違うんです!ㅤちょっと幸せに(以下略 作:紫芋
〇月×日
今日も朝一で凍結された計画関連の申請書を出したが、叔父は今度も書類にサインをしなかった。
未だ後発の第二世代機止まりであり、世界的なシェアを獲得しているとはいえ、本来の路線で考えると、経営の苦しいデュノア社にとって、第三世代機計画は生命線なはずだ。
それは他でもない社長、つまり叔父も重々承知なはず。だというのに、なぜ書類にサインしないんだ。こればかりは理解に苦しむぞ。
このまま仮登録されている連合のイグニッション・プランから、デュノア社の名前が外されたら。それこそお先真っ暗だ。シャルロットに残す物も残せなくなる。
例によって俺を含めた週末のディナーの席で、家族団欒の空気を壊さないようそれとなく話題に触れてもみたのだが、どれも上手くはぐらかされてしまった。
明日もダメ元で書類を提出するつもりだが、はっきり言って望みは薄い。
せめてアーク・スフィアを完成させ、政府の耳に甘く都合のいい報告を入れることさえできれば。
そうすれば期限の延長とまではいかないまでも、恐らく予算のカットは取っ払われるはずだ。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
〇月×日
今日も極めて個人的な科学の実験をしながら、片手間に仕事を片付けた。
つい最近公表された、リヴァイヴの後付装備のミニチュアを組み立てて、適切な批評をする。以上。
以前から一般向けに販売している自社製品のプラモシリーズは、今や実機以上にファンからの人気を獲得している。特に1/24スケールのシリーズが売れ筋だ。
まあこれは子供の頃に叔父がよく模型をプレゼントしてくれた影響だな。試しに商品展開してみたら飛ぶように売れたわけだ。
ちなみにこれはデュノア社公式のキットであり、一般に公開できる範囲の詳細なスペックを取説に載せた点も、大きなお友達から概ね高い評価と支持を得られているらしい。
休暇明けからここ数ヵ月、ほぼ毎日こんな感じの仕事ばかりだ。もちろんこれはこれでめちゃ楽しいが……相変わらず望みのゴーサインは出ない。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
〇月×日
社長、もとい叔父から呼び出しを受けた。
この際YESでもNOでもどちらでもいいから、せめて申請書の件であってくれと願ったものの……まあ、違った。普通に別の仕事の話だった。
一通りの話を聞いて、それ俺じゃなくてもよくね? とか思ったのは内緒だ。
いくら俺でも、仕事に関しては身内贔屓なんかするつもりはないし、逆に手を抜いたりもしない。
理由が一番暇そうにしてたからってのは、ひょっとしてバカにされてるのか。暇そうに見えて、俺もけっこー忙しいんだが。
とはいえ仕事は仕事。明日、早速作業に取り掛かろう。
〇月×日
作業は昼前までに十割進んだ。やるな、俺。
といってもまあ、仕事の内容が内容だもんな。
うちが保有しているテスト用のリヴァイヴ一機を、社の正式なテストパイロットとして登録されたシャルロットの専用機に仕立てろ、とかなんとか。
仕事としてはそこまで難しくはない。シャルロットをテスト機に乗せた後で初期化して、最適化と一次移行を完了させて、最後にお好みの装備を積んでやればいいだけだ。
要望通りの塗装とささやかなノーズアートを加えてやっても、さほど骨折りにはならなかった。……言っとくがこんなの特別扱いにならないからな。
ちゃちゃっと報告書も提出したし、明日には正式に専用機として登録され、然るべき人物からあの子の手に待機状態のISが渡されるだろう。
〇月×日
専用機の名前が社内で公開された。
ラファール・リヴァイヴをデュノア社のテスト機として調整したリヴァイヴ・カスタムを専用機としてカスタムした機体なので、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ、とまあなんとも安直な名前に……。
まあ、よくよく考えてみれば原作でもそんな感じの名前だった気もするしお話ブレイクにはなってない……よな。うん。
入社して間もない頃、調子に乗ってテストタイプだか試験用だかなんとか言って、リヴァイヴにアホみたいな拡張領域を追加した結果がまさかこんな形で影響してくるとは……思わなんだ。
〇月×日
今日はシャルロットの慣らし運転に一日付き合った。
問題があればその都度微調整するつもりだったが、シャルロット曰く「完璧な仕事。最高!」とのこと。流石俺。
ただまあ、妙にハイテンションなので、そこだけが心配だ。ISには絶対防御があるので、怪我をすることはまずないだろうが……。
それはともかくとして、個人的な見解を書かせてもらうなら。身内贔屓を抜きにしてもあの子は素晴らしいIS操縦者になるだろうな。間違いない。
ところで、叔父からまた何か話があるらしい。何だろうか。
〇月×日
やったぞ!
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
〇月×日
暫く間が空いたが、とりあえず元気と最初に書いておこう。
次に近況。
叔父がアーク・スフィアの研究に関する諸々の書類にサインをしてくれたのがつい二週間ほど前。第三世代機計画については他の連中に持っていかれたが、まあその辺の悔しさは腹ん中に飲み込んでおくとする。
ここ数日は泊まりがけで実験漬けだった。シャルロットに怒られたのはつい昨日のこと。自宅まで無理やり引き摺るように連れて帰らされ、挙句今日は部屋に閉じ込められているので、こうしてお昼から日記を書いている。
ともかく、晴れてちゃんとした施設でアーク・スフィアの研究を再開させることが出来たので、まずそれをここでも祝っておこう。おめでとう、やったね。
まあちょっとした科学の実験は個人的に続けていたものの、やはりホームセンターで用意出来る物で代用するんじゃ限界があるからな。
昨日までそりゃもう楽しかったし、新たな発見に興奮して、研究室に缶詰で徹夜続きだろうが構わず充実もしていた。それは間違いなく、今でも迷いなくそう言いきれる。
未来へ繋がる道が開かれたなら、一心不乱に齧り付くしかない……とはいえ、シャルロットに手を引かれて多少は正気に戻ったのか、さすがにエキサイトし過ぎたと思う自分もいるわけで。
なんだかな。こうして楽しい研究を中断させられているのに、わりかし冷静なんだ。はてさて。
今しがた、シャルロットと少しだけ話をしてきた。
あんな悲しみに沈んだような目で見られると、こちらとしても良心の呵責ってやつを感じずにはいられない。俺が家に帰らないこともあるって、君がうちに住む前に散々言ったよな、とか、そんな情けない言葉が出てきそうになるし。
まあ、ぶっちゃけ一人暮らしだった頃のノリで没頭してたのは認める。はっきり言ってシャルロットの存在も薄れてたかもしれない。
これが子供を育てる責任か。正直、生半可な気持ちだったのかもな。覚悟も大してなかったのかもしれん。
反省、しないといかんよな。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
〇月×日
悩みがひとつ解消された。いやはや、悟りを開いた気分だ。
俺が長らく抱えていた難題。満足のいくまで仕事を進め、かつなるべく早く自宅に帰り仕事を家に持ち込まない為にはどうすればいいのか、その答えが出た。
簡単だ、作業効率を上げればいい。なぜこんな単純なことに俺は気付けなかったんだ。
お陰で今日は定時に帰宅。シャルロットと夕飯を食べることができたし、家族の時間もちゃんと確保できた。
あの子は驚いているようだったが、明日も同じくらいの時間に帰ると言ったら飛び上がって喜んでいた。
ああも喜ばれると、俺も嬉しい。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
〇月×日
体調を崩した。我ながら情けない。
シャルロットが看病をしてくれたようだ。
〇月×日
シャルロットのお陰で、かなり調子が戻ってきた。
まだ本調子とは言えないが、もうひと眠りすれば多分、明日には全快していると思う。
元気になったらあの子に何かしてあげよう。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
〇月×日
シャルロットを我が家に迎え入れてほぼ一年。
季節は春が過ぎ、夏に差し掛かろうとしている。
以前から叔父たちとも話を進めていたが、やはりシャルロットをちゃんとした学校に通わせよう、とそういう方針に決まりそうだ。
今はここ一年前後の特殊なこと情を加味し、俺が家庭教師の真似ことをすることで学校に通わずともよしとしているものの、この状況はお世辞にも健全とは言えない。
このままずっと、デュノア社のテストパイロットとして働き続けるという本人の意向も大いに問題だ。
子供は子供らしく、学校で学び、遊び、成長していくべき……というのはちと大人の身勝手な願いかもしれないが。この件については叔父夫妻も賛成してくれたので、ひとまず決定は揺るがないだろう。
予定している進路はもちろんIS学園。あの子には素敵な出会いと、まだ見ぬ友人たちが待っているはずだ。
ひとまず、シャルロットには晩御飯の席で進学についての話はしておいた。特にIS学園のくだりで酷く戸惑っている様子だったが、一晩考えればきっと前向きな返事が浮かんでくると俺は願いたい。
このまま原作行っちゃう?
-
はい
-
いいえ
-
待て、夜這いについてkwsk