戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

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バキの地下トーナメント入場の煽り文句、
参考にしようとしたけど、ただ読みふけってあまり参考にはならなかった……w


第三十一話~朱雀~

 昨日と同じく真っ青な秋晴れの空の下、『若獅子タッグマッチトーナメント』の決勝トーナメントが行われようとしていた。

 七浜スタジアムは連日の超満員――いや、人数で言ったら同じかもしれないが観客の熱気は昨日を上回るっているように感じる。予想にだがわぬ昨日の予選をみて期待が否が応にも高まっているのであろう。

 試合開始が近づくにつれて観客のボルテージも上がってきてる。

 

 そこに昨日、トーナメントの組み合わせ発表をした大佐がマイクを持って現れた。

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 地響きのような歓声と拍手が七浜スタジアムを揺るがす。

 大佐が手を挙げ観客を沈める。さざ波が引いていくように歓声が静まる。

 完全に歓声が静まったのを確認すると、大佐はマイクを口元に持っていき話し始めた。

『皆様、大変長らくお待たせいたしました。これより、若獅子タッグマッチトーナメントの本選を執り行いたいと思います。まず開会に先立ちまして、私、田尻耕より関係者のご紹介をさせていただきます』

 スタジアムは静かに大佐の話を聞いている。静かだが、その熱は失っていない。内へ内へと溜まって言っているようだ。

『まず、昨日と同じくリング四方には四名のマスタークラスの達人を配置いたしております、皆様拍手でお迎えください』

 観客から拍手が巻き起こる。その拍手に鉄心、ヒューム、ルー、釈迦堂はそれぞれに手を挙げて答える。

『そして実況席にはこちらも昨日同様、川神TVアナウンサーの稲田提さん、解説のクラウディオ氏、鍋島氏の両名がいらしております。こちらも拍手でお迎えください』

 先程と同様に観客から拍手が巻き起こり、稲田、クラウディオ、鍋島は実況席から手をふり挨拶をする。

 

 拍手が終わるのを待って大佐は敢えて静かに話はじめた。

『さて、準備が出来たようです……では、これより若獅子タッグマッチトーナメント本選を開始いたします……』

 拍手はしているが観客の熱気はまだ外に出てきていない、それを爆発させるべく大佐は今までとはうって変わって張りのある大きな声を上げて観客に語りかけてきた。

 

『みんなっ!! 次代を担う若獅子達の咆哮を聞きたいかああーーーーーっ!!!!』

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!

 貯めていた熱気を一気に発散させた観客たちの歓声がスタジアムを揺らす。

 

『次代を担う若獅子達の魂を、知りたいかあああーーーーーーっ!!!』

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!

 

『それは私も同じこと……さぁ、みなさんお待ちかねっ! トーナメントに選ばれし16チームの入場ですっ!!!』

 そういって大佐はバッを手を挙げ、選手入場口を指し示す。

 そして、大佐の熱いリングアナウンスとBGMにのって16チームが入場する。

 

『武神降臨!! 目指すは最強っ! 妹と共に取るぞ天辺っ! ご存知、川神百代&川神一子の川神シスターズッ!!』

「武神の名、今日こそ取り戻す」

「勇往邁進! 頑張るわ!!」

 

『戦場帰りの傭兵が、女王様と一緒に登場だっ! 板垣亜巳&板垣竜兵の板垣インパルスッ!!』

「優勝はいただくよ!」

「あのデカブツとやるまで負けねぇよ」

 

『メイドの土産は冥土の土産っ! 若手九鬼従者部隊の実力を見せつけろっ! 李静初&ステイシーのタイガー&ドラゴンッ!!』

「タイガー、タイガー、じれっタイガー……ぷっ!」

「おぉい、李、スゲーやる気なくなりそうなんだけど……」

 

『名家の歴史は強さの歴史っ! 高貴な威光は最強の座にて輝くかっ! 不死川心&我堂鈴子のチーム・雅ッ!!』

「にょほほ、投げて投げて投げまくってやるのじゃ」

「これに優勝して、アイツをギャフンと言わせてやるんだから」

 

『街の闇で研いだ牙、それを頼りに男は進むっ! 男二匹の二人旅っ! 源忠勝&鳴滝淳士の川神アンダーグラウンドッ!!』

「まぁ、やるだけやってみるさ」

「ふん、誰が来ても蹴散らすだけだ……」

 

『パワーこそ至高っ! 筋肉こそ頂点っ! そんな脳筋共がやって来たっ! 島津岳人&長宗我部宗男の400万パワーズッ!!』

「俺様のファンになった女子、いつでも連絡待ってるぜ!」

「四国が鍛えたこの身体、川神に知らしめてやる!」

 

『胸も、パワーも超ド級っ! サンドイッチは地獄への片道切符っ! 武蔵坊弁慶&板垣辰子のデス・ミッショネルズッ!!』

「義経とは決勝まで当たらないからね、全力で行くよ」

「Zzz、Zzz……あ、寝てない寝てない……Zzz,Zzz」

 

「私達は、強いんじゃなくて最強なんだっ! 羽黒黒子&板垣天使の地獄殺法コンビッ!!」

「アタイのデビュー戦にいい感じ系の最高系じゃない?」

「ウチの名前全部言うな!天でいい天で!!」

 

『鎌倉の勇者と中華の豪傑が手を組んだっ! 桜と柊、乱れ咲きっ! 柊四四八&葉桜清楚のチーム・柊桜爛漫ッ!!』

「出るからには、勝ちますよ」

「なんで清楚なんだ、俺は項羽だぞ! 項羽!!」

 

『この言葉以外に何がいるっ? ドイツの軍人は世界ィ一位ィィィィッ!! クリスティアーネとマルギッテの大江戸シスターズッ!!』

「マルさんと一緒なら負けないぞ!」

「ついに眼帯を外す時が来ましたか……」

 

『英雄推参! 世界を動かす男がやってきた! 九鬼英雄&井上準のフラッシュエンペラーズッ!!』

「フハハハ、九鬼だと言って遠慮はいらん! かかってこい!!」

「えー、年齢一桁の女子は試合後、俺のところまで来るように」

 

『英傑再臨! 天下五弓を引き連れて新たな伝説を作り出す! 源義経&椎名京の源氏紅蓮隊ッ!!』

「義経の名に恥じぬように義経は頑張る!」

「待ってて大和、私の愛で止めてみせるっ!!」

 

『電光石火のスピードスター、飛燕は文字通り飛翔できるかっ! 松永燕&世良水希のチーム・飛燕飛翔ッ!!』

「私が速いのは松永納豆のおかげ! 皆、よろしく!」

「えっと、頑張ります!」

 

『昨日は昨日の風が吹く、今日はどんな風が吹く? 嵐を巻き起こせっ! 風間翔一&クッキーのダイナミック・ウィンドッ!!』

「よおし!優勝目指してレッツ・ゴーっ!!」

「ふふふ、さあ、お仕置きの時間だ……クッキー・ダイナミックっ!」

 

『狙った獲物は一発必中っ! どんな的でも百発百中っ! 那須与一&龍辺歩美の魔弾の射手―ザミエル―ッ!!』

「ふん、この人の多さ……邪気が溢れてるぜ……」

「イェーイ、あゆちゃん優勝もってちゃいますよー」

 

『その名のとおり、その手に栄光を掴み取れっ! 大杉栄光&黛由紀江のGET THE GLORYッ!!』

「オレの栄光ロード、バッチシ見てくれよな!」

「と、と、と、と、友達募集中ですっ!!!」

 

16チーム32人がズラリと並ぶ。

『決勝トーナメント第一回戦は20分後に行われます!皆様、どうぞご期待下さい!! 最後にこの若獅子たちに今一度、大きな拍手をお願いいたします!!』

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!

 3万人の拍手と歓声が鳴り響く。

 若獅子タッグマッチトーナメントの火蓋が切って落とされた。

 

 

―――――決勝第一回戦 朱雀組 第一試合―――――

    川神シスターズ vs 板垣インパルス

 

 

『一回戦で早くも優勝候補、武神率いる川神シスターズの登場です』

『予選みたいに武神ものんびりはしてられねぇだろうからな、仕掛けてくるだろう』

『百代様がお強いのは相手もわかっているでしょう、どのような形で相手取るか注目ですね』

『奇しくも、兄弟ペア同士の試合となった第一試合。今、ゴングですっ!!』

 

 ゴングと同時にまず動いたのは百代。

今までの予選とはうって変わって、一気に勝負を決めるべく動く。狙うは――客観的に見て防御の薄い、板垣亜巳。

「悪いが後ろがつかえてるんでな、早々に終わらせる――川神無双正拳突きっ!!」

 突撃したスピードを下半身をフルに使ってエネルギーに変え、身体全身の関節を駆動させて放った正拳突きが亜巳を襲う。

 

 肉を打つ手応えがある。が、

「――つぅう……なんだこれ、超いてぇ!」

百代の耳に届いたのは亜巳の悲鳴ではなく、竜兵のボヤキだった。

 竜兵は百代と亜巳の間に割って入ると、百代の拳をクロスさせた腕で受け切ったのだ。

「ほう……私の拳をうけてその程度か、面白いっ!」

 その時、竜兵に亜巳の声が飛んでくる。

「挑発に乗るんじゃないよ! 竜! 打ち合わせ通りだ!」

「わかってるぜ! 亜巳姉ぇ!!」

 そう言って、竜兵は百代の横を抜けて一子へと突進する。

 百代の元には亜巳の棍から放たれた鋭い突きが放たれる。

「わざわざ、同じ間合い同士で付き合うつもりはないよっ! 私だって多少離れてれば、逃げ回る事くらいできるさ」

 そう言って亜巳はつかず離れずの距離を保ちながら適度に棍をだし百代を牽制していく、その棍からは倒すという意思は感じられない、が、入れば引き、引こうと思えば伸びてくる。非常にうっとおしい状態になっていた。

「良い腕じゃないか、お姉さん……だけど忠告しとくよ。一瞬でも気を抜いたら……獲るからね」

「はんっ! 武神相手に気なんか抜くかい!」

 綱渡りの様な亜巳の挑戦が始まる。

 

 一方、竜兵の突進を受けた一子は竜兵の拳を避けながら、薙刀をふるい応戦していた。

「おらおらおらおらおらっ!!」

「せいっ! やぁっ! はぁっ!」

一子は竜兵の拳と拳の間に薙刀を滑り込ませ竜兵を狙い打つ。打つ……が、竜兵の太く筋肉に覆われた両腕に阻まれて決定打にはなりえてない。

「はっ! 効かねぇぞ、チビっ!!」

「ムーーー……だめだめ、平常心平常心……えやっ!!」

 再び一子の薙刀が竜兵の顔を狙う、が、阻まれる。

 しかし、一子は怯まない、諦めない。その一打、一打が勝利への道筋だと信じて打ちすえる。

 真っ直ぐ、愚直に姉の教えに従って。

 まず、敵の攻撃は可能な限り避ける、無理なら捌く、そして、相手に攻撃と攻撃の合間に自らの攻撃を重ねる。打つ時は地面を踏み、力の入れ方は常に内側を意識して、眼と意識は常にまわりを俯瞰で見ながら、相手の急所を点を打つように、打ち抜く。

 

 百代は戦いとは我慢比べだと言っていた。

 息を止めて水に顔をつけて先に顔を上げた方が負ける。

――だから、早く息が上がるように突っついてやればいいのさ。

 それが布石なのだと言っていた。その後――まぁ、私も最近身にしみてわかっただけだけどな。と照れたように言った姉がなんとも可愛いと思ったのを覚えている。

 百代ほどの強さのものでも未だに新たな発見がある。

 武とはそれほどまでに奥深い、自分がいまの百代の高みに至れるかもまるでわからない。

――でも、

我慢比べなら出来る。

 耐える事なら出来る。

 だからそれを信じて今は進もうと決意した。

 

 そして、竜兵と戦い始めて5分……その一子の愚直さが実を結ぶ。

 いままでと同じように竜兵の拳をかいくぐり薙刀が飛んできてた、それを竜兵は今までと同じくガードしようとした……しかし、さっきよりも腕が上がる速度が鈍い。

 初手の百代の一撃と、5分間一子が愚直に腕のみに打ちすえてきたダメージがここにきて限界を突破した。動かなくなったわけではない、そうではないが、今までよりも明らかに1テンポ遅れた反応。そのつけはあまりに直ぐにやってくる。

「せいっ!」

一子の一撃が、

「があっ!」

綺麗に竜兵の顔面を捉える。

 

思わず後ろに下がる竜兵、そこに――

「もらったぁ! 川神流! 大車輪っ!!」

 体重とスピードののった一撃が竜兵に叩き込まれる。

「ぐっはっ!」

「竜っ!」

 姉である亜巳の声が飛ぶ。

 

「があああああああああっ!!」 

 一子の一撃を喰らっても、竜兵は立っていた。

 足を大きく開き力を込めて。己の存在意義を示すかのように立っていた。

「俺ぁ、あのデカブツにリベンジマッチ申し込んだんだ……こんなとこで倒れちゃ、カッコ悪くてしょうがねぇんだよっ!!!!」

 激昂を響かせて、再び一子を睨みつける。

 

 しかし、その時、既に決着はついていた。

 ――ゴングが鳴る。

 『それまでっ! 勝者っ! 川神シスターズっ!!』

 大佐の声が響く。

 その声に、一子と竜兵が周りを見ると、百代の拳を受けた亜巳が場外で気を失っていた……

 

 「竜っ!」

と、思わず弟を心配して出てきた言葉、その後に亜巳は取り返しのつかない事をしたことを認識した。

「気を抜いちゃ駄目だって言ったじゃないかお姉さん……」

 その言葉と共に放たれた拳は亜巳の棍を砕き、身体を綺麗に打ちすえていた。

「かっはっ!!」

 場外まで吹っ飛ぶ亜巳。

 身体に力が入らなかった。

 亜巳は竜兵の激昂を意識のもうろうとする中で聞いていた。

 

 

―――医務室

 

 

「んっ……」

「おう、気がついたか亜巳姉ぇ」

 亜巳が気がつくと、そこはベットの並べてある医務室だった。

 傍らに竜兵が座っている。

 試合の経過を思い出し、

「悪かったねぇ、竜。下手こいちまった」

と、自嘲気味につぶやいた。

「まぁ、相手は武神だ。しょうがねぇ」

 姉の言葉を受けて、竜兵が答える。

 そして、竜兵は続ける。

「なぁ、亜巳姉ぇ、悪ぃんだけどよ。海外行きはもうちょいお預けだ、やり残しちまった事があるからな……」

 それを聞いた亜巳は薄く笑って、

「そうかい、でも、食費は払ってもらうよ。タダ飯食わせる訳にはいかないからね」

と、言った。

「わかってるよ、亜巳姉ぇ」

 竜兵も薄く笑って答える。

 

「辰姉ぇと天の試合がある、俺は行くけど、亜巳姉ぇは寝てていいぜ」

「はん、見くびるんじゃないよ。可愛い妹達がやるって言うのに、おちおち寝てられるかって」

 それを聞いた竜兵は小さく肩をすくめて立ち上がる。

 亜巳もベットから降りて、立ち上がる。

「んじゃ、行こうかね」

「あいよ」

 そういって板垣兄弟は医務室から出ていった。

 医務室に砕けた棍だけが打ち捨てられていた……

 

―――――決勝第一回戦 朱雀組 第一試合―――――

   川神シスターズ ○ vs × 板垣インパルス

        試合時間 6分10秒

 

 

―――――決勝第一回戦 朱雀組 第二試合―――――

     タイガー&ドラゴン vs 雅 

 

 

『さぁ、リング上では既に第二試合、タイガー&ドラゴンと雅の準備が整っております』

『こうまで4人が4人とも違うタイプの選手と言うのも珍しいな』

『投げ、薙刀、銃火器、暗器……たしかに中々に混沌としておりますな』

『さぁ、どんな展開になるか全く予想がつかないこの一戦、今、ゴングですっ!!』

 

 試合開始の合図とともに、

「ファック……家柄、家柄って、お前ら全っ然、胸に響かねぇんだよ!!」

そう叫んだステイシーは懐から丸い物体を取り出し心と鈴子の方へ放り投げる。

「にょほっ!」

「ちょっ!!」

 それが手榴弾だと認識した時には、ステイシーのマシンガンが手榴弾ごと、雅の二人に向けて放たれていた。

「ヘーーーイッ! ロッックンロォォーーールッ!!!」

 手榴弾は打ち抜かれ、リング上にもうもうと土煙が上がる。

 

「にょほーーー、卑怯じゃろう! 銃は反則じゃ!!」

 間一髪で逃げ延びた心はマジンガンに追われながら、リング上を逃げ回る。

「あぁ? ルールは銃火器OKのはずだぜ? ファックなお嬢様は字も読めないのかい?」

「ぐうう、此方を馬鹿にしおって……ひょおっ!」

 悔しそうに顔を歪めた心の足元に、マジンガンの銃弾が降り注ぐ。

「ロック、ロック、ロック! いつまで逃げられるかなぁ」

 追いつめるステイシー。

 追いつめられる心。

 そして、その心にとどめを刺すべく、音もなく近寄る一つの影――李静初。二人の本命はこちら。ステイシーが挑発等を交えわざと派手に動いていたのも李の動きを隠すため。

 

「いただきます」

 その言葉と共に手に持った針で心をしとめようとした時――

「やらせない」

 二人の間に鈴子が滑り込む。

――疾いっ!

 李は土煙のどさくさにまぎれ、気配を消して心に近づいた。

 鈴子が見当たらなかったのが土煙の中にいたからという事を考えたら、開始位置からこの位置まで鈴子は一足飛びに駆けつけてきたことになる。

 疾い――このリング上の誰よりもこの娘は疾いと李は認識した。

 しかし、そこで思考が止まるほど李はヌルい戦士ではない。

 一瞬のうちに心を仕留めるのを諦めると、逆に後ろに飛ぶ。

 そしてそれを追う鈴子。

 

――読み通りっ!!

 

 そこに李は自身の装備するありったけの暗器を叩き込む。

 短刀が閃き、

ワイヤーがはしる。

 手裏剣が煌き、

鎖玉が襲う。

 あらゆる暗器が鈴子めがけて放たれた。

「はああああああっ!!」

 そんな暗器を薙刀で全て捌き切る鈴子。

 そんな鈴子に李は称賛にも近い驚愕を感じながら、それでも鈴子を仕留めるため――「――フッ!」本命の含針を口から放つ。

 あらゆる暗器の殺気に隠れた最後の一針。

 薙刀では捌けないであろう小さな針が鈴子の首筋めがけて飛んでいく。

 

 その時、鈴子が大きく首を振る。

 それに伴い、鈴子の長く艶やかな髪がバサリとたなびく。

「――っ!!」

 李は今度こそ驚愕した。

 自分の放った含針は鈴子の髪によって叩き落されていた。

「残念だけど、暗器使いとの戦いは――慣れてるのよっ!!」

 

 針を含めた全ての暗器を捌ききった鈴子は反撃に出る。

 暗器を捌いた鋭さそのままに、李にむかって薙刀の斬撃を縦横無尽にはしらせおいつめる。

「はあああああああああああああああああっ!!!」

 鈴子は殺気を李へと放ちながら、斬撃を繰り返す。

 そんな触れれば切れそうな殺気を受けながら鈴子の攻撃を李は躱して躱して、躱しつづける。

 そんな時――トンっと間が空いた。

 おそらく戦っている二人にしか解らないくらいの間。

 時間にしたらおそらく1秒にも満たないであろう、そんな間。

 そんな間の中で、鈴子が殺気を膨らませる。

――なにか来るっ!!

 李はそれを察し、鈴子の攻撃に備え集中する。

 

 その時――李は予想外の事を目にする。

 鈴子が自分ではなく、まるで違う方向へと身を翻したからだ。

――しまったっ!

 と、思ったときはもう遅かった。

 もう追いつけない。

 もう間に合わない。

 この一瞬を作り出すために、自らに李の全てを集中させるために、鈴子は切れそうな殺気を敢えて自分に叩きつけていたのであろう。

 

 それでも、声を上げずにはいられない。

「ステイシーッ!!!!」

 鈴子が向かう先――パートナーのステイシーの名を叫ばずにはいられなかった。

 

 マシンガンで心を追い詰めていたステイシーのもとに、パートナーの声が届く。

「ステイシーッ!!!!」

 悲痛な、叫ぶようなパートナーの声に目を向けると。

「なっ!」

 そこには真っ直ぐ矢のように自分に向かって疾しる、鈴子の姿が見えた。

 

「――ぐっ」

 鈴子の姿を認識した瞬間、ステイシーの鳩尾に鈴子の薙刀がめり込む。

 ドサリと崩れ落ちるステイシー。

――ゴングが鳴る。

 

『それまでっ! 勝者っ! 雅っ!!』

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 揺れるような歓声が上がる。

 

「お見事でした」

 李が鈴子に近づき握手を求めてくる。

「ありがとうございます」

 鈴子それを握り返す。

「まさか針まで防がれるとは思ってもみませんでした」

「さっきも言いましたけど、慣れてるんですよ、暗器使いの相手……」

「そう……ですか、凄まじい使い手だったのでしょうね……」

 そういうと李は傍らで倒れているステイシーを抱きかかえると、

「また、是非とも相手をしてください。申し遅れました私、九鬼従者部隊序列16位の李静初と申します」

「千信館の我堂鈴子です」

 二人が名乗りあった時、李の腕の中のステイシーがモゾモゾと身体を動かし、

「なんだよ李……そんな気の抜けたコーラみたいなボケじゃ、皆笑わねぇぞ……」

と、寝言を言う。

 そんな寝言に苦笑をしながら、

「まったく、こんな時まで寝ぼけて……我堂さん、ありがとうございました。失礼します」

李は鈴子に一礼すると、ステイシーをとても愛おしそうに見つめながら、そっと運んでいった。

 

 鈴子はそんな李の姿を見ながら。

――もし、何かのきっかけがあれば彼女たちも同じような未来を生きることができたのだろうか……

 と、邯鄲で生活とそして、死闘を繰り広げた姉妹について思いを馳せていた……

 

―――――決勝第一回戦 朱雀組 第二試合―――――

  タイガー&ドラゴン ○ vs × 雅 

        試合時間 3分58秒

 

 




鈴子頑張ってんじゃん!鈴子!!
え?パートナー? ソロ討伐だろ?鈴子は?
あ、アイルー(心)いたな、アイルー(心)。

このあとは鳴滝、四四八と続きます。
よろしくお願いします。

お付き合い頂きまして、ありがとうございます。
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