違うんです!ㅤちょっと幸せに(以下略 作:紫芋
ㅤ僕はシャルロット。シャルロット・デュノア。
ㅤアルベール・デュノアの一人娘で、あのデュノア社の専属テストパイロットなんだ。よろしくね。
ㅤ突然なんだけど、僕の従兄さんの話を聞いてくれるかな。
ㅤエミール・ロワ、二十四歳独身。独身!ㅤここ大事だからね。
ㅤ血液型はA型で、身長は179センチ。僕より25センチも大っきい。
ㅤ体重は65キロくらいかな。服を着ると痩せて見えるけど、実は結構アるんだよね……くふふ。
ㅤスリーサイズは上から90、70、88くらい。なんでわかるのかって、それは聞かない方がいいと思うな。……すごくえっちでした。
ㅤ六月八日生まれの双子座。占い系はあまり信じないけど、いい結果が出たらちょっとだけ上機嫌になる。
ㅤ利き手は左右両方。元は左利きだったみたいで、咄嗟に出てくるのは左。握力も左の方が強いみたいだよ。
ㅤ視力は……どうなんだろ。コンタクトレンズをしてるところを以前見たことがあるから、いい方ではないのかな。でも、普通のメガネは置いてないんだよね。
ㅤ夜どんなに遅くに寝ても、朝の寝起きはいい方。決まった時間にすっと起きてる。逆に自分の中でこうと決めてなければ、いくらでも寝てられるみたい。
ㅤ寝付きも早くて、眠りも深い。よっぽどのことがなければ起きないんだ。……ちょっと前にそのよっぽどのことがあったわけだけど。
ㅤ普段から静電気に悩まされてて、特に冬の乾燥する日は何もしたくなくなるくらい酷いんだって。僕もエミールにハグハグ出来なくなるから嫌いかな。
ㅤ一人称を使い分けてて、休日だったり嫌な人相手だったり、いらいらしてる時は俺で、それ以外のかしこまった場だと大抵私。リラックスしてる時も俺なんだけど、そこは上手く見分けなくっちゃね。
ㅤ基本的に身なりはきちんとしてる反面、部屋着と外行き用の服装の落差が激しい。一人の時はとにかく楽な格好をしてたいんだって。
ㅤ僕はゆるゆるな部屋着の方が好き。首元が無防備だし、たまにお腹が見えたりするから。腹筋とおへそがえちえちなのです。
ㅤ外着は大抵下にハイネックのインナーを着て、首元の白っぽく変色した肌を隠してる。何があったのかは教えてくれないけど、お父さんは火傷の痕だって言ってた。
ㅤ髪は僕よりも濃いブロンド。ちょっとゴワゴワしてるけど、触ると気持ちがいい。あと、いい匂いがする。
ㅤ瞳はダークグリーン寄りのヘーゼル……だけど、いつも大きめなサングラス掛けてるからあんまり見れない。その分チラッと見えるのがせくしーなんだよね。
ㅤ好みの異性のタイプは、同性のお友達っぽい感覚で接することが出来る子。きっと身長154センチで7つから8つくらい歳の差がある親戚の女の子かな。
ㅤ食の好みは何でも美味しいって言うから特になくて、強いて言うなら日本食が好きなのかも。お酒を飲んでるとこは見たことないかな。
ㅤ甘いの辛いのだと、辛いものも好きみたいだけど、甘いもの──特に間食として飴を舐めてるところをよく見るよ。お気に入りのフレーバーはプリンなんだって、可愛いよね。
ㅤ極力噛まないようにしてるけど、イライラしてたりすると、ついガリッとやっちゃうから気を付けないとって、一人でこっそり反省してることもあったっけ。
ㅤ楽しいこと、派手だったりスリリングなことが好き。どっちかって言うとアウトドア派だけど、お手軽に楽しめるから科学の実験の方が好きなんだって。
ㅤ趣味はさっきも言った通りだけど、実は息抜きに絵を描いたりすることもあるみたい。義父さんの影響かな。すっごく有名な画家さんだもんね。
ㅤあ、それとね。実は音痴なんだって。お父さんが教えてくれたんだけど、自分が楽器演奏は出来るのに音痴だからって、リヴァイヴに標準搭載しているお喋りAIに無駄に多彩な機能を盛り込んでおいて、カラオケと歌唱機能だけオミットしたらしいよ。
ㅤおしごとはデュノア社の主任技術研究員。一応さらに上の上司はいるけど、管理職じゃないってだけで、ひとつの実働グループの事実上のリーダーみたいな感じ。
ㅤ公私を上手く切り替えられて、嫌だったり楽しくないことでも仕事なら割り切ってやってしまう。本当に嫌ならその限りじゃないみたいだけど、その辺はお父さんが上手により分けておいてくれてるみたい。
ㅤデュノア社のヒット商品のいくつかは、エミールが発案した物なんだって。普段は楽しんでおしごとしてるみたいだよ。
ㅤ個人的な発明とか、商品にしなかった物もいくつかあるみたいで、そのひとつがエミールの家にいる家事手伝い見習いロボのポチ。ホームアシスタントロボットの試作品なんだって。
ㅤ研修中の札が貼られてる底の潰れたボールみたいなのが本体で、独自ネットを介して家にある電化製品全てに繋がってるみたいなんだけど……控えめに言ってポンコツかも。
ㅤそれでね、ポチは意外とお喋りなんだ。よくエミールと話してるところを見かけるよ。
ㅤこの間も確か──、
『ポチ、最近日本でISに関する変わった話を聞いてないか?』
(変わった話ですか?ㅤそういえば、先日IS学園の入学試験会場で、類稀な適性結果が叩き出されたそうですよ。学生かつ素人でありながら、“ヴァルキリー”レベルの測定値だったそうです。……もちろん、大会記録保持者ではなかったので、Sランクには認定されなかったようですが。ちなみにその生徒は、自身を男性であると主張していたそうです)
『聞きたいのはそういう話じゃないんだが……。まあいい』
(ご期待に添えられず申し訳ありません。日本の倉持技術研究所が、新たな専用機の開発に着手したという話の方がお好みでしたか?)
『倉持……ああ、あの変人集団か。個人的にあの変人が何を作ってるのか興味はあるが……。他にないならいいんだ』
(お言葉ですが、貴方も十分変人だと思います)
『放っておいてくれ』
ㅤみたいな話を二人でしてた。ええっと、先週の日曜日だったかもしれない。
ㅤそれがね、ちょっと前まではおしごとが忙しくて休みがほとんどない感じだったんだけど、最近は週末が必ず休みになってるんだ。
ㅤこのところ、お父さんとよく話をしてるから、その関係かな。どうだろう。
ㅤ土曜日は僕と、両親と、それからエミールの四人で晩御飯。これは毎週そう。
ㅤ翌日、日曜の予定はその日によるかな。でも大抵は僕をどこかお出かけに連れてってくれるよ。デートだね。
ㅤ僕は今年の春に、今住んでる家を出て日本に行く。全寮制のIS学園に入学するんだ。
ㅤだから寂しくならないように、エミールが時間を多めに作ってくれてるのかもしれない。
ㅤ僕の為にって、そういう風に自惚れてもいいのかな。
「シャールロット〜、昼食の用意が出来たぞ〜」
「はーい」
ㅤだけど今日は、エミールにお願いして家にいる。
ㅤ朝は遅くまで一緒に寝て、起きてもポチに音楽を掛けてもらいながらソファーで二人のんびりして。
ㅤお昼はお互いに相談して、用意するのはエミールで片付けるのは僕ってことになった。
「さ、チーズとハムのオムレツだ」
ㅤわ、美味しそう。
ㅤ自分の席に腰掛けると、目の前にエミールがお皿を置いてくれた。
ㅤ意外にもお料理上手なエミールは、レパートリーこそ少ないけど手際がとってもいい。キッチンを綺麗に使うし洗うものも最小限に抑えてる。
「バゲットは今焼いてるから……ああ、焼き上がったみたいだから取ってくる」
「あ、やっぱり僕も手伝うよ」
「じゃあ、サラダを運んでもらおうか」
「うん」
ㅤこうして一緒に並んでキッチンに向かってると、なんだか新婚さんみたい……なんてね。
ㅤあっち、とエミールが指さした方向にあるのは小さなキッチンカウンター。それからサラダボウル。
ㅤ見ただけでわかるのはブロッコリーにトマト、レタスとパプリカ……あ、あとあれはアボカドかな。彩のいいサラダがボウルに盛られてる。
「こっちも美味しそう……」
「こらこら、つまみ食い禁止だぞ」
「し、しないよ!」
ㅤもう、ほんとにしないってば。
ㅤ含み笑いをするエミールの背中を追いながら、テーブルにサラダボウルを置く。
ㅤ料理は作るのも食べるのも、どっちも楽しいから好きなんだって。エミールらしいや。
ㅤいろいろ考えながら料理するって言ってたから、エミールからしてみれば料理も科学の実験みたいなものなんだろうな……。
ㅤでも結局、理屈より感覚になっちゃうんだけどねって、いつもそんな話のオチがつくんだけど。実際どこまでが本当なんだろ。
ㅤ料理?ㅤそれとも科学の実験?ㅤ……まさかね。
「さて。二人とも席についたところで、いただきます」
「いただきます」
ㅤ……うん、やっぱりエミールのオムレツが一番美味しいや。
ㅤひと口食べただけでわかるこの違い。僕が真似して作ってみても、こうはならない。
ㅤせっかくお願いして、目の前で作ってもらった上にレシピまで教えてもらったのに。いったい何が違うんだろ。
「…………」
「…………」
ㅤ黙々と食べ進める……。
ㅤ食事中に会話は、あんまりしない。
ㅤポチが相変わらず音楽を掛けてくれているのもあるけど、エミールが特別な席でもない限り食べてる最中にあまり喋らない人だから、僕もそうしてるんだ。
ㅤ代わりに食べた後に美味しかった、とか、食器を片付ける前にちょっと話す時間を作るんだけどね。
「……ご馳走様」
ㅤ喋らない分、エミールは食べるのが早い。
ㅤ僕もエミールと生活するようになってからは、食べるのがちょっとだけ早くなったかもしれない。ほんとにちょっとだけ、ね。
ㅤ急がなくても、焦らなくても、こういった些細なところで僕はエミールと重なっていくんだ。
「ご馳走様でした」
「よし、じゃあこの後どうする?」
「ん、と……よかったら一緒に映画見ない?」
「映画?」
「あ、外で見るやつじゃなくて。いくつかレンタルしてきたから、今日はずっと家でのんびりしようかな〜って」
「丸一日のんびり、か」
「どう、かな?」
ㅤごくり……。ちょっぴり緊張してる。
ㅤ実は僕、エミールの映画の趣味は知らないんだ。
ㅤそもそも映画を見るのかどうかもわからないし、ここでエミールが『じゃあ私は書斎にいるから、何かあったら呼んでくれ』なんて言い出したら、計画が台無しになってしまう。
ㅤ……でも、その心配は杞憂だったみたい。
「いいね。実は映画を見るのも好きなんだ。……ポチ、ポップコーンの用意だ」
(塩ですか、キャラメルですか?)
「塩、キャラメ──。よし、両方でいこう」
(かしこまりました。お待ちしております)
「すぐに行く……というわけで、ポップコーンを用意してくるからちょっと待っててくれ」
「う、うん。その前にお皿片付けなきゃだけど」
「ああ、それくらいなら食洗機に入れておけばポチがやってくれるさ。キッチンに行くついでに俺がやっておくから、シャルロットは映画のセッティングを済ませておいてくれ、頼むぞ」
ㅤそう言ってエミールは、僕の返事も聞かずにそそくさと食器類を運んでキッチンに向かって行ってしまった。
ㅤまさかここまで順調にことが運ぶだなんて、思わなかったな。映画好きなんだ、エミール。
ㅤこうなってくると、逆にエミールが楽しめないことってなんだろう。ちょっと気になるかもしれない。
「ポチ、リビングをホームシアターモードにして」
(かしこまりました。映画鑑賞とのことですが、使用するのは何ミリフィルムですか?)
「え、ううん。古くてもVHSまでだよ」
(左様でしたか)
「……え?ㅤここって映写機もあるの?」
(はい。僭越ながらこの私がマスター・エミールのコレクションをいくつか、また今度ここでお披露目しましょうか?)
「う、うん。じゃあ見せてもらおっかな……」
(その機会を楽しみにしております)
ㅤへえ、知らなかったな……。
ㅤポチがリビングのカーテンと天窓のシャッターを下ろして部屋をすっかり暗くしてくれている間に、ちょっと前に近所のレンタルショップで借りてきた映画をカバンから出しておく。
ㅤ安牌だけど、これを選んでおけば外れないって感じのベタベタな映画が数本。B級映画も一、二本。……ちょ、ちょび〜っとだけえっちなのも一本。
ㅤそ、そして名だたるアクション映画の間に、こっそりと忍ばせたジャパニーズホラーの金字塔……これこそが僕の計画の要。
ㅤ名付けて、怖がるふりをしてエミールに抱きついちゃおう大作戦、だよ!
ㅤ普段から甘えさせてくれるエミールだけど、映画の演出に怖がるふりをすることで、いつもなら起きている時には絶対にできないあんなことやそんなことを、どさくさに紛れて実行できるという我ながら隙のない完璧な作戦だね。
「おっと、お待たせしたかな?」
「ううん。こっちも今準備出来たとこ」
「それならよかった」
ㅤソファーに二人腰かけて、ポチが映画の再生を始めるのを待つ。薄暗い部屋の中、エミールと二人っきり……えへへ。
ㅤおっと、いけないいけない……。この後の計画のためにもしゃっきりしてなくっちゃ。
ㅤ二人で外にお出かけするのもいいけど、やっぱり沢山の人がいる場所よりも、二人っきりの家の方がいいって思うのは、きっと僕のわがままかもしれないけれど。
ㅤ普段は自制してるんだから、たまには僕がエミールを独り占めしたって、バチはあたらないよね。正当な権利だよ、うん。
「ふわぁぁぁぁあ!!!?」
「ちょ、シャルロット……首っ──! お兄さんの首締まってる……っ」
策士、策に溺れる……。
投稿が遅くなった理由は、シャルロット視点(ガチ)をお試しで書いてみたら難しすぎて投げそうになったからですな。申し訳ない。
でもこの試みはちょくちょく続けていきたい所存。
エミールにアルコールを入れるか否か
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下戸、飲めない
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飲めないことはない、付き合い程度
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ザル、酔わない
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シャルロットがいるので飲まない
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大好きな実験に使う