「構想は思い浮かんでるがそこまでどう繋げたら良いか分からない…まぁ適当に書いてみて繋げていこ。」
という感じで書いてみたら、前半こそ若干詰まったものの超えてしまえばめちゃくちゃすらすら筆が進んでしまったわけで。
過去最高の5336文字を観測しました((
なので普段よりは読了に若干時間がかかるかもです。
今回は村雨と合流した後の、所属鎮守府での出来事です。
トラック泊地。
かつてこの地は“日本の真珠湾”とも呼ばれた軍事上重要拠点で、陸上攻撃機が離着陸可能な滑走路を所持し、南方へ向かう連合艦隊主力の根拠地としても存分に利用された。大和と武蔵が並んだ写真が撮影されたのもこの地である。
ここの泊地も今では入渠ドックや建造ドックが建造され、一鎮守府と遜色ない設備を備えている。
そんな泊地にむらさめ達が到着したのは、夜が明けてからしばらく経った午前8時ごろのことだった。史実のビラ・スタンモーア夜戦は、ソロモン諸島コロンバンガラ島付近で行われた海戦のため、トラック泊地からは約2000km強離れている。ただ今回の夜戦は泊地近海警備中に遭遇したため、そこまで帰投に時間は掛からなかった。とはいえ、大破した艦娘がいる以上原速が基本だったのでその分時間はかかったわけだが。
「村、雨...さん...?ここ、は...?」
「峯雲さん、起きた!?あと少し耐えて!今入渠させるから!」
「......」
周りを見渡すことすらままならず再び目を瞑る峯雲。あの夜戦で敵砲撃の着弾位置が悪かったのだろう。意識が朦朧としているのが見て取れる上に頭部から出血している。村雨自身も今は峯雲一心で気付いていないだろうが、気を緩めれば痛覚が煩いほどに襲ってきそうな傷がいくつかある。
小走りで入渠ドックへ駆け込む。入渠ドックとだけ聞けば普通の艦船が修理するあの大きな施設が出てくると思うが、艦これの世界ではどうも専用のお風呂場が入渠ドックと呼ばれているようだ。
「むらさめさん!彼女を入れるの手伝って!服着せたままでいいから!」
「オーケー、焦らないでゆっくりね。」
3人とも服を着たままゆっくり湯船に入り、峯雲を肩を貸して支えながら下ろしていく。入る前にむらさめの適当な妖精さんに頼んで、近くにあった「高速修復剤」と書かれた緑のバケツを持って来てもらい、それを湯船の中に入れてもらったおかげか、傷がみるみるうちに癒えていく。頭まで沈めてしまうと今度は溺れる可能性があるため、頭部はむらさめの医務妖精さんにひとまず止血処理をしてもらった。峯雲だけではない。村雨もむらさめも、戦闘でついた傷は気付いた時には消えてなくなっていた。
「はあぁ〜...休まりますねぇ...。」
「そうですねぇ...って、そんな場合じゃない!」
村雨が急に立ち上がろうとするが、峯雲を支えてることを思い出して咄嗟に動きは止めた。ただ大事な何かはあるみたいだ、それも今すぐやらないといけないことのようでそわそわしている。
「...?何かあったの?」
「帰投したら必ず戦果報告をしなきゃいけないんだけど、まだやってなかった...もう30分ぐらい経っちゃったけど...」
戦果報告...となればここの提督と接触が出来そうだ。村雨のいじめ関連で何か情報が得られるだろうか?
「それなら私が行ってくるわ。提督にご挨拶もしなきゃいけないし。ゆっくりしてて?」
「...わ、分かった。けど...提督と話す時は十分気をつけて?あの人、貴女に何をするか分かったものじゃないから...。」
...話ぶりからして提督が絡んでいるのだろう。対人警戒を厳として行くとしよう。
「ちっ...どいつもこいつもろくでなしだなぁ!?」
「っ...!」
トラック泊地提督執務室前に辿り着いたむらさめ。扉の前に立ちノックをしようとした瞬間、中から何やら怒号が聞こえたので聞き耳を立ててみれば、誰かが殴られたような音が聞こえる。
道中すれ違う艦娘が、見慣れない服装を身に纏った“村雨”が通るのを見ていたが、どの娘も生力を感じれない目付きをしていた。一部の娘は村雨と同じく暴行を受けたような傷があった。そこに聞き耳を立てた結果聞こえたこの出来事。どうも提督が黒と見て良さそうだろう。
「たく、お前ら駆逐艦っつうのは...海域の突破にも使えなきゃ遠征に出しても失敗して帰ってきやがる...どうしてここまで使えねぇんだお前らは...なぁ、なんとか言ったらどうなんだ!えぇ!?」
「はいはーい!お説教中に失礼しますねー!」
バタンと勢いよく執務室の扉を開けて姿を表す。その音に驚いた2人がこちらへ振り向く。そこには白の軍装服に身を包み、手を挙げて殴ろうとしていた提督らしき男の姿と、頬を赤く腫らしてなお殴られる準備をしていた艦娘らしき姿があった。
「あ、あさしおぉーッ!」
「あぁなんというすがたに...ねぇ、あいつ、やっちゃってもいいよね?」
「やっこさん、おなじめにあいたいようですっ!」
「ステイ、ステイ。」
むらさめの近くでは、艦これに精通したCICの妖精さんを筆頭に、何人かの妖精が提督に向かって飛びかかろうとするのを、艦長妖精さんが抑えている構図が出来上がっている。
「あ?誰だお前?」
「むらさめ型駆逐艦1番艦のむらさめ、あなたのところの艦娘に拾われて来ました!よろしくお願いしますね!」
むらさめの艦艇番号はDD-101。日本では護衛艦と名付けられているが、アメリカの方では他国の駆逐艦と同じ系列で扱われている。また本来はDDという略自体もDestroyerを短くしたものになるので、駆逐艦という表記もまた間違いではない。
「駆逐艦だぁ?...へぇ、大層な体してるじゃねぇか。駆逐艦でもこんなやつがいるとはなぁ...?」
自分の体を凝視している。おそらく提督は自分のことをR18の方面でしか見ていない。確かに自分でも、よくここまで大きいなと思うほどのたわわなものが付いているが...。
「んで、誰に拾われたってんだ?」
「えーっと、村雨と峯雲の2人ね。」
「はっ!補給も修理もしてやんなくても、やりゃ出来んじゃねぇか!使えんやつばっかだと思ってたが、いい知らせだ。で、そいつらは今どこだ?」
「あ、その2人はかなり傷付いていたから、入渠しに行ったわ。」
「...は?」
声音が嬉しさの混じっていたものから一気に下がり、怒りの感情が混じったものになる。
「俺の許可なしに入渠しやがったのか!?誰が入っていいと言った!クソ野郎が!」
「まぁまぁ、落ち着きましょ。それに入渠については私の独断です。知らなかったものですから、ごめんなさいね...。」
「結構勝手なことしてくれるじゃねぇか。まずは俺の許可を取ってからにしやがれ。クソったれ...まぁいい、少し罰を受けてもらうだけで良しにしてやる。」
「罰ね...何をするつもりかしら?」
「そこに立ってるだけでいい。ちょっと俺と付き合ってもらうだけさ...」
妖精さんから朝潮、と呼ばれてたか。その艦娘をその場へ置き去りにし、げへへ...と欲望を隠しきれぬ声を漏らしながら、獲物を狙う動物のようにゆっくりとこちらへ迫ってくる。先程の言動からなんとなく察しがついたが、やはり自分の体が目当てらしい。手をわきわきとさせているところでもう確信犯だ。朝潮は殴られた箇所に手を当てて目を瞑り、必死に痛みに耐えているように見える。
「...ふーん?私をやるつもりなの?」
小声でそう呟く。間近に迫る獣物。自分の胸に手が触れる寸前で、両手で腕を掴みー
「セ・ク・ハ・ラぁっ!」
思い切りその獣を背負い投げしてやった。投げ飛ばされる瞬間に、ふおぉおっ!?と声が聞こえたが。受け身も失敗したようで、投げ飛ばされぶつけた箇所を痛そうにさすっている。
「あまり女の子を舐めちゃダメよ?貴方のような男から身を守る術がある娘だっているんだから。」
「はぁ...?何が女の子だ、笑わせる...!所詮お前らは兵器だろうが...!人間の皮を被った化け物め...!」
「...兵器?」
「あぁ、そうだ...お前らは兵器さ...!沈んでもまた造れる...いくらでも替はある、俺が行けと言えば従うだけのただの動く兵器さ...!」
「...そう。」
「貴方、兵器の手入れを怠るとどうなると知っているかしら?」
「あ...?」
「例えば銃がいい例ね。手入れがしっかりされている銃は、自分が撃ってほしいタイミングで思う通りに撃ってくれる。ただ手入れがきちんとされていないと、不発したり暴発したりするの。」
「何が言いたい...!」
「貴方は私を兵器だと言うのでしょ?なら...。」
後ろに隠しておいた76mm速射砲を素早く取り出し、クソ野郎と呼ぶべき対象に照準を向ける。
「ひっ...!?」
「今私は十分に手入れがされていないの。私がここで暴発したとしても何も言えないわよね?」
銃口を突きつけられた白軍装の男は、絶望を見ているかのような顔でただ口をパクパクさせるしかしない。
「兵器のせいにしたとしても、それはメンテナンスを怠った貴方の責任よ?おまけに兵器なら感情も心も何もないから、貴方を殺傷しても何とも思わないの。ただ誤って発砲しただけ、それだけになるの。ねぇ、聞こえてる?何か言ったらどうなの?ねぇ?ねぇ?」
言葉を使ってどんどん提督と呼ばれた男を捲し立てる。相手は何も言わない。ただ恐怖で泣きそうな顔をしてこちらを見ている。
「...司令官から、離れろ...っ!」
急に声がした。そちらを向けば、朝潮が持っていたであろう主砲をこちらに向けている。痛みに耐えつつもこの男を庇うようだ。
「...朝潮、貴方も十分に手入れがされていないように見えるわ。その主砲、果たして撃てるのかしら?」
「...」
静寂が提督執務室を包む。しばらくの間むらさめは男に、朝潮はむらさめに主砲を向ける構図が出来上がっていたが、少し経つとゆっくりと朝潮が主砲を下げた。弾薬の補給がされていないのだろう。
再び絶望が支配して全く動く気配のない男に顔を向けて、こう告げる。
「私も朝潮も、感情がある。痛覚がある。心がある。貴方と同じように。今こうやって貴方を撃たずにいるのも、心があるから。完全に人間だとは言わないけれど、それでも私達は、人間。今はそう思っているわ。」
主砲を徐に下げて佇まいを直すと、補給は3人分させてもらうね、と最初の元気な声で言い残して提督執務室を後にする。
部屋から離れて階段まで来た時、どっと力を抜いてだあぁ〜...とだらしない声を出した。
「はぁ...あんなに感情的になってしまったの初めて...疲れたぁ...。」
「むらさめさん、おもいっきしいかくしてましたね。ぐんきいはんマシマシじゃないですかやだぁ。」
「もはや海上自衛隊に属せるのかすらも怪しいところね...と、こんなことしてる場合じゃない。早く補給物資持って村雨さんの下へ戻らなきゃ。」
「あんまりいそがなくてもいいんじゃないですー?」
「...いや、急がなきゃ。多分私達を狙いに来るわよ、あいつのことだから。」
「うわ、むらさめさんがあいつ呼びしたー。いーけないんだーいけないんだー、せーんせーにーいっちゃーおー。」
「艦長妖精さん、この子CICの担当全部1人でやりたいそうですよ?」
「ちょそれはかんべんしてくださいマジですみませんでした。」
「...」
「かんちょうむくちなほうだからよけいこわい...。」
「司令官...彼女を止められず、申し訳ありません...お怪我は...?」
「俺に気安く触れるな...!クソが...」
むらさめが立ち去った後、手助けしに来た朝潮を一蹴しゆっくりと立ち上がる提督。未だに受け身を取れずダメージを受けた右腕が痛むようで、左手で押さえている。
「人間と同じ感覚を持っているから何だ...心を持っているから何だ...!人間には使えねぇ装備を持って黒色の気持ち悪い奴とドンパチしてる奴らが同じ人間な訳ねぇだろうが...!」
「...」
「...朝潮、おめぇらの姉妹とやらを呼んでこい。出撃して、奴を...人間風情の勘違い野郎を、捻り潰せ。あとあいつを連れて来た村雨と峯雲ももういらん...まとめて沈めてこい。」
「...はい。」
朝潮自身も痛みがまだある。ささっとは出来ないが提督に敬礼をすると、姉妹艦を呼びに提督執務室を後にした。
「補給物資持ってきたわー!」
別れる前に予め決めておいた合流予定の部屋へ入る。そこには快復した峯雲と、その横に村雨がいた。
「おかえりなさい。見た感じ...何もされなかったのね、良かった...。」
「貴女は...むらさめさん、ですね。助けてくださりありがとうございました。」
「礼には及ばないわ。早速悪いんだけど、補給を終えたらすぐに出港準備をしてくれるかしら?」
「え?それまた何で?」
「確かにあの時は何もされなかったけど、これからも何もされないわけじゃないの。」
そう言い終えた瞬間に、鎮守府全体の放送が入る。
「ー鎮守府にいる艦娘に告ぐ。今すぐ3人の艦娘を探し出して拘束しろ。対象は村雨、峯雲、そしてむらさめ型1番艦を名乗る、むらさめという奴だ。以上。」
「...え?え、ちょ?何したの?」
「んー、あまりにあのクソ野郎の態度がイラついちゃったから、思わず投げちゃった⭐︎」
「「は!?」」
すかさず2人から驚きの声が入る。
「そ、そんなことしたらこうなるに決まってるよ!何しちゃってるの!?」
「し、しかもそれとは無関係な私達まで巻き込まれるなんて...!」
「...テヘペロ⭐︎」
「テヘペロって訳分からないし、こんな事本当に困るんですけどぉ!うあぁんっ!」
村雨達のトラック泊地逃避行が始まった。
むらさめの感情が暴走しました((
絵にしたときにハイライトオフの状態で機械のように話す雰囲気を想像しながら書いていたので、あんな感じになっています。
次回は再びほうしょうの物語へ戻ります。
P.S.
毎度感想ありがとうございます!結構創作の励みになりますので、面白かった点や良いと感じた点などいっぱい書いてもらえれば3重キラ状態になれます((