Re:とあるヒーロー達の異世界生活   作:ちるみる

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めちゃくちゃお久しぶりです、受験生は辛いよ。


第4話『交渉人か、殺人鬼か』

「これぞ、万物の時間を切り取り凍結させる魔器『ケータイ』だ!」

 

スバルが意気揚々と取り出したのは、上条も持っていた普通のガラケーだった。 ...とある理由で今は手元にないが。

 

すると、スバルは素早くガラケーを操作して、ロムの方へと向ける。

次の瞬間、パシャッとシャッターを切る音がしてフラッシュの光が蔵内を照らした。

 

「なんじゃ今のは! 殺す気か! 怪しげな真似しおって、あまりジジイを舐めるでない」

 

カウンターへ転がるように倒れたロムを見て、スバルは苦笑する。

 

「まぁ見てみろって」

 

そう言って、再びロムの方に携帯を向ける。 携帯の画面には、先ほどのロムの呆けた顔が写っていた。

 

彼は食い入るように画面を見つめて、

 

「これは……儂の顔、じゃな。どういうことじゃ?」

 

「言ったろ? 時間を切り取って凍結させるって。この道具でさっきのロム爺さんの時間を切り取って、この中に閉じ込めたんだ。 ほら、当麻」

 

携帯が上条へと向けられる。 次の瞬間、再びシャッターを切る音が辺りに響いた。

 

「ま、こんな感じに友達との思い出を残すってのが本来の使い道だな」

 

画面には、目を瞑った上条が写っていた。 スバルは慣れた手つきでそれを削除すると、再びロムへと向き合う。

 

「今流れるように俺との思い出消したよな?」

 

「なるほど……確かに、これは……ううむ」

 

交渉はどうやら悪くない流れのようで、ロムは神妙な顔をして携帯に見入っていた。 そして暫くそうしていたが、ふと何かを思い出したかのように口を開く。

 

「初めて見るが……これが話に聞く、『ミーティア』というやつかの」

 

「ミーティア?」

 

予想していなかった名前に首をかしげる2人。 そんな彼らにロムは頷いて、

 

「ゲートが開いていないものでも、魔法を使えるようにできるという道具のことじゃ。とはいえ……儂も見たのは初めてじゃがの」

 

どうやら、ロムの中で携帯が別の何かと結びついたようだった。 そしてそれは、何でもいいから価値を証明したかった上条達にとっても嬉しいニュースで、

 

「それは...高いのか?」

 

「高いどころか、こいつの価値は計り知れん。儂も長いことこの商売しとるが……ミーティアを扱うのは初めてじゃからの。じゃが……これまでにない値がつくのは間違いない」

 

初めてみたそれを商売品として扱えることに興奮があるのだろう。ロムはわずかに声を震わせながら「それだけに」と前置きし、

 

「物々交換にこれを出すのは少し、いや大分お前さんらに損が大きすぎる。その徽章の価値はわからんが、これ以上ということはあるまい。単純に金額だけで比べるなら、これを売りに出した方がよっぽど得じゃぞ?」

 

それは、貧民街で盗品を売り捌くロムからの最後の警告に違いなかった。 確かに、無一文の上条達にとってそれは魅力的なアドバイスだ。 これを売れば、一生安泰な暮らしを送ることができるのだから。

 

だが、

 

「ああ、それでいい。このミーティアは、あの子の徽章と交換する」

 

尚も言い張るスバルに対してロムは訝しげに、

 

「なんでそこまでする? このミーティアよりも値が張るのか? 金に代えられん価値があるとでも言うのか?」

 

そんなロムの至極真っ当な質問に対して、スバルは苦笑する。

 

「ぶっちゃけ、俺はその現物を見たこともない。耳にしただけだ。だけど金に換えても正直、この魔法器より高いってことはないだろうし、丸損間違いなしだってことは馬鹿な俺でもわかる」

 

「そこまでわかっとるなら、なんでそんなことする?」

 

「決まってんだろ。――俺は損がしてぇんだよ」

 

馬鹿みたいなスバルの返答にロムは目を白黒とさせる。

 

スバルは続けて、

 

「俺は恩返しがしたい。貸し借りはきっちり返す。そうでなきゃ気持ちよく寝られねぇ。――だから、大損してでも徽章を手に入れる」

 

「ふむ……今のを聞くに、つまり徽章はもともとお前さんのもんじゃないんじゃな?」

 

「俺を助けてくれた銀髪美少女の持ちもんだ。なんでか知らないけど大切なもんなんだと」

 

「その恩人は? 一緒じゃないのか?」

 

ロムの問いに、スバルは上条と目を合わせ、

 

「「目下捜索中」」

 

きっぱりと言い切った。

 

それを聞いて暫く惚けていたロムだったが、ふと思い出したかのように大きな笑い声をあげる。 そして、

 

「――お前さんら、相当なバカじゃのぉ」

 

そんなロムの言葉を聞いて、それもそうだと、上条達は共に大声で笑い合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、蔵内を捜索していたりした2人だったが、蔵の入り口の扉が叩かれる音を聞いて背筋を伸ばす。

 

いよいよ、交渉が始まるのだ。

 

「フェルトじゃろう、どれ」

 

ロム爺は入口に向かって歩いていく。

 

「大ネズミに」

 

「毒」

 

「白鯨に」

 

「釣り針」

 

「我らが貴きドラゴン様に」

 

「くそったれ」

 

小気味良い合言葉と共に、重い扉が開かれた。

 

そこに立っていたのは、金色の髪をもった14歳くらいの少女。 フェルトと呼ばれた彼女は申し訳なさそうに笑みを浮かべ、

 

「待たせちまったなロム爺、撒くのに手間取っちまった」

 

しかし、上条とスバルに気が付くとそれもすぐに崩れる。

 

「ロム爺、誰だよこいつら。 大口を持ち込むから人払いを頼んでおいたはずだよな?」

 

「そう警戒するな、こやつらはその大口に関係しておる」

 

「ロム爺、まさかアタシを売ったんじゃないだろうな?」

 

「ワシとお前とのなかでそんな不義理なことはせんよ。なに、お前にも得があると踏んでの話じゃ」

 

ロム爺はウインクをしながらこちらを見てくる。

 

スバルは老人のウインクに気色の悪さを覚えつつ、

 

「取り敢えず落ち着こう。 俺は別に君に危害を加えるつもりはないんだ」

 

上条も言葉を慎重に選ぶ。

 

「俺たちは、君と交渉がしたいだけだ」

 

「交渉だぁ?」

 

彼女_____フェルトの警戒は消えない。 と、ここで見かねたロム爺が口を開いた。

 

「お前さんら、取り敢えずテーブルにつけ。 話はそこからじゃろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――それじゃ、気を取り直して交渉といこう!」

 

手を叩き、白けた場の空気を切り替えるようにスバルは言った。

 

同じテーブルにつき、ロム爺が出したミルクの入ったグラスを傾けるフェルト。

 

彼女の赤い瞳からは警戒心は消えておらず、出鼻から先が思いやられる。

 

「スバル、いけそうか?」

 

「あぁ、任せとけ。 俺もたまには役に立つってことを思い知らせてやるぜ」

 

自信満々なスバルを見て、上条はテーブルから離れる。 この様子だと、スバルに任せて問題ないだろう。

 

となると、後は...。

 

「ちょっと外の様子を見てくる」

 

「いいのか? お前さんの方が交渉的な話は上手そうじゃが...」

 

「スバルが任せろって言ってるんだからこれでいいんだ。 ...あと俺のどこが話が上手そうに見えるんだ」

 

「いや、気のせいじゃった、気にせんでくれ」

 

まだ何か言いたげなロム爺に違和感を覚えつつも、上条は入口のドアを開けた。 交渉もそうだが、気がかりなのは殺人鬼の存在だ。 交渉途中に乗り込んでこられてはひとたまりもない。

 

「ま、俺がいたところで何ができるんだって感じだけどな」

 

幻想殺しは、純粋な暴力には何の意味もなさない。

 

せめて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ならどうにかできるのかもしれないが。

 

そんな希望的観測をしながら、上条はドアを背に立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だいぶ時間が経過した。 交渉を始めたときは照り付けていた太陽も、気づけば沈み始めている。

 

「夕方、か。 そろそろ殺人鬼が現れてもおかしくないな」

 

ちょくちょくスバルの様子を見に行ったりしていたが、案の定交渉は順調のようだ。 だが、どうやらスバルのほかにももう一人交渉人がいるらしく、最終的にどちらが高い金額で徽章を買い取れるかですべてが決まるらしい。

 

「俺も何か持ってれば助けになったのにな...くそっ、不幸だ」

 

自分の体質に悪態をついていると、ついに視界に人影が現れた。

 

「来やがったか...?」

 

現れたのは、身長の高い女性だ。 顔立ちは目尻の垂れたおっとりした雰囲気の美人で、病的に白い肌が暗がりの中でもはっきりと目立つ。 黒い外套を羽織っているが、前は開けているのでその内側の肌にぴったり張り付いた同色の装束が目につく。

 

上条は思案した。 この人物は、果たしてフェルトの交渉人か、あるいはスバルを殺した殺人鬼か。 女性であることを考慮すると交渉人のように思えるが、上条は元の世界でトンデモ女性を嫌というほど見てきたので油断はできない。

 

グダグダと考えているうちに、黒い影はすぐそこまで迫ってきていた。

 

「あら、どちら様? 私はここに用があるのだけれど」

 

投げかけられたのは、何でもない言葉。 しかし、その言葉を聞いた瞬間、上条の体にとてつもない寒気が走った。 修羅場を潜り抜けてきた体が危険信号を発している。 こいつはだめだ、逃げろ、と思考が訴えてくるのに、逆に体は金縛りにあったかのように動かないジレンマ。

 

焦りを顔に出さないように、上条は女性に問う。

 

「こんな盗品蔵に、何の用だ?」

 

女性は一瞬思案し、笑みを浮かべ、

 

「貴方、私におびえているわね」

 

「!」

 

簡単に恐怖の感情を暴かれ、上条は更に動揺する。

 

そして、同時に、この女性が探していた殺人鬼であると確信した。 体中の全細胞がそう告げている。

 

「質問に答えてないぞ...」

 

どうする、急いで戻ってみんなに危険を伝えに行くか? それとも今すぐこの場から逃げ出してラインハルトを探しに行くか?

 

(駄目だ、絶対間に合わない...!)

 

女性、否、殺人鬼の答えを待ちつつ、上条は必死に解決策を探す。 何とかここで時間を稼いで、その間に最適解を...!

 

だが、ここで無情にも盗品蔵のドアが開いた。 痺れを切らしたフェルトが、交渉人を探しにやってきたようだ。

 

「駄目だ、来るな!」

 

上条が危険を訴えるが、フェルトは怪訝な顔をする。

 

「アンタ、私の客と何優雅におしゃべりしてんだよ。 口説こうとでもしてたのか?」

 

「...は?」

 

上条は愕然とする。 だって、今の言葉はまるで、この女が交渉人だと言っているかのような...。

 

「入ってくれ」

 

「失礼するわ」

 

まさか、()()()()()()()()()()()()だとでも言うのか?

 

今更気付いたところで、遅い。 交渉人兼殺人鬼は既に蔵の中へと入ってしまった。

 

これから、最悪の交渉が幕を開ける______。

 




受験が2月なので、3月くらいに投稿を再開します。 では皆さん、また3月に会いましょう。
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