〇〇泊地所属軽空母「ほうしょう」   作:堀井 椎斗

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お久しぶりです。堀井 椎斗です。
まずは6ヵ月間お待たせして申し訳ありません。

度重なるゲームイベントの攻略、増えてきた仕事の処理、創作意欲と自信の無さに苛まれていたらこんなに時間が過ぎていました。
この小説自体は捨ててないので、今後極端にペースが上下すると思いますが、ご容赦いただければと思います。


さて、長らくブランクが開き設定も見返しながら執筆したので、多少おかしくなっているかもしれません。それでも良ければお楽しみいただければと思います。ほうしょう視点です。



19話 夢

 

 

 

 

 

—大きく揺さぶられるような感覚。何かを押し分けて進む感覚。

 

 

 

つい先日と似たような感覚だ。何も見えないが、目を閉じている感覚はある。

 

 

自身の目をゆっくりと開くと、そこには見慣れた光景があった。

 

目前に広がる、大きな甲板。駐機している航空機の羽が下の方にちらっと見えている。

腕の感覚などはない。足も。体が随分と重たい。自分で身動きを取ることはできないようだ。

 

 

—懐かしい。

 

どうやらこれは転生前の自身。軽空母「ほうしょう」の艦体。

雷に打たれて束の間の夢でも見ていたのだろうか。元の世界に戻ってきたような“感覚”だ。

 

そう、感覚だけは。

 

 

何やら周りの空は赤黒いし、一寸先は闇と言わんばかりに黒い霧が立ち込めている。

こんな空間、元の世界にあるはずがない。よっぽどの気象条件がー、とも考えたが、こんな黒い霧など存在するものか。しかも夕焼けで一部が赤くなっているのならまだ分かるが、周りを見る限りでは全体が赤黒い。

 

—と、周りを見渡して気付いた。

すぐ近くにはもう一つ、見覚えのある護衛艦が同じく航行していた。

艦番号101。護衛艦「むらさめ」。

見通しが悪いためか、かなり密になって行動しているようだ。レーダーはどうも生きているようだから、そこまで接近しなくてもいいと思うのだが...。

 

「—あたごからの応答、未だありません。」

「無線機でも壊れたのか...?とにかく連絡を取り続けろ。どんな手段でもだ。」

 

艦橋やCDCでは、今までのように妖精ではない、人の姿の乗組員が忙しなく動いている。この姿で見るのもかなり久々な気がする。

どうやらむらさめ以外の艦とは連絡が取れないようだ。そういえば他の艦は無事にあの低気圧を乗り越えられたのだろうか?

レーダーを確認してみるが、そこには自身以外にすぐ近くのむらさめと、少し離れた位置にいるあたごしか影が映っていない。確か他にも艦はいたはずなのだが...その艦たちは一体どうしたというのだろうか?

 

「...ッ!!?FCRコンタクト!方向は...『あたご』の方面から!」

「は?あいつ何を考えている!?こちらは味方だぞ!?」

 

CDC内クルーの1人の怒号が響き渡る。だがそれはこの艦内のクルーに向けてではない。とち狂った味方艦船への焦りと怒りだ。

艦長から落ち着くのです、と声が掛けられ、すぐに対空戦闘用意の下令が下される。

だが、それからわずか数秒後。

 

「『あたご』から、小型目標分離!高速で本艦に近付く!!」

 

先程から信じ難いような会話がこちらにも届く。素早い小型目標といえば、あたごが持っている武装的に主砲弾か対艦ミサイルかだろう。主砲弾でも当たりどころでは過貫通を引き起こすか、格納庫内の燃料か機体に着弾する可能性も有り得る。だがそれで狙うには、この距離ではあまりにも運任せな要素がミサイルに比べて多い。そうなれば撃ってくるのは被弾時に確実にダメージを与えられるミサイル—。

 

「対空戦闘用意!これは演習ではない!繰り返す、これは演習ではない!甲板要員は速やかに艦内へ退避せよ!」

 

状況的にはおそらく演習海域にいるのに、やることは演習ではないなど、とんだ皮肉である。

 

「目標2発、真っ直ぐ突っ込んでくる!到達まで、20秒!」

「SeaRAM、CIWS、フルオート!」

 

すぐ隣にむらさめがいるおかげで、ミサイルが向かってくる方向へしか回避行動が取れそうにない。突然の対空戦闘でむらさめ側も準備が今整ったところらしい。だが、この距離まで来られてしまえば、EAもシースパローも、もう遅い。

 

「...衝撃に備え!」

 

時間の進みがどんどん遅くなってゆく。高度を上げてから、甲板目掛けて突っ込んでくるミサイルが目視で見える。CIWSの弾幕を掻い潜り、無機質な白い矢は、死を届けにやってくる。決して逃れることの出来ないその時が、すぐそこに—

 

 

 

 

 

「...っ!」

 

随分と見たくない光景を見させられた。同じく国を守るために行動を共にした味方に裏切られ、真っ先に沈められそうになる夢だとは。

 

「はぁ...はぁ...」

 

目が覚めてから動悸がひどい。息も少しばかり落ち着かない。

眠気も飛んでしまった上に、今は再び夢の世界に飛ぶ気分にはなれない。

この日は寝起きの悪いほうしょうが珍しく、叩き起こされず自ら起き上がれた日になった。

 


 

早い時間から食堂に向かったら、鳳翔には驚かれた。だが普段から他の艦娘たちとは少し遅い時間に、眠たそうな顔で来る様子を見ているのだから、当然の反応と言われれば当然の反応だ。

不吉な夢を見させられた以外は、特に不調をきたしてるわけでもない。何故かは分からないけど早く目が覚めた、と適当に流して、早めの朝食を済ませた。

さて、そこから先は特に今日も何も大きな出来事はない。長門から提案された、武装・戦術の変更について考える時間だけがただあるだけ。

 

 

 

一応少し考えて答えは出したのだ。

Noという方向で。

 

まず、自分が装備している武装と今回提案された武装では、あまりにも格差がありすぎるのだ。技術面での格差は言わずもがな、戦術面でも大きな格差がありすぎる。

現代戦闘は基本視界外戦闘である。レーダーに映る敵機・敵艦に向けてミサイルを放ち、ある程度敵の方向へミサイルを誘導してあげたら反転し、撃たれたであろう相手からのミサイルを回避する。戦闘機同士が撃墜するまで撃ち合うことも多くない。ただでさえ目で捉えることの出来ない距離で戦闘を繰り広げるのだから、撃墜できたらそれはそれで副産物、というレベルだ。

一方、二次大戦時の戦闘は基本肉薄戦闘(ドッグファイト)だ。もちろん当たらないための操縦もあるが、とにかく機銃の当たる距離まで—。とにかく魚雷を確実に当てれる距離まで—。自分の命を賭した殴り込みだ。どちらかが息絶えるまで続くことが多い。

仮に提案を受け入れて、訓練でその格差を埋めようとしても、明らかに時間がかかりすぎる。

 

また、操縦面でも大きく異なる部分がある。一番大きなものは着艦だろう。

確かに二次対戦時の機体を使えば、自身に万が一があった時に他の艦娘の下へ避難させることができる。だが、短い滑走路目掛けて急降下し、ワイヤーに引っ掛けて機体に急制動をかける、”制御された墜落“と称される着艦を行うのは容易くない。それ相応の訓練が必要だ。

余談とすれば、ほうしょうの艦載機にF-35Bが採用されたのには、実はその着艦訓練に割かれる時間を省くというものもあった。長らく空母を持たなかった戦後日本の自衛隊。海自に戦闘機使いがいるわけでもなければ、まともな空母着艦を行ったことのある空自パイロットがいるわけでもない。

そんなパイロット達を、発艦着艦のできる空母搭乗員へ再教育し、F/A-18やF-35Cを導入する。そのための膨大な時間や予算を設けるぐらいであれば、最初からヘリのようにホバリングできて着艦動作が容易なF-35Bを導入した方が、空自パイロットの再養成も最短で済み、自分達の給料を取られない(昨今の事情にぴったりな)のではないか、という官僚の選択だった。

 

敵はこちらの事情を汲んで待ってくれるはずなどない。今の時点でもかなりこの泊地の状況は芳しくないのだから、今この転換を受け入れるのはかえって手間も負担も増えるし、時間も足りない。そう考えてNoの判断を下した。

だが、Noと言うからにはいくらか代案も必要だ。代案もなしにひたすらNoと言うだけなら簡単だが、それではまともに議論も成り立たないし、今後どうしたいというビジョンも示せない。

 

そういえば、元の世界の日本もどこかの機関が同じような状態だったか。ろくに修正点や代案を出さず、ただ相手の出した案に反対しか言わない組織に邪魔されている。まともに議論が出来ないまま採択まで進んでいることが近頃は多かったようで、直接的にも間接的にも巻き込まれている人々は甚だ迷惑な話だろう。

 

と、そんなことに気を逸らしている場合ではなかった。その代案をどうするか考えているのだが、上手く落としどころがつけれそうなラインが見当たらない。

 

 

「―ごようなり、ごようなり、ごようなりぃー!」

 

 

どうしたものかと思考を巡らせていると、古語の主張が激しい通信士の妖精さんが自室になだれ込んできた。その話し方どうにかならないのかな、とも思うが今は置いておこう。

 

「何でしょう?そんなに急いでくるとなると、何か重要なことでもありましたか?」

 

妖精さんがこちらに来て耳打ちをする。

それを聞いて顔色を変えたほうしょうが問い返す。

 

「...全部、確認したうえで可能性が高いと。そういうことですね?」

 

 

 

 

 

 

「...おっしゃるとおりに、ござりまする。」

 

 

 

刹那、勢いよく立ち上がると、そのまま泊地の寮を駆け抜ける。それと同時にマイクを使って、ほうしょう搭乗員の妖精さん達へ下令する。

 

「総員、出港準備!直ちに出航できるようにしてください!」

 

 


 

 

「ぎょーらいー、ぎょーらいー、たーっぷーり、ぎょーらいー。」

 

工廠に一人、そこの主をしている艦娘、北上の独り語りが工廠の中をこだまする。

魚雷職人の朝は早い。早朝起きてまず魚雷の状態チェック、朝飯済ませて魚雷の汚れ落とし、昼飯を食べたら魚雷の生産か魚雷の品質管理、夕飯を挟みながら工廠の掃除と点検をして、夜遅くに魚雷を抱き枕にして眠る...。魚雷職人は魚雷から離れる時間など有り得ないのだ。

...嘘、冗談。実際魚雷以外の兵器も点検しないといけないし、最近はほうしょうの艤装について研究もしないといけないから、そんな魚雷ばっか見れる時間も少ない。とほほ。

たまたま今日は魚雷の整備を主な仕事にしてるから、一本一本の魚雷に損傷がないか確認したり、魚雷を使う艦娘の魚雷管に異常がないか見れるわけだけれども。

誰に向かって解説してるのやら、と一人でツッコミを入れていると、突然ドアが勢いよく開かれる音が響く。びっくりしてそちらに目をやると、少し息を切らしたほうしょうがそこに立っていた。

 

「突然ですみません、私の艤装はどこに置いてあるか知らないですか?」

「ほうしょうさんのなら、そこに置いてあるけど...一体そんなに急いできてどうしたのさ?」

「急ぎで行かなくてはいけないことができたので、少し借りていきますね!」

「えぇちょっと、急ぎで行く場所ってどこに!?」

 

北上の問いかけも聞いていたのか聞いていなかったのか、自分の艤装を持つと身に着けながらすぐに工廠を後にしてしまった。

 

「...まぁ、長門さんなら何か知ってるかねぇ...?」

 

考える顔をしながら、魚雷の整備をし終えたら確認しに行こうと、再び自分の仕事に戻ることにした。

 

 

 

 

 

「出港準備、良いですか?」

「ぜんいんすでにじゅんびできてるのです。いつでもいけるですよ。」

「仕事が早くていつも助かります!長門さんには悪いですが、単独行動権を早速使用させていただきます!」

「軸ブレーキ脱!第四船速にて航行!海岸線に沿いつつ、小笠原諸島方面へ転舵!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―今作戦の目標、友軍と思わしき艦の確認・救出!」

 




【後書き】(こうした方が多分見やすいかな。)

次回はむらさめ視点の予定です。仕事中に構想を練る時間がまったく無くなってしまったので、フリーな時間を使ってまたゆっくりやろうと思います。
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