羽沢珈琲店の客寄せパンダは今日も女の子とお喋りします。   作:ARuFa

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日間ランキング8位ですってよ奥さん。うへぇ。
これも読んでくれている皆さんのおかげです。ありがとうございます。
こらからもマイペースにちょくちょく頑張っていくので、よろしくお願い致します。

……で、そんなこと言ってるところ申し訳ないのですが、今回少し雑かもしれません。




松原花音Ⅰ

 

 

「く、クラゲを見に来ましたっ!」

「水族館へ行ってください」

 

 

 ここは喫茶店ですよ、松原さん。

 

 確かに飲食店によっては水槽などを展示していて、さらにコアなところにはクラゲ水槽なんかも置いている可能性はありそうだけれども。

 でもクラゲ水槽のある店なんて、個人的には暗い雰囲気の怪しいショットバーとかのイメージしかない。ドラマの見すぎだろうか。

 なんにせよ羽沢珈琲店は商店街にある普通の喫茶店である。残念ながらクラゲは扱ってはいないのだ。

 

 

「当店ではクラゲは扱ってませんのですが」

「わ、わかってるよぉそんなこと」

 

 

 意図が汲み取れないので少し茶化して言うと、“松原花音”さんは心外だとばかりに抗議してきた。ちなみに、初対面だ

 照れているのか頬を朱に染めてぷくぅと頬をふくらませている。なんだかお餅みたいだね。

 

 

「松原さんはクラゲが好きなんですね」

「うん。あのふわふわしてる感じが可愛いよね」

「はぁ」

「ね?」

「いや、ね? と言われても」

 

 

 同意を求められても。可愛いだろうか、あれ。

 無機物っぽいし、なにより毒があって恐ろしいイメージしかない。

 

 

「まあ解釈によっては可愛いのかな? で、どうしてクラゲ?」

「ら、蘭ちゃんがね? つぐみちゃんのお兄ちゃんはぽわぽわはしててクラゲっぽいよねって」

「だ、誰の入れ知恵かと思えば」

 

 

 あいつかよ。もうなにをやっているんだ。

 そういえばリスだとかクラゲみたいだとか、そんなことを言っていた気がする。あまり吹聴しないで欲しいんだけども。

 

 

「それでクラゲっぽいという噂のボクを見に来たってことですか」

「うん。でも1度来たかったの。千聖ちゃんからもひたきくんのおはなしをよく聞くから」

「あの人から? ……どういうふうに?」

 

 

 思わず眉根を寄せる。確かにあの人にはどう思われているのか非常に気になるところであるが。

 若干の嫌な予感を察知しつつ、怖いもの見たさでその詳細を尋ねてみた。

 

 

「すっごく可愛い男の子だよ、って」

「いや、それ男子には褒め言葉じゃないからね?」

 

 

 して予感は当たると。

 いやまぁすごく言いそうだ。

 

 

「あとちょっといじめるとすぐ赤くなるからおもしろいって」

「それは万人にとって褒め言葉じゃないよね?」

「私が持ってるワンピースがすごい似合いそうだって」

「もう絶対バカにしてるだろ」

「メイクアップさせて辱めたいって」

「それはマジで意味がわからん」

 

 

 変態ではないか。しかも極度の。

 今度あの人に会ったらタダではすまないかもしれない。

 

 

「しかもクラゲにも似てるらしいから、もうこれは行くしかないと思って」

「なんでだよ。なんでそれで来ちゃうんですか」

 

 

 その説明受けて行くしかないって。

 あなたもそう思ってるってことですかね。

 

 

「まあどうせあの人が言ってることは冗談なので。しかしそんなに似てますかね、クラゲ」

「うん、うんっ。イメージ通りだよっ」

「さいですか」

「可愛いよ?」

「それはもういいから」

 

 

 彼女は褒めてくれているのだろうが、微妙に嬉しくない。

 

 

「…………」

「? どうしました?」

「あの、いやならいいんだけどね」

「はぁ」

「頭、さわっていい?」

「……はぁ?」

 

 

 頭? 何故?

 突然のお願いに困惑する。面食らった。

 どうして頭部なのだろうか。確かにクラゲの毒は触手にあるので、頭っぽい外皮にはさわることが出来るらしいが。

 

 

「別に減るもんじゃないから、いいけど」

「えへへ、ごめんね?」

 

 

 強いて嫌だというわけではないので、肘をつき前かがみになって、頭を低い位置へ持ってくる。

 そうすると松原さんは形だけの謝罪をして立ち上がり、手を頭に添えた。

 

 

「なんかくすぐったいですね」

「が、がまんがまんだよっ?」

 

 

 さわさわさわ。

 

 

「どうです? クラゲっぽいですか?」

「うーん……わかんないや」

 

 

 なんだそれは。

 まあクラゲの人間の髪なんてつくりからそもそもの違いそうだから、当たり前ではあるが。

 松原さんは手ぐしの要領で髪を撫で透かす。すりすりさわさわ、えらく手柄がいい。

 苦笑いしながら言ってはいるが、やめる気配はないらしい。

 

 

「ちょっと髪、傷んでるね」

「まじですか。ちょっと疲労が溜まってるのかもしれません」

「そっか。…………」

「? 松原さん?」

「ねぇ」

「はい?」

「また、ここに来てもいい?」

「……?」

 

 

 どういうことだろうか。

 脳内にはてなマークを充満させていると松原さんは手を止めて、今度は両手でボクの頭を抱え込むようにして撫でてきた。

 

 

「それはもちろん、というか喫茶店ですし。営業時間内ならいつでも」

「そっか」

「どうしたんですか急に」

「千聖ちゃんがね。言ってたの」

「ま、またか……今度はなんと?」

「ひたきくんはいつも女の子をおはなしを聞いて、相談に乗ってあげてるんだよって」

「はいぃ?」

「私も感謝してるって」

「なん、だと……?」

 

 

 白鷺さんが。そんなことを。

 驚いた。おののいた。いやもはや戦慄した言っても過言ではない。

 ていうか人に感謝するとか、労うとか出来たのかあの人。ボクはてっきり既に人の心を失ってしまったとばかり。

 

 

「えらいね。ひたきくんは」

「そ、そうですかね」

「うん。えらいえらい」

「…………」

「でも、やっぱり疲れちゃうのかな?」

「えっと……」

 

 

 なんだろう、すごい恥ずかしくなってきた。

 別に頭や髪さわられることに抵抗なんてなかったけど。しかし時が経つにすれ、彼女の言葉を受けるにつれ、どんどん形容しがたい感情が込み上げてくる。

 

 

「千聖ちゃんがいつもお世話になってるらしいし、私に出来ることならやってあげたいの」

 

 

 無限の包容力というか。

 これがバブみというやつなのか。

 

 

「さっきも言ったけど、また来るから」

「…………」

「私でよければ、いつでも相談に乗るから。ね?」

「…………」

 

 

 母性がすごいんだが?

 これが花音ママですか。

 

 

「あと、私のことは花音でいいから」

「よ、よろしくお願いします」

「ふふ。敬語もいらないよ?」

「そっか……」

 

 

 もう仕事しないでいいかな。

 永遠この腕の中で暮らしたくなってきた。

 

 

「でも千聖ちゃんが言ってたの、ちょっとわかるなぁ」

「それは是非わかるな。やめろ」

「ワンピースだっけ」

「おい、やめろやめろ」

 

 

 瞬間……。彼女の抱え撫でる力が強くなり、陶酔したような声に変わる。

 同時に自分の危機回避警報がけたたましいサイレン音をあげた。

 いや、やっぱだめだわ。一瞬なにか危険な香りがした気がする。

 

 

「さすがというか、伊達に白鷺さんのお友達ではないということか……」

 

 

 無機物そうでも、見た目が可愛くても。

 見えないところに、毒を持っているのは何もクラゲだけではないらしい。

 

 

 

 





読了感謝です。やっぱり少し雑ですかね。申し訳ない。
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