戦真館×川神学園 【本編完結】   作:おおがみしょーい

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怪士、夜叉、橋姫、泥眼。
全部能面の名前だったというのを最近知りました。

という訳で今回の題名は鈴子に一番合いそうな能面からとってみました。



第三十五話~風神~

―――――朱雀組 決勝―――――

  川神シスターズ vs 雅

 

『さぁ、トーナメントは第二回戦、ベスト8の戦いへと移って行きます。まずは川神シスターズと雅の対戦です』

『予選、決勝通して、今んとこ川神百代を真正面から抑えた奴はいねぇ。川神百代の相手をどこまでできるかが鍵になるだろうな』

『雅には千信館の我堂様がいらっしゃいますな。この大会、川神学園と千信館の皆様はともに素晴らしい活躍をされています。今回も期待いたしましょう』

『さぁ、これに勝って準決勝一番乗りを果たすのははたしてどちらのチームになるのでしょうか。今、ゴングですっ!!』

 

 試合開始と同時に一回戦同様、百代が動く。

「さっきは失敗したが、今回は決めるよ」

「にょほっ!?」

 開始位置にいたはずの百代の声が目の前で聞こえ驚く心。

 百代は一回戦と同じく先制の一撃を与えるべく、心に一気に近づき一撃を放つ。

 一回戦と違うのは、その時より鋭く、そして疾かった。

「――川神流無双正拳突きっ!!」

 疾く、鋭く、一直線に放たれ心の胴体を穿つはずだった百代の拳は――空をきった。

「なにっ!?」

「ほう」

「ふむ」

「おおっ」

「こりゃ……」

 百代だけでなく、リング四方にいた鉄心、ヒューム、ルー、釈迦堂もそれぞれ声を上げる。

 百代には一瞬、心が消えたように見えた。

 しかし、無論のこと心が消えたわけではない。

「……ほ?」

 百代の攻撃が来ると解かり顔を防いで目を閉じていた心が目を開けると、百代は拳を出した姿勢で前方にいた。辺りを見回すと、武舞台中央付近にいたはずの自分の身体がリングの端に置かれていることを認識する。

 そして、隣には薙刀を携えて百代を見据えている鈴子がいた。

 百代の先制を察知した鈴子が心を抱えて一気に舞台の端まで飛んだのだ。

 その疾さは、それを見た四方のマスタークラスから思わず声を上げさせるほどの疾さだった。

 

 百代がニヤリと笑う。

「凄い身のこなしじゃないか……本当はワン子にリベンジの機会をあげようかと思ってたんだが……これは私が相手をするしかなさそうだ……」

 そう言いながらゆっくりと横へ移動する。

「……」

 それに合わせて鈴子も同じ方向に、同じ速度で歩く。

「ワン子! 悪いが我堂の相手は私がする。もう一人の方は頼んだぞ」

 百代は鈴子から目を離さずに一子に声をかける。

「――っ! はいっ! お姉さまっ!」

 一子は一瞬、悔しそうに顔を歪めたが、すぐに顔を引き締め未だ呆然としている心に目を向ける。

「……」

 百代は鈴子から目を離さない。

 鈴子も百代から目を離さない。

 

 二人とも、ゆっくりゆっくりと歩いている。

 

 こういう時――強敵と相対した時、何をすればいいか鈴子は知っている。

 何をすればいいのか?

――狂えばいいのだ。

――狂った人間は強い……とても強い。

 客観的に見て自分たち戦真館の人間は……狂っている。

 まだ成人にもなっていない学生が命のやり取りを経験しているのだ、狂っていないわけがない。

 だが、ただ狂っただけではそれはただの狂人だ。

 うまく狂わなければいけない。

 自分たちはうまく狂えたからこそあの悪夢から帰って来れたのだとも思う。

 日常と狂気の堺をしっかりと見極め、心を強く持ち、その上で、普通の歩幅で、普通の速度で日常から狂気へと入っていく。すっと入ってく。

 それにより人は強くなれるのだ。

 そして、鈴子は戦真館の中で日常と狂気の行き来が一番うまいのは自分だと思っている、というか確信している。

 だから、目の前の強敵を――百代を前に鈴子は少し狂うことを覚悟する……

 

 不意に二人の動きがピタリと止まる。

 

 百代が構えを取る。

 鈴子は片手で薙刀を持ったまま、特に構えは取らずトントンと爪先で地面をたたくような素振りを見せる。

 靴が整っていないわけではない。

『足を使うぞ』という意思表示。

 それを見た百代の髪がザワリと動く。

 

 百代はまだ、動かない。その紅く輝く双眸は鈴子を見ている。

 鈴子もまだ、動かない。その蒼く煌く双眸は百代を見ている。

 

 その時、舞台の端にいたヒュームが口を開く。

「ふん、切っ掛けくらい作ってやるか」

 そう言うとコインを取り出し無造作に親指で弾くと空中に放り投げた。

 コインは放物線を描いて舞台に落ちる。

 キンッ、という乾いた音が響く。

 

 その瞬間、鈴子と百代の姿が掻き消えた。

 鈴子は迅の戟法を百代は超加速を用いて動き出す。

 観客はもとより、達人と言われる人間でさえ目に負えないほどのスピードで鈴子と百代は動き始めた。

 武舞台を所狭しと二人は動き回る。

 観客は動いている二人の姿を捉えることはできない。

 観客が見えているのは武舞台を踊るように疾る、紅と蒼の光の軌跡だ。

 目にも映らないほどの疾さで行われる“鬼ごっこ”。

 常人には認識すら難しいレベルの戦いが展開されていった。

 

 百代と鈴子はお互いに死角に潜り込もうと動いている。

 もちろんお互いに存在を認識したあとに死角に入ることは基本的には不可能だ――しかし、速さにおいて相手の認識を上回ったときそれは可能となる。

 故に百代と鈴子は動く。

 相手の認識の上を行くために。

 しかし、同時にこのまま“鬼ごっこ”を続けても無意味だとも二人は感じ始めていた。

 そして、二人は速度を維持したまま駆け引きの世界へと入っていく。

 

 鈴子が仕掛ける。

 

 何十と繰り返した切り返しの最中、今までとは違う動きを見せる。

 右足の爪先は右を向いているが、左足の爪先は真正面を向いている。

 しかし、肩は左側に重心を置いたように傾いていて、目は百代の後ろを見ている。

 幾重にも張り巡らされたフェイントの数々。

 百代は全てを無視して踵を見る。

 体重がかかっている――故に、進行方向は後ろっ!!

 疾風の速さの中で行われる刹那を使った閃光の瞬きにも似たやりとり。

 

 百代の読んだ通り鈴子は後方に飛ぶ。

 百代はそれを追って前に飛ぶ。

 その時、百代の身体がガクンと前につんのめる。

 何事かと思い百代が自らの足元を見ると今まで何もなかった舞台の上に小さな水晶が現れていた。

 創法で鈴子が造りだした小さな水晶。

 鈴子の身体で作ったフェイントは次に後方に飛ぶことも含めて全てこの水晶から百代の目をそらすための布石。

 「はあっ!!」

 百代が体勢を崩した一瞬を見逃さず鈴子は一気に百代の後ろに回り込み薙刀と一閃させる、狙うは――首の弱点部、顎中。

 その攻撃を気配で感じた百代は避けることを諦め、身体をひねると、迫り来る薙刀に自らの額で受け止めた。

 鮮血が飛び、百代の顔が跳ね上がる。そして額に焼けるような痛みがはしる。

 が、痛みを感じているということは、意識を失ってはいないということ。

 百代は歯を食いしばりその痛みに耐えると、鈴子に向かって強引に蹴りを放つと、それを牽制にして一気に距離を取る。

 そして、鈴子が追撃を仕掛けてこないのを確認すると瞬間回復で傷を癒す。

 額の傷がふさがり、血が止まる。

 

 二人は再び対峙して言葉を交わす。

「噂には聞いていたんですけど、本当に厄介ですね。それ」

「優勝にはあと2試合残ってるんだ、あんまり使わせないでくれよ」

「ここで負ければ、そんなことは考えなくても良くなりますよ」

「そんな怖いこと言わないでくれ……我堂が言うと冗談に聞こえない……」

「もちろん、冗談を言ってるつもりはありませんよ」

「だと思った……」

「そうですか……」

 そろり、そろりと探るような会話が交わされる。

 話している間、一瞬たりとも二人は目をそらさない、瞬きもしない。

 

 不意に二人は同じタイミングで再び動き出した。

 何かのきっかけがあったはずだ、しかしそれがどういうきっかけであったか、外から見ていた者にはわからなかった。

 対峙している者同士にしかわからない次元のきっかけがあったであろうことは想像できる、できるが、それがどのようなきっかけだったかはわからない。

 後になって、この両者にそれを訊ねても、わからないと、言うかもしれない。そのくらい微細な機微のきっかけであったと思われる。

 

 再び紅と蒼の閃光が絡み合う。

 

 今度は百代が仕掛ける。

 右から背後へ背後へ回る気配をみせつつペースを上げていく。

 そして急に左へと方向転換――するような体重移動をしておいて、足に溜めた気を爆発させ前へと飛ぶ。

 しかし、鈴子はこれを読んでいたかのように、身体を開き百代の背後にまわろうとする動きを見せる。

 百代もそれに合わせて身体の向きを変えようとする。

 

 その時、鈴子は急に方向を変えると、今までとは全く別の方向に疾る。

 先にいるのは――川神一子。

 鈴子は一回戦同様に百代を自分の方に注意を引きつけておいてパートナーの一子へと攻撃の対象を変更したのだ。

 一子は鈴子の動きに気づいていない。

 

――とった!

 

 と、鈴子が確信したその時、横から疾って追いついてきた百代の振り上げた右足によって薙刀が跳ね上げられていた。

 

「――え?」

 その時初めて、一子は自らの近くに鈴子と百代がいる事を認識する。

「なんだよ、折角の二人っきりの『デート』なのに他の子に目移りなんて、妬けるじゃないか」

「……いい女は気が多いものなんですよ」

 この一連のやり取りの中で交わされている百代と鈴子の会話を一子は耳にする。

 二人の目には既に一子のことはうつっていない。

 百代は鈴子を見ている。

 鈴子は百代を見ている。

「さっきのお返しにせっかくイロイロ仕込んだのにな」

 少し拗ねたように百代が言う。

「ごめんなさいね、いつもつれない奴を相手にしてるから、慣れてないんですよ」

 鈴子がすました顔で答える。

 百代と鈴子はそのまま一足飛びに距離とると再び対峙した。

 

「どこを見ておるのじゃ!」

一子がよそ見をしている間に心が一気に距離を詰めて懐に入ってくる。

「くっ! えぇい!」

 そんな心を柄の方を振り上げて牽制する。

「にょわ!」

 刃よりも射程の短い柄の部分での旋回に心は慌てて距離を取る。

 

 この時、一子の心は悔しさで溢れていた。

 百代と鈴子の中に自分がまるでいないことが悔しかった。

 百代と鈴子の目に自分がまるで入っていないことが悔しかった。

 しかし、自分が今、あの高みにいないことは自分自身が一番よく知っていた。

 だからまずは、目の前にあることを一つ一つ越えて行こうと心に決める。

 目下の目標は目の前の敵に負けないこと、そして打ち勝つこと。

「いくわよっ!」

 気合も新たに一子は心と対峙する。

 いつか百代の言っていた『デート』の相手が務まるようになる為に、一子は一子の戦いを始めた。

 

 三度、鈴子と対峙した百代は考えていた。

 このまま疾さ比べをしていてもおそらく埒があかない、むしろ、一回目や二回目の駆け引きを見るに、分が悪いと言っていいかもしれない。

 ならばどうすれば鈴子を捉えることができるのか……

 考えて、百代は構えを変えた。

 

「んっ?」

 百代の変化は鈴子もすぐに気がついた。

 いままで獣の様に両手を開きは上半身を前かがみにして、獣の顎のように開いた両手を上下においた構えをしていた百代が、背筋を伸ばし腰は少しだけ落とし、両手は脇を占めて前に出している。

 足は左足が前、右足が後、体重は均等にかかっている。

 手は握らずに掌。

 だが、今までと違い鉤爪の様に開いているのではなく指先まで神経を行き届かせた綺麗な掌の形で構えている。

 そして最後に大きく鼻から息を吸いゆっくりと口から吐く。

 それとともに身体に残った余分な力が抜けていく。

 美しい、お手本のような『武』の構え。

 今まで自由に戦ってきた百代が選択した『型』。

 それを見た鉄心は万感の思いで、

「もも……」

と、孫娘の名前をつぶやいた。

 

 鈴子が百代の変化に気がつき思考したのは一瞬。

 しかし、やることは同じと腹をくくる。

 

 そして、三度、鈴子の姿が掻き消えた。

 

 百代の目の前から鈴子の姿が消える。

 蒼い双眸の軌跡と影が百代の周りを縦横無尽に飛び回る。

 目はもちろん開いてはいるが、追わない。

 目で追っても間に合わないからだ。

 鈴子は先ほどのやりとりよりさらに一段階ギアをあげたように感じる。

 だから百代は鈴子が消えた方向を向いたまま気配を追っている。

 百代は構えを取りながら心を落ち着け、自身の周りに水面をイメージする。

 鈴子の気配が現れるたびに、そのイメージした水面に波紋が起きる。

 右、左、前、後ろ、と四方に波紋が起きる。

 その時、後ろで一際大きな波紋が起こった。

「せいっ!」

「そこぉっ!」

 鈴子が薙刀を一閃させるのと同時に、百代が振り返りその薙刀を左手で跳ね除ける。

「しっ!」

「くっ!」

 左手で薙刀を払った百代は右手の拳を鈴子に叩きつける。

 鈴子はその拳を身体を大きく反らして避けると、地面を蹴り距離を取る。

 百代の拳がかすった脇腹の戦真館の制服が刃物で切ったようにパックリをわれていた。

 百代は鈴子を追わず先ほどと同じ位置で、同じ構えで鈴子を見据えている。

 

 鈴子は大きく息を吸ってゆっくりと吐いてから動き出す。

 ゆっくりと百代の周りを歩きだす。

――なるほど、今までよりも気配を読むことに全てを向けてきたか。

 鈴子は百代の周りをゆっくりと回りながら分析をはじめる。

 それに合わせて百代も正面が鈴子に向くようにゆっくりと構えを向ける。

――殺気も何もかも読まれて静から動への最小限の動きで対応されてしまうのはとても厄介だけど……

 鈴子の歩みは止まらない。

 百代の動きも止まらない。

――だが、それならそれでやりようがある。

 鈴子の歩みが止まる。

 百代の動きも止まる。

 

 そして、再び鈴子が仕掛ける。

 蒼い閃光が四度舞い踊る。

 

 雨。

 百代が感じたのは水面を叩く無数の雨。

 鈴子は殺気や気配を敢えて発散させながら百代の周りを行き交う。

 大小様々な気配が百代の周りで波紋を巻き起こす、それが無数の雨となって百代のイメージした水面をかき乱す。

――落ち着け、惑わされるな、余分なものは排除しろ。

 百代はその撹乱のなか動かず、本物の鈴子を探る為、意識を集中する。

 

 その時、頭上にひと際大きな『滴』が落ちるのを感じる。

――そこかっ!!

 

「はあっ!!」

 半眼にしていた目を開き、頭上の気配に左の拳を叩き込む。

 手応たえがあった。

 しかし、百代の拳が砕いたのは、鈴子の身体ではなく大きく岩の様な水晶だった。

「なにっ!!」

 拳を振り上げた状態で驚愕する百代。

 そこに、

「もらったっ!!」

地を這うように、身を低くした鈴子が百代の右側から薙刀の一撃を放つ。

 

――間に合わないっ!!

 百代は目だけ鈴子の姿を認識したが、避ける事は不可能だと判断した。

――右腕一本くれてやるっ!!

 瞬時にそう判断すると、鈴子が狙った首を隠すように右肩を上げる。

 百代の右肩に薙刀が突き刺さる瞬間――声が響く。

 

「それまでっ! 勝者っ! 川神シスターズっ!!」

 

 鈴子の薙刀が百代の肩の手前でピタリと止まる。

 

 二人があたりを見回すと、そこには一子の足元で、

「きゅ~」

と、のびている心の姿があった。

 

 長物を振り回す一子の懐に飛び込んだ心は一子を場外めがけて投げ飛ばした。

 それを一子は空中で身を捻り、壁に当たる直前で逆に壁に足をつけて蹴りあげると、三角飛びの要領で心の元に戻ると、その勢いのまま飛び蹴りを叩き込んだ。

 

 川神流 三角龍。

 これで一子の勝利が決まった。

 

 勝どきを聞いた鈴子は、ふぅ、と息を吐いて薙刀を収める。

 そして、

「お疲れ様でした」

 と、一子を見ていた百代に手を差し出しながら声をかける。

「ああ、ありがとう、そちらもな」

 そういうと百代は鈴子の手を握り返してきた。

「……柊のこと、止めて下さいね。あいつに大きな顔されるのごめんですから」

 鈴子は少し拗ねたように百代に言う

「ふふふ。そちらの真意はともかく……私たちも優勝目指してるからな、止めてみせるさ。それに負けっぱなしってのもしゃくだ」

 そんな鈴子の拗ねている態度と、戦っている時の冷徹さのギャップにおかしさを感じながら百代が答える。

「よろしくお願いしますよ、川神先輩」

 そう言うと鈴子はのびている心を抱きかかえて武舞台から去っていく。

 

 それを見送った百代は、

「やれやれ……千信館の連中と戦うと寿命が縮む……」

そういうと、空を見上げてため息をついた。

 

―――――

 

 勝利した百代と一子は控室へ向かう通路を歩いている。

「よくやったな、ワン子」

 百代はそう、一子に声をかける。

 しかし、いつもなら明るく答える一子が

「う、うん。ありがとう! お姉さま!」

と、ぎこちなく笑うだけであった。

 そんな一子を見て、小さくため息をついた百代は、

「そんなに悔しいか? ワン子」

そう聞いた。

 内面を見透かされた一子は思わず顔を上げる。

 そこには、優しそうに自分を見つめる姉の顔があった。

「……うん」

 その目に見つめられた一子は素直に頷く。

「かつて負けた相手が、自分より遥か先を行っていたか……確かに、悔しいな」

「……うん」

 百代の言葉に一子が再び頷く。

 そんな一子を百代はいきなり抱き締めると頭を優しく撫で始めた。

「え? え? お姉さま??」

 いきなりの姉の行動に一子は目を白黒させて驚く。

 そんな一子をよそに百代は一子に語りかける。

「だがな、ワン子。私はワン子に感謝してるんだぞ」

「え?」

 百代の言葉に一子は目を丸くする。

「最後の一瞬、私は我堂の攻撃を何とか凌ぐために右腕一本くれてやるつもりだった。だが、その寸前でワン子が試合を決めてくれたから今こうしてお前の頭を撫でる事が出来る」

「お姉さま……」

「なぁ、ワン子……先に行っている奴はしょうがない。そこにたどり着くために奴等も山の様な辛酸をなめてきたんだと思う。だから、後ろにいる奴は一歩一歩近づくしかないんだ……そして、ワン子、お前はちゃんと前に進んでいるよ」

「お姉さま……」

 一子は百代の言葉を噛みしめるように、ぎゅと百代の身体を抱きしめる。

 そして、ばっと身体を離すと、

「もう大丈夫! ありがとう! お姉さまっ!!」

そう言って太陽の様に笑った。

 それを見た百代も、

「そうか」

と、短く答える。

 再び二人は歩き出す。

「次の私達の試合まで少し時間があるな、なにか食べておくか」

「それなら、おにぎりにしましょう、お姉さま。消化が良くてすぐエネルギーになるの!」

「そうか、じゃあ、そうしよう。ワン子はよく知ってるな」

「えへへ……」

 誉められてはにかむように笑う一子。

 

 そんな仲睦まじい姉妹の様子を、通路の入り口から鉄心が満足そうにうなずきながら見守っていた。

 

―――――朱雀組 決勝―――――

川神シスターズ ○ vs × 雅

   試合時間12分58秒

 

 




今回でなんと合計37話、初期のプロットが終わってからの話の方が長くなってしまいました。
ここまで続けられたのも読んでくださり、感想を書いて下さり、評価していただいている皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。

そして今回は最近なにかと影が薄い鈴子ですw
でも、鈴子頑張ってます。
むしろもうちょいイジられてれてる感じじゃないと鈴子じゃないかなぁ、
とも思ったりしてます。

お付き合い頂きまして、ありがとうございます。
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