ドラえもん のび太の異空幻想伝   作:松雨

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フランの想い

「お兄様、空を見て! あれって飛竜じゃないかな? しかも、背中にフード被った人が乗ってる!」

「……あっ、本当だね。空飛ぶ竜とそれに乗る人が居るなんて、まるでゲームの世界みたいだ」

 

 少し先すら見えない霧が晴れた後、のび太とフランは上空を見上げた際に、人が背中に乗っている飛竜を見て驚いていた。霧が晴れた瞬間に、突然現れた形となったためである。

 

 しかも、人が乗った飛竜は翼も含めるとかなり大きく、姿形がハッキリと見える位の低空を比較的ゆっくり飛んでいた事もあり、かなり迫力が出ていたから尚更だった。

 最も、彼らも戸惑っていたのかすぐに遥か上空へと飛んで行ったので、姿をのび太とフランが見れたのはほんの十数秒程度である。

 

「うん! 飛竜とその飛竜に乗る人間なんてお兄様の居る町にも幻想郷にも居なかったし、さっきまでは冬だったはずなのに窓を開けた時に吹いてくる風も暖かいし、太陽の位置とかも何か違うから、もしかしたら異世界に丸ごと移動したのかもね! これなら、確かに大異変って言うのも頷けるなぁ」

 

 そんな中、のび太が飛竜とその飛竜の背中に乗っているフードを被った人物を見てふと言った、まるでゲームの世界であるとの言葉に同意を示し、今回の異変はそう言う様な世界へと幻想郷が丸ごと転移するものなのではと判断した。

 

 のび太自身も、流石にここまで大規模なものは体験した事はなかったが、『もしもボックス』を使用して魔法の存在する平行世界などへ行ったり、『絵本入り込みぐつ』で絵本の中の世界へと入ったりなど、似た様な経験をした事があった。

 故に、フランが言った幻想郷が異世界へと丸ごと移動させられると言う判断を、可能性が高いと考えている。

 

 ただ、これらは今現在起きている事から、その可能性がかなり高いと判断したに過ぎず、異世界に幻想郷が来てしまったと断定出来る物的証拠となるものは何もなかったため、今後調べていく必要があるが。

 

「フラン、のび太。変な現象が起きたけれど、こっちは大丈夫だった?」

「いきなり四次元ポケットが使えなくなったからビックリしたけど、のび太君とフランの方は何かなかった?」

「あっ、レミリアにドラえもん。僕たちの方も変な現象を目撃したけど、特に危なくはなかったかな」

「うん! だから、お姉様もドラえもんも、心配しなくても大丈夫だよ!」

「そう。これで館内全部を見回ったけど、危険な現象は起こってなかったみたいで一安心ね」

 

 初めての経験に驚きつつも、のび太と2人きりでの会話のネタが増えた事にフランが幸せを感じていると、部屋にレミリアとドラえもんが2人を心配しながら入ってきた。これ程大規模な現象が発生すれば、他にも何かあるのではと心配になるのも当然だろう。

 

 幸い、気持ち悪い音と窓の外が見えなくなる程の霧、人が乗った飛竜の低空飛行の目撃に冬から春の気温への変化など、現時点で大規模ではありつつも危険な現象には巻き込まれてはいない。

 故に、2人はレミリアとドラえもんに対して、一切危険な現象には巻き込まれていないため、怪我などもないと言う事を伝えた。

 結果、レミリアとドラえもんは2人の居る部屋に来る前、危険な現象が館内で起きていない事を確認しに回っていて、ここに来た事でようやく全体の安全を確認出来てホッと一安心する事となる。

 

「だけど、一応話は聞いておきたいわね。変な現象についての説明をお願い出来るかしら?」

「分かったよ、レミリア。えっと……」

 

 ただ、レミリアは一応変な現象について聞いておこうと思ったらしく、2人に対して何があったのかと質問を投げかけてきたため、今まで起きた事を全て説明した。

 その上で、のび太はフランと大異変がどう言ったものかを考えていたり、フランが自身との話のネタが増えたため、とても楽しく幸せな気分になっていたりしていたと付け加える。

 

「ありがとう……そうね。私とドラえもんも恐らく、紫の言う『大異変』は幻想郷ごと謎の方法で異世界へと転移させられるものと考えているわ。フランに分かりやすく言えば、10年以上前に紅魔館が幻想郷に引っ越した時に使った大規模魔法を、想像つかない規模に大きくした術か何かによってと言ったところかしら」

「やっぱり、お姉様も似た感じの考えになるんだなぁ」

「ええ。まあ、そう考えたところで今すぐ解決出来る訳じゃないから、紫が何か言ってくるか危険な事態が引き起こされるまでは、普通に過ごす感じになるわ。だから、のび太との幻想郷デートもこのまま続けて大丈夫よ。万が一の時は、すぐに戻ってくるって約束してくれるならね」

「本当!? えへへ、やったぁ!」

 

 結果、レミリアとドラえもんの2人も、のび太やフランとほぼ同様の考えに至っている事が判明した。

 しかし、超空間を一時的とは言え封じる事が出来たり、幻想郷ごと異世界転移させると言う超規模現象を引き起こす存在が裏で手を引いている以上、紅魔館に居る面々のみでは圧倒的に力不足であるのは否めない。ここに居る全員が、そう実感している。

 

 そのため、紫から何らかの指示が出されるか、差し迫った危機がない限りは普段通りの生活を送る感じとなる事がほぼ確定となった。

 当然、フランがのび太との2人きりのデートをしても問題はなく、レミリアからそう言われたフランはひとまずデートが可能だと知れたため、満面の笑みを浮かべて喜びを表現した。

 経験した事のない事態のお陰で会話のネタが増え、幸せな心地でいたフランも、心の中では当分出来なくなるのではとの不安も抱いていただけに、これは当たり前の反応だと断言可能である。

 

「あっ、レミリアさま! 美鈴さまから、『紫さんの連れてきた来客3人を入れても良いか』と、伝言を預かってます!」

「紫の連れてきた来客3人……? 特徴とか名前とか、何でも良いけど聞いてない?」

「えっと、のび太さまのお友達とか言ってました! 名前は確か『源静香』『剛田武』『骨川スネ夫』だそうです!」

 

 4人でそんな感じのやり取りを交わしていると、扉を開けっ放しにしていた部屋に妖精メイドの1人が、美鈴からの伝言をレミリアに伝えるために入ってきた。内容は、紫が連れてきた来客3人を紅魔館へと招いても問題ないかと言うものであった。

 

 奇妙な現象が発生し、幻想郷が恐らく異世界転移したであろうこのタイミングで紫が来客を連れてきた事を不思議に思ったレミリアは、特徴とか名前とかを聞いていないかと妖精メイドに尋ねると、その3人はのび太の友人であるしずかちゃんとジャイアン、スネ夫であると判明する。

 

「あぁ……なるほどね。あの3人なら入れても構わないから、美鈴にそう伝えておいて。彼らが寝泊まりする部屋の掃除とかも必要だから、メイドたちを何人か客間に向かわせといてくれると助かるわ。それと、彼らを招いたら一応ここまで案内してちょうだい」

「分かりました!」

 

 のび太の友人であり、自分とも何かと付き合いがあった3人の名前を聞いたレミリアはすぐに館に招く事を決め、そのために妖精メイドに対して色々と指示を出し始めた。

 

 まさか、幻想郷に自分たちの友人である3人が既に来る事を決めて来ていたとは思ってなかったのび太とドラえもんは少し驚くも、普段から色々あっても仲が良く、なおかつ冒険の頼もしい仲間でもある彼らが来る事を歓迎していた。

 

「……」

 

 しかし、フランだけはそんな状況を全くもって歓迎していないどころか、何故来るんだふざけるなと強く不満に思っていた。理由は、大親友のドラえもんでも妥協しているのに、更に3人も()()()()()()が加ってしまい、のび太の気が散ってしまう恐れがあると考えたためである。

 

 特に、しずかちゃんに対してはのび太との付き合いも長く、同年代かつ異性である事が加わり、愛しているお兄様を取る危険が高い恋敵として認識しているため、ジャイアンやスネ夫と比べて向ける敵意がかなり強かった。

 自分が会わなかった場合ののび太の未来に、しずかちゃんと結ばれると言うものがあったと現代旅の時に知ったため、尚更だった。

 

「うぅ……」

 

 しかし、それよりものび太が自分から離れていってしまう未来が来る事に対する恐怖などの感情が、敵意を圧倒的に上回る形で既にフランを覆い尽くしていたため、むしろ表面に出てきたのは涙であった。

 

 先程まで笑顔だったフランの変わり様に、レミリアもドラえもんも困惑気味となっているが、今まではジャイアンやスネ夫やしずかちゃんが居てもそこまでの態度は見せなかったために、こうなるのも無理はない。

 ただ、そんな感じで恐怖に震え、涙まで流し始めたフランを見たのび太が咄嗟にしたとある行動によって、この問題は即解決される事となる。

 

「フラン、ちょっとこっちに顔を向けてくれるかな?」

「ぐすっ……お兄様……!?」

 

 何故なら、現代旅の終わり際にフランがのび太に対してしたのと同じ様に、のび太がフランに対してほんの一瞬、顔を赤くして恥ずかしながらキスをしたためだ。

 今まで合わせて2回、それも自分からしかした事がなかったフランは、まさかのび太からされるなどとは想定しておらず、あまりの事態に頭が追い付かなくて固まってしまう。

 

「あらあら……随分と見せつけてくれるじゃない、のび太。これは将来が楽しみね」

「……うん。この運命の分岐点を進んである程度の変化があったとしても、最終的な未来は変わらないらしいから、君は何の心配をしなくても大丈夫。のび太君が幸せなら、それで良いんだから」

「ちょっと、お願いだからそんな大きな声で言わないでぇ……!」

 

 この光景を見せられた2人によって間髪入れずに色々と言われる事となったのび太は、ただでさえ赤かった顔を更に赤くさせながら大きな声で言わないでくれと、慌てふためいてしまう。

 結果、運悪く部屋の前を掃除のために通ったお喋り妖精メイドに聞かれてしまい、あっという間に館中に知られてしまった。

 ちなみに、これはレミリアが妹の幸せを後押しするために、狙って作られたものである。

 

「レミリアさま! のび太さまのご友人をお連れしました!」

 

 そうして、妖精メイドがジャイアンたち3人を部屋まで案内してくれるまで、この状況は続く事となった。




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