Re:とあるヒーロー達の異世界生活   作:ちるみる

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原作の文章と自分の文章を織り交ぜているので、読みにくくなっているかもしれません。 もし何かあったら教えてくだされば出来るだけ改善します。


第6話 『3度目の正直』

目が覚めたら、そこは異世界でした。

 

「...」

 

3度目の景色を前にして、上条は何も言うことができなかった。

 

ナツキ・スバルが死んだ。 ここに戻ってきたということは、つまりそういうこなのだと改めて心に刻む。

 

「畜生ッ」

 

友達の死を目の前にして、何もできなかった自分を呪う。 幻想殺しは純粋な暴力には何の意味もなさないとか、そんなことはもはや関係がなかった。

 

「ちくしょう...ッ!」

 

ただただ、己の無力さに打ちひしがれる。 上条は、しばらくその場を動くことができなかった。

 

だが、留まっていても事態が好転することはない。

 

「まずは、路地裏」

 

そろそろ、スバルが例の3人組、トン・チン・カンに絡まれる頃合いだった。 ____少なくとも、今までのループでは。

 

ひとまず、上条は前回のループ時の路地裏へと向かった。

 

「いない、か...」

 

スバルの姿は見当たらない。

 

トン・チン・カンと遭遇する路地裏がランダムであるとすれば、彼らは最初からスバルに目をつけていたということになる。

 

「避けられないイベントっぽいんだよな」

 

まだ2回しか死に戻りを経験していないのだが、それでも彼らのしつこさは異常だった。 上条なんて1度目のループでは2回も絡まれている。

 

そもそも、上条やスバルにとってはトン・チン・カンでさえ素直に相手するのは危険な相手なのだ。 彼らはナイフを持っているし、最悪刺される可能性も十分にある。

 

「くそっ、スバルが無事だといいが...」

 

悪い想像ばかりが脳内をこだまする。 焦燥が背筋を駆け上がってきた。

 

と、その時だ。

 

「誰かー! 男の人呼んでー!!!」

 

聞き覚えのある声が耳に入ってきた。 この声は___________。

 

「スバル!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめ……っ。ふざけんなよ!? ここで普通、いきなり大声出すか!?」

 

「黙りやがれ! 大体お前らはしつけーんだよ!! 一回ブタ箱行きになって痛い目見とけ!」

 

大声で叫ばれ、逆上するトン・チン・カン。 再び路地裏で彼らとエンカウントしたスバルは、何とか状況を打開するために必死に思考していた。

 

(取り敢えず、助けが来るまで時間を稼ぐ!)

 

開き直って負けじと言い返したスバルだが、その内心は表に出ないだけでかなり焦燥感が募りまくっている。

 

そもそも、大声で助けを呼んでみたのは上条の話を聞いていたからだ。 彼は1週目でトン・チン・カンに因縁をつけられた時に『ラインハルト』という人物に助けられたと言っていた。

 

_____逆に言えば、根拠はそれだけなのだ。 ラインハルトとやらでなくても、せめて衛兵の1人でも来てくれれば十分なのだが...。

 

「やっぱ、失敗か……」

 

「おどかしやがって……ほんの少しばかりだが、ビビっちまったじゃねえか」

 

「ほんの少しだけな!」

 

「ほんのちょびっとだけだけどな!」

 

息の合った連携で、自分たちの小者ぶりを否定する小者ぶり。 スバルの初撃に持っていかれたペースを取り戻そうとするかのように、男たちは一度、深呼吸をして気を落ち着かせ、各々が獲物を手に握り始める。

 

「勘弁してくれよ。 ...痛いのはごめんだ」

 

思わず小声で呟いてしまうスバル。 これまで2回死を経験してきたが、当然慣れるものでもなかった。 自分が消えていく喪失感はそう簡単に

耐えられるものではない。

 

それに_____。

 

(今度死んだら、戻ってこれる保証がない)

 

2回戻ってきたからって、3回目も大丈夫とは限らない。 次に死んだらそれが最後、なんてこともあるかもしれないし、あるいは無限にループを繰り返すこともできるのかもしれない。 スバルは、『死に戻り』についてまだ何も知らないのだ。

 

だが、それでも諦めるわけにはいかない。

 

(傷を負ってでも逃げ出すのが最適解、だな)

 

トン・チン・カンに囲まれながら、スバルは何とか隙を見て逃げ出そうとする。 そして、まさに走り出そうとした、その瞬間だった。

 

「そこまでだ」

 

その声は唐突に、しかし明確に、路地裏のひりつくような緊迫感を切り裂いた。

 

凛とした声色には欠片も躊躇もなく、一切の容赦も含まれていない。聞く者にただ圧倒的な存在感だけを叩きつけ、その意思を伝わせるソレは天性のものだ。

 

スバルが顔を上げ、トンチンカンが振り返ると、その先にひとりの青年が立っている。

 

一度も、見たことがないはずだった。 燃えるような赤い髪に、真っ直ぐで、勇猛以外の譬えようがないほどに輝く青い双眸。 そして、この世のものとは思えないほど整った顔立ち。 いずれも、見覚えがないはずだった。

 

が、直感がスバルに告げていた。 これが、この人物こそが____。

 

「ライン、ハルト」

 

スバルの呟きを聞きつけ、トン・チン・カンもまた、顔を青ざめさせながらその名前を叫ぶ。

 

「ラインハルト!? 『剣聖』ラインハルトか!?」

 

「自己紹介の必要はなさそうだ。……もっとも、その二つ名は僕にはまだ重すぎるが」

 

ラインハルトと呼ばれた青年は自嘲げに呟き、しかし眼光を決してゆるめない。

 

視線に射抜かれた男たちは気圧されるように後ろへ一歩。逃げるタイミングを見計らうようにそれぞれが顔を見合わせる。が、

 

「逃げるのならこの場は見逃す。そのまま通りへ向かうといい。もしも強硬手段に出るというのなら、相手になる」

 

腰に下げた剣の柄に手を当てて、彼は後ろに立つスバルを示すように顎をしゃくり、

 

「その場合は三対二だ。数の上ではそちらが有利。僕の微力がどれほど彼の救いになるかはわからないが、騎士として抗わせてもらう」

 

「じょ、冗談! わりに合わねえよ!」

 

捨て台詞すら吐かずに、トン・チン・カンは蜘蛛の子を散らすように大通りへと逃げ去っていった。

 

「お互い無事でよかった。 ケガはないかい?」

 

男たちが完全に消えたのを見計らって、青年が微笑を浮かべて振り返った。 先程まで場を支配していた威圧感は完全に消え去っている。

 

「ふぅ、来てくれて助かったぜ、ラインハルト。 死ぬとこだった...」

 

そんなスバルのセリフを聞いて、ラインハルトは少し首を傾げた。

 

「僕達って、何処かで会ったことあるかな?」

 

「悪い、ちょっと馴れ馴れしかったか? いやなに、友達がアンタに助けてもらったって言ってたからさ。 完全に知り合いの気分になっちまってたんだよ」

 

そのことはもう覚えてないだろうけど、とスバルは心の中で呟いた。

 

「いや、全然構わないよ、呼び捨てにしてもらっていい」

 

「話に聞いた通りの完璧イケメンだな!! えっと、じゃあラインハルト、よろしくな。 俺の名前はナツキ・スバルだ」

 

「よろしく、スバル」

 

「えっと、それから改めてありがとう、ラインハルト。俺の叫びを聞きつけてくれたのはお前だけだぜ、マジ寂しい」

 

『助けを呼ぶ』という判断には、もともとそれほど期待してもいなかったのだが、それでも考えてしまう。 表通りにはたくさん人がいるのだから、誰かしらが助けてくれてもおかしくはなかったはずだ。

 

人心の寂れっぷりを嘆くスバルの言葉を聞き、ラインハルトは悲しそうに目を伏せる。

 

「あまり言いたくはないけど、仕方のない面もある。多くの人にとって、連中のような輩と反目するのはリスクが大きい。その点、衛兵を呼んだ君の判断は正しかったよ」

 

「でも、ラインハルトってあんま衛兵っぽくはないよな」

 

「よく言われるよ。まあ、今日は非番だから制服を着ていないのも理由だろうけど」

 

非番なのに助けに来てくれる時点で、相当誠実な人物なのだろう。 さらに言えば、上条の時も含めてこれで2回、ラインハルトは助けに来てくれたことになる。 そもそもスバル自身も、まさか話に聞いていたラインハルトが来てくれるとは思ってもみなかったのだ。

 

と、その時だった。 聞き覚えのある声が路地裏に響き渡った。

 

「スバル!! 無事か!?」

 

「当麻!!」

 

息切れ気味にスバルに駆け寄ってきたのは上条 当麻だった。 上条は、スバルの無事を確認すると、側にいたラインハルトへ目をやる。

 

「ラインハルトか、スバルを助けてくれたんだな」

 

上条は感謝の気持ちを述べてから、ラインハルトはもう自分のことを覚えていないのだ、と気付く。

 

慌ててスバルがフォローを入れた。

 

「コイツは数少ない俺の友人、上条 当麻だ。 俺と同様馴れ馴れしいところがあるかもしれないけど許してね」

 

「おい勝手に同類にしやがったな」

 

「スバルの友人か。 よろしく、トウマ」

 

上条の口ぶりを気にするそぶりも見せず、ラインハルトは上条に向かって手を差し出した。 握手、ということだろうか。

 

「あぁ、よろしく」

 

上条も右手を差し出す。

 

「?」

 

「どうした、ラインハルト?」

 

上条と握手をした瞬間、ラインハルトは微かに眉を顰めた。

 

だが、スバルが心配の声をかけると、すぐに元の表情に戻り、

 

「いや、何でもないよ」

 

イケメン特有の爽やかな笑顔を見せた。

 

「眩しいッ! 上条さんにはその笑顔は眩しすぎる!」

 

「何言ってんの?」

 

「さてと、話の途中みたいで悪いけど僕はそろそろ行くよ。 人を待たせていてね」

 

「改めてありがとう。 文字通り命拾いしたぜ」

 

再び感謝の念を伝えるスバル。 それを見て、上条も頭を下げた。

 

「助かった、ありがとう」

 

「そんなにかしこまらなくていいよ。 僕たちだってもう友人だ」

 

その友人認定は早すぎる、と心の中で苦笑し、上条はラインハルトを見送るために顔を上げた。

 

「じゃあ、気をつけて」

 

「おう! そっちも気をつけろよ」

 

最後まで爽やかな笑顔を見せるラインハルト。 彼は手を振ると、路地裏を後にした。 流石と言うべきか、歩き方まで神がかっている。

 

(それにしても、前回も誰かを待たせてるって言ってたよな)

 

思案する上条だったが、それを遮るようにスバルが声をかけてきた。

 

「さてと、こっからどうするよ?」

 

余りにもあっけらかんとしたスバルの態度に、上条は意表をつかれる。 2度目とは言え死んだのだ。 パニックになっていてもおかしくはないというのに。

 

「おいおい、なんて顔してんだよ。 見ての通り、俺は平気だぜ」

 

虚勢を張っている_____という訳でもなさそうだった。 ひとまず、上条はスバルの精神の強さを信じることにする。

 

「どうするって言われてもなぁ」

 

再び盗品蔵に行っても、前回と同様に殺されて終わりだろう。 となると、目下の目的は_____。

 

「俺としては、先にサテラを見つけようと思ってる。 いや、サテラは偽名だったっけか? ...ともかく、偽サテラを見つけることを優先しよう」

 

「偽サテラ...ね」

 

スバルには、ネーミングセンスがあるのかないのか分からない。 上条は思わず苦笑してしまった。

 

「やるか! 偽サテラ探し!」

 

3度目の正直だ。 今度こそ上手くやってみせる。

 

そう意気込んで、上条達は路地裏を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




1週間に1回くらいの更新になると思います
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