〇〇泊地所属軽空母「ほうしょう」   作:堀井 椎斗

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堀井 椎斗です。
小説がなかなか筆が進まず気づいたら1ヵ月...お待たせしましてすみません。
イベントがいよいよ始まりますね。水雷戦隊熟練見張り員が手に入るとかなんとか。駆逐艦がメイン戦力の当鎮守府、必ず確保しなければ...。
今回は工廠でのお話です。


14話 工廠

朝からずっと忙しない。

記念会の後朝食はなんとか取れたものの、羨望の眼差しで質問をどんどん押し掛けてくる彼女達に困り果てたものだ。聖徳太子でもないのだから一気に話かけないでほしい。

そんなことを思いながら廊下を歩き、次の予定に向かう。目的地は艤装の点検・整備・保管を行う場所である、宿毛湾泊地内の工廠。

長門との面会後、艤装を時雨に預けて工廠へ持っていってもらった。長門曰く、工作艦の艦娘と兵装についていろいろと話し合ってほしいとのことだそうだ。あとは管理を工廠で一括することで紛失を防ぐ狙いらしい。

 

工廠内に入って目に入ってきたのは、ラックに段々と置かれた魚雷やレーンに乗った試作段階のような主砲。デカデカと上部に掲げられた「安全第一」の文字。そして各所の掲示板に貼られた変なポスター。

「ヤード・ポンド法を滅ぼそう!」という標語に、イラストには縦長の顔のキャラクターがネジを持ち、隣でもう1人のキャラクターが「さてはインチだなオメー」という台詞を喋っている。ここで一つ気にかかったのが、自身の兵装だ。

船体は自国で建造・進水したとはいえ、兵装については米国の兵器に頼りっきりな部分が多かった。特にF-35Bについては、国籍マークを日本に変えた程度で中身に関してはほとんど変えていない。そのため、インチネジをふんだんに使用している可能性が高いのだ。F-35Bに関しての資料も、基本的に長さはフィートで、重さはポンドで書かれている。(幸い別途でメートルとグラムで表記がされているのが救いだが。)他にも輸入したハープーンミサイルも怪しい。

 

「んぉ、そこにいるのはほうしょうさんかな?」

 

声をかけられてそちらに顔を向ける。そこには魚雷磨きをしていたのだろう、顔を少し汚した魚雷を持つ艦娘がいた。作業着まで着込んで自身の兵装の手入れでもしていたのだろうか?

ほうしょうの死角、艦これ世界に精通した見張り妖精さんは大きな違和感を覚えていた。いや、違和感というには規模が小さいだろう。何かが違う。

 

「はい。ここに整備を担当している工作艦の方がいると聞いたのですが...。」

「あぁ〜、それアタシのことだね。」

 

「...へ?」

横から素っ頓狂な声が聞こえたような気がするが、おそらく気のせいだろう。

工作艦を名乗る彼女は魚雷を置いて、よっ、という掛け声と共に立ち上がると、自己紹介を始める。

 

 

「アタシは工作艦、北上。まーよろしく。」

 

 

...

 

「ふぁぁぁあああああああっ!?」

 

見張り妖精さんの極端に大きい驚きの声が工廠内で反響する。その音があまりにもうるさくて2人して耳を塞いだ。

 

「うるさ...っ!」

「うっるさっ...!」

 


 

 

「工作艦...スーパー北上様が工作艦...どうして...」

 

まるで宇宙の写真を背景にすると1つのコラ画像が完成しそうなほど、見張り妖精さんは口を開けたまま放心している。自身には分からないことだが相当ショックなものだったのだろうか?

そんなことをよそに、北上はほうしょうの装備を1つ1つ手に取って見ている。

 

「それにしてもさぁ、すごい装備持ってるよね〜これ...一目見ただけじゃ何がなんだか分からないよ。例えばこれなんかね。」

 

ほうしょうのポーチから、畳まれた白いものを取り出す。日の丸のついた雫のような形をしたものだが、勢いよく振ると展開されてハンドスピナーのような形のブーメランに変形する。

 

「艤装を預かって最初に気になったから、ちょっと触ってみたけどさ。何をしてもビクともしなかったのに、振ったらこうなるんだもん。これも何かの艦載機になるんでしょ?」

 

ほうしょうの顕現時にあった敵襲、隼鷹達との勘違い戦闘でも使用したそのブーメラン、変身前のSH-60Kだ。基本的に対潜用の艦載機であること、自身にソーナーを装備していないため海中の目はそれに依存してしまうこと、装備によっては対潜だけでなく対艦攻撃や物資・兵員輸送にも使えることなどを説明した。

 

「なるほどねぇ...陸の方であったオートジャイロってやつの発展型みたいなものかな。未来だと海軍でも持ってるんだねぇ...。お、やっぱ未来でもこれはあるんだね〜。」

 

次に興味を示したのは短魚雷だった。対潜戦闘で使われる魚雷で、ほうしょうのSH-60Kには12式が詰まれている。1世代前の97式短魚雷と比べてサイズ・重量は変わらずに、センサ部分の性能向上が図られ、沿海での迎撃がしやすくなっている。

 

「んふぅ〜...酸素魚雷が1番お気に入りだけど、魚雷はどれでもいいもんよ〜...。でもサイズがかなり小ちゃいけど、これでも未来の水上艦は潰せるの?」

 

短魚雷を撫でながら形容しがたい声を漏らした北上が、質問を投げかける。

 

「えっと、魚雷と言ってもそれはあくまで対潜戦闘用なので、水上艦に打ち込むことはあまり無いんです。...もしかしたら稀にあるかもしれませんが。」

「...ん??待って、これ潜水艦にぶち当てる用なの?というか海中にいる奴にぶち当てれるの??」

「短魚雷...でなくても、私のいた世界では魚雷の先頭にソナーが備わっているのが普通です。あとは海底にぶつかったり海面に出たりしないようにしているのと、魚雷がひとりでに蛇行したりして航海するのも普通ですね。」

「...え、何こいつ。こわー...」

 

先程までの愛でる態勢から一転、見知らぬ物を忌避するかのように魚雷を遠ざけた。

魚雷といえば対艦攻撃に用いるもの。長槍と呼ばれるほど全長が長く、長射程高威力で打ちっぱなし直進が常識のこの世界。弾頭部にソナーが付いていることはもちろんのこと、魚雷が航海パターンを持ったりまるで生き物のように海底や海面を避けたり、ましてや対潜水艦用に魚雷を使用するなど聞いたことがない。食堂で少し目にかけた時からある程度感じていたが、改めてほうしょうがいた世界相手には、ここでの常識が通じないと感じ直した。

 

その後も様々な兵装を説明してもらった。ステルス性を重視した爆装可能な戦闘機、ステルス性を若干削いでしまうことにはなるが対艦攻撃を可能にする無人ミサイル、ほうしょうが付けている眼鏡も借りて対空・対水上を索敵できるレーダーもディスプレイ越しに見せてもらった。いくつかの兵装についてはインチネジがふんだんに使用されており、見たくもないものを見てしまった顔になりながら最大限に嫌そうな声を漏らしてしまった。ほうしょうはその反応にどういった顔をすればよいのか困っていたようで、後で心の中で謝っておいた。全部を見せてもらったうえで、ずっと聞きたかったことを聞いてみる。

 

「...うーん、1つ言いたいこと言ってもいいかな?」

「? なんでしょう?」

「...ホントに()()()軽空母なんだよね?さっきから聞いていれば米軍だのアメリカだの、よく出てくるもんでさ。アメリカで建造されたものを日本が引き受けた、とかそういうのじゃないかって思ってね。」

「あー...」

 

そこを突っ込まれてしまっては何とも言えない気持ちになってしまう。空母の命といえる戦闘機は米国製のF-35Bを使用しているし、対艦ミサイルも日本仕様に改造が済んでいないためにハープーン対艦ミサイルを使用している。船体も半分米国艦艇の影響を受けたものになっているため、そう思われてしまっても仕方ないのかもしれない。

 

「確かに私の設計時に、アメリカで建造された艦艇も参考にされているので、そういった面ではアメリカの血を引き継いでいるのかもしれません。ですが、ちゃんと生まれも育ちも日本です。生粋の日本艦であると自負はしていますよ。兵装がなんで米国製が多いかは政治も絡んでくると思うのでよく分かりませんが...」

 

途中まで言いかけたところで工廠に誰かが入ってくる。振り返ると艤装を背負った時雨がいた。

 

「北上さん、準備できたけどそろそろかな...?」

「ん、おっけー。じゃあ先に演習場に入っててー。」

「分かったよ。」

 

どうやら性能評価演習の準備が完了したらしい。北上に準備完了を知らせてそのまま演習場へ向かっていった。

 

「ま、れっきとした日本の空母ってことは分かったよ。自由にうるさい国の兵器が満載で整備めんどそうだけど、やることはやるから。んじゃ、行こっか。」

「分かりました、行きましょう。」

 

ほうしょうに艤装を持たせて自分は記録用紙を持ち、演習場へ向かおうとする。

 

工廠から出るときのほうしょうの後ろ姿に、過去の自分を重ね合わせた。あの時の自分はこれで艦隊のために大きく役に立てるかもと、意気高揚としていたものだ。ほうしょうは今何を思って行こうとしているだろう?

昔は自分も重雷装巡洋艦として生きていた。酸素魚雷を持って深海棲艦に圧倒的な雷撃の弾幕をはる。多くの()()をそれで屠ってきた。

 

 

もしその中にあの子たちが含まれていなければ...これから先、ほうしょうと同じ舞台に立てたかもしれないな。

 

 

これ以上考えると自己嫌悪に陥りそうだ。意識を別に逸らして深入りしないようにしながら、ほうしょうの後ろを付いていった。




GW中なので、折角ですからもう一話を投稿したいと思っております。
明日中には多分出るかと。
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