羽沢珈琲店の客寄せパンダは今日も女の子とお喋りします。 作:ARuFa
少し日が空いてしまいました。お久しぶりです。そのせいで少し書き方を忘れてしまいましたね()
今回は羽沢つぐみちゃんなのですが。ぷりぷり怒らせたかったので、ちょっとキャラ崩壊してるかもです。普段怒らないキャラを怒らせるのは難しいですね。
「お兄ちゃん、どういうことか説明して」
「2回目。それ2回目だから」
いやそれさっきやったよ。天丼は勘弁して欲しい。
数十分ぶりに、ボクは拘束から解放された。
あの中で1番常識人であろう巴に頼み縛りを解いてもらい、取り敢えず床にあぐらを組んで凝り固まった身体を伸ばした。
いろいろな視線の中に晒されている中で現実逃避気味にのんきにストレッチをしていると、急に手を引かれルームの外に連れ出された。
「……同じギャグを2度以上繰り返すことを天丼というのは、天丼にはえび天が2本入っているからなんだって」
「何の話してるの」
え、天丼の説明じゃないんですか? 説明してって言うから説明したのに。
どうやらその正体は妹のつぐみのようで。人気のない廊下の1番奥までボクの手を引いてずんずん歩く。
「…………」
「だ、黙ってないで。説明してよっ」
「いや……」
そして壁際に立たせたかと思うとその手を自分の首両側付近に伸ばし、壁につける。
まさかの壁ドンである。しかも両手。
結構勢い凄かった。ドンとかじゃないよ。ばこんっていったもん。壁バコン。もしかして凹んじゃったんじゃない?
「やりづらいよ。これ」
「こうでもしないとお兄ちゃん逃げるでしょ」
ボクは身長があまり高い方でないのでこういう体勢だとつぐみとの顔が近くなる。
あまりにも圧がすごいので彼女から目を逸らしてはいるが、どんな顔をしているかは何となく分かる。ジト目かつ口を引き結んで、むむむむむ……! と困ったような怒ってるような顔で睨んでるのだろう。
「逃げないよ」
「うそ」
「うそじゃないよ」
「うそだもん」
取り敢えず興奮気味の妹を宥めようとするけれど、残念ながらあまり意味は無い。
心做しかどんどん腕の間隔が狭くなって来る気がする。せっかくさっき縛り状態から解放されたのに。これではあまり解放感がない。
「なんでお兄ちゃんっていつもそうなの? どうしていつも女の子と何かしらのトラブルになるの? ねぇなんで?」
「つぐみ。そんなこと言い方するといかにもボクの女運が悪いみたいじゃない?」
「……怒るよ?」
「はぇー」
じろり。と、なんかすげー睨まれた。どうやらお気に召さなかったらしい。
いや、そんなにトラブってるだろうか。
「お兄ちゃんはね。うちの学校でも話題になってるんだよ」
「何それ初耳なんだけども。なんか怖いね」
どうしたらボクが女子校で話題になるのだろうか。
「つぐみちゃんのお兄さん優しいよねーって。みんなに言われるの」
「へぇ? 確かに最近羽丘の人が多いような」
「そ。いつも来てくれてるんだって」
「そうなの? なんだ、固定客が増えるのはいい事じゃないか」
なるほど。話題になっているとは、そういうことか。
これは普段の自分の紳士的な接客態度のなせる技といえるのではなかろうか。
「女子高生に人気の店ってことで。いい宣伝になるね」
「ほんと、お店としてはいい事だよねっ。……どこかの誰かさんがデレデレしなきゃね……!」
「ぐへっ」
ようやく成果が出てきたなぁと。えへへと照れ臭く笑っていると、襟元をぐいっと握られた。そしてぐわんぐわんと揺らされる。
「やめてやめて。締まってる締まってる」
「なーんで喫茶店の接客でお客さんの手を握る必要があるのかなぁ!?」
「あれはボクから握ってる訳じゃなくて」
「お兄ちゃんが無防備なのが悪いのーっ!」
そんなこと言われても……。
だって今から接客するお客さんを警戒するのってどうなのよ。
「ベタベタベタベタ触らせて! そういうお店じゃないんだから! 喫茶店なのに!」
「いや確かに酩酊してるんじゃないかってくらいに絡んでくるお客さんいるけども」
「私のお兄ちゃんなのに!」
「それはあまり関係ないような……」
「わ、私の……お兄ちゃんなのにぃ……!」
「いや悪かったって。泣かないでよ」
「泣いてないよぉ! 泣いてないもんっ!」
いや思いっきり涙目ですが。
いかんつぐみが激高しておる。珍しい。
普段はすごく大人しいんだけど。今はなんだか溜め込んだものを一気に吐き出してるような、そんな雰囲気だ。
「リサさんのことだって。何があったか知らないけどそんなホイホイ言うこと聞いちゃダメなんだよっ」
「そうなのか」
「なのに私の言うことは全然聞いてくれないし!」
「えっと? それはごめん?」
「お兄ちゃん気づいたら女の子の尻に敷かれてるからいじめられる方が好きなのかなーって思ってちょっと無理してたのに!」
「つぐみそんなことしてたの?」
びっくりだ。思わず真顔で聞き返す。
どうりでここ最近様子がおかしいと思ってたけど、それ? それなの? だとしたら見当違いも甚だしいよ?
あと気づいたら女の子の尻に敷かれてるって。なにそのパワーワード。敷かれてねぇわよ。
「まずどうしてそういう経緯になったのか説明してくれる?」
「ほら、ちょっと前に皆でドッジボールしたことあったでしょ?」
「ドッジボール?」
それは覚えてるけど。
しかしそれとこれになんの関係が……。
「お兄ちゃんずっと避けてたから」
「そりゃドッジボールは避けるでしょ」
「全然反撃しないし」
「だって男が投げるとバランス悪いじゃない?」
「まあ……あまりにも避け続けるからさ」
「うん?」
「女の子に一方的に責められるのが好きなのかなーと……」
「ちょっ、誤解が酷過ぎる」
「正直Mなのかなーって」
「いやもうそれは状況が悪いじゃん」
ドッジボールなんだから避けるのは当然なんだよ。自分が投げなかったのも外野に回した方が皆楽しめると思ってたからなのに……。
それがまさか被虐趣味体質を持っていると勘違いされようとは。こんなやるせないことがあるか。
「どうりでここ1年様子がおかしいと思ったら」
「うう……」
「って、ちょっと待って。もしかしてあの子ら4人とも皆そう思ってるってことじゃないよね」
「…………」
「つぐみちゃん?」
今度は妹の方が目を逸らす結果となった。
いやなにそのガチ反応。それ絶対蘭たちにも誤解されたままじゃん。マジかよ。
「まあいいや後で訂正しとけば。それよりつぐみ、もうあんなよく分かんないキャラ付けはやめるように。いいね?」
「…………」
「つぐみちゃん?」
「ぜ、善処する! 善処!」
「善処? まあいっか。よし、えらいえらい」
「でもそのかわり、お兄ちゃんも約束」
「んー? 約束?」
「……もう、女の子のお客さんにデレデレしちゃイヤだよ?」
むーっと。頬を膨らませてそんなことをいう妹。さらにずいっと身を近づけてきた。
いやデレてないってば。営業スマイルはしてるけども。
「うーん……まぁ、分かった。気をつける」
正直あまり自覚はないが。しかしボクは大きく頷いた。
羽沢珈琲店のホール番は、妹といえども女の子に恥をかかせる男ではないのだ。
「…………」
「ん。どうしたの?」
「いや全然分かってない気がするなーって」
「そんなことないぞ」
「…………」
「ないぞ」
だけど、それでもまだ悩ましげに唸るつぐみ。
え。もしかして信用ないのかしら。
「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだよ? いい?」
「勿論だとも。まかせろ」
「ならいいけど。でもあんまり聞き分けがないようなら、分かるよね?」
「…………」
あの、つぐみちゃん? もうそのキャラ付けはいいんだって言ったよね? ほんとに分かってるんだよね? 善処してくれるんだよね?
彼女はにこっと微笑むが、しかし謎のドス黒いオーラが彼女の背後に見える。これ逆らったらあかんヤツなのでは。
「じゃあ今日は、久しぶりに私がお背中流してあげるっ」
「え゛?」
「あははっ、覚悟しててね」
「……なーぜ背中を流されるのに覚悟が必要なのか」
もしかして紙やすりとか使おうとしてる? やめて角質とか死んじゃうわよ。
それにここまで成長しきった兄妹が背中流すて。仲睦まじいのは良い事かもしれないが、逆にお父さんとお母さんにある種の心配をかけてしまうのではなかろうか。
だけど今の彼女にはうんうんと頷くしかなくて。そろそろ兄離れをしてもらいたいはずの年齢の妹に、また強く言うことが出来なかった。
確かにこれだと尻に敷かれてると言っても過言ではない気がする。
眩しい笑顔を見せる自分の妹から目逸らしながら。ちょっと知りたくなかった現実からも目を背けた。
「そういえば結局リサのこと説明してないけど……まあもういいか」
少し、自分の性格を見つめ直そうと思った。
「そういえばつぐみ、お弁当は?」
「お弁当? 知らないけど?」
「……なぬ?」
読了感謝です。前も言いましたがこの子書いて欲しい〜とかあれば、メッセでも感想でも何処かで言ってくれれば検討します。
なので今は前にリクエストを頂いたモルフォニカ達を勉強中です。