「のび太! 八雲藍って言う九尾の狐の姉ちゃんから、お前が幻想郷に降りかかる大異変とやらの解決を手伝うって聞いたから、俺たちも来たぜ!」
「ジャイアン! しずかちゃんにスネ夫も……来てくれたんだね」
「おうよ! ああだこうだ考える前に、身体が動いたからな。心の友を助けるのに、理由なんか要らないだろ?」
友達であるジャイアンやスネ夫、しずかちゃんが幻想郷へと来てくれた事に対して、のび太は嬉しく思っていた。わざわざ藍から幻想郷やそこに降りかかる危機について色々と説明を受けた上で、自分が居ると知るや否や、来る事を選んでくれたためである。
普段は何かとトラブルが多い友達同士でありながら、いざと言う時はお互いに友達の事を思って行動するため、こうなる事は必然と言えるだろう。しずかちゃんとは例外的に、殆んどトラブルは起こり得ないが。
「全く……
「とか言いながらすぐに来る事を選んだのを見るに、のび太とドラえもんが心配だったんじゃねえか? 素直になれよ」
「武さんの言う通りよ。本当は私と同じで、心配していたじゃないの? ここに来るのも強制じゃないのよ」
「まあそうだけどさ……」
2人とは違い、スネ夫は藍からの説明を受けた上で即座に来る事を選んでおきながら、恐怖と言う感情が2人に比べて強かったために、のび太に対する多少の呆れを伴う愚痴をこぼしていた。
が、2人と同様にのび太やドラえもんに対する心配は言わずもがな、種族の違いなど関係なく楽しく遊べる友人『レミリア』や『フラン』の事も気になっていた。故に、ああだこうだ言いつつも来た事自体に後悔はしていない様ではある。
「まあ、その話は終わりにするとして……のび太。ここに来る途中に案内してくれた妖精メイドから聞いたんだが、フランに
「ぶっ……!」
そんな中、ジャイアンが唐突にこの件についての話を終わらせると同時に、のび太にフランに対して自分からキスをしに行ったのは本当なのかと、そう質問を投げかけた。
案内してくれた妖精メイドから何気なしに聞いたり、すれ違う妖精メイドの噂話を耳にして疑問に思ったがために投げかけただけであり、ジャイアンには全く悪意はなかったが、当の本人であるのび太にとってはたまったものではないため、思わず黙り込んでしまう。
「ええ、私もこの場で目にしたから間違いないわ。お陰でフランったらこんな感じでずっと蕩けた状態なのよ」
「やっぱりな……ハハッ! のび太の癖にやるじゃねえか」
「そうね。長く付き合うにつれて種族や価値観の違いから来る問題は絶対に出てくるだろうし、私自身抱いている色々な思いはあるけれど、妹の幸せを願う身としては是非ともこのまま結婚まで行って欲しいわ」
すると、そんなのび太の様子を見たレミリアがジャイアンの問いかけに対して代わりに答え、色々な問題が発生したり自身が思うところがあれども、フランの幸せを考えればこのまま結婚まで突き進んで欲しいとまで言ってしまった。
故に、恥ずかしさが限界突破してしまったのび太はそのまま何も言わずに黙り続け、スネ夫はドラえもんと共に取り敢えず静観する事に決め、しずかちゃんは内心複雑な思いを抱きつつも見守る事に決めていた。
ただし、フランに至ってはようやく蕩け状態から回復しようとしたタイミングで、レミリアの『のび太との結婚』と言う言葉を耳にしてしまったせいでその光景が頭に浮かんできてしまっていた。
結果、意味不明な言葉を呟きながら蕩けた表情を見せたり、かと思えば唐突にドラえもんで遊んだ挙げ句、のび太を抱えてぐるぐる回ったり、他にも奇妙な行動を取り始める程の混乱状態となる。
「あぁ……疲れた……それは取り敢えず終わりにしてさ、ジャイアンたちは幻想郷に来てからは何をしたら良いかとか聞いてる?」
そうしてある程度の時間が経過し、恥ずかしさから復帰したのび太は必死になって混乱するフランを宥め終えると、ジャイアンにそう問いかけた。このタイミングで来たと言う事は、八雲一家の誰かから幻想郷を守るために何をして欲しいかを言われているかもと考え、もし言われていればそれを実行するべきだろうと考えたためである。
「その事なら、ひとまず何かあるまではお前とドラえもん、紅魔館の住人たちと遊びながら過ごしててくれって言われたぜ。あっ、可能なら幻想郷とその周囲の様子調べを手伝ってくれと言って欲しいと頼まれてたな」
「なるほどね……ドラえもん、何とか出来ない?」
「うん、任せてよ」
結果、取り敢えずは皆で遊んでいても構わないが、可能であれば幻想郷とその周辺の地形調べを、どんな形やタイミングであれ協力して欲しいとの要望があった事が判明した。
そのため、のび太はドラえもんにどうにか出来ないかと訊ね、ドラえもんはそれを受けて、ねじ巻き都市を作った小惑星で地形を調べるために使った機械を含め、生き物観察を目的としたステルス偵察機を使うために、中庭へと向かっていった。
それに続き、部屋に居た仕事が残っている妖精メイド以外の全員は、その様子を見に行くために中庭へと向かっていく。
「ドラえもん。その偵察用の機械が偵察を終えるまでにどれ位かかるのかしら?」
「うーん……どの位の広さを、どこまでしっかり調べるかによるから何とも言えないかな。けど、時間はかかるとは思うよ」
中庭に向かい、ドラえもんが数多くの種類の機械を素早く用意してから偵察機を上空へ発射させると、レミリアが偵察がいつ終わるのかと疑問を投げかけた。
しかし、それは調べるエリアの広さや細かさをどれだけ重視するか、天候や気温や湿度の変化の幅の違い、ドラゴンなどと言った異世界の魔法生物の動きによって細かく左右されるため、正確には言えない。ただ、世界全体を調べる訳でもない事から、それ程長時間かかると言う訳ではないが。
「ねえ、お兄様。ドラえもんって確か、子守り用のロボットだったんだよね?」
「うん、そうだけど……それがどうかしたの? フラン」
「ドラえもんの持つひみつ道具を見てるとさ、本当に子守り用のロボットなのかなって思えてならないんだよね。それとも、未来って物凄く危ないのかなぁ」
で、ドラえもんのひみつ道具による偵察が始まってから15分程が経った頃、その様子をのび太にべったりくっつきながら見ていたフランが、ふとそんな疑問を口に出した。
出すひみつ道具が子守りに使うには危険すぎたり、そもそも子守り用のものとは思えない道具の数々を所持しているため、疑問自体は何らおかしいものとは言えない。
ただ、フランがこれらの要素から未来が混沌とした世界なのではと誤解し始めてしまった事で、のび太やドラえもんが即座に否定をする事となった。
「幻想郷全体の写真はともかく、周辺の様子も航空・衛星写真で届いてるけど……本当に異世界に来たんだなぁ」
「「「……」」」
色々と微笑ましいやり取りを交わしながら待つ事更に10分、何の脈絡もなしに噴水の如く写真が噴き出してきた。どうやら、指定した範囲の偵察が終了したらしい。
幻想郷周辺を低空飛行した極小の旧型ステルス偵察機が捉えた、目測数mの飛竜の群れを含めた魔法生物の数々、幻想世界の人々が暮らす中世~近世の欧州を彷彿とさせる町並み、高高度を飛ぶ通常偵察機のカメラが写した地球では見られない奇妙な地形など、全員が驚くに値する情報が送られてきた。
この様子を見るに、初回の偵察としてはかなりの成果を得る事が出来た様である
勿論、もっと別の場所の偵察も行いつつ、例え同じ場所であるとしても何か重大な変化を見逃さない様に、手持ちの偵察機の一部をを幻想郷との境目付近を定期的に巡回させる様に設定を行う事も忘れない。あくまでもこれは、幻想郷に降りかかる大異変に対抗するためであるからだ。
「しかし、想像以上に町が近すぎるわ。見た感じ、のび太とフランが見たって言う飛竜に乗った人間もある程度の数は居るみたいだし……恐らく、そう遠くない内に幻想郷の存在は多くの異世界人に露呈するでしょうね」
噴き出してきた写真を拾い集め、全員で偵察機が捉えた多数の写真を見終えると、幻想郷からそう遠くない位置に異世界の人々が暮らす町がある事に対して、レミリアが問題視し始めた。どう考えても、軍事都市にしか見えなかったと言う理由があるためである。
流石に友好的か敵対的かまでは分からなかったが、万が一を想定しておいた方が安心ではある。勿論、何もしなければいきなり撃墜するなどの態度は取らないつもりでは居るものの、取り敢えずレミリアは彼らを敵対的な存在だと想定して、警戒していく事を決めた様だ。
「うん。それにこれ、早く
「確かに。でも、探すのが面倒――」
「心配せずとも来たわよ、レミリア。フランドール」
そんなレミリアの様子を見たフランも、のび太が大怪我を負って苦しんだり死んでしまう事に絶対的な恐怖を覚えたらしい。同様に警戒していく事を決め、紫に知らせた方が良いのではと言い始めた。
すると、待ってましたと言わんばかりの早さで紫が隙間から現れたため、呼びかけたり探すなどの手間が省ける事となった。
「紫さん。これ、この辺の様子を写した写真です。是非とも役立てて下さい」
「……ここまで素晴らしい写真を用意してくれるなんて凄いわ、ありがとう。これで色々と調査が捗る事でしょう」
「いえ、これ位なら全然危険じゃないので大丈夫ですよ」
紫が現れたのを確認したドラえもんは、機械から噴き出してきた写真を全て渡し、調査などに役立ててくれとの言葉をかけた。
未来の機械を使って撮った写真の写りは非常に優れているため、紫も今後の調査などがかなり捗るだろうと感じ、ドラえもんに対して頭を下げて感謝の意を表した。
「巻き込んでおいてなんだけど、無理はしないで。何も危機が起こってない時は、羽を伸ばして良いのよ」
最後に紫はそう言い残し、来た時に出てきたスキマに入ってこの場を後にした。
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