Re:とあるヒーロー達の異世界生活   作:ちるみる

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一章はなかなか上条さんの活躍の場がないね


第3話『ナツキスバルのリスタート』

目が覚めたら、そこは異世界でした。

 

「って今度こそ本当の本当にシャレになんねぇぞ...」

 

竜車に激突し、気を失っていた(はずの)上条が目を開けると、そこにはこの世界で最初に見た光景と同じそれが広がっていた。

 

(しかも気を失ったのに立ってる...?)

 

諸々の疑問は尽きないが、だからと言ってボーッと立っていても状況は変わらない。 上条は、ひとまず辺りをふらふらと周ってみることにした。

 

「さっき、俺が竜車と衝突した場所は...」

 

何かが引っかかる。 周りの景色は先程と何ら変わりないが、そこが逆におかしく感じる。

 

「何も、ないか...」

 

竜車との衝突場所に行っても、特に変わりは見られなかった。 事故などなかったかのように、周りの人々は悠々と歩いている。

 

まだ釈然としない上条は、何となく路地裏に足を踏み入れていた。

 

と_____。

 

「当麻...?」

 

そこには、先程別れたジャージの少年が立っていた。

 

「スバル、か?」

 

「いやー、トンチンカンの奴ら、また性懲りもなく絡んできやがってさぁ。 今度はちゃんと返り討ちにしてやったけどな!」

 

いつもと同じ、お気楽な調子で語るスバルだったが、上条は気付いてしまった。 ____その足が、震えていることに。

 

「...何があったんだ?」

 

「わかんねぇ。 正直、何が何だかって感じだ」

 

「俺と別れた後に何があった?」

 

上条の質問にスバルは言葉を詰まらせる。 僅かばかりの沈黙の後、彼は意を決したかのように口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? 死んだ?」

 

「俺も信じたくはない。 ただ、あの痛みと喪失感は本物だ。 夢だとは、さらさら思えねぇよ」

 

結局、あの後スバル達は犯人の拠点であろう盗品蔵を見つけていたらしい。 が、入った瞬間に何者かに殺されてしまう...それがスバルの言い分だった。

 

「ヤクザみたいな果物屋に綺麗な奥さんがいたとか、あの子の新たなお人好しエピソードとか、そこら辺は一旦隅に置いとくぞ。 問題は、スバルが殺されたこと、それと今の時間だ」

 

「今...昼、だよな?」

 

半信半疑、と言った様子で呟くスバルに上条は眉をひそめる。 言うまでもなく、今は昼だ。 そこに疑問の余地は無いはずだった。

 

だが、そんな上条の心情を裏切るかのようにスバルは続ける。

 

「俺が盗品蔵に入った時、確か既に辺りは暗くなっていたはずで...」

 

「なんだって?」

 

予想だにしない一言に、上条は思わず聞き返してしまう。 少なくとも上条が竜車と衝突した時、時刻は夕方にも差し掛かっていなかった筈だ。

 

「俺が考えるに、可能性は2つだ。 実は殺されたってのが勘違いで、ただ単に一日中気を失ってたってだけか、もしくは...」

 

「もしくは?」

 

スバルは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに次の言葉を紡いだ。

 

「時間が巻き戻った。 俺的にはこっちの方が有力だと思ってるんだけど、どう思う?」

 

「スバルの死を起点にってことか?」

 

「そう、名付けて『死に戻り』ってね。 確かにチートには変わりないんだけど、俺が想像してたチートとはだいぶ違ってガッカリだぜ」

 

さらっと簡単に言うスバルだが、本当ならかなり衝撃の事実だ。

 

「思い返せば、トンチンカンの反応もちょっとおかしかったんだよな。 あれも2週目ってことなら納得がいくぜ」

 

「さっきから気になってたんだけど、トンチンカンってあのチンピラ達のことか?」

 

確かに妙にしっくりくるニックネームだ。 今度から自分もそう呼ぼうと、心の中でどうでもいい決意をする。

 

「てか俺に負けず劣らず、当麻もなかなかの体験してない?」

 

「再びトンチンカンに絡まれて、ラインハルトとかいうチートっぽい奴に助けられて、竜車に跳ねられただけだ、大したことねぇよ」

 

「それで俺が死ぬまで気失ってたってゾッとしねぇ。 当麻と合流できれば俺も死んでなかったかもなぁ...」

 

遠い目をするスバルだったが、残念ながらそれは望み薄だ。 魔術師とか超能力者ならともかく、普通の殺人鬼には幻想殺しは全くもって意味をなさない。

 

「まぁつまり、俺がいたところでスバルが死ぬ運命は変わらないんだが...」

 

「だからと言って何もしない訳にはいかない...ってことだろ? よし! じゃあ、早速盗品蔵にレッツゴー」

 

「そうだな、行動を前倒しにすれば何かが変わるかもしれないし」

 

上条とスバルだけで状況が変わるとは思えないが、行動を早く起こせば事件を未然に防げるかもしれない。

 

そんな淡い希望、そして意気込むスバルと共に、上条は盗品蔵へと足を向けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばサテラって偽名らしいぞ」

 

「さらっととんでもねぇことぶっ込んできた! どこ情報だよ、ソースは!?」

 

盗品蔵に向かう最中、ふと思い出したことをスバルに伝えておく。 突然すぎたのか、予想以上に驚かれたが。

 

「ソースはラインハルト」

 

「うわ会ったこともないのにめっちゃ信憑性ある」

 

経緯はともあれ、スバルもサテラが偽名だという事実を受け入れた。 どうやら、彼も会話の所々で違和感を感じていたらしい。

 

「で、ちゃんと盗品蔵の場所、覚えてんのかよ」

 

「それはもちろん。 この俺、ナツキスバルの記憶力を舐めないで頂きたい」

 

自信満々に胸を張るスバル。 そんな彼の言葉はあながち嘘でもなかったようで、上条達は何のトラブルもなく、徽章盗みの犯人がいるスラム街らしきところまで辿り着くことができた。

 

「ビビんな、ビビんな、ビビんなよ、俺。バカか……いや、バカだ、俺は。ここまできて答えを見ないでなんて帰れるかよ」

 

「・・・」

 

盗品蔵が近づくにつれ、足の震えが大きくなっていくスバル。 それも無理はない。 何しろ彼はここで一度、正真正銘死んでいるのだ。

 

「スバル」

 

「...大丈夫だぜ。 今度は俺1人じゃない、『上条当麻』っていう頼りになる後輩がいるんだからな!」

 

スバルは、自身の膝を思いっきり手で打つと、襲いくる恐怖を打ち消すかのような悪い笑みを浮かべる。

 

「気合十分。 行こうぜ、当麻」

 

ついに、盗品蔵の前に辿り着いた。 通常より遥かに大きいその扉は、上条達の行手を阻むかのように泰然としている。

 

「誰か、いますか」

 

スバルは、その扉を軽くノックした。 返事はない。 その静寂と沈黙は、スバルの焦燥感を更に高めていく。

 

「誰か……誰かいるだろ! いてくれよ、頼むよ、返事してくれ……頼む」

 

焦り、恐怖、様々な感情に襲われるスバルは、戸が軋むほどに強く拳をぶつける。

 

「落ち着け、スバル。 いざとなったら2人でドアを蹴破れば...」

 

「――やめんかぁ!! 合図と合言葉も知らんで、そのうえ無断で侵入しようとする輩がどこにおる!!」

 

突如として、今まで沈黙していた扉が何者かによって勢いよく開け放たれる。 そのはずみに、今まで縋り付くようにしていたスバルが凄まじいスピードで吹き飛んだ。

 

そして上条も、スバルよりはマシだったが、衝撃で後ろに倒れ込んでしまった。

 

そんな上条達を気にすることもなく、盗品蔵の中から現れたのは、大柄で禿頭の老人。

 

元は白かったのかもしれない上着は、埃と長年の汗で茶色く変色し、臭いもどぶ川のようにひどい。見るからに不衛生な有様だ。その衣服の下には筋肉質な肉体が詰まっていて、その年齢を感じさせる見た目に反して弱々しさの一切を思わせない強靭さが見え隠れする。

 

巨大な老人は、上条とスバルの顔を交互に見やり、訝しげな表情を浮かべた。

 

「なんじゃお前ら! 見覚えのない面ぶら下げて、何しにきたんじゃ! どうやってここを知った、どうやってここに辿り着いた! 誰の紹介じゃ!」

 

唾を飛ばしながら凄まじいスピードで質問を投げかけてくる巨人。 上条も、スバルも、その勢いに気圧され、何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いに強烈な出会いとなったものの、何とか盗品蔵の中へと招き入れて貰った上条達。

 

カウンターらしき場所の固定椅子に座り、話を聞いてもらうことになった。

 

「なんじゃさっきからもじもじしおって……タマの位置がそんなに気になるか」

 

「別にチンポジ気にしてるわけじゃねぇよ。ってか、下で会話始めんなよ。あと菓子全部食うな」

 

スバルが居心地悪そうにするのも仕方ない。 固定椅子はかなりささくれ立っており、座っただけでも尻が痛くなる。

 

が、そんなことなど最早どうでもいい。 上条はコンビニの袋を指差し、がくりと肩を落とす。

 

「スバルはやっぱり食料を持ってたんだな...不幸だ...」

 

「思ったより不幸自慢が面倒くせぇ! 食料ったってこのスナック菓子1つだけだろうが...ってかおい全部食うなジジィ!」

 

スバルが慌てて叫ぶが、時既に遅し。 あっという間にスナック菓子の袋は空になってしまった。

 

「あーっ! 全部食いやがったな!?」

 

「なんじゃケチ臭い。こんなうまいもんをひとり占めなんぞ、地獄に落ちるぞい」

 

「あれぇ!? 俺が食う前に全部無くなってる!?」

 

「当麻もうるせぇよ!」

 

慌てて菓子袋を奪い返すスバルだったが、既に袋にあるのは残骸のみ。

少ないとはいえ、貴重な食料の消失に頭を抱える。

 

「ああ……貴重なコンポタが。もう二度と味わえないかもしんないのに」

 

「なんじゃ、そんな貴重な食い物だったか。なんじゃったら残りは複製魔法でも依頼したらどうじゃ」

 

「複製魔法?」

 

「まぁ、味は劣化するかもしれんがな」

 

唐突に都合のいい魔法の存在を仄めかす老人。

 

(何か、あっちの魔術より便利そうだな...)

 

少なくとも上条の知る限りでは、ものを複製する魔術など見たことがない。 ...『黄金錬成』とかいう上位互換なら知っているが。

 

まぁ複製魔法でコンポタを増量したとして、右手で触れちゃったら消えるんだけどね、と遠い目をする上条だった。

 

「左手で食うか...」

 

「? 何の話?」

 

戸惑うスバルを無視して、上条は盗品蔵の中を見渡してみる。 棚には、盗まれたであろう物品がぎっしりと詰まっていた。 その中に、例の徽章が無いかと目を凝らしてみるが___________。

 

「なんじゃ小僧ども――盗品に、興味があるのか?」

 

老人は、いきなり核心を突いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な老人_____ロム、と名乗った彼は、見た目に反して話の早い人物で、『商人に道を教えてもらってここまで来た』というこちらの言い分に早々に納得した。

 

「ま、ここにくる奴の目的なんぞ二つにひとつ。盗品を持ち込むか、盗品自体に用があるか――そのどっちかじゃからの」

 

「あぁ、俺達は後者だな」

 

だが、ここに来た目的はそれだけではない。

 

スバルは迷うかのように目を右往左往させると、恐る恐る、と言った感じでロムに問う。

 

「馬鹿げた話なんだが……爺さん、最近、死んだことないか?」

 

「!?」

 

あまりにも唐突、なおかつ突っ込みどころ満載のスバルの質問に目を見張る上条。

 

(ロムも死んでた...そういうことなのか...?)

 

だとすればスバルの質問にも納得がいく。 ...少しストレートすぎる気はするが。

 

案の定、質問を受けたロムも大声で笑い出した。

 

「がははは、何を言い出すかと思えば。確かに死にかけのジジイなのは認めるが、あいにくと死んだ経験はまだないな。この歳になればもう遠い話じゃないと思うがの」

 

「なんつージョークだよ」

 

幸い、冗談だと受け取られたようだ。 だが、これで例の『死に戻り』の可能性は更に高まった。

 

(殺人鬼が来るタイムリミットが分からない以上、さっさと徽章を頂戴した方がいいな)

 

(あぁ、じゃねぇと...殺されちまう)

 

ガハハ、となおも豪快に笑うロムだったが、神妙な顔をしている上条達に気付くとそれをぴたりと止めた。

 

そして、真剣な表情で、酒用のグラスをスバルの前に差し出し、

 

「飲め」

 

空のグラスに酒瓶を傾け、なみなみと琥珀色の液体が注ぎ込まれる。それを黙って見守るスバルに対し、ロム爺はもう一度「飲め」と短く言った。

 

「悪ぃけど、そんな気分じゃねぇよ。それに酒飲んで悪ぶるほどガキじゃねえんだ」

 

ロムはスバルの言葉に鼻で笑い、

 

「阿呆が。酒飲んで悪ぶれんのをガキと言うんじゃ。グイッと飲んで、腹の内側を燃やしてみろ。熱さに耐え切れなくなって、色んなもんが吐き出てくる」

 

三度「飲め」というロムに気圧され、ついにスバルはグラスに口を付けて中の液体を一気に飲み干した。

 

「っぷはぁ! があ! マズイ! 熱い! クソマズイ! ああ、マズイ! もう一杯何て言えねぇ‼」

 

「何回も言うな、罰当たりが! 酒の味がわからん奴は人生の楽しみ方の半分がわからん愚か者じゃぞ。ほれ、お前さんもどうだ?」

 

「いや、俺は...」

 

「そら」

 

「!?」

 

飲酒を拒否しようとした上条だったが、スバルに無理矢理飲まされてしまった。 思わず咳き込み、怒鳴る。

 

「お前! てか不味ッ!?」

 

「なんじゃと!」

 

不味いと言うより、味がまるで分からない。 度数が強すぎるのだろう。

 

「オイオイ上条さん人生初犯罪だよどうしてくれる」

 

「安心しろ、俺もだ」

 

「と思ったけどそういえば不法入国とかやっちゃってた」

 

「真面目にお前の過去が気になる!」

 

思えば英語もろくに喋れないのに海外行きすぎだよなぁ、と遠い目をする上条にスバルは愕然とする。

 

そのやり取りを見て、ロムは笑いながら再び酒を口にした。 豪快に、グラスに注がずに酒瓶をひっくり返してラッパ飲みだ。

 

そして、そのままスバルに問う。

 

「これで、ちったぁ吐き出せそうな気がするか?」

 

「……ああ! ちっとだけな! 爺さん、もう一個の目的の方を果たすぜ」

 

酒を飲んだことにより、いつもの元気を取り戻したスバル。 彼は蔵の奥を指差して、

 

「宝石の埋め込まれた徽章を探してる。 それを、譲ってもらいたい」

 

そう、ここに来た理由は、『死に戻り』について確認する以外にももう一つ。 サテラ(偽)の盗まれた徽章を取り戻すという明確な目的があった。

 

だが、そんなスバル達を裏切るかのようにロム爺は難しい顔をして、

 

「宝石の入った徽章……いや、悪いがそんな品物は持ち込まれておらんぞ」

 

「……本当にか? よく思い出せよ。ボケてんじゃねぇのか、ガタがきて。それか酒の飲み過ぎ」

 

「そこまで耄碌しとらんわい。 ...じゃが、実は今日は大口の持ち込みがある、そう聞いておる。_____宝石入りの徽章とやらなら、十分にその可能性がある」

 

「!!」

 

十中八九それだろう。 殺人鬼に出会う前に徽章に辿り着けたことに思わず安堵する。

 

「妙に安心しとるとこ悪いが、持ち込まれてきたもんをお前さんが買い取れるかどうかはまた別の話じゃぞ? 宝石付きの徽章となれば、それなりの値でさばけるだろうしの」

 

「ハッ! いくら足下見たって無駄だぜ。なにせ俺は一文無し!」

 

「話にならんじゃろうが!」

 

思わぬスバルの言葉に怒鳴るロム爺。 無理もない、何せスバルは交渉のテーブルにつく権利すら持ってないのだ。

 

その筈だったが_____。

 

「ちっちっち。確かに俺は金はない。だ・け・ど! 世の中、物を手に入れる手段はお金だけじゃない」

 

スバルは自信満々に指を立て、

 

「物々交換ってのがあるだろ?」

 

「えぇ? スバルってそんな高そうな物持ってそうにないけど...」

 

「うるせぇ何も持ってない当麻に言われたくねぇよ」

 

顔を覆ってめそめそし始めた上条を無視し、スバルは再びロムに向き合う。 ロムが否定しないのを見て、ポケットからある物を取り出した。

 

「なんじゃこれ。初めて見るの」

 

「これぞ、万物の時間を切り取り凍結させる魔器『ケータイ』だ!」

 

「あぁ俺がロシアで落としてきたやつね」

 

「ロシア!?」

 

交渉が、始まる。

 

 




俺、実は来年受験生なので、ここから更に投稿頻度が落ちます。 ご了承ください。
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