羽沢珈琲店の客寄せパンダは今日も女の子とお喋りします。 作:ARuFa
結構数字が出てびっくりしてます。
評価や感想、お気に入り登録、そしてなにより見ていただいて感謝の限りでございます。ありがとうございます。
あと賛否はいろいろあるかもですが、このおはなしは地の文等を抑え目にしてサクサク読めるようなものを目指しています。ですので文字数はいつもこれくらいです。
それと各話メインにするキャラクターは完全に自分の趣味です。どうかご了承を。。。
「腹が減っては戦は出来ぬ……けど……うう……」
「…………」
なんなんだろうか一体。これまた唐突な……。
まあそれがこの子らしいといえば勿論そうであるのであるけれど。
カウンター席越しにぴこぴこ動く、元気印のピンク髪。
しかし今の彼女は元気とはほど遠いもので。
先の方を結んだふたつのおさげを揺らしながら、妹の友人である“上原 ひまり”は憂鬱そうな面持ちで口を開いた。
「どうしたのひまり、また似合わないこといって」
「え? 似合わないかな」
「ことわざなんてひまりらしくないよ」
「……それちょっとバカにしてない?」
してないしてない。
気の所為、もしくは被害妄想である。
いくらひまりが補習の常連だと聞かされているとはいえ、そんなことは思ってはいない。
「その度にボクが教師代わりになって勉強の世話を見させられてることが面倒だな〜なんて、そんなこと思ってないからね」
「ひたき、私のこと面倒だとか思ってたの?」
「いやいや、だから思ってないってば」
「…………」
「いやほんとに。ほんとよ?」
もしかして信用されてない? ほんとにちょっとした冗談なのに。
むしろ、頼られるのは少々嬉しかったりする。
「ふーんだ。いいもん別に。ひたきの意地悪っ」
「果たして悪いのはボクの意地だろうか」
「ほ、ほんとに意地悪っ! 悪いのは私の頭だって言いたいんでしょ!」
「いやぁそこまでは思ってないけど」
「うう〜っ」
ごめんちょっとは思った。
ひまりからむむぅ〜っと不機嫌なポメラニアンのようなジト目を向けられるので、あははと気まずくと笑いながら目を逸らす。
「もういい。そんなひたきには……おしおき」
「おしおき?」
「うん。おしおきです」
「具体的には?」
「……これからも私の勉強の面倒をですね……」
「いやいや」
それはおしおきとは言わなくないかしら。上目遣いで言ってもダメだよ。
いくらなんでも全部ボクまかせなのは良くないんじゃないの?
「ひ、ひたきが面倒だなとか思ってもこれからも勉強教えて貰うもんっ」
「それはいいんだけど。だけど自分でもちゃんとテスト範囲とか絞って対策とかしていかないといつまで経っても補習だよ?」
「ううっ」
今度はひまりが目を逸らす番だった。耳が痛そうだ。
まあその場しのぎみたいな教え方したボクにも問題はあるかもしれないけどなぁ。
「1度がっつり勉強の仕方とかを教えといた方がいいかもね」
「うぐぐぐぐぐぐ」
「観念しなよ。そもそも勉強を教えて欲しいって言ったのはキミなんだから」
「むぅぅ……。……はい」
カウンター席で姿勢を崩して突っ伏し、項垂れるひまり。
「よしよし。いい子だな」
「うぎゅぎゅ」
そんな彼女の頭を撫でると、よく分からない言語で唸った。
「で? 腹が減っては戦ができぬ、だったっけ? いったいなんの話だったりするんだそれは」
「そう! それ! 今日はその話をしに来たんだよっ!」
先程のテンションは何処へやら。
話題を最初にひまりが言っていたことわざ云々に戻すと、ガバッと顔を上げて声を荒らげるひまり。
「……なるほど?」
ことわざの意味と普段のひまりを考えると、何となく言いたいことが分かった気がする。
「また防御力が上がったのか」
「ひたき、あえて直接的な意味合いを避けてるみたいだけど、それあんま意味ないからね」
「そうか……すまないね」
「今はテスト期間で部活もなくてさ」
「なるほどな」
ようは摂取したカロリーを消費する暇がないと言うことだ。
それはまあ勉強に手がつけられなくなるのも頷ける。
「ひたきは細くていいよね〜」
「ボクは体質というか、いくら食べても太らな──」
「ひたき、それ以上はダメ」
「え?」
「それ以上はダメ。禁句。いじめだから」
「そ、そうなの?」
いじめなのか。これは。確か以前モカも言っていた気がするが。なんかさっきから謝ってばかりだな。
「いや別に見た感じじゃあ太ったなんて思わないけどな」
「それは服の上だからだよ。数値はね、確実に変化してるんだよ……!」
「さ、さいで」
圧力が凄いな。
先日の美咲といい、もしかして最近の1年生の必修科目とかだったりするのか。
「ふぅん?」
しかしひまりはそう言うが、ボクには全然太ったなんて思えないんだけど。
頬や二の腕も女子高生として平均的だと思うし、お腹まわりも変わっている印象なんてない。
「…………」
それでも数値が増えているのなら、もっと別のところが増量しているのでは無いだろうか。
「…………。……おっと」
「? ひたき?」
いや、危ない危ない。
再度また此方が目を逸らす。ひまり、恐ろしい子だ。
現在カウンター席に突っ伏している彼女は……その自身が持つ、巨大な質量を誇る豊かな膨らみをひしゃげさせている。
ナニとは言わないが、男として精神衛生上非常によろしくない。
「んにゃ。なんでもないよ」
しかし紳士なボクは必要以上に女性の胸部を凝視したりしないのだ。
ただ悲しいかな。それは男のサガというか。
かの著名なニュートン先生も質量が大きい物体ほどそこに働く万有引力は大きくなって、周囲の物はその中心に引き寄せられると提唱したのであって。
だから質量が大きなものになると、引っ張られるのは仕方ないというか。
たとえそれが視線だろうと。いやぁなるほどなるほど。乳トン先生は偉大だったと。なるほどな。
「いやなるほどじゃないな。やめよう。これ以上はほんとに怒られそうだし」
「? ほんとにどうしたの?」
「ううん。なんでもないよ。あと出来ればその姿勢はやめた方がいいんじゃないかな」
「?」
ほら起きて起きて。ひまりの肘あたりをトントンと叩き、上体をあげさせようと促す。
またその際にたぽんっと。例のブツが重量感を秘めて柔らかそうに弾むもんだから、ため息混じりにまた顔を逸らしてしまう。
「やっぱり、勉強見る話は見送ってもいいか?」
「えぇー!? なんで!?」
本当、この子には気を使ってしまう。彼女としてはそんな気はさらさらないのだろうが。
「キミはちょっと無防備過ぎるからな。そういうの、気をつけた方がいいぞ」
持つべきもの特有の悩みなのだろうか。自分も周りも、気にすることがあるというのは面倒なものだ。
しかしその点、あの子は絶壁なので安心だ。
うん、やっぱつぐみだな。妹最高。
「ひ、ひたきに言われるなんて! それ人のこと言えないからねっ」
「む。そんなことは無いぞ」
「あるよ」
「ないし。なんなら、試してみるか?」
「え?」
「ボクは普段の生活から気を配ってるからね。突然襲われても余裕で回避できる自信があるわけよ」
「…………」
「だから、どこからでもかかってくるがよいわ」
「…………」
「? ひまり?」
胸を張ってそう言うと、ひまりは急に固まった。
「……言ったね? 言質、取ったからね?」
「え。なにそれ。ちょっと怖いんだけど」
しかしそれも少しの間だけで。
しばらくすると小悪魔チックににやりと笑い、恐ろしいことを言ってくる。
その様子を見て……ひまりの眼を見て、背中に冷や汗が流れた。もしかするととんでもない秘策でもあるのだろうか。
「ふふふ。自分の存在がどれだけ罪で、隙だらけなのか教えてあげる」
「なんかよくわからんけど。お手柔らかに?」
「ふっふーんそれはどうかな〜?」
ひまりは朗らかに、そして怪しく笑う。
最初の元気も覇気もなかった彼女はもういない。
腹が減っては戦ができぬ……。
その空腹で何を食べるのかは知らないが。
「ひたきぃ、覚悟しててよね?」
「おや、やっぱり見送った方がいいのでは?」
しかし確実に言えるのは、今の彼女のそれは紛うことなき捕食者の眼だということだ。やん怖い。
おい、ダイエットしろよ。
読了感謝です。
前書きで選出は完全趣味とか言ったんですけど、何かリクエスト等があればメッセ、感想等で言ってくれれば検討します。
検討は、します。(絶対書くとは言ってない)