戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

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解説席のヒュームさんとクラウディオさんいつもありがとうございます
あなたたちのおかげで間が持ちます

てか盲(めくら)とか普通に使っちゃったけどいいのかな……

-追記-
能力の勘違いをしていたので、少々修正させていただきました



第十四話 ~終戦~

「はああああああああああああああッ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 

 再び二つの力がぶつかり合う。

 

 お互いの全力をかけた叩き合い、

百代の全力対し四四八は戟法、循法にその他の資質の全てを注ぎ応戦する。

 

 拳 、 棍 、 掌 、 棍 、 肘 、 脚 、 拳 、 棍 、 棍 、 額 、

 

お互いのありとあらゆる部分が交差する。

 

 攻防一体。

 攻撃が防御となり。

 防御が攻撃となる。

 何発か入り、何発かもらう。

 もらった攻撃はそれぞれ気と活の循法を駆使してその場を凌ぐ。

 休まない、休めない。

 時間の流れがその空間だけ違っているかのようなそんな濃縮された空間……

 

 はたして常人には元より並の達人ですら目で追うことさえ困難なほどのスピードの中、更に二人の攻防は激しさを増していく。

 

 その攻防を見守りながら、従者部隊のトップの二人が言葉を交わす。

「ふん、ようやく本気になったか。随分とゆっくりだったが、ここからが本番というところか。気が長いもんだ」

「柊様の場合、様子見という部分もあったのでしょう、しかし柊様は素晴らしい戦士ですな。能力以上に、柊様が有する鋼の理性に烈火の激情……理想的です」

「さしずめ、怒り狂った猛獣 対 冷徹なハンターといったところか」

「猛獣がハンターを喰い殺すか、はたまたハンターが猛獣を仕留めるか……どちらにせよ、戦いがあのレベルになりましたので、そろそろ我々も働かないとまずいかもしれませんな」

「ふん、鉄心の前でああいった手前、学園ぐらいは守ってやろう。在校生だしな」

「ふむ……そこは笑うところ、と判断してよろしいのですか」

「ふん――好きにしろ」

「ジョークであるなら、最近考えたとっておきがあるのですが……」

「ふう……悪かった……頼むから、あとにしてくれクラウディオ」

「おや、それは残念……お、少々動きそうですな」

 その言葉にヒュームも再び二人の戦いに集中する。

 

 百代は焦っていた、

この千日手にも近い攻防でジリジリと押され始めたのだ。

 

「不思議ですか?川神先輩」

 戦いの中、四四八語りかけてくる。

――うるさい、うるさい。余裕のつもりか、黙ってろ。

 

「同じ強さの拳なら、より重く、より意思があるのが強いが常道」

――なにをいってる、黙れ黙れ、強さとは力だ、それ以外に何がある。

 

「故に、あなたの空の拳に俺の拳が負ける道理が見当たらない」

――うるさい、黙れ。これは戦い、講義じゃない説教なんて糞くらえ。

 

「意志をのせ、心をのせ、真(マコト)をのせたこの拳(けん)であなたの獣性砕いてみせる!!」

「――黙れと言ってい――」

 

 百代は自らの言葉を最後まで言えなかった。

 言葉の途中、顔面に四四八の一撃が叩き込まれた。

 そのまま――

2!

3!

4!

5!

 流れるような連撃が次々に百代の身体に突き刺さり、

最後に一撃で吹っ飛ばされていた。

 

――しめた!距離が離れた!!この間に瞬間回復で回復できる。

 百代がそう考え、瞬間回復のための気を集めたとき……

 

「取り敢えず、そのやっかいな補給路は断ち切らせていただきます」

 

――ゾクッ……とするような静かな声が自分の耳元で聞こえた。

 

「かはっ――」

 次の瞬間、丹田に四四八の一撃をくらい、集めた気が霧散した。

 

 四四八は先の戦いで瞬間回復の仕組みを見ていた。

 何個か対策は考えていたが、四四八が選択したのは一番シンプルな方法だった。

 

 瞬間回復は気を一回丹田に貯めてそれを一気に体に流すことで瞬間的に爆発的な回復を行うというものだ。

 故にその丹田にある一瞬に崩の解法の一撃を当てれば、気は霧散し、回復は行われない。

 しかも流石に大技であるため、瞬間回復を使うためには一瞬以上の隙ができる。今の四四八ならその一瞬に透、崩の解法と迅の戟法を使い距離を詰め、一撃を当てることはそれほど難しいことじゃない。

 さらに言うなら百代とて気が無限にあるわけじゃない、攻撃技も含めもう都合20近い大技を使用している。瞬間回復もそう何回もは使えない。

 

「ふむ、地力の差がでてきましたかな」

「やはり百代は強敵との戦いが圧倒的に少ないな。致し方ないとは言え、これは決まったかもしれん……」

「ですが、今回の戦いの場合、柊様がこのまま勝利してもあまり意味がないのでしょう」

「そんなことは柊自身が一番理解してるだろう、まぁ、武神の息の根を止めると豪語したのだ、終わりまで見届けてやろうじゃないか」

 

 戦況は再び接近しての撃ち合いにもつれ込んでいる。

 だが、さきほどと違い回復ができていない百代が攻撃を貰う回数が明らかに増えている。

 

――くそっ!くそっ!クソッ!糞ッ!

 

 四四八の拳が、蹴りが、棍が、幾度となく百代の身体をうちのめす。

 

――くそっ!くそっ!クソッ!糞ッ!

 

 その度に、さきほど言われた四四八の言葉が刺さる。

 

 何を言っているのか、解らないし、解りたくもないし、解ろうとも思わない。

 今は、兎に角、この殴られている現状に腹が立って仕方がない。

 

 そう思い、自分を容赦なく打ち据えている目の前の男を見据える。

――そうだ、お前か!お前のせいか!!この耳に五月蝿い言葉も含めて、全部お前がやっている!!!

――もういい、わかった、もうやめだ。こんな戦い終わりにしてやる!!!

 

「がああああああああああああっ!!!」

 

 打ち合いをいきなりやめ、後方に飛んだと思ったら百代がいきなり四四八に飛びかかってきた。

「――ッ!」

 四四八はそれに反応し、2発3発と旋棍を打ち据えるが百代はお構いなく四四八に掴みかかってくる

 

「ああああああああああああああっ!!!」

 四四八を掴むことに成功した百代は奇声をあげながら四四八を振り回し、そして力いっぱい投げつけた。

 

「ぬっ!!」

 

 流石に百代の全力の投げ、地面激突する前に、崩の解法を最大展開して止まったが、間を空けてしまった――瞬間回復されてしまったか――

 そう思い、百代の方を見ると、

百代は回復など目もくれず、今あるありったけの気を手に込めて、四四八に向けて放とうとしているところだった。

 

「くくくっ……これで終わりだ……終わらせてやる!!」

――後ろの校舎ごと吹き飛んでしまえ!!!

「 か わ か み 波 ッ ! ! ! ! ! 」

 

 膨大という言葉ですら表せないくらい膨大なエネルギー波が四四八を襲う。

 

 そんなエネルギー波を輝く双眸で睨みつけ、ギリッ!と鳴るほど歯を食いしばり、血が滲むほど旋棍を握り込む、怒気を孕んだ声で叫ぶ。

 

「川神百代ッ!あなたは――あなたは――ッ!!!」

 

 そう叫んだあと、素早く、そして淀みなく印を結ぶ。

 展開するは堅の循法に崩の解法。

 この2つに全ての資質を注ぎ込み、巨大なエネルギーの塊に単身突撃していった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

 

 次の瞬間、轟音と衝撃波が学園全体を覆った。

 

「わっ!!」

「きゃっ!!」

 生徒たちが座り込む。

 

 校舎の大部分はヒュームや鉄心が張った結界によって無傷だが、

それが及ばなかったところは窓ガラスが割れている。

 が、その程度で済んだのはかわかみ波の大部分を四四八が相殺した結果だろう。

 四四八の相殺なければ、いくらヒュームや鉄心が守ったとしても学園のいくらかは消し飛んでいたかもしれない。

 

 撃った百代は、ゆっくりと地面に降りてきて、衝撃波で起きた砂埃が収まるのを待つ。

 

 四四八の姿はいまだ見えない。

 

 その時、砂埃の奥底でキラリと光る緑色の双眸が見える。

 四四八は立っていた、二本の足で大地を踏みしめて。よく見ると所々に焦げ跡がみえるし、口からは血が一筋流れている。

 しかし、そんなことはどうでもいいとばかりに、四四八は百代を睨みつけている。

 

「くっ――!」

 

 四四八を視界に捉えた百代が戦闘態勢に移行したとき、四四八声が響き渡る。

 

「武神とは――ここまで盲(めくら)な者なのか!!!」

 怒気……いや、既に怒りをあらわにした声だ。

 

「あなたは今の一撃が何をもたらすか想像することすらできないと!!」

 百代が怪訝そうな目で四四八を見ている。

 

「耳を塞ぐな、手をどけろ! 目を瞑るな、瞳を開け!! 顔を伏せるな、頭を上げろ!!! あなたが何に向かって攻撃したか、その心で理解しろ!!!!」

 

 そう言って四四八は後方に手を振るい、散の咒法を放つ。

 土埃が一気に晴れる。

 そして、そこで百代が見たものは……

 

「……や、まと?」

 

 校舎の2階で心配そうに自分を見つめる最愛の弟分の顔だった。

 

 百代の顔が驚愕に染まる。

 なんだ、なんだ、なんなんだ、

さっき自分はなにをした。

 自分は自分の攻撃で弟を、妹を、仲間たちを消し飛ばそうとしていたのか?

 

「――うっ!」

 

 そう考えた瞬間、吐き気がこみ上げてきた。

 だが、思考は止まらない、止めようと思っても、自分の奥の何かが止めるなと言っている。

 

――鉄心がいるから、

――九鬼の従者部隊がいるから、

 

 そんなものは関係ない、それはただの結果論だ。

 あの時、自分は戦闘に没頭するあまり何を考えた?

 思い出せ、いや、思い出すな、いいや、思い出せ。

 自分の中の何かが葛藤している、そして思い至ってしまった、自分はあの時、

 

――後 ろ の 校 舎 ご と 吹き飛んでしまえ!

 

 そう思ったのだ――

 

 そこまで来たら、もう耐えられなかった。

 

「――うっ、あっ、おっ……えっ――」

 

 自分が四つん這いで吐いていると認識したのは胃液も全部吐き出して吐くものがなくなってからだ

それでも、震えと吐き気が止まらない、どうすればいいかも分からずに百代がいまだえづいていると……

 

 百代の反吐も気にせず近づく靴が見える、それが四四八のものだと認識したとき百代は首を掴まれ持ち上げられた。

 

「くっ……あっ……」

 

「その震えが力に対する恐怖です、その吐き気が力に対する責任です。そんなものすらしらぬ人が武神だ、最強だと滑稽にも程がある。せめてもの情けです、武神・川神百代という空虚な神、俺が今日、屠ってさしあげます」

 

 そう言って、四四八は力なくぐったりとした百代を無造作に校舎の2階――2-Fに放り投げた

2-Fの教室に飛び込んできた百代は机や椅子巻き込んで壁にぶつかりようやく止まった。

 

「姉さん!!」

「お姉さま!!」

 

 大和と一子がいち早く百代に駆け寄る、百代は気を失っているらしく、ぐったりとして目を開けない。

 

「姉さん!!姉さん!!」

 大和が百代を抱き起こして必死に声をかける、そんな時、上から死神のような声が降ってきた。

 

「そこをどけ、直江」

 

 振り返るとそこには四四八が立っていた。

 その鋼の様につよい意志からは一辺の情も感じ取れない。

 

 大和は考えていた、四四八は何故自分にあんな電話をかけてきたのか、

本当に、自分が百代を立たせることができるのか……

 未だに答えは出ていない、出ていないが、夜、Barで聞いた四四八の言葉は刻み込んでいる。仲間が、自分が誇れる自分。そんな自分になるために――

 

 大和は立ち上がり、四四八の前に立つ。目は四四八の緑色に光る双眸を見つめる。

「「「「「「大和ッ!」」」」」」

 仲間たちから声が上がる。

 

「……どかない」

「――なに?」

「俺、今ここでどいたら、姉さんのこと、もう姉さんって呼べない気がするから――だから、どかない」

「それは俺たちの戦いに入ってくるということか?」

「柊が、許してくれるなら……」

「覚悟があるなら――是非もない」

 

 そういって四四八はスッと構えを取る。

「せめてもの情けだ、一撃で仕留めてやる」

 

「大和ッ!」

 京の声だろうか悲痛な声が飛ぶ。

 

 自分の行動に、意味はないのかもしれない、でも自分の選択に後悔はしたくないから最後の一瞬まで四四八の目を見つめていた。そして四四八の一撃が入る――

 

――その時

「待ってください!!」

 

 開け放たれた扉から声が聞こえる。

「まゆっち……」

 

「無礼、無粋は重々承知――ですが!!ここからは私がお相手させていただきます」

 抜身の刀を正眼に構えた由紀江がそこにいた。

 

 そんな由紀江をみて四四八は超然という、

「増援、援軍は戦場の常だ、俺は一向に構わない」

「……ありがとう、ございます」

 

 そうやって刀を正眼に構えた由紀江がじりっと前に出る、そして――

 

「大和さん、モモ先輩をお願いします」

 

 そう、四四八から目をそらさずにいうと。

 

「行きます!はあああああぁぁぁぁぁぁッ!!」

 裂帛の気合とともに流れるような斬撃を繰り出す。

 

 それを四四八はトン、トン、と後ろにステップを踏むように回避しながらヒラリと2階から飛び降りた、由紀江もそれを追っていく。

 

「……まゆっち」

 そんな由紀江を見送ってから、

「姉さん!姉さん!!」

大和は思い出したように、百代に声をかけた。

 

 百代は夢を見ていた。

 子供の時の夢だ。

 夕日の眩しい川神の川べり、子供の百代と子供の大和がいる。

 男の意地が言わせた可愛い約束。

 大和はこの約束を覚えているだろうか……

 いや、自分も忘れていたのだ。

 なぜ今頃になってこんな事を……そう夢の中で思っていると。

 夢の中の大和の声が現実味を帯びてくる――

 

「姉さん!姉さん!!」

 

 百代はうっすらと目を開けた。

「あ!姉さん、よかった――」

 そういって大和に抱きしめられる、いつもはこちらから抱きしめてるからあべこべだなと、呆けた頭で考えながら……

 

 現状に我に返り、

「――ッ! 大和……すまない……私は……」

百代が何かを言おうとする前に、

「姉さん!俺――」

大和が口を開く。

「俺、約束覚えてるから!いつか必ず約束守るから!だから――」

 

 だから――なんといいたいのだろう大和自身もわかってなかった。

 だから――がんばって。

 だから――無理しないで。

 どちらなのかわからないし、もしかしたら両方かもしれない、どちらでもないのかもしれない。

 

 でも、なにか伝えたくて大和は強く百代を抱きしめた。

 

――ああ、そうかヤツが言ってたのはコレのことだったのか。

 

 確かに自分は盲(めくら)だ。

 こんなにも大事なものが近くにありながら、全く目に入ってなかったのだから……

 

 自分は戦いの時何を見ていた、敵、相手……いや違う、戦いの時、自分は自分しか見てなかったのだ。

 自分の欲求は理解されないと一人目をつぶり、戦いと称して自分と踊る……ああ、確かに滑稽だ、アイツの目にはさぞかに無様に映っただろう。

 

 でも、もう、大丈夫だ。

 大事な弟が教えてくれた。こんなにも大事なものは近くにあるのだ、まずはそのために立とうじゃないか、まずはもう一度、仲間たちと並んで歩こうじゃないか。

 これが四四八の求めている答えかどうかはわからない、でも、いまあるものをぶつける、それが自分の目を開かせてくれた四四八に対する礼儀だろう。

 

 だから、今も自分を抱きしめてくれてる大和の背をポンポンと叩いて言う。

「ありがとな、大和。大和のおかげでお姉ちゃんはもう一回、立つことができそうだ」

「姉さん……」

「柊の奴は?」

「今、まゆっちが戦ってくれてる」

「……そうか」

 

 そう言って立つと、いつの間にかファミリー全員が大和と百代を囲むようにいた。

「お姉さま大丈夫!!」

「モモ先輩、痛くはないか?」

「……モモ先輩」

「おいおい、柊のやつスゲーな」

「モモ先輩……服が、でへ」

「ガクト、こんな時に何見てんの」

 

 ああ、最高じゃないか。こいつらにこんな無様な姿は見せられない。

 だから百代は胸を張って言う。

 

「ああ、大丈夫だ!それに、ここ以上無様に負けたら、もうお前たちに姉貴顔できなくなるからな。そんなことまっぴらごめんだ!」

 

 そういって駆け出すように二階から飛び降りていく。

 そんな背中に大和が声をかける。

「姉さん、俺、姉さんが最強だって信じてるから!!」

 そんな大和の言葉に、親指を立てて了解の意を示すと、まっすぐ四四八に向かっていった。

 

 

―――――川神学園 グラウンド―――――

 

 

 由紀江は四四八と対峙して、改めて百代の凄さを認識していた。

 こんな人を相手に、よくもあんなに戦っていられたと――

 

 刀を交えてまだそんなに経っていないのに、由紀江は既に詰み始めていた。

 斬撃は躱され。

 突きはいなされ。

 打突は跳ね返された。

 自らの全部を賭(と)しても一歩、届かない……

 

 そんな由紀江を見透かしたように四四八が声をかける。

「どうした黛、必勝をきする相手が必ず自分と同格以下だとでも思っているのか!」

 

 由紀江の斬撃を紙一重で躱しながら由紀江さらに言葉を投げる。

「刃が届かないのなら届かせろ!剣筋に思考をのせて、踏み込みに心を足せ!!それでも足りなきゃ魂を賭けろ!!!お前の後ろには仲間が控えているんだぞ!!!」

 

 後方に飛び距離をとった由紀江は小さく深呼吸をする。

――そうだ、その通りだ自分は仲間を守るために、無礼を承知で四四八に挑んでいるのだ。

 ならば、一矢報い無ければ受けてくれた四四八にも仲間にも顔向けができない。

 

「今の、黛由紀江の全身全霊です――行きます」

「――来い」

 

 剣先に闘気を集め、蜃気楼のように剣先をボカす、

そして――最大神速で相手に斬撃を放つ。

 

「黛流 阿頼耶(アラヤ)!!」

 

 数多の強敵を倒したこの技を、正真正銘、全身全霊で四四八に放った。

 とった――と感じた、瞬間、死角から静かな声が聞こえた。

 

「今の一撃惜しかった……だが、まだ浅い」

 

 ゾクッと全身が総毛立つ。

 振り向くことなく分かっている、次の瞬間には旋棍の一撃が自分の頭上に降るだろう、

そんな覚悟を決めた時――

 

「私の仲間に手を出すなぁああああああ!!!!」

 

 そう言ってロケットのように突っ込んできた百代の一撃を四四八は由紀江に繰り出そうとしていた旋棍で受け止める。

 

「まゆまゆ!!」

「はああああああ!」

 

 その声の意図を察し、由紀江は体勢を無理矢理立て直し斬撃を繰り出す。

 それを四四八はもう片方の旋棍で受け止めると、すっと身体を後ろにそらし両側の二人の力をお互いにぶつかるように流した。

 

 そしてそんな一瞬大勢が崩れた由紀江に足払いをして由紀江の身体を浮かすと、そのまま由紀江を百代の方へと蹴り上げた。

 

「――かはっ!」

 

 飛ばされた由紀江を百代が包み込むように抱きとめると、

そのまま由紀江をお姫様だっこするような形で百代は着地する。

 

「あの!あの!」

 蹴られた腹部の痛さも忘れ、顔を真っ赤にしている由紀江に百代が声をかけた。

「ありがとうな、まゆまゆ。まゆまゆが時間を作ってくれたおかげで、立つことができた。本当にありがとう」

「……モモ先輩」

 

「……」

 そんな姿二人の姿を見ていた四四八は、すっと構えをとき踵を返そうとした。

「お、おい!」

 百代が声をかける。

 

「生徒が答えを出したのに、それを検証しないままもっと考えろと、殴る教師はいません。川神先輩、あなたの芯見せていただきました、俺はそれがいつか、あなたの戦の真になると信じてます」

「柊……」

「学園長、勝どきはいりません。欲しい結果は見れました、自分はこの戦いここで下ります」

「……そうか」

 鉄心は満足そうに頷いた。

 

 校門の方に戻ろうとする四四八の背に声がかかる。

「柊!」

 百代だ、四四八は首だけそちらに向けて続きを待つ。

 

「ありがとう……そして、悪かったな……」

「いえ……俺は教えるのが好きなんですよ、あいつらの中ではスパルタと有名です」

「そうか、スパルタか、たしかにそうだな……なぁ、悪かったついでにお願いがあるんだが……」

「なんです?」

 

 百代は困ったように顔を伏せる。

 自分の言おうとしていることはまったくもって我侭というやつだ。

 完全に四四八に迷惑がかかる……が、ここまで迷惑をかけといて、迷惑をかけるもクソもないだろう。そう開き直って百代は意を決していう。

 

「今日、お前の手で武神・川神百代は死んだ。今日から新生・川神百代の出直しだ……だから、新生・川神百代の初めての対戦相手は柊四四八がいい、受けてくれるか?」

「いつ?どこで?」

「――今――ここで」

 

 これは完全に百代の我侭だ、普通は受けない。

 でも、この男なら――この漢なら受けてくれるという、甘えにも似た確信がある。

 我侭は美少女の特権だろう、と自分で自分を納得させて四四八の答えを待つ。

 

 それを聞いた四四八はくるりと向きを変え、百代に向かい合うと、腰を落とし構えを取る、旋棍は持っていない。

「女性にそこまで言わせて、断るとあっては男がすたる。あなたの初めての全身全霊、受け止めさせていただきます」

 

 それをみた百代は嬉しそうに礼を言う、

「ありがとう、柊……お前はホントに……」

 

なんと言えばいいのだろう、こういう時、自分の馬鹿さが嫌になる。

 京や大和の様に、本の一つでも読んでいれば気の利いた言葉が出るのだろうか。

 

――あ、思いついた。

 

 言葉自体は陳腐だが何とも柊に合っている、そう思ったのでそのまま言葉に乗せてみる。

「柊……お前はホントに……いい男だな」

 

 それを聞いて少しびっくりするような表情をした四四八が口を開く。

「ありがとうございます。その言葉、男冥利に尽きますね」

 

「……ふふふ」

「……ははは」

 どちらともなく笑いがこみ上げる。

 

 そして――名乗りが上がる。

 

「戦真館 当代筆頭 柊四四八!」

「川神院 川神百代!」

「いざ――」

「尋常に――」

 

「「――勝負!!!!」」

 

 今までと同じようだが、全く違う、都合3度目の戦いの幕が上がる。

 

 そんな戦いを鉄心が嬉しそうに眺めていた……

 

 




というわけで四四八と百代の対戦は終了です
クロス元による百代の更生という、正直ありきたりな話ですが
水銀さん的に言って

脚本はありきたりだが役者がいい

と言っていただければ幸いです

お付き合い頂きましてありがとうございます
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