夜戦?」
「スタンモーアです。べーぐんのレーダーしゃげきで、いっぽーてきににほんのくちくかんがうちのめされたってゆーたたかいですよ。」
「ふぅん...?そんな夜戦が大戦時にあったんだ、その...ストダード夜戦?」
「だからスタンモーアです。たしかそのときしずめられたくちくかんがみねぐもと...」
と続きを言いかけたところでハッとする。そうだ、この夜戦には村雨がいる。名を受け継いで4代目のむらさめから見れば、白露型の村雨は2代目なのでいわば祖母のような存在だろう。
その艦娘が目の前で沈む。どうだろうか?見るに堪えないだろう。
「むらさめさん!!!あの6せきをつぶすきょかを!!!」
「んあぁぁいっ!?イヤフォン越しで怒号をあげられても聞こえないんですけどぉ!?」
急な進言に周りの妖精さんからも声が上がる。
「んぁ!?しょうきかおまえ!?こっちからせんそうふっかけるきかよ!!?」
「あのやせんでしずんだくちくかんに、むらさめがいるんです! あなたのそぼといえるそんざいです! このままじゃふたりとも...!」
「...あの先に、もう一人の...私...。」
「おま、ばかいえ!いくらかんめいがおなじでなじみがあるとしたって、おれらがわざわざかいにゅうするほどでm「ブラ・スタッカート夜戦で沈む歴史、塗り替えちゃうからね!総員、対水上戦闘用意!!」
「ふぁ!?」
「だからビラ・スタンモーア!!」
むらさめの決断は早かった。村雨の名前を出しただけで6隻を潰す選択を取ったようだ。
「レーダー捕捉中の6隻、電子戦用意!まずは目を潰しちゃうわよ!EA攻撃始め!」
「まじかい...んんっ、EAこーげきはじめ!」
妨害電波が6隻の艦隊へ向けられて照射される。
突然レーダーの目を潰された深海棲艦側は、何が起きているのか分からず混乱し始める。
「どうもきいているようです。てきかんたい、じんけいがみだれはじめました。」
「そしたら一気に決めちゃうよ!最大船速!主砲SAPOMER弾用意!近付きつつささっとお片付けしちゃうから!」
主砲を敵艦隊のいる方向へ向ける。真夜中かつ明かりのない海上。肉眼では到底見える範囲ではないが、レーダーのおかげで全艦艇の位置・自艦との距離が把握できる。
「しゅほーそうてんヨシッ!」
「トラックナンバー1388から1394、主砲撃ちー方始め!」
それぞれの艦艇に向けSAPOMER弾が発射される。元の世界での主砲の使い方といえば、専ら迫るミサイルへの自衛行為として発砲するだけで、対水上戦闘でここまで使用する頻度が増えるとは思ってもみなかった。その新鮮さからだろうか。撃っていてどこか楽しさを覚える。
カタログスペック分間80発。昼から撃ちすぎたせいか少し連射が遅くなっている気がするが、大戦時の主砲では出し得ない圧倒的な連射速度で一隻ずつ潰していく。76mmという小口径なので装甲のある艦に対してはダメージが出しにくいが、どうやら今回相手しているのはそこまで分厚い装甲を持った艦隊ではないようだ。
そこまで時間がかからないうちにレーダー上にあった6つの点は消失した。
「...よし、
「たいすいじょーせんとー、ようぐおさめ。もうざんだんがありませんな。」
「各部、残弾はそれぞれいくつ残ってる?」
「たいかんミサイル、SAM、CIWSそれぞれだんやく0。しゅほーもSAPOMERだんはいまうったものでさいごです。あとはりゅうだんが10はつていどしかありません。ぎょらいはたんまりとあります。」
「了解、これじゃあ撃ちすぎだって帰ったら怒られちゃうわね...あ、いたいた」
全速力で2隻側へ航行していると、姿が見えてきた。
「はいはーい! 大丈夫?もう1人の私」
白露型駆逐艦「村雨」と、むらさめ型護衛艦「むらさめ」が初めて邂逅した。
「あ、貴女は...誰...?」
「むらさめ型護衛艦1番艦「むらさめ」。簡単に言って、未来の貴女よ。それより、見た感じ大丈夫ではなさそうね?」
未来の...私?言っていることがよく分からない。
確かに見た目は私に瓜二つだ。ただ身長は軽巡洋艦クラスの高さでもあるし、武装も全く見慣れないものを付けている。眼鏡とヘッドセットもかけているし、おまけにたわわなものまで...。
「私も弾薬がもう少しで尽きちゃうから、貴女の鎮守府まで案内してほしいの。もちろんそこまで護衛はするわ。まず方向をー...って、聞いてますー?」
目の前で手を振られてハッとする。考え事に完全に意識が呑まれていた。
「えっと、ごめんなさい。全く聞いてなかった...」
「んもぅ、もう1人の私にも話聞かれないって、不貞腐れちゃうぞー...まぁいいわ、貴女の鎮守府まで行かせてほしいの。貴女ともう1人、峯雲さんだったかしら?貴女たちの護衛はもちろんするかr「ちょ、ちょっと待って!」
村雨がすかさずストップをかける。
「えっと...護衛をしてくれるのはとても嬉しいのだけれど...鎮守府近くまでにしてもらえないかしら?弾薬と燃料はもちろん後から持ってくる、そこは約束するけれど...あの鎮守府に貴女を巻き込みたくないの...」
言葉を紡ぐ村雨はどこか震えている。なるほど、鎮守府内に入れたら何か問題があるみたいだ。よっぽど見られたくないものがあるからなのか、それとも面倒事に巻き込まれてしまうからなのか。
村雨をよく見てみると、ある点に気づいた。明らかに被弾して付くような傷ではないものが付いている。となると、後者の面倒事の可能性が高いだろう。
「...もし私が、面倒事に巻き込まれたい、って言ったら...貴女はどうするつもり?」
「え...?」
「おそらく、イジメか何かの関連と見たわ。多くの人は巻き込まれたくないから、貴女の指示に従ったり、見ないフリをすると思う。ただ何ででしょうね...?私、そういうのには首を突っ込みたくなっちゃうの。特に貴女が、もう1人の私が関わっているのなら、尚更にね。」
「...」
「本当に首を突っ込んでほしくないのであれば、仕方ないけど手を引く。貴女の指示に従う。ただ、これだけは言わせて。貴女が何か困っているなら、助け出してあげたい。何としてでも、ね?」
出来るならあの鎮守府には未来の私を巻き込みたくはない。未来の私には今の私の現状と同じところに置きたくない。いや、あの鎮守府の提督のことだ。私以上に何かするかもしれない。だから出来るなら避けてほしいのだ。私のことは知らなかったフリをして、輝ける別の道を歩んでほしい。ただ、貴女からそんなことを言われたら...
「...なら、助けて...くれる...?」
「ええ、今は貴女の護衛艦として、何とかしてみせるわ。」
少しだけ、信じてみようかな...?
面倒事に自ら巻き込まれに行ったむらさめ。この後はどうなるでしょう?
次回もこのお話の続きになります。ほうしょうパートはもう少し先になりそうです。
※ちなみに今回も4000文字突破しました。ストーリーの進め具合的にはこのぐらいの分量が何か良いような気がして来ました((