前回のアンケートありがとうございました。
むらさめ視点でのストーリーが読みたいという方が少し多かったようですが、その前に入れておきたいものがあったので、今回もほうしょう側になります。
割と筆は進んだので1ヶ月ペースには間に合いました。
なんとか立て直せるといいな(願望)
「—ひとまずそうするしか道はないだろうが、これで納得してくれるだろうか...?」
「納得させるしかありません。圧倒的にほうしょうさんの装備と今の私たちでの装備では技術的な格差がありすぎて、兵装を補充すること自体がまず難しいのもあります。あと、性能試験だけでも予想を遥かに上回る資材を使ったのですから、こうするしか道が...。」
ほうしょうの性能試験から数日後。執務室では長門と大淀が、今回の性能試験や偶発戦闘の際にいた艦娘からの聞き込みで判明した戦闘能力、評価項目の結果、並びに使用資材量などが記載された、北上からの調査報告書を見ながら頭を悩ませていた。
今回あがった北上の報告書を要約すると、次のようになる。
まず、ほうしょう自身、ならびにほうしょうが持っている装備の性能。これらについては、この世界ではありえないほどの戦闘能力を有していることが判明した。基本的にほうしょうの持つ艦載機の武装は全て、敵に対する誘導機能を持っており、一度引き金を引けばこの世界ではまず外れないと言える。対空試験では今回は機銃のみを使用していたが、いつか見た噴進航空機と同等かそれ以上の航行速度があり、且つ操縦パイロットも腕が良いため決まった目標をほぼ確実に仕留めることが可能である。対潜試験では魚雷そのものが海中に対する目標への追尾機能を有しており、敵側の視点で考えれば索敵で見つかった場合は死を意味している。
両機とも滞空能力があり、これによってほうしょう自身の甲板に制動索がなくても問題なく着艦ができる。甲板に多少の被害があったとしても、よほど穴だらけでなければ発着艦に影響はないと思われる。ただし、F-35Bから発せられる着艦時の熱は非常に高熱で、通常の甲板を使用すると焼けてしまうため、もし緊急時などで他の艦娘に着艦せざるを得ない時のためにも、何かしらの対策を施す必要がありそうだ。
また、ほうしょう自身の性能も目を見張るものがある。軽空母ながら駆逐艦のような動きを見せてくれるが、特に特筆すべきは加速力だ。0スタートで競走させた場合、立ち上がりで追いつく艦娘はほとんどいないと思われる。最高速は高速戦艦並みの速度が出ているが、転回半径は高速戦艦のそれよりも小さく、駆逐艦のターンを彷彿とさせる。おそらく装甲を極限まで落としているため、軽く動かすことができるのだろう。今後機がある際に被弾テストを行う予定でいるが、逆を返せば装甲が薄すぎるのはかなりの弱点だ。魚雷はもちろんのことだが、おそらく駆逐艦の主砲でも危険な可能性がある。だがあくまでほうしょうは軽空母だ。航空戦力で接近される前に無力化出来ると思われる。そのためこの弱点は毎回露呈するものではないだろう。
性能面ではもはや右に出るものは、この泊地はおろか全世界を見渡してもいないと考えられる。
しかしこのまま運用させた場合、この泊地にかなりの負担がかかり、最悪の場合ほうしょう自身も今在籍している艦娘たちも共倒れになる可能性が高い。
まず急務で解決すべきは資材の消費量だ。今回の性能試験だけでも、全力出撃して帰還してきた重巡洋艦並みの資源量が消費された。数回のみでもほうしょうが全力で出た場合、たちまち泊地の資材のやり繰りが立ち行かなくなる可能性が十分にある。基本は出撃不可、出したとしても兵装を使用しない航海のみに制限すべきだ。
また先述で我々とは一線を画す性能を持っていると述べたが、これは即ち技術差が激しすぎて十分な兵装補充もできないということ。追尾機能のついた噴進弾は緊急時を除いて使用を禁止すべきである。ただし禁止しただけで何も代替案を用意しなければ、ほうしょう艦載機の攻撃手段が残されなくなってしまう。そのため、九一式航空魚雷や500kg爆弾などを使用した、こちらでの通常の攻撃方法にシフトさせるべきであることを進言する。工廠側でもできる限り兵装補充が出来るよう優先的に開発を行ってみるが、十分な補給ができるようになるまでどれほどの月日がかかるか想定は現時点で不可能だ。航空機の補修は可能であるが、補修すればするほどこの航空機が持ち得る長所を徐々に奪う可能性がある。出来る限り被弾をしない立ち回りを心掛けるようほうしょうと相談する必要がある。
以上が今回北上からの提出された報告書の概要である。
長門からすれば、目下の敵が周囲に多すぎる状況で、せめても泊地周辺の安全だけは確保したい今、戦力の増強はどうしてもやりたかった。特に、ほうしょうという強力な助っ人が来たのであれば尚更だ。だが大淀から言わせれば、ただでさえ上手く回らせるのに一苦労な資材のやり繰りを、大喰らいされた暁には確実に全てが破綻する。
周辺の状況は長門がよく理解しており、必要な武装を考えるのは長門に任せている。そこからどれほど消費量を削れるか。今後毎回頭を悩ませることになるだろう。大淀はため息をついた。
「ひとまず、現状をほうしょうに説明した上で聞いてみないと何も始まらん。呼んでから悩めばいいさ。」
「...分かりました。とりあえず呼ぶことにしましょう。」
こうして大淀はほうしょうを呼び出しに、一度執務室を退室した。
その頃、ほうしょうは何をしているかといえば...泊地の海岸にて。
「—あっつあああああっ!!!」
またもやクロスボウを借りられており、発艦後の熱に指をやられた艦娘を見て、やれやれと言いたそうな顔をしていた。
「なんで誰も私が注意する前に触っちゃうのでしょう...。」
「まぁ、みんなからすれば珍しいですし...おすし...。」
真横で何と言えばいいのか、苦笑いを浮かべる蒼龍。今回被害に遭っていたのは飛龍だった。
ほうしょうに発着艦を間近で見せてほしいとお願いしたところ、実際に間近で見せてもらえることになり。見たことない艦載機にあり得ない着艦方法、そして弓で射るよりも速く、クロスボウから放たれる艦載機の矢。全てが初めて見るもので、好奇心で心を掌握された飛龍は目をキラキラさせながら、艤装を持たせて欲しいと頼み込んだ。
いいですけど...と言いながら、クロスボウを貸し出したほうしょうの忠告を聞くことなく、即座に弦を触って今この状況である。
「—あ、ここにいたんですね。ほうしょうさん、長門が呼んでいますので執務室へお願いします。」
「あ、分かりました...えっと、とりあえずその指は火傷の初期治療をしておいてくださいね?」
飛龍を心配しながらクロスボウを返してもらい、工廠に寄って艤装を置いてから大淀とともに執務室へ向かうのだった。
数分後、提督執務室に呼ばれたほうしょうは、長門・大淀にその件を伝えられた。その話を聞いたほうしょうは難しい顔をして黙り込んでしまう。
現在身寄りをしているほうしょうからすれば、力になれることは出来る限りのことをしたいと考えている。だが、あくまでほうしょうの兵装は
今の時点では同盟でも何でもないここの日本の整備に任せて、果たして良いかと言われればどうだろうか。むしろ伴う危険が大きすぎる。改造と称して一度分解され、その技術を盗まれてはこちらの機密に関する情報漏洩も甚だしい。性能試験をされてしまった段階で情報漏洩なのかも分からないが、仮にそうだとした場合これ以上の漏洩は防ぎたい。また、分解された後再度組み立てが出来るという保証もない。根本的に技術レベルが違うため、分解してしまったが最後になる事態も予測できる。
「少し、時間をいただいてもよろしいでしょうか...。海上自衛隊として動いている以上、考えることが多すぎてここで答えを出すのはかなりハードです...。」
何も考え無しに答えを出してしまっては、後々に多大な影響が出かねないと判断して、回答は一度待ってもらうよう伝える。
「分かった。少しだけ待つとしよう。だがあまり遅くならないでくれるとありがたい。我々の今後の動きにも関わることだからな。」
「特に資材については早急に解決しなくてはなりません。ここの泊地の現状ではー...」
再び大淀からしばらく説明を受ける。
と、同時にほうしょうは違和感を覚えた。
先程から資材の話がよく出てくるが、深海棲艦に日本が脅かされている今、本土防衛の一拠点であるはずのここが、資材にここまで神経を使わなくても良いのでは、と思ったからだ。
日本海軍からすれば、日本本土に敵が接近するなど起こしたくない話だ。陸続きの敵勢力があるならまだしも、周りを海洋で囲まれたこの国では、海からしか侵入経路がないため、海が絶対的な防衛ラインとも言える。
そうなれば、日本近海を守るこの宿毛湾泊地にも、いざという際に即応できるよう何かしらの援助があってもおかしくないのだが、援助どころか海軍の名前すら出てこない。
「気になったのですが、何故資材のマネジメントにここまで困る必要があるのですか?同じ日本海軍なら、上に依頼すれば少しは資材をもらえるのでは...。」
そう言った直後の長門と大淀の様子は、張り詰めた空気が漂ったようにも見えた。お互いが何かを確認する様に目を合わせて、再びこちらに向き直ると、長門から言葉が発せられる。
「今私たちがいるのは、
「....え?それはどういうー」
「悪いが、これ以上話せるものは今はない。分かってくれ...。」
そう言って以降、この一連の議論で長門から言葉が発せられることは二度と無かった。
次回もおそらくほうしょう側、その次にやっとむらさめ側の予定です。
むらさめ好きって方がいましたら、もう少しだけお待ちくださいお願いします何でもしますから!(何でもするとは言っていない)