こんな設定あったらいいな、個人的にこういう奴らいねぇかな。 作:合間な人
調べたり、他の作者様の作品を読んで学びました。しっかり原作を見たわけでもないのでキャラ崩壊気味、口調の違いや解釈違いが起きるとおもいます。ご了承ください。
【プロフィール】
名前:水上 健司
性別:男性
年齢:16
誕生日:6/03
性格:冷徹(?)
パーソナルナンバー:LB1488
【概要】
・本作の主人公である男子高校生(年齢的に)
・一人称は「俺」で、二人称は相手によって「あんた」「お前」などを使う。敬語も一応使える。
・常に無表情だが、時折笑顔を見せることもある。
・身長172cm、体重65kgとやや痩せ型体型
・見た目のイメージ:イヴ(NieR:Automata)を黒髪にして、表情を全体的に柔らかくした感じ。ただし上記。
・戦闘と『銃』の才能を買われ、アラン機関からリリベルに配属されたが、リリベルの「群の動き」だけでなくリコリスの「個々の動き」も訓練した結果、周りから変わり者を見る目で見られている。本人からしたら「いつ孤立するかわからない。どんな状況にも対応できるようにしなければ生存と任務の遂行は不可能」と断じており、寧ろ周りがおかしいと思っている節さえある。度重なる訓練を積んだ結果、戦闘、格闘、暗殺術、潜入技術等を高い水準で身に着けており、ファーストリコリスとも渡り合えるくらいには強い。
余談だがモデルは二代目死神(暗殺教室)とハンク(バイオシリーズ)。そのためリリベルのような秘密裏の銃撃戦をする際には顔が割れないために必ずガスマスクを着用している。戦い方は派手に見えて堅実。中距離は射撃、近距離はナイフと格闘メインと使い分けながら「任務遂行」が第一、「不必要な犠牲は出さない」を次に優先している。ただし必要であれば殺しも厭わない。
「This is war. Survival is your own responsibility」
「例えこの技術を使う確率は少なくても、研鑽しない理由にはならない。相手が奇襲だの銃撃だの狙撃だの様々な手法を用いる。それに対処するための訓練だろ。」
「任務は成功こそしたがやはり殉職率は高い。今回も任務に当たった5%以外の人的資源が失われた。」
使用武器:H&K USP (近距離中距離、実弾入りハンドガン)
M1911 (近距離中距離、非殺傷弾入りハンドガン)
H&K MP5A3(中距離、サブマシンガン)
タクティカルナイフ
最後の対象を無力化する。俺がこの依頼を完遂するにあたって、無力化しなければならない人物だ。今回の任務でも俺の部隊は無事では済まなかった。以前の任務ほどではないが、やはり殉職率は高い。だが、それは主に「自分の技術が優れている、そして相手は日本にいることもあって素人だ」という考えから来る慢心と油断、及び周囲の警戒を怠ったことが要因だ。任務では安全地帯なんてないのは当然のことだと訓練時代に言われたはずだ。
「任務完了、全対象は無力化されました。...えぇ、生きてはいます。彼から情報を引き出すことは可能です。...いえ、参考人の半数は抵抗にあいやむなく射殺。雇われ兵との銃撃戦もあり、半分以上殉職しました。...はい、データも回収済みです。...了解。行くぞ、撤収だ。」
「りょーかい、相変わらず冷たいねぇ...『ハンク』隊長?」
「ここは戦場だ。運命も、活路も自らで切り開くものだ。」
「ところどころでフォローしてた人の言うセリフじゃないね」
「人的被害を最小限に留めろと、上からの指示だ。気付かなかったのはあいつらの損失だ。」
「そうだねぇ...」
一人の隊員はどこか、浮かない顔を見せた。隊員の中に仲の良い奴でもいたのだろう。しかしここではいつ誰が死ぬかなんてわかりはしない。俺もその一人だ。今回の任務で俺が生きれたからと言って、次の任務で俺が生きて帰れるかなんて誰にも分らない。未来は不確定要素に溢れている。だから備え続けねばならない。理不尽や残党やそのほかの敵からの強襲など。
撤収している最中、小さな足音が聞こえた。控えめな足音。隊員の足音に紛れて、一人だけ軽く、そして注意を払いながら歩いているような足音だった。
「周囲を警戒しろ。リコリスだ。」
瞬間、発砲音が響き、一人倒れた。おそらく件のデータの横取りが目的なのか、それともこちらの殲滅か。どちらかはわからない。一瞬しか見えなかったが制服は赤、日本人離れした様な容姿をした女性だった。すぐに指示を出す。
「『ジャック』、この場の指揮は任せる。『ジョン』はこいつを本部まで持っていけ、依頼達成のためのものだ。『ベクター』、『ゴースト』は周囲の警戒を怠るな。こいつは俺が足止めする。」
「ちょっと隊ちょ!」
「参考人たちを回収するのが俺たちの任務。リコリスに渡すなと上からの報告だ。ここは戦場だ。運命は自ら切り開け。」
『ジョン』が異を唱える前にかぶせる。この場では判断が遅れればそれが命取りになる。ここで喋っている時間も相手にとっては奇襲のチャンスだ。
それを聞くや否やリコリスは俺の隊に向かってきた。おそらく全員一気に仕留める気だろう。牽制の為に弾をいくつか小刻みに連射する。こっちに向かい、走りながら避けている。彼女が噂に聞く弾を避けるファーストリコリスだと確信した。取り回しの良いハンドガンとナイフに持ち変える。案の定こちらを注視しながら隊に銃を向けている。一発足元に発砲すると飛んで避け、壁を蹴り、一気に距離を詰める。
予想通りだ。
構えていた蹴りを横っ腹に入れる。放たれた蹴りはリコリスを吹っ飛ばし、彼女は壁にぶつかる。「かはっ」という苦し気な声とともに鈍い音が耳に響く。一瞬の隙を逃さんと残った部隊は倒れた隊員、重要参考人とデータとともに急ぎ足でここを離れる。リコリスは何事もなかったかのように起き上がり、呆れたかのような声で話しかけてきた。
「可愛い女の子に躊躇なく蹴りを入れるって、黒いリリベルは随分と乱暴なことするのねぇ?」
「...」
「無視すんな。泣いちゃうぞ?」
会話に乗る理由がない。俺の後ろにいた隊は既に撤退に向かっていた。今、ここは戦場。運命は自らで切り開け。尊敬する教官の言葉を自分の中で反復する。現在装弾数は6/7発。あちらはおそらく5-7/?、銃の種類をよくわかっていない以上こちらが不利だと考えるべきだ。相手は銃弾を軽々と避ける運動神経、動体視力と洞察力を持つ手練れ。だが、体術や接近戦においてこちらに多少の分があると思いたい。リコリスは踏み込んだ。こちらに銃を向け発砲するが、寸前に全体をずらし、弾丸は頬を横切る。現在中距離の間合い。サブマシンガンを使いたいところだが相手が相手だ。元々分が悪いのが更に悪くなる。両手がふさがるのがかなり痛い上、弾丸を避けるのだからなおさらだ。
発砲する。やはり避けられそして接近してくる。ナイフを握り直しそしてそれを振る。バックステップで避ける彼女を追撃する。戦い方がわかってきた。彼女は銃しか使いたがらない。至近距離からの射撃が主体の様だ。蹴りもたまに使ってくるが、思惑があるのか射撃以外で致命傷になりうる攻撃はしてこない。というよりも急所をあまり狙っていない。最初の頭だけだ。
なんにせよ、やる事は変わらない。奇襲してきたファーストリコリスを無力化し、尋問する。
「やはり噂通りの寡黙さと冷徹さだね。無機質なまでに任務達成を優先する君はこっちでも有名だよ。」
戦っている最中に話しかけてきたが答えるつもりも義務もない。無駄口を叩きすぎるリコリスに苛立ち交じりの溜息が出る。
「ガスマスクと黒い戦闘服を身に着けたリリベルは大きな脅威って言われたけどその通りだったよ。まさか私と互角の人がいるなんて、世の中は広いものだね。」
「随分と余裕だな。敵に向かって悠々とおしゃべりとは。リコリスは存外、暇人が多いらしい。」
「やっと返してくれた。やっぱり喋れるんだねぇ。というか随分と辛辣ね?仮にもファーストを暇人呼ばわりって。」
タイミングよく無線から声が入る。任務終了の通達ともう俺はもう必要ないとの事だった。曰く、リリベルとしてはかなり高い腕を持ちながらも殉職率の高い依頼で人的資源を失い続けたことが決定打らしい。そんな依頼を引き受けてこちらを向かわせた上の問題とツッコミどころがあったが、おそらくもう一つは過酷な任務でも俺が必ず任務の達成という成果とともに帰還し続けたことだろう。ここまで俺を含めた一握りが帰るとなると変な疑いがかかるのも致し方なしだが、「D.A.の上の連中はバカなのか」と思えてくる。ただ、解雇ではなく。別の支部への転属。もしくは左遷らしいが、それでも猶更『俺と同行する部隊が赴く任務の概要を見直せ』と言いたくなる。
「行くとこなくなった感じかな?黒いリリベル君?」
「聞いてたのか。ファーストリコリス。」
ニヤニヤと鬱陶しい表情を作りながら聞いてきた彼女をファーストリコリスと呼んだ瞬間少し怒ったように頬を膨らませた。名前を知らないからとはいえ、少し不躾だったようだ。もう戦う理由はないと銃を仕舞うが、ナイフは手に握ったままにする。
「銃を仕舞ってもその物騒なのは抜身のままなのか。」
「争う理由は有らずとも、お前がまた俺を殺さないとも言えないしな。」
「えっ?...ぁたしってそんな信用ない?」
「会ったばっかりな上、その数秒間命のやり取りをしあった奴を信用できるか?」
「無理だね」
「そういうことだ、ファーストリコリス。」
また、彼女は頬を膨らませた。余程気に食わなかったようだ。自分の名前を誇っているのが少し羨ましい。俺はずっと人として与えられた名前ではなくリリベルとして与えられた『ハンク』として活動していた。俺にとって『ハンク』の方が名前に近い感覚だった。だからコードネームや役職である『リリベル』と呼ばれることに抵抗も悪感情もなかったのだが、彼女は違うようだ。
「さっきからファーストリコリスって...人を名無しの兵士みたいに呼ばないでくれる?私には『錦木千束』って名前があるのよ?」
「...そうか、わるかったな錦木。」
「そういう君の名前は?コードネームじゃなくて名前。」
「...水上健司だ。」
「じゃあ、健司くんだねっ!」
「は?」
「だから君の呼び名だよ!」
「...そうか」
心底どうでも良い。呼び名自体こだわったことがないし、その上、水上とも健司とも呼ばれたことがない。何時だって『ハンク』だった。ただ、こう呼ばれるも悪くないと思った。だが、大半は反射神経で返しているだけだ。事実、本当にどうでも良い。
「そうだ!行く当てのない可哀そうな健司くんに提案があるんだ!君、どうせ私たちの支部に来るんだからリリベル以外の仕事をしない?」
「D.A.の支部か。つまりお前の下で働けと...そういうことか?」
「ある意味ね。そして私からの条件は二つ。任務では犠牲や死者は最小限に抑えること。そしてカモフラージュとして喫茶店の店員としての役割を全うすること!」
なるほど、ある意味とは彼女直属の部下としてではなさそうだ。二つ目もカモフラージュとしてかなり良い。D.A.が守っている日常を見る機会もかなり少なく、興味も少しあった。だが、ここで悩むのが自分の在り方だ。俺は生まれてから16年間、ずっと兵士としての訓練しかしていなかった。戦うための才能、敵を無力化する才能、極限の状況でも生きいられる才能。そんな才能を買われリリベルの部隊に入れられた。そんな兵士としての訓練だけを積ませられた俺を、今度は喫茶店の店員にする。かなり手間がかかるだろう。何せ、休暇時も訓練をしたのち、遠目で料理を作っているところ、遠目でコーヒーやお茶を淹れているところと、遠目でしか見たことない上に、気にする余裕もなかったのだ。
「兵士としてしかの訓練を受けていた俺にそれを依頼するのか...手間かかるぞ?」
「いいの!あたしも慣れるのに時間かかったから!接客業は得意だけどね!」
「生まれつきだろそれは。」
そう言いながら、施設の裏口を目指す。錦木の明るさと刹那主義的思考に呆れながらも彼女の言うD.A.の支部の一つ、喫茶店リコリコへ共に足を運んだ。途中で着替えて、それなりの服を着た。ガスマスク外して出たときに思いのほかびっくりされた。なぜだろうかと考えていると「ガスマスクをずっとしているイメージだったから、顔とか想像できなくてさ。」というかずっと無表情だねと足された。そんな中身もない錦木の話を聞き流しながら例の支部に向かった。道中、リリベルにもリコリスにも出くわさずに支部にたどり着いた。
支部に入ると鈴の心地良い音とともに錦木の「ただいまーっ!」という元気な声が店内に響く。貫禄のある男性がゆっくりとこちらを見てくる。彼は店員だろうか?「君が本部から転属された『新人』だね。ここの店長のミカだ。これからよろしく頼むよ...『ハンク』だったかな?」
なぜかリリベルとしての名前を呼ばれた。やはりここも一応D.A.の支部の一つなのだなと思いながらも、その名前を呼ばれたことに他に意味があるのかと思案を巡らしながら彼を警戒した。
「...よろしくおねがいします。ミカさん」
「あら、中々のイケメンね。まさか千束が私に献上しに来たのかしら?」
「ミズキ、16歳にまで手を出すのは流石にマズいんじゃない?酔っ払いもここまで来るといっそ清々しいわ。あとミカさん、今は水上健司くんだよ。」
「あぁん?!誰が酔っ払いよ小娘ぇ!」
D.A.にもこういう人もいるのだなと呆れ半分驚き半分で見ていると、ミカさんに案内されて早速着付けや店員としてやるべきことを確認してもらいながら制服の袖に腕を通し、喫茶店の表に立った。喫茶店の客の注文を取りながら、客によっては水とおしぼりを渡したりした。『ミズキ』は別の意味で警戒しなければならなそうだ。
少し時間が経つとどんどん客も来る。一息付いていると合間に錦木に話しかけられた。
「健司くんってさ、言動は無機質なのにごくたまにふわって笑顔みせるよね。何人か女の子、見惚れてたよ?」
「接客しなくてもいいのか?」
「先輩として新人の面倒を見ているって言ったら少し待ってくれてるんだよ。私と話している時は基本無表情なのに接客する時にたまに笑顔を見せるのはミカさんの入れ知恵?」
「身近な手本を見ていただけだ。接客業は笑顔でやるものだろ。常に笑顔は俺には合わない。だから俺なりに模倣しているだけだ。仕事に戻る。」
人懐っこく話しかけてくる錦木を流しながら、仕事の持ち場に戻る。正直、彼女の人懐っこさには慣れない。何人か隊にもいたが、ここまでではなかった。女性と喋ることも考えてみれば少なかった。が、それはどうでもよい。今の役目を遂行して、依頼が来れば要望に沿って達成を最優先するだけだ。
今日は客足が良く、「黒字」らしい。曰く「人懐っこくかわいい先輩の錦木」と「クール美形イケメン後輩の水上」という構図が出来上がったらしくそこに一定の需要があるという話らしい。ただ、錦木からは「クール通り越して無機質なんだよなぁ」とつっこまれた。酔っぱらっていた女性が話しかけてきた。
「そういえば紹介が遅れたわね水上君。私は中原ミズキ。ここの店長補佐役とD.A.の情報部をしていたわ。」
D.A.の情報部となるとかなり能力の高い人なのだろう。組織が扱う情報量は多く、偽りと真実、そして不確定要素が混ざっている。そこから、依頼の重要人物の特定や、敵の情報等を割り出すなど、能力が高いとそもそも仕事にならない。そんな彼女がなぜここにいるのかが疑問だ。何か事情があるのだろうか?その疑問の答えを錦木が後ろから呆れたようにひけらかす。
「んなこと言ってるけど、ここにいるのは出会いが欲しいからだよね。」
「うっさいわね!周りが家族やらお付き合いしている中なんで私だけ何もないのよ!」
呆れてものも言えなかった。だが人の生き方は人それぞれだ。口出しする理由もないが、今の酔っ払いの女性が荒れながら騒いでいるのを見て寄り付く男などごく少数だろう。店長のミカさんが話しかけてきた。
「お疲れ様水上君。初仕事どうだったかな?」
「...普段とかなり違いましたね。接客はある程度こなせても、店長のような食料を作るのに時間がかかると思います。」
「そうか」
彼は意外そうに俺を見る。同時に少し悲しそうにも見える。結果を聞かれたので反省点と改善点を言うべきだと思ったのだが違うようだ。なにやら、まだ客が集まっている。錦木は客と卓に座りながらチェスやオセロの盤面を見つめている。
「今日はボードゲーム大会でね、水上くんも良ければ参加しないかい?」
「いえ、勘が鈍らないためにも、先に上がります。問題は山積みですので。」
今日ここにいる理由はもうない。泊まるところもない今、宿泊先の事も考えなければならないし、自分の荷物をここにおいて場所を取るわけにもいかない。裏の控室に戻り、自分の荷物をまとめて居ると錦木が入ってくるなり話しかけてきた。
「そういえば健司くん住むところないのね。相変わらずD.A.、ここに飛ばされて後は勝手にやれって感じなのかな?」
「さあな。他に始末されないだけマシだ。」
「そんな可哀そうな健司くんに、提案があります!私のセーフハウスに住む?」
こっちにとっては願ったり叶ったりだが、錦木にメリットがない。元リリベルの俺。戦闘能力は互角。場合によって彼女が俺に殺される可能性もある。何が思惑でもあるのか。
「お前に利がないだろ。寧ろリスクしかない。」
「いや、利点はあるよ?君、理由がない限り殺しもしないでしょ?事実私とやり合った時も急所に当てる気はなかったでしょ?」
どういうことだ?まさかこいつ、そんな理由で引き取るとか言うつもりじゃないだろうな?「殺さないから傍に置く。」そんな安直な理由なのだろうか?
「それに、私と互角ならこっちに来るリリベルの対処もできるでしょ?水上、いや『ハンク』のD.A.の黒いリリベルって噂凄いからね?」
「そうだね、どんな任務でも必ず任務達成という成果と共に帰って来る。文字通り。例えリリベル一人を残して全滅したとしても。黒いリリベルだけは任務達成という成果と共に必ず帰って来ると。」
覚えがある。いくつかの任務はファーストリコリスの始末または無力化、武装された敵性傭兵団の殲滅、社会にとって重要な人物の護衛、及び送られてきた暗殺者の無力化。いくつかで最後には俺一人だけが任務を遂行して生き残っているなんてことも何回かあった。上層部はそこから俺、及び実力やポテンシャルの高い者何人かに殉職率の高い任務を依頼。そして、厳選されるが如く実力不足の兵士から殉職していった。『ジャック』、『ジョン』、『ベクター』、『ゴースト』も過去に任務を共にした兵士達だ。D.A.からここに配属される以前から、何回か任務を共にしていた。
「何が言いたい?錦木。」
「自分の身は自分で守りよりも、お互いの背中を守り合った方が心強い...そういうことかな?千束ちゃん?」
「そ!それにD.A.からここに異動させられた以上、必ずしも後ろ盾があるわけじゃない。リリベルもたまにこっちにも押しかけて来たりするから、君にとっても悪い事じゃないでしょ?」
それも確かにそうだ。俺は事実上ここに厄介払いされたがD.A.がただの厄介払いをするとは限らない。いつ殺しに来るかわからない。教官にも「任務の遂行するためにはまず生きていなければならない。」とも言われた。現時点での任務は変わらず、リリベルとしてのいつでも活動できるようにしなければならないこと、そして新しくリコリコの作業員としての役割を全うすることだ。その両方は敵性組織の襲撃の末に死んでしまえば失敗だ。となれば応じる方が安全だろう。
「....了解。これから世話になる。」
「話が分かる奴で助かるよ。それじゃ私はボードゲームに戻るよ!また後でね!」
錦木が控室から出たので話はここで終わりだと思ったら店長が次の言葉を発した。
「それと任務の話なんだが、早速D.A.から指令だよ。」
「内容は。」
「ウイルス兵器を開発している研究所が山中にあるとD.A.からの通達でね。『ハンク』にそれを確保、及び使用を未然に防ぎたいとのことだ。」
「敵の装備は」
「警備兵は短機関銃を持っているね。出来るかい?」
「確保した後はどうすれば?」
「D.A.から回収する人が来るそうだよ。」
「了解、見ての通りいつでも行ける。」
「店が閉まったら、裏にバイクがある。それを使っていってね。」
「了解。」
時が経ち、店が閉じる。錦木からセーフハウスの座標と鍵をもらい、そして任務の場に向かう。山の中の研究所だ。ダクトを外し、中へ侵入する。ガスマスクがあるおかげか臭いは軽減されているがやはり不快感は拭えない。D.A.の情報部によればサンプルの入ったケースは近くのはずだ。警備兵も巡回しているが研究室の中にはいない。空気配給管を通り、件の兵器の置き場、及びに製造データと実験記録をUSBに移す。だが、余りにも静かだ。不自然なまでに静かだ。そういえば、研究を続けている科学者が一人いてもおかしくない。簡単すぎる。データを移し終えた。後はウイルス兵器の回収だ。警備兵を体術で気絶させるだけに留める、巡回する兵士も待遇が良くないことがよくわかる。プロテクターすらつけてないのがなんとも解せない、がやる事は変わらない。仕留めた方が良いがそれだとリリベル、及びにリコリスや掃除屋が来た時に尋問が出来ない。情報源は多いに越したことはない。非殺傷弾入りのハンドガンを構える。研究所の奥に行くほど声が聞こえる。
ここからはまたダクトに入ったほうが良さそうだ。入った形跡をしっかり無くすようにガワだけ何もなかったかのように見せる。会話が聞こえた。
「あの研究者またヤバい代物作ってるみたいだぜ?」
「遺伝子に影響を及ぼして強制的に進化させるウイルスだってよ?」
「もう基盤が出来ているし今ある奴らで十分なはずだぜ?上の連中はこいつらを作って戦争でもする気かよ?」
データを移している間にいくつかこの世の物とは思えないような生物のデータを見たがあれを売るのかと考えたら合点がいく。しかし、俺一人だけにしたのがおかしい。普通ならリコリスも何人かここに来させるはずだ。
会話に続きがあった。
「そういえばこっちに高校生の女が何人か来てたな。見学ってわけでもなさそうだし職場体験でもしに来てたのか?」
「2人来てたな。全員容姿は良かったのにな。あの研究狂いに行ったのが運の突きとしかいえないね。」
「違いない。良くても実験台コースだろう。」
来ていたらしい。ただ、彼女らの存在を教えなかったという事実にまた疑問が残る。何にせよ任務が先、安否の確認は後だ。
例の部屋に続く排気口に着いた。研究者は何か必死に研究をしている。大きな音を立ててはいけない、周りに気付かれたらそこで終わりだ。
排気口から出て彼の後頭部に銃を構える。
「治安維持組織の者です。一緒に来てもらいますよ。」
「来ると思っていたよ。実験サンプル候補はこれで40人目だ。外部から今まで2人、送られてきた『志願者』は38人だ。実験体が増えるから困らないんだけどね。」
彼の話を聞くと俺がここに来る前の奴らは無事かどうかわからないらしい。
「そうか」
そう言って俺は科学者を撃ち、気絶させる。「うぁ...!」とうめき声をあげて気絶する。サンプルを回収して、パソコンから彼のデータをUSBに移しながら閲覧する。他のリコリスの実験データもあった。無線をD.A.につなげる。
「こちら『ハンク』。件の兵器担当の科学者を確保した。」
『相変わらず仕事が速い。例の科学者と兵器の回収は?』
「はい、今気絶しています。兵器に関しては今データを移しています。サンプルも回収しています。実験体はどうします?」
『実験体?』
「どうやらここに2人、外部から10代当たりの女性が来ていたらしい。」
『セカンドリコリスのコンビをそこに送っていたな。彼女らの安否は?』
「不明ですが、碌な目に会ってないと思います。回収しますか?」
『可能ならな。安否の確認だけで十分だ。科学者に関してはこちらから掃除屋を手配する。彼らが回収するのでその護衛は結構だ。すぐに向かわせる。』
「了解。」
D.A.もここを前から怪しんでいたようでアラン機関やD.A.から科学者何人かはここにいたらしい。次はリコリスの安否だ。データの移動が終わるカメラを見る限り何人かはもう寝ているか研究しているだけみたいだ。研究狂いという言葉にも納得がいく。実験室のモニターを見ると案の定いた。が、様子がおかしく出口を探していた。もう一人はぐったりとしていたが様子がおかしい。
「安否を確認。一人は体調を崩しており、もう片方は焦燥しています。」
『了解、あちらの研究員が送ったデータを見ても初期症状が出ているだけだ。念のため救助が来たとだけ教えろ。』
「了解。」
実験室に向かった。やはりというべきか実験現場を好き好んでみる人はいないだろう。特にウイルスに関する物ならなおさらだ。実験現場に着くとリコリスが俺に気付いたようですぐにこちらに駆け寄った。
「あなたD.A.のひとでしょ?!助けて!」
かなり焦燥しているようだった。
「もうすぐ掃除屋が来る。こっちにもワクチンがあるはずだ。D.A.もバカじゃないだろうからおそらくあっちも薬を作ってくれるだろう。だからいったん落ち着け。」
そう伝えると状況を理解したようで少し落ち着きを取り戻した。数時間後に掃除屋が来た。科学者一行も掃除屋として伝わっていた為特に気にすることなく件のサンプルと重要参考人、そして実験体になったリコリスを回収していった。
「任務完了。撤収する。」
『了解。よくやった、ハンク。』
気の利いた会話やお洒落な掛け合いなどなく任務は終わる。俺は個室で着替え、ここに来るときに乗ったバイクで錦木の情報をもとに、セーフハウスへと向かった。
意外とわかりやすいところにあるようですぐに錦木のセーフハウスだってわかった。後ろから足音がする。5人の小隊、チームといったところか。非殺傷弾入りのハンドガンを手に持つ。ガスマスクはしているままだが戦闘服ではない分、当たれば危ない。下に防弾服を着ているがそれだけだ。
「元本部直属リリベル、『ハンク』だな?」
赤い服を着た隊長が喋る。確認を取るかのような声音で聞いている。
「そうだな。コードネーム上はな。」
「上の命令でお前の回収と錦木千束の始末をしに来た。」
俺の回収。D.A.は俺をリコリコに移した手前、なぜ回収が必要なのか疑問だ。何より錦木の始末はむしろ悪手だと思った。
「大きな人的資源の浪費になるぞ。それでも彼女を始末する気か?」
「それが上からの命令だ。お前も来てもらおう。」
上からの命令と一点張りだ。警戒はすれど、噂は噂だと高を括った顔だ。後ろから走る音が聞こえる。錦木だ。全員が俺から視線を外し足音が出る家に向ける。その隙を逃がさず、隊長に接近する。彼は一瞬おくれたがギリギリ気付いたのか、焦って表情で銃を発砲する。ここで全員俺に向き、銃を構える。ここまでよし。射線を敵に重ねるように動く。これで容易に発砲できないが隊長は構わず撃つ。
「バカが」
声が漏れる。誰かが痛みで叫び呻く声が走る。銃を手から弾き、流れで顎にフックを叩き込み、最後にハイキックで意識を確実に刈り取る。錦木は部下を二人倒していた。俺は近くにいた一人に走り、銃を強く弾く。勢いで敵も後ろを向きそこからすかさず首を決め締め落とす。打撲音が聞こえて錦木が呆れたような、安心したような声で話しかけてくる。
「無茶しすぎ。撃たれていたらどうするの?」
「お前がここにいたのはわかっていた。いなかったら別の動きをしていたさ。それよりも...おい。」
撃たれた兵に歩み寄る。
「上に伝えろ、俺達はお前たちD.A.本部に敵意は全くないが、敵性部隊を送れば必ず迎撃すると。」
「はい。うぐっ...」
錦木が彼に応急処置をする。
「動かないで。すぐ終わるし、殺したいわけじゃないから。」
俺はそれを見てセーフハウスに向かう。犠牲を最小限にとどめるのは慣れているが、手当までする奴はあいつが初めてだ。錦木に会ってから初めての事ばかりだ。初めて水上健司という名前で呼ばれた。自分は兵士だけではないと考えさせることも、寧ろ兵士以外の生き方もあると気付かせるきっかけを作ってくれた。あいつは、ただのファーストリコリスじゃないって事がよくわかる。
リコリスが自ら人助けなんて聞いたこともないが、それが彼女の生き甲斐なのだろう。少なくとも、俺がこうなってしまったが、彼女はたとえ俺と同じ目に会ってもあの明るさのままだろう。羨ましい限りだ。
ドアのあく音がした。
「あぁ、そうそう!ようこそ我が家へ!千束'sセーフハウス1号!」
「宿泊場所の提供、感謝する。」
「わぁ、いつも以上に淡泊な声。こう、心から喜ぶことはしないのか?ずっとそれだと疲れるでしょ。」
「もともとこうだ、疲れるのはお前のテンションだ。そのテンションで体力が有り余っているのは凄いな。」
「疲れ知らずな元気っ子でかわいいってことかな?!」
「うるさいって事だ。」
「ひっどーい!」
ぎゃいぎゃいと錦木が騒ぐが、無視する。聞き入れるだけ無駄だ。明日も喫茶店で働く為おそらく朝は早い。少し精神と体を休ませるべく、シャワーを浴び、歯を磨き、睡眠をとることにした。そういえば、掃除屋が俺以外にもリコリスがもう一人配属されると言っていたな。あいつも訳ありみたいだが、今はそんなことを考えても仕方がない。そう思い、眠りに落ちた。
夜が明ける。錦木はまだ寝ているようで「むにゃむにゃ」とリコリスらしからぬが少女らしい寝息を立てていた。普通の人が見ればエージェントには見えないなと納得する。任務用の装備を持ち、私服でリコリコに向かう。朝の5時、この時間は車もあまり走っておらず日も上っている。バイクを走らせながら俺は今の配属先に向かう。
バイクを降り、荷物を持ちリコリコの裏口から入り、制服に着替える。電話が鳴る。錦木からだ。
「なんだ?」
『健司くん今どこなの?!まさかもうリコリコについているなんてことないよね?!なんで起こしてくれなかったの?!』
早口に文句をまくしたてる錦木にため息しか出なかった。
「頼まなかっただろ。」
『頼まれなかったらやらないんかアンタは!?』
「必要なさそうだったからな。お前みたいなのが寝てたら起こすのをためらうのが普通だ。」
『可愛いね姿に見とれてたんならそういえば良かったのにィw』
「起こした後が面倒そうだから起こさなかっただけだ。」
『ハァ?!』
これ以上は意味がないと思い電話を切る。
「おはよう水上君。昨日の任務、死傷者ゼロで要望通りに任務を遂行したそうだね。お疲れさま。」
店長がホールに続くドアから着替え室に入ってきた。
「ありがとうございます。今日は昨日と変わらない感じですか?」
「そうだね。でも時間があるから仕込みかな。」
「...店長、コーヒーの淹れ方、教えてくれませんか?」
「真面目なんだね。...あと千束ちゃんに辛辣過ぎると大きなしっぺ食らうから気を付けなよ?」
聞かれていたみたいだ。その後喫茶店の作業員の役割を全うできるように開店まで喫茶店の料理の作り方やコーヒーの淹れ方を教わったりした。途中で騒がしく入ってきた錦木に、起こしてくれなかったことを責められるが、新しく配属されたセカンドリコリス、井ノ上たきなに意識が行ったため、そこまで何か言われることはなかった。というよりも教わった内容を実践していたので聞き流していた。三回目だ。一つは店長さんが飲み、もう一つは結婚できないと嘆いていた中原に渡し、最後のは俺が飲むつもりだったが、一口しか飲めず、気づいたら錦木が飲んでいた。少しいら立ちを感じたがそれを飲み込み、声をかける。
「店長さんに比べたら全然だろ。まだ慣れないといけない。」
「精進したまえよ少年。」
肯定なのか否定なのかよくわからない言葉を残し、彼女は着替えに行った。ため息が漏れながらつい、思ったことが言葉に出る。
「...あんたも変わらねぇだろうが。」
井ノ上が入ってはや数時間、昨日よりお客さんが増えた。快活な錦木、クールで冷静な井ノ上、そしてなぜか陰のある俺。全員人気になりうる要素があるみたいだ。ただ、俺の「陰のある一面」がなぜ人気になりうる要素になるのかが皆目見当つかない。店長さん曰く、「陰のある表情からたまに見せる笑顔が人気になる理由だよ」と言われたが意味が分からなかった。容姿に優れる二人はともかく、俺はそこまででもないはずだ。
「井ノ上、二番テーブルの接客頼めるか?」
「はい、その後は」
「呼び出されたら応対、もしお冷とおしぼりがない場合は出しておけ。」
「了解。」
井ノ上の言動は錦木とは正反対だ。必要以上に客と雑談せず、教科書通りの接客といった印象だ。個人的にはこちらの方がやりやすい。騒がしい人より落ち着きのある人の方が面倒さの度合いが低い。上のやり取りのようなのを数度繰り返し、すぐに順応していたが、彼女から微かな焦りが見える。余程D.A.の本部に行き、『名誉あるリコリス』に復帰したいのだろう。俺もD.A.の過剰な刷り込みを真に受けていたらこうなっていたのだろうかと思うと少し安心できる。何せ俺がD.A.でリリベルをやっていたのは他にやる事がなかった上、その生き方しか知らなかったからだ。結局は長期任務としか認識できなかった。
休憩時間中にD.A.の実働部隊としての任務を引き受けた。曰く、『たまたま自撮りで撮った写真が銃の取引現場の場所だった』ようだ。こういう偶然もあるものなのだなと、世の中の因果に関心を持ちながらも、酔っ払いの僻みを聞き流した。曰く「撮り映えに意識しすぎた罰」だそうだ。それなら俺は自分への依頼の為に殺した命に対しての罰がいつ来るのだろうか。俺は任務成功のために、自分を顧みなかったし、部下の命も見殺しにしてしまった。依頼に沿うための殺しも行った。最小限に犠牲をとどめても、殺すべき時は殺した。その報いはいつか来るのだろう。だが、せめて今は来てほしくない。自分の居場所ともいえるリコリコを、「人」としてもう少し享受したい。もし、罰が来たときはリコリコがなくなるときか、俺が何かを引き換えに死ぬ時だ。
井ノ上がトラックに護衛対象を乗せておとりに使った。傭兵たちは彼女を人質として確保しようと銃を構えてトラックに歩み寄る。非殺傷弾を用いて傭兵たちを気絶させる。少々遠く、外だからというのもありサブマシンガンを使う。次々と命中し、敵は気絶していく。こちらに注目が集まる。人質になりそうな護衛人物と井ノ上は二の次といった感じだ。残った敵は銃をこちらに構えるが、もう彼は助からないだろう。上から錦木が降ってきた。別の敵を撃ち、気絶させる。
「随分いいタイミングだな。助かった。」
「お礼を言えるようになったなんて成長しているじゃないか。」
「言ってろ。」
粗方片付いた。それに気づいた護衛人物が井ノ上と錦木に抱き着き、全員で泣いていた...一般人からしてみれば恐怖が強いのも当然か。落ち着くまで待った。
「井ノ上、俺の聞きたいこと...わかるか?」
「いえ...」
「...なぜ護衛対象をおとりに使った?」
怒りを可能な限り抑えて彼女に問う。
「...その方が敵を引き付けられて仕留めやすいと思いました。」
「護衛任務って言葉の意味を分かった上でその行動をしたのか?井ノ上。」
「...護衛対象を守る任務です。」
「お前は何をした?」
「ハイハイ!たきなを詰めんな!気付いてないかもだけど涙目になってっから!」
舌打ちが口から洩れる。思った以上に苛ついていたようだ。護衛対象も井ノ上を庇うように口をはさむ。
「私、本当に気にしてませんから。」
井ノ上にだけ聞こえるようにつぶやく。
「...次似たようなことをすればお前を任務の妨害する敵とみなす...わかったか。」
「健司くん!」
「チッ...撤収するぞ。」
撤収した後、特に目立った会話はなくリコリコに戻った。まだ時間があったためコーヒーや飲食物の調理の練習と実習した。『ずっと兵士だった割に意外と筋が良いね』と店長さんから太鼓判を押されたため、接客と調理をある程度任されるようになった。リコリコの今日の営業は終了し、セーフハウス一号に入り一息つくと千束が少し怒ったような、悲しそうな声で俺に聞いてきた。
「あそこまで詰める必要あったの?」
「あいつの行動で依頼が終わるところだったぞ。」
「それはそうだけど...」
「あいつが本部に戻りたいのであればまず余計なリスクを作らないように立ち回る動きを覚えてもらわないといけない。合理を重視するあまり回避できたリスクを追ってそれで任務失敗したらそこまでだ。二度とリコリスとして復帰できなくなる。」
「...言い方ってものがあるでしょうよ。」
「これでも抑えた方だ。少なくとも、今までずっとああだったのならここに転属されたのも納得だ。」
「ちょっと...!」
「ただ、それが治れば本部に戻れる可能性もあるだろうな。事実、井ノ上も優秀だ。不殺の誓いも、リスク管理もこなせれるようになるだろ。」
「...ただの冷血漢だと思ったら意外と褒めるんだね、健司くんって。」
「オレの目で見た事実に基づいて評価しているだけだ。」
錦木が微笑みながら安心したかのように言う。反省点、改善点と長所を述べているだけだ。ただ、確かに俺は人より冷たいのかもしれない。環境が許してくれなかったのと、少なからずそういう性格だったからだと思う。
何が彼女をそこまで不安にさせたのかはわからない。俺は事実に基づいて評価したにもかかわらず、さっきまで怒るのを必死に抑えるような声音で聞いたからだ。人というのは難しいものだと実感する。
錦木は「そういえばさ」と思い出したかのように話し始める。大概こういう始め方するときは碌な話題じゃない。
「なんで全員敬称か苗字で呼ぶの?私の事は錦木って呼ぶし、たきなの事は井ノ上、ミカさんの事は店長さんって呼ぶし、ミズキの事も中原さんじゃん。」
「理由がない。」
「じゃあ、名前で呼んでよ!寂しいんだよ私だけ名前で呼んでるの!健司くんと良いたきなと言い、ここに来るD.A.の実働部隊はなんでこう他人行儀過ぎるかなぁ!?」
ここで名前呼びしないと後が面倒だ。苗字呼びする度に訂正を促してくる上、それを無視したら騒ぎ始めるのが容易に想像できる。
「...あとで後悔するなよ錦木...千束。助けてくれたのは感謝しているが、口の悪さは変わらないからな。」
慣れてない呼び方をして錦木は呆れたように笑いを零す。
「自覚してたのね健司くん。」
「隊の誰かが死ねば必ず辛い思いをする。それに任務をこなしてこそのリリベルと教わったからな。情を捨てたり、持たないことが効率的だと思っていただけだ。」
錦木...いや、千束は心底不思議そうに俺の顔を覗き込む。珍しいもの、あるいは理解不能なものを見るかのように俺を見た。
「『いた』ってことは心境の変化でもあった?」
「まあな、人としての居場所があるのも悪くないと思っただけだ。リリベルでいなきゃいけないという義務感が薄れるからな。」
心境の変化と呼べるかどうかはわからないが、そう答えるしかなった。事実、喫茶店リコリコで働いている時はリリベルとしての使命を少し忘れられる。誰も俺を『D.A.の黒いリリベル』と認識せず、ただの新人店員「水上健司」として認識している。それが俺の心を少し軽くしてくれた。俺の答えを聞くと千束は何かに気付いたような顔をして含み笑いを零し、笑顔で俺の訪ねた。
「君さ、ここに配属されて後悔も恨みもないでしょ?」
「ないな。抱く理由もない。お前はどうだ?千束。」
「私もないよ。お互い様だね。」
溜息を出し、その場を後にする。ここにいるとリリベルとして生きることが良い事なのか否かがわからなくなる。聞く人が聞けば答えも違う。リコリコにいる間、自分の納得できる答えを探してみるのも悪くないかもしれない。
リコリコ→水上
ミカ:任務の話をした時だけ異様な殺気と冷たい空気を発するし、雰囲気がただの不器用で無機質な少年から機械の様な殺し屋に変わるからびっくりした。ここで働いている時はしっかり言われたことをやってくれるしアドリブもある程度聞くからこっちとしてもかなり助かる。ただ、最初の二、三回の接客が無機質すぎたね。後、話が端的過ぎてるから避けられているのかで不安になる。
千束:戦った時顔を見えなかったからわからなかったけど『いつでも獲れる』って感じだけが伝わってきて油断できなかったし怖かった。任務じゃないときは接客できる子だしなんだかすっごく真面目な人って印象だね。素顔が意外とイケメンで意外だった。物言い基本端的で辛辣だけど彼なりの優しさもあると思う。でもあたしに対しては輪をかけて辛辣じゃない?
ミズキ:最初は他のリリベル同様、指示待ちの人だと思ったら意外と順応が速くてびっくりした。任務に向かう時のあの量の殺気が出てくるってどういう環境に身を置いていたのよ?たまにヤバいものを見る目で見られるのが解せないわ。
たきな:私より断然強いですね。千束と互角って時点で頭おかしいです。リコリコで働いている時は普通に無表情な先輩、リリベルとしての任務に赴いている時は噂通りかそれ以上に冷たく、底が知れませんね。彼の関わる任務で同伴しなくて良かったと思ってしまいます。一々言い方が刺々しいけど正論気味なのが嫌ですね。
水上→他
ミカさん(店長さん):ただの店長じゃない。喫茶店のメニュー作っているのがすごいと思うけど、絶対それ以外に何かやっていた。一般人のそれじゃない、D.A.の中でも上積みの戦闘力だろうな。
千束(錦木):強いけどアホっぽい。初対面で戦う羽目になったので良い印象はないが任務で味方に回っているのならこれ以上のないくらい頼りになる戦力だ。ファーストリコリスの称号は伊達じゃないのがよくわかる動きだった。ニヤニヤしながら揶揄ってくるのが微妙にムカつく。でも兵士以外の生き方を教えてくれた恩人。
ミズキ:酔っ払い。情報部という場所に身を置いていたから貴重な人的資材には間違いないのだが人格面が残念過ぎる。十代でも構わないスタンスに少し引いた。
たきな(井ノ上):銃の名手のセカンドリコリス。錦木とは対照的だが精神的未熟さが垣間見える。重要人物をおとりとして使った時はその場で気絶させるかどうかで迷った。合理的すぎて命令無視、改めてみると敵より厄介な性質だ。