「さて、これからどうする?」
ドラえもんの道具による異世界の調査結果を紫に伝えた後、取り敢えず館内へと戻っていたのび太たちは、夜になるまで余った時間をどう過ごすかとの話し合いを行っていた。
本来であればすぐに紅魔館の近くにある霧の湖、人里や博麗神社と言ったのび太がフランと共に行った事があり、かつ比較的安全な場所を含め、色々と見て回るなどして遊ぶ考えも浮かんでいた。
しかし、異世界転移による異常現象が起こってからそれ程経過しておらず、恐らくどこへ行っても楽しめる状況ではないと言う考えがこの場の全員にあった。故に、今日の外出はやめておいた方が良いのではとの意見が出たため、この様な状況となっている。
「うーん……とは言え、うちで出来る遊びは限られているわ。例えば漫画や小説を読む、チェスやオセロやトランプをやるって感じ――」
「お姉様、だったら地下室使って身体を動かそうよ。私とお姉様が全力で飛び回って戦える位に頑丈で広いし、スポーツで例えるとバドミントンとか、思い切り出来そうだからさ」
中々意見が出ず、どうしようかとレミリアを含めた全員が考えていると、フランがバドミントンと言ったスポーツを例に挙げ、暴れても問題のない地下室で思い切り身体を動かすなどして遊んではどうかと勧めた。
確かにそれは良いアイデアだと思いつつも、例に挙げられたそれらのスポーツをするための道具や環境が紅魔館にはない。故に、その辺は分かっているのかとレミリアが問うと、ドラえもんがどうにかしてくれるだろうとフランが答えた。
これは、ひみつ道具の万能さをドラえもんやのび太と交流を重ねていく内にある程度理解し、道具や環境が作れたりするのではと信頼しているがための発言である。
後は、ひみつ道具以外にも四次元ポケットの中には色々なものが仕舞われている事を、フランはのび太経由で情報を得ていた。なので、仮にひみつ道具でどうにかならなくても、ラケット・バドミントンの羽があるのではないかと考えたと言う理由も存在していた。
勿論、実際にそうだと言える何かを掴んでいる訳でもなく、単にそうではないかと考えているに過ぎないだけであるが。
「うーん……あっ、運良くあった! 後はこれを人数分増やすだけ……」
「やったぁ! これで、
すると、フランからどうにかしてくれと要望を受け、四次元ポケットに手を入れてあるかどうかと探していたドラえもんが、運良く見つけたバドミントンに使う各種用具をポケットから出し、足りない分はひみつ道具の『フエルミラー』を使い、人数分増やす事でその問題は解決した。
コートの問題は、ドラえもんを筆頭に書物で確認しながらそれらしき感じに再現を行い、どうにかプレイ出来る位には作る事が出来ている。
で、準備が終わって少しの休憩を挟み、最後にレミリアとフランの自主的な力と能力の抑制、バドミントンのチーム分けや地下室の明るさ調整などを行い、怪我をしない様に体操をし終え、完全に運動する体勢が整う。
シングルスかダブルスどちらにするかについては、フランがのび太と一緒じゃなきゃ嫌だと強く主張した事により、ダブルスで行われる事が決まった。ちなみに、最初に行われるバドミントンの試合ではのび太・フランのペアとレミリア・しずかちゃんのペアが戦うと決まっている。
「最初はバドミントンかぁ。お兄様、楽しもうね!」
「うん。でも、僕って運動苦手だからフランの足を引っ張るかも……」
「ううん、私なら大丈夫。ボロ負けしようが勝とうが、お兄様と一緒に楽しくやれればそれで良いから。何なら私だって経験とか少ないから……あっ、お兄様が勝ちたいって思ってるんだったら、私が一生懸命頑張るよ!」
自分が好いている相手と一緒のペアでバドミントンを出来るとだけあって、フランのテンションは開始前から既に非常に高い水準である。勝ち負けなど心底どうでも良いと考えているため、のび太の自信なさげな発言にもそう言い、楽しくやれれば良いよと伝えていた。
一方、レミリアとしずかちゃんのペアはあくまでも遊びとは言え、本気で勝利を掴み取るために挑むつもりでいるが、自分たちが楽しむ事も忘れてはいない。
「あら、運動苦手とか言ってる割にはやるじゃない。フランに良いところでも見せたいのかしら?」
「まあ……うん」
「お姉様、お兄様が恥ずかしがってるから止めて! せっかく良い感じなのに、集中力を途切れさせるつもり!?」
「いや……そんなつもりはなかったのだけど、ごめんなさいね」
こうして始まった対戦であったが、意外にものび太が良い動きを見せ、押されながらも何とか立ち向かえているためか、見ているドラえもんやジャイアンも衝撃を受けていた。
レミリアに至っては、普段から運動が苦手と繰り返し聞かされている事もあって何ら悪気なく、フランに良いところを見せたいのかと聞いてしまう程であった様だ。
しかし、結果としてのび太の集中力が恥ずかしさにより落ちてしまった事は否めない。加えて、スタミナの差から急激に動きが鈍くなり、フランのカバーが間に合わずに点を取られてしまう事が増えてしまった。
ただ、見応えのある試合にはなっている故に、フランが居ると言っても正直すぐに決着がつくだろうと考えていたジャイアンとスネ夫は、この様子を集中して見ている。
「あーあ……負けちゃったね」
「はあっ、はあっ、そうだね。でも、結構上手く行った方だし、僕は楽しかったよ」
「そっか。お兄様が楽しかったなら、それで良いや!」
それから時間が更に経つ事数分、レミリアのスマッシュが綺麗に決まり、のび太とフランの負けで最初の試合が終わる事となった。
惜しいところまで行った状況からの負けでも、終わった後の様子から、のび太もフランもかなりこの勝負を楽しめている事が分かる。
「やるじゃねえか、のび太! 普段のへなちょこぶりとは大違いだな!」
「野球でもこの位上手く行ってくれたら……まあ、今は良いや。お疲れ」
「うん、ありがとう。2人も頑張ってね」
「「おうよ!」」
次の試合の出番であるスネ夫とジャイアンも、終わって待機場所に戻ってきたのび太の、普段の様子からは想像もつかない位の活躍を純粋に褒め称えた。少し遅れて、疲れた事でドラえもんと交代が決まったしずかちゃんも同じ様に褒めたため、のび太はかなり嬉しい思いをする事となる。
で、このスネ夫とジャイアンの『へなちょこ』発言と、しずかちゃんがのび太と楽しげに会話をする様子がフランは気に入っていないが、この様な場所でそれを表明するのは雰囲気がぶち壊しになると考え、何も言わないと決めていた。これにより、余計な争いが起こらないで済んだ。
そしてこのやり取りの後、すぐにジャイアン・スネ夫ペア対レミリア・ドラえもんペアの試合が始まった。
元々運動神経が良く、そこそこの期間バドミントンの経験済みであるジャイアンと、そのジャイアンにある程度ついていける位の運動神経を持つスネ夫は、レミリアとドラえもんのペアにほぼ互角で渡り合え、点差も抜きつ抜かれつの関係になっていた。
とは言え、レミリアの力や能力は大きく制限していても、スタミナまではそれ程大きく制限出来なかった関係で、徐々に戦況がレミリア・ドラえもんペアに傾くのは避けられなかった様である。
「くそぉ……力を制限していても、やっぱりレミリアは強えな」
「ふふっ、褒めてくれてありがとう。でも、ジャイアンとスネ夫だってかなり強かったわよ」
故に、10分程続いたこの試合の結果は僅かにではあるが、レミリア・ドラえもんペアの勝利と言う形で幕を閉じる事となった。様子を見る限りでは勝った方も負けた方も、今回の試合をお互いに楽しむ事が出来ていたので、良い感じだ。
「お姉様。次から美鈴とかパチュリーとか妖精メイドさんたち、良ければ魔理沙とか誘ってやらない? 楽しかったけど、相手がもっと居たらもっと楽しそうだしさ」
「なるほど、確かにそうね……よし。パチュリーや美鈴、妖精メイドの一部に声をかけてくるわ。ついでにジャイアンたちの紹介も済ませておきたいから」
スタミナ的にはまだ問題ないスカーレット姉妹はともかく、激しく動いて疲れたのび太たちのために休憩を取っていた時、フランが次やる時は館の皆や、良ければ魔理沙辺りを誘ってやらないかと言い始めた。
フラン曰く、今日居る7人でやっても十二分楽しかったが、もっと沢山の人たちを誘えばそれよりももっと楽しいのではと考えたかららしい。
それを聞いたレミリアは、確かにその通りだと納得した。ただ、全員をまとめて誘うのは館の仕事の関係上難しいため、咲夜や美鈴やパチュリー、最低限の妖精メイドたちのみを誘ってみる事を決め、一旦地下室を後にしていく。
「レミィ。調子が良いと言っても、あまり長くは運動しないわよ」
「のび太様やドラえもん様のご友人ですか。確かに、しばらく滞在される訳ですし、気分転換にもなりますから、交流を深めるべきですね」
「そうですね、咲夜さん」
およそ10分後、レミリアが咲夜・美鈴・パチュリーと比較的暇していた妖精メイド15人を連れて、地下室へと戻ってきた。咲夜や美鈴はそれぞれメイド長と門番と言う重要な役割があるため、連れてきても大丈夫なのかとのび太は疑問に思うも、代わりとなる妖精メイドが数人存在すると聞いた事を思い出したため、即座に解決された。
「しずか様、スネ夫様、武様ですね。私、紅魔館のメイド長をしている十六夜咲夜と申します」
「パチュリー・ノーレッジよ。色々と大変な事に巻き込まれたみたいだけど、少しは楽しんでいって」
その後、既に自己紹介済みの美鈴は除き、ジャイアン含めた3人と咲夜とパチュリーの自己紹介が行われた。態度の良さに加え、レミリアやフランが現代で世話になったのび太の友人と言う事もあり、2人に対する初印象は比較的良好な感じとなっている様だ。
ちなみに、連れてこられた妖精メイドたちの殆んどは、すぐにジャイアンたちと仲良く接している。
こうして自己紹介などが済んだ後は、彼女たちも加えて地下室で賑やかかつ楽しく遊ぶ事となった。
ここまで読んで頂き、感謝です。お気に入りと評価をしてくれた方も、ありがとうございます。