Re:とあるヒーロー達の異世界生活   作:ちるみる

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第10話 『白い怪物』

「だ、誰だ...?」

 

隣でスバルが呟く。 ロム爺もフェルトも呆気に取られて侵入者を見つめていた。

 

「あ、一方通行(アクセラレータ)...なんでここに...」

 

学園都市第1位の超能力者(レベル5)、通称一方通行(アクセラレータ)。 元々は上条の世界の住人のはずなのだが、何故ここにいるのだろうか。

 

驚きの余り固まっていると、一方通行は顔を面倒臭そうにこちらへ向けた。

 

「どォやら、取り込み中のようだが...俺が用があるのはそこのヤツだけだ」

 

その視線の先には___________。

 

「俺!? よりによって俺!?」

 

どうやら、一方通行はスバルに用があるらしい。 一応面識があるはずの上条には目もくれない。

 

一方で、名指しされたスバルは目に見えて狼狽え始めた。 まぁ、あの鋭い目で射抜かれれば誰でもそうなってしまうだろう。

 

「ちょっと」

 

と、そこに偽サテラが口を挟む。

 

「誰なのか知らないけど、今はそんな場合じゃないでしょ?」

 

その声を受けて、一方通行はようやく存在に気付いたかのように偽サテラへと目をやる。

 

「チッ、邪魔者が多すぎンだろ」

 

「あら、邪魔者は貴方だと思うのだけれど」

 

「あ_____」

 

スバルが思わず声を漏らす。

 

今まで沈黙を貫いていたエルザが、痺れを切らしたのか一方通行へと向かって走り出したのだ。

 

偽サテラの方へと目をやっていた一方通行は、それに反応することができない。 なすすべもなく、血をぶちまけて倒れるだろうと誰もが思った。

 

______上条を除いて。

 

キン、と人にナイフが刺さった時のそれとは余りにも違う音が辺りに響く。 一方通行は、エルザの方向を向いてすらいなかった。 あろうことか、偽サテラに目を向けたまま何事もなかったかのように立っている。

 

「...あら?」

 

戸惑いの声を上げたのはエルザだ。 変化があったのは彼女の右腕。 ナイフを持っていたはずのその腕は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

一方通行は、口笛を吹きながらようやくエルザの方へと向き直る。

 

「どォやら、本当の邪魔者が発覚したみたいだぜ」

 

ベクトル操作______確か、そんな感じの能力だった。 一方通行は、あらゆる物体の力の向きを操ることができる。 つまるところ、一方通行に物理的な攻撃は一切意味をなさないのだ。

 

「当麻、アイツと知り合いなの...? 友達は選んだ方がいいと思うぞ」

 

「知り合いではあるけど、友達ではないな。 むしろ結構敵対してきた」

 

「当麻はあんな怪物とやり合えんのかよ!?」

 

妹達(シスターズ)の件はもちろん、つい最近ロシアでもタイマンをやった気がする。 何とか勝てたのは、右手があったからだ。

 

「誰かは知らんが、勝機はまだあるようじゃな」

 

「アイツの矛先がこっちに向かねーことを祈ってるぜ」

 

ロム爺とフェルトが不安そうに言葉を交わす。 確かに一方通行は強力だが、彼らからすればまだ敵が味方か判断がつかない状況だ。

 

「あぁ、素敵...。 まだ楽しませてくれるのね」

 

エルザが恍惚の表情を浮かべる。 腕がひしゃげても彼女のスタンスは変わらないようだった。

 

「イカれてやがる」

 

対する一方通行の表情は冷めたものだ。 赤い瞳が殺意を帯びていく。

 

「面倒事はさっさと終わらせるに限る」

 

そう言うや否や、一方通行は足元に落ちていた瓦礫を思いっきり蹴り上げた。 それは凄まじい速度でエルザの顔へと吸い込まれていき______。

 

「そォ簡単にはいかねェか」

 

いつの間にか、まったく別の場所へと移動しているエルザ。 そんな殺人鬼を見て、一方通行は小さく舌打ちした。

 

「まだまだ楽しませてくれるでしょう?」

 

エルザは恍惚とした表情でそう言うと、意趣返しのつもりなのか、一方通行に向かってナイフを投げる。

 

またもや、一方通行は避けさえしなかった。 が、彼の肌に傷がつくことはない。 エルザが投げたナイフは、あろうことか彼女の足に深く突き刺さっていた。

 

「今、何が起こった...? ナイフが弾き返された、のか?」

 

「あれが一方通行の能力だ」

 

「もしかして、反射ってヤツか!? チートすぎんだろ...!」

 

スバルが慄く。 厳密に言えば反射ではないのだが、今はそれについて話せる雰囲気でもなかった。

 

「ふふ...」

 

エルザがよろめきながら薄く微笑む。 刺さったナイフは相当な痛みを彼女に与えているはずなのだが、エルザは一切そういった表情を見せない。 それどころか、彼女は足に刺さっているナイフを思いっきり引き抜いた。

 

「チッ、しつけェな」

 

「あら、つれないのね」

 

苛立ちを隠そうともしない一方通行に対し、未だに立ち上がってくるエルザ。 相当な深手を負っている筈だが、それを感じさせない立ち回りはさすが殺人鬼といったところか。

 

「終わらせてやる」

 

ここで初めて、一方通行が動いた。

 

「速い!」

 

ロム爺が思わず声を漏らす。 一方通行は、地面を蹴ったかと思うと次の瞬間にはエルザの目前へと迫っていた。 必殺の右手がエルザの顔に命中する___________。

 

その寸前だった。

 

「______ッ!!」

 

野生の勘なのか、はたまた戦闘における経験値の賜物なのか、エルザは一方通行の右手を寸前のところで避けていた。 そして、彼女は盗品蔵の出口に向かって走り出す。

 

「残念だけど、ここまでみたい。 いずれ、この場にいる全員の腹を切り開いてあげる。それまではせいぜい、腸を可愛がっておいて」

 

「逃す訳ねェだろォが!!」

 

凄まじい速度で逃走するエルザに追随する一方通行。 だが、それよりも問題は_________。

 

「逃げろ!!」

 

偽サテラが、エルザの直線上に立っていた。 一方通行とエルザの戦闘が開始されてから、彼女はその場を一切動いていない。

 

偽サテラは、向かってくるエルザを見ても動かない。 いや、もしかすると何らかの理由で動けないのかもしれない。 実際、彼女の額には大量の脂汗が浮かんでいた。

 

「貴方だけでも_____!」

 

そして、その隙をエルザが見逃すはずもなかった。

 

偽サテラの腹部へとナイフが迫る。 間に合わない。 一方通行は既にエルザを追いかけているが、角度的にナイフを止めることは不可能だった。

 

「届けぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

一番偽サテラに近かった上条は必死に手を伸ばす。 これ以上、誰かが傷つくのを見たくはなかった。 だが、無情にも時は過ぎていく。 エルザのナイフが、今にも偽サテラを襲おうとしていた。

 

ドスッ、と鈍い音が辺りに響く。 同時に、大量の鮮血が盗品蔵の床に飛び散った。

 

「なんで______」

 

しかし、飛び散った血は偽サテラのものではなかった。

 

それは間一髪でエルザと偽サテラの間に割り込んだ上条 当麻の血だった。

 

ドサ、と何かが地に落ちる。

 

「ぐあぁァァァァ!!!!」

 

()()()()()()()()()()()()

 

「当麻!!!」

 

何処かでスバルの叫び声がする。 視界が明滅し、一瞬遅れてどうしようもない苦痛が上条を襲った。

 

_______痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

 

「邪魔を_______!」

 

攻撃を妨げられたことにエルザが一瞬顔を歪め、上条を飛び越えて盗品蔵を出ていく。 逃すまいと、一方通行も一瞬遅れてエルザを追おうと飛び出し______。

 

直後、その細い体が反対の壁まで吹き飛んだ。

 

「がァ____ッ!?」

 

原因は、上条の右腕。 いや、正確に言えば、右腕の切断面。 殺人鬼によって綺麗に切り離されたその断面から、『なにか』が吹き出していた。

 

「どりゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

と、その時、スバルが横合いから飛び出し、偽サテラの腰辺りに飛びついた。 そのまま転がり、上条から距離を取る。

 

「大丈夫か!?」

 

「あ、ありがとう...。 ごめんなさい、白い人が戦い始めてから辺りのマナが...」

 

「よくわかんないけど、無事で何よりだぜ!」

 

偽サテラの無事を確認しつつ、スバルは上条に向かって叫んだ。

 

「当麻! 聞こえるか!!」

 

「ぐ...」

 

上条の視界は未だに明滅していた。 何がどうなっているのか、まるで状況が把握できない。 スバルの声を頼りに、必死に意識を保つ。

 

「クソ、やべぇな。 当麻の正気が戻るまで時間を稼がねぇと...。 あの白いヤツがぶっ飛ばされるレベルの攻撃とか、ゾッとしねぇ」

 

「チッ、例の右手は健在って訳か」

 

「うお!? いつの間に!?」

 

スバルが思案している間に、一方通行は復活していたようだ。 忌々しげに上条へと目をやる。

 

「オイ。 オマエが悪党になってどォすンだよ、ヒーロー」

 

「だ、だめだ、来るんじゃねぇ...」

 

ようやく思考が蘇ってきた上条が必死に声を絞る。 フィアンマと戦った時のことを思い出す。 その時も、確か右腕を切断されて、中から『なにか』が飛び出してきた。 だが、今の『これ』はその時よりも更に制御ができなくなっている。

 

このままだと、この場の全員が危険なのは間違いなかった。

 

「こォいうのは柄じゃねェンだがな」

 

ぽつり、と一方通行が独り言のように呟く。 そして、スバル達の方へと顔を向けて口を開いた。

 

「てめェら、さっさと消えろ。 邪魔だ」

 

唐突な言葉だった。 だが、それは確かにスバル達に向けられていて____。

 

「でも_____」

 

「特にてめェには死なれると困るンだよ、ナツキ・スバル」

 

一方通行の言葉にスバルは戸惑う。 スバルの記憶が確かならば、目の前の白い人とは面識がない。 それなのに、『死ぬな』と言われるのは何とも不思議な感じだ。

 

「ちくしょー、今は兄ちゃんの言う通りにするしかないな」

 

フェルトとロム爺が困惑気味ながらに行動を起こそうとしている。 それを見て、スバルも決心が固まった。

 

「死ぬなよ」

 

「誰にもの言ってやがる」

 

それだけ交わし、各々が行動に移ろうとする。

 

________と、その時だった。

 

「そこまでだ」

 

屋根を貫き、盗品蔵の中央に燃え上がる炎が降臨する。 焔はすさまじい鬼気でもって室内を席巻し、一方通行でさえもその動きを止めた。

 

赤い髪に青い瞳。 整った顔立ちも相まって、その風貌は一度でも見れば忘れることはないだろう。

 

「ライン、ハルト!?」

 

怒涛の1日目、本当に最後の戦いが始まろうとしていた。

 




第1章のボスはまさかの上条さん(中条さん)。
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