ありふれた職業で世界最強 Bland new world 作:全て儚き名も無き遠い理想郷
サブタイトルはBLEACH風に英語を使ってみました。
オサレな感じは無理ですが雰囲気だけでも…。
感想お待ちしております。
それではどうぞ。
※サブタイトルの意味は「日常」
月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。
それは彼、八重樫遊牙にとっても例外ではなかった。但し、遊牙の場合は徹夜でアニメを見ていたことによる強烈な眠気と戦いながら授業を受けるのが面倒というだけだなのだが。
遊牙はいつものように始業のチャイムが鳴るギリギリに登校し、徹夜による眠気から来る欠伸をしながら教室の扉を開ける。
その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちや睨みといったのを頂戴し、女子生徒からも友好的な表情はもらえず中にはあからさまに侮蔑の感情を含んだ表情を向けられる。
しかし、そんな教室内の状況を無視するかのように遊牙は呑気に背伸びをしながら大きな欠伸をすると眠い目を擦りながら自分の席へと向かう。
「ギリギリの出勤だね、遊牙」
「おはようハジメ。間に合ってるから大丈夫だろ?」
南雲ハジメ。遊牙の高校からの親友である。
「よぉ、キモオタ共!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ〜。エロゲで徹夜とかマジキモいじゃん」
二人に絡んで来たのは檜山大介を筆頭とする斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の四人組でこの四人は頻繁に絡んでくる。「よぉ、キモオタ共…」と言ったのは檜山であり、彼がそう言うと残りの三人の誰かが便乗してそれを聞いていた男子生徒達がクスクスと笑う、というのが定番の流れとなっている。
確かに遊牙とハジメはオタクだが、キモオタと呼ばれるほど身嗜みや言動が見苦しいという訳ではない。単に小説や漫画、ゲームやアニメが好きなだけである。世間一般ではオタクに対する風当たりは多少は強い傾向にあるが、ここまで敵対心を持たれることはない。
その理由は主に二つあり、その一つは彼女の存在である。
「南雲くん、おはよう!遊牙くんは今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
白崎香織。学校で二大女神と言われて絶大な人気を誇る美少女。
このクラス、この学校でもハジメと遊牙にフレンドリーに接してくれる数少ない例外であるが、奇しくもこの事態の原因の一つである。
香織はハジメに何故かよく構うのだ。徹夜のせいで居眠りの多いハジメは不真面目な生徒と思われており、生来の面倒見の良い性格から香織が気に掛けていると思われている。生憎にもハジメはイケメンではなく平凡な容姿であり、態度を改善する様子もないために男子生徒からは嫉妬を女子生徒からは不快感を買っているのだった。
しかし、問題はもう一つの理由である。
「あ、ああ、おはよう白崎さん」
「おはよう白崎。ハジメから勧められてた本が面白くってさ」
ハジメと遊牙が香織に挨拶を返すと強烈な殺気にも似た視線が集中する。ハジメは向けられた視線に頬を引き攣らせるが香織は嬉しそうな表情を浮かべ、遊牙は向けられている視線にまるで気づいていないかのようにケロリとしている。
ハジメがどうにかして会話を切り上げるタイミングを計っていると三人の男女が近寄って来た。
「南雲君。おはよう、毎日大変ね」
「香織、また彼らの世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」
「全くだぜ、そんなやる気のない奴らにゃあ何を言っても無駄だと思うけどなぁ」
三人の中で唯一挨拶をした女子生徒が八重樫雫。香織の親友で遊牙の双子の姉だ。ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。実家は八重樫流という剣道道場を営んでおり、彼女自身も大会で負けなしという猛者である。
若干イタいセリフを言ったのは天之河光輝。サラサラの茶髪が特徴の誰にでも優しく、正義感も強い容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能と絵に描いたような完璧超人。小学生の頃から八重樫道場に通う門下生で雫と同じく全国クラスの実力を持つ。雫と香織とは幼馴染である。
投げやり気味な発言をしたのは坂上龍太郎。光輝の親友で短く刈り上げた髪に大柄な体格をした脳筋タイプの人物である。熱血とか根性とかが好きなタイプであるためハジメや遊牙のような学校に来ても寝ているような人間は嫌いな部類との事。
「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」
苦笑いしながら挨拶を返すハジメだったが、遊牙は首を傾げながらハジメに言った。
「世話?何言ってんだ、白崎が勝手にこっち来てるだけだ」
「ちょっ!?遊牙さん!?」
さん付けで思わずツッコミを入れてしまうハジメ。それはハジメも内心思っていたことではあったが口には出さなかった。口にしてしまえば面倒な事になるのは火を見るよりも明らかだからだ。事なかれ主義なハジメにとってそれは避けたい事だった。
ハジメの本音を代弁して身代わりになる訳でもなく、本心から言ってるのだからタチが悪い。
これこそがもう一つの理由である。
遊牙は学校で問題行動を率先して起こすような人物ではない。ギリギリに登校するけどルールはきちんと守るし、居眠りの常習犯ではあるものの課題はきちんとこなしている。しかし、それらが気にならないほどの自由人なのだ。
遅刻ギリギリの件に関しては香織から早く来るように言われているのにそうしないのはハジメのように直す気がないのではなく、「間に合ってるんだから別にいいだろ」的な考えなのでそもそも直す必要がないと思っているからであり、クラスで自分がどう思われているのかも全く気にしていないので鋭い視線にも気付かないのだ。ハジメとしてはそんな親友の自由さに苦笑いするしかないのだが、そんな彼がいるからこそ安心して学校に行けていると思っている。
「…南雲、それがわかっているなら直すべきじゃないか?何時までも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりじゃいられないんだから」
光輝が遊牙の言葉を無視してハジメに忠告する。光輝の目にもやはり香織の厚意を無下にする不真面目な生徒として写っているようで、ハジメとしては遊牙が言ったように勝手に構われている認識であり、甘えたことなんてないのだが光輝の思い込みの激しい性格を知っているので反論しても無駄だと判断して何も言わずにいた。
「話聞いてたか?白崎が勝手に構ってくるんだって言ってる」
しかし、遊牙は光輝に真っ向から言い返す。
このまま笑って済まそうとハジメは思っていたのだが、遊牙はそうではなかった。ハジメとしては趣味中心の将来設計はバッチリであり、ゲームクリエイターである父親の会社や少女漫画家である母親の作業場でバイトをしていて即戦力の扱いを受けているレベルだ。
「香織が優しいだけだ。甘えていることを自覚したらどうなんだ」
「だーかーらー、勝手に構ってくるんだって。俺たちに構うのをやめて欲しかったら白崎に直接言えよ」
「…ああ、ほんと、香織は優しいよな」
はぁ、とため息を吐きながら何故だか香織が優しいという結果に着地した光輝。完璧超人なのだが、自分の正しさを疑わなさ過ぎる欠点が彼にはあった。そのことを知るハジメは「こりゃダメだ」と目に手を当てる。
「ハジメ、こいつ…」
「指差したらまずいよ。というより、なんで僕に振るのさ…」
「ところで土曜に出た新刊読んだか?」
「話大きく変わったね…」
「そういや、次のモン○トのコラボなんだと思う?」
「変わりすぎだよ!!聞かれて答え返してないのに話題変わるってどういうことなのさ!!」
相変わらずの自由な親友にキャラでもないのに大声でツッコミを入れてしまう。
「…ごめんなさいね?二人とも悪気はないのだけど…」
「まぁ、仕方ないよ」
この場を最も把握している雫がハジメにこっそり謝罪する。
ハジメへの謝罪を終えた雫は遊牙と話を始めた。
「遊牙、週末にお母さん帰ってくるから家に帰ってきなさい」
「そうか」
「おじいちゃんにもついでに謝っていったら?」
「ジジイが言い出したことだ。向こうから頭下げてくるまでは口聞かねえし、仮に死んでも葬式に出てやらないからな」
「…そう。また連絡するわね」
「ああ、わかった」
雫と遊牙の母親は刑事で、ここらへんでは少しばかり有名な「あぶない刑事二人組」の片割れである。遊牙は現在一人暮らしをしており、ハジメの両親の職場で一緒にバイトをしておりハジメと同じく即戦力の扱いを受けている。ハジメも詳しくは知らないが何やら小学生六年生の頃に実家に住む祖父と揉めて以来、一度も口を聞いていないらしい。
そうこうしているうちに始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきて朝の連絡事項を伝えると授業が開始された。
昼休みになると居眠り常習犯のハジメは感覚で起きるタイミングを知っているので体を起こして十秒でチャージできる定番のお昼を取り出す。真後ろの席に視線を向ければ親友は熟睡しており、自分のベッドで浮かべるような幸せそうな表情をしている。
「起きて、遊牙」
「ん〜、萌音か…?」
「ええ。お昼にしましょう?」
「ん…」
遊牙を起こしたのは彼の隣の席の住人、白雪萌音。雪のような白色の髪を腰まで伸ばした香織に負けないレベルの美少女である。香織をフレンドリーな陽の美少女とするならば、萌音はミステリアスな陰の美少女だとハジメは認識していた。
常に感情を見せないクールビューティーで香織に負けず劣らずの人気を誇るが、誰に対しても無表情で冷淡な対応を取るために表立って話しかけたりする者は少ない。
そんな彼女であるがどういうわけか遊牙にだけは普段は見せない柔らかな表情を見せるのだ。香織や光輝といった人物にですら冷淡な対応をするのにである。
「ほら、お弁当」
「ありがとう」
萌音が二人分の弁当箱を取り出して一つを遊牙に渡す。
昼休みになると萌音は遊牙とハジメの二人と昼食を取る。ハジメは一緒に食べるというよりも萌音のサポートをするために同席していると言った方が正しいのだが、クラスの男子に絡まれないだけでも儲け物なので別に気にしていない。
「どう?おいしい?」
「もちろんだ」
「ふふ、それはよかった」
「美味いけど、毎日は大変だろ?自分で作れるから大丈夫だぞ」
「いいのよ。一人分作るより二人分作った方が楽だし、私が好きでやってるから気にしなくていいの」
「そうか?」
微笑みながら言う萌音に納得した様子の遊牙に対して「そんなわけないだろ」とハジメは内心でツッコミを入れる。
ラノベやアニメのヒロインならそうするんだろうが生憎と現実はそこまで優しくない。ハジメは知っている、もう片方の弁当箱つまりは萌音が手にしている方にはサンドイッチしか入っていないことに。
つまりは遊牙にだけしっかりした弁当を手渡し、少食の自分は軽めのもので済ませるというある意味理に適ったやり方である。
「あれ、南雲くんのお昼ってそれだけなの?ダメだよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!」
「しまった」と気付いた時には遅かった。
いつもならこの時間に構ってこない香織が今日は何故か構いに来たのだ。
「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織のおいしい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
爽やかに笑いながらキザなセリフを吐きながら香織を連れ戻しに来た光輝。ハジメとしてはこのまま連れていってくれるとありがたかったのだが、ハジメの横で昼食を食べている萌音に対しても光輝は口を開いた。
「萌音。君もこっちで一緒に食べよう。遊牙に弁当を作ってくるように言われたのか?ならその弁当は僕が取り返してあげるよ。君のおいしい手料理を勝手に食べるなんて許せないからね」
「この味付けはどうかしら?」
「美味いぞ。玉子焼きの味付けはかなり好みだ」
「そう。嬉しいわ」
光輝のキザなセリフをガン無視して会話を続ける萌音と遊牙の二人にイケメンスマイルを浮かべたまま固まる光輝。思わず雫が「ブフッ」と吹き出し、香織は苦笑を浮かべる。
カオスな状況に深いため息を吐きながらハジメは内心で愚痴る。
(もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな?四人組はそういう何かに巻き込まれる雰囲気ありありだし、遊牙はなんかもう自由だからいけると思うんだよ。誰かしてくれませんか〜)
冗談のつもりで内心そう言ったハジメだったが、次に入ってきた光景に凍りつく。
ハジメの目の前に立つ光輝の足元に創作でしか見たことのない魔法陣のような物が広がっていた。光輝を中心として広がるそれはやがて教室全体を包み、輝きを増していく。
魔法陣から放たれる光が爆発したように視界を包む。
教室の窓から外へ漏れ出していた光が止むと教室内に人はいなくなっており、残されていたのはペットボトルや弁当箱といった物だけであった。
次回、異世界に召喚されて