羽沢珈琲店の客寄せパンダは今日も女の子とお喋りします。   作:ARuFa

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このきゃらすき。


白鷺千聖 Ⅰ

 

 

「アイドルって、とても疲れるお仕事なのよ」

「そうみたいですね」

 

 

 今日も今日とて皿を拭きながらお客さんの相手をする。

 本日ボクの前に座っているのは女優兼アイドルの芸能人、白鷺千聖さんだった。

 彼女は疲労の溜まった様子でため息をつくと、ボクが今入れたばかりの砂糖多めのコーヒーを口に含む。

 

 

「……熱いわね」

「今入れたばかりですから」

 

 

 そう言うと白鷺さんはちょびちょびとカップを啄んでいく。案外猫舌なのだろうか。可愛らしい。

 

 

「あなた今、少し失礼なことを考えなかった?」

「気の所為ですな」

「あらそう」

 

 

 つい微笑ましくてにこにこしていると、白鷺さんからジトリ目を飛ばされる。

 まずい、そんなに露骨だったろうか。自分としては普段の営業スマイルと変わらないと思っていたのに。

 

 

「やっぱり女優さんとなると人の表情とかわかるんですかね」

「まあね。……ていうか敬語はやめてっていつも言っているでしょ?」

「あ、ごめんごめん」

「同い年よ?」

「白鷺さんやっぱり芸能人だから。なんか緊張しちゃうんだよね」

「まあそう思ってくれてるのが嬉しくないわけじゃないんだけど……」

 

 

 くるりくるり。長くてサラサラとした薄めのブロンド弄りながら、少し視線を逸らして唇を尖らす。

 

 

「けど今は芸能人の白鷺千聖じゃなくて、ひとりの女の子として会いに来てるのだから……そういうのは寂しいわね」

「そっか。ごめんね」

「謝ってばかりのひたきもいやだわ」

「あー、ごめ……ありゃりゃ」

「謝るの、クセになってるんじゃないの?」

 

 

 そうかもしれない。

 むすぅ……と、どこか幼さが残る表情浮かべて、千聖さんはボクのことをそう分析した。

 確かに、改めてそう言われると、やけに納得してしまう。間違っていないのかもしれない。

 

 

「そんなふうに、どんな女の子にも下手(したて)に出てるとダメよ」

「そんなつもりはないんだけど」

「つまらないわね」

「え?」

「あなた私が芸能人だからとか言ってたけど、女の子に対して皆そうなんじゃない?」

「そんなことは」

 

 

 ない……と、言おうとしたが。

 どうだろう、心当たりがなくもない。これもあながち間違いじゃないのかな?

 

 

「でも店員って立場だし」

「あなたのそれがプライベートでは違うのなら、みんな苦労してないと思うわ」

「みんな?」

「いえなんでもないわ。忘れてちょうだい」

 

 

 唐突に出てきた思慮外の単語に首を捻る。はて、みんなとは。

 それについて聞くと、彼女はコーヒーを飲んではぐらかした。

 今度はくぴりくぴりとテンポよく飲んでいる。喋っている間に、ちょうどいい温度になったのだろうか。

 

 

「…………」

 

 

 それにしても、ボクはそんなに普段の行いからから改善したらいい点があるのか。

 確かに昔から喧嘩とか好きじゃなくて。なにか諍いが起こった時には絶対此方から先に謝ってたし、欲しいものが割れたら必ずと言っていいほど譲っていた。

 蘭や巴にはそれが男らしくないと言われることも多々あった気がする。邪険にされてるようなものじゃなくて、からかわれてるだけだとは思うけど。

 

 

「ううん、ちょっと意識してみようかな……」

 

 

 けれど、やはり普段の態度やセリフは、少し考え改めなければならないものもあるのかもしれなかった。

 

 

「でもそれは白鷺さんもじゃない?」

「え?」

「さっきのセリフ」

「? 私おかしなこと言ったかしら?」

 

 

 まさか自分の方へと返ってくるとは思わなかったのか。

 彼女は目を丸くしている。

 

 

「『ひとりの女の子として会いに来てるのだから』……なんて、白鷺さんが言っちゃダメなんじゃないの」

「…………」

「今日はたまたま誰もいないけど、他のお客さんがいたら誤解されちゃうんじゃない?」

 

 

 ぱちぱちと。白鷺さんは数度まばたきを繰り返す。

 するとしばらくして、くすりと、可笑しそう吹き出した。

 

 

「そうね。たしかに、そうだわ」

「ふふ、でしょ?」

「芸能人として、確かにそれは頂けなかったわね」

「うんうん」

「けど個人としては、別にいいけどね」

「そうだよな──……え?」

「誤解されても」

 

 

 つるり。がちゃん。

 磨いていた、手に持っていた皿が白のまちまちの破片へと変わった。

 

 

「え……えと……」

 

 

 粉々になった皿の破片が飛び散り、床が白く覆われる。

 それとは対照的に身体の温度が高くなり、自分の顔が赤くなっていくのが見えていなくてもわかった。

 

 

「……冗談よ」

 

 

 ぎぎぎぎ……壊れたブリキのようにおもしろいくらいに狼狽えていると……数十秒後、それをたっぷりと観察し終えた白鷺さんが意地悪そうに微笑んだ。

 

 

「何赤くなってるのよ。可愛いわね」

「う……からかわないでくださいよ」

「毎度毎度同じ手にかかるあなたが悪いのよ」

「ぐぐぐ」

「あと敬語」

「ひぇぇ」

 

 

 な、なんて手厳しい人なんだ……。

 いや、だって仕方ないでは無いか。白鷺さんに『誤解されてもいい』なんて……。

 そんなこと言われようもんならこの世の男子は100人中1000人の割合で勘違いするに決まってる。

 

 

「私に説教するなんて3年は早いわよ」

「うう、善処します」

「敬語」

「ぐふ」

「まああと3年……成人するまでには、私にも説教出来るイイ男になりなさいな」

「なれるかな」

「なりなさい? それまでは、私もずっと待っててあげるから」

「も、もうからかうのはやめてください……」

「ふふふ。ええ、そうね」

 

 

 別に今のはからかってないわよ?

 

 

 最後に白鷺さんはそう言って。

 とても楽しそうに、莞爾と笑った。

 

 

 





読了感謝です。バンドリのキャラクターをよく知らんのですが、違和感ないですかね。
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