「はぁ……よりによって、転移先が幻想郷に相性最悪な場所なんてね。全く、冗談じゃないわ」
「はい。それに、この『異世界』は外の世界とは違い、普通の人間でも魔法などの特殊能力を持つ『人間』が多く、東洋に西洋の妖怪やそれに相当する『魔獣』なる存在も居ます。軍事力に関しては未来は言わずもがな、一部の国々を除いて現代には及ばないとは言え文明力自体は高いので、侮る事はしない方が良いでしょう」
幻想郷が丸ごと異世界へと転移する大異変が起きてから6日目の昼間、一般的な人妖が立ち入る事のないマヨヒガと呼ばれる場所にて紫と藍の2人が、ドラえもんの偵察衛星やステルス偵察機などによって撮影された大量の地形写真や動画、式神や一部の大妖怪による調査結果を見ながら、ため息をついていた。
理由としては、転移先が人間至上主義を強く掲げている『テステラ王国』と呼ばれる国家であり、人間以外の種族も多数暮らしている幻想郷とは絶望的に相性が悪いためである。
これが、魔法などの特殊な力を持たず、魔法生物の存在しない地球の様な場所であったなら、転移先が近代以上の科学力を誇る国でなければ然程頭を抱える事はなかった。現に、純粋な科学力
しかし、魔法や特殊な術には幻想郷でも通用する強力なものが調べる限りでもそれなりの数が存在し、科学技術に相当する『魔導技術』がこの世界では幅を利かせている事も判明した。
個人や種族的能力による影響が大きく出てしまう欠点があるものの、それを加味しても準列強クラスの国家で地球の1920~1940年代後半、列強諸国ともなれば1970~1990年代後半相当の文明力を誇っている。
ちなみに、テステラ王国は1930年代前半の日本とほぼ同じ文明力を持つ準列強国家であると判明していた。
更に、のび太やフランの目撃した飛竜などの強力かつ厄介な魔法生物が王国の中で比較的多く生息している地帯に、幻想郷は転移してしまっていた。
現に1例確認出来てしまっている以上、それらの生物などが幻想郷に多数侵入し、自然環境やそこに住む数々の人妖たちに大きな影響を及ぼす可能性が高まってきた事も、原因であると言えるだろう。
「ええ。本当、ドラえもんたちの協力を取り付けられて良かったわ。
「確かに、彼女の現代入りは予想外でしたし、運が良かったと言えるでしょう。現に、未来の超科学のお陰でこうやって安全に備えが出来ている訳ですし」
故に、偶然の賜物で現代入りしてしまったフランに対して、そこでなんやかんやあってのび太と出会って親しくなってくれた事に、強く感謝の念を2人は抱いた。勿論、のび太やその友人たちに対しても、関係が深い訳でもない自分たちを助ける手伝いをしてくれる事に強く感謝をしている。
「紫様。ここまである程度の情報は纏まってきてますけど……どうすれば幻想郷が元の世界に戻れるか、これに繋がる情報を得るには、現地に向かって地道に調べてみる必要があるかと思います」
「勿論、それは分かっているわ」
「しかし、それには数々の危機的冒険を乗り越えてきた、ドラえもん一行の協力が必要不可欠かと。未来の超科学も勿論ですが、
同時に、地球への帰還のために行う異世界探索の主体に、ドラえもんたちを据えようと藍は提案を行った。八雲一家を含めた古参の妖怪や神々のみでやろうとも思い付いたものの、幻想郷を守らなければならない上、ドラえもんたちの方がこの様な事態の経験が豊富であるためだ。
「そうよね。ただ、そうなるとドラえもんたち5人だけで送り込むのは色々な意味で不味いから、紅魔館の面々にも動いてもらいましょう」
「紅魔館の面々に……ああ、そう言う事ですか」
「ええ、そう言う事よ。藍」
それを聞いた紫は、藍の話に全面的に同意を示しつつもドラえもんを含めた5人のみで異世界へと向かわせるのは流石にまずいと判断した様で、比較的親交のある紅魔館の面々にも探索のメンバーへと加える事を独断で決定した。
ただ、この場で考え付いたものであるため、当然ながら末端の妖精メイドはおろか、館の主であるレミリアもこの事を知らない。故に、実行を確定させるのは大丈夫なのかと藍は思っていたが、紫の少し困った様な表情を見て真意を察したため、これ以上は何も言わないと決めた。
まあ、普段の様子を見ればフランが
「それじゃあ、今すぐ紅魔館に向かうわよ」
「分かりました。橙、ついてきて」
「はい!」
話し合いが済んだ後、紫は藍と橙を連れてここで決まった事をレミリアたち紅魔館の主力陣やドラえもんたちに伝えるため、スキマ伝いでこの場を後にした。
――――――――――
「……と言う訳なのよ」
スキマで紅魔館へと向かった八雲一家から皆を集めて欲しいと頼まれたレミリアは、館の主力陣とドラえもん一行を全員会議室へと集め、紫からされた詳しい説明を聞いていた。
幻想郷が転移した場所のテステラ王国の事についてはこの場に居る全員、未来の偵察衛星やステルス偵察機などから同様の情報を得ていた事もあって特段驚く事はなかったが、まさか自分たちが現地に出向いて更なる情報を集めてきて欲しいと頼まれるとは思わず、驚きを表していた。
ただ、未来の偵察衛星やステルス偵察機、八雲一家の式による偵察のみでは漏れが生じてしまうためとの理由には納得出来るだけの説得力がある。それに、ここで待っているだけでは何も始まらないともこの場の全員は思っていたから、特に渋る事もなく現地に出向く事が決まった。
勿論、色々な観点から紅魔館の主力陣が全員留守にする訳にもいかないため、彼女たちに関しては5人の中から状況に応じて2人が同行する形となる。ただし、その内の1人はフランで固定されていて、かつ今回は初回と言う事でレミリアが立候補したため、結局は現代旅の時と殆んど変わらない。
「異世界探索……正直少し楽しみではあるけど、それならそうとせめて一言伺って欲しかったわ」
「確かに、こちらとしても危機に飛び込む形になる訳ですし。まあ、幻想郷の危機は私たちの危機でもありますから、出来る範囲での協力はさせていただくつもりです」
「そこのところは……本当、勝手な考えで申し訳なかったわ。にもかかわらず、了承してくれて感謝するわ」
すると、異世界探索についての話が終わったタイミングでレミリアたちがいくら了承したとは言え、行くと答える事を前提で進めないでせめて一言聞いて欲しかったとの不満を漏らした。まあ、フランがついていくとなったら自動的にこうなるとは言え、当然の反応である。
しかし、紫もその辺はしっかりと理解をしているらしく、3人揃って頭を下げて謝罪を行ったため、レミリアたちもこれ以上は不満などを言うつもりもなくなった。
「さて、異世界冒険となったら色々と準備しないとな。スネ夫、さっさと行くぞ」
「分かったよ」
その後、ゲームなどに登場するファンタジー世界そのものを冒険出来るだけあって、少し楽しみに思っているジャイアンは若干不安げなスネ夫を連れて急いで出発するための準備を整えに、用意された部屋へと向かっていく。
で、しずかちゃんとドラえもんは、そんな2人を見ながら普通に部屋へと準備をしに向かっていった。とは言っても、偶然人里へ食事をしに向かおうとしていたために、殆んどやる事はなかったが。
「異世界でも、お兄様をしっかりと守ってあげなきゃ……あっ、異世界では特別な時以外は絶対に私から離れないで! だって、お兄様が苦しむところを想像したら心が痛くなるし、お兄様が居なくなるところなんか見たら……私、きっと死んじゃうもの」
「うん、分かった。約束するよ」
最後に、初回と言う事で探索に向かうと決めたレミリアが準備のために部屋へ行った後、フランはのび太を連れて同じく準備のために自室へと向かう。
その際、のび太が傷つき苦しんだり死んでしまう事を何よりも恐れているが故に、異世界では何があろうとも自分から離れては駄目と強く念を押していた。
ただ、見られると恥ずかしいトイレ・入浴・着替えの際は例外であり、それもしっかりと伝えている。
今にも泣きそうな位に辛そうな表情を見せられた上、最悪死んでしまうかも知れないと言われ、うっかり
もし、仮にあの時の事を話してしまえば非常にまずい事になりかねないため、意図はどうであれのび太の行動は正しいと言えるだろう。
「あら、皆準備が整うのが早いわね。異世界探索が楽しみなのかしら?」
「そうみたいよ。正直、私も少し楽しみね」
「なるほど。まあ、これから大変な事をする訳だし、精神的に気分転換するのは大切ね」
それから15分、各々準備を終えて待っていた自分たちの下に集まる様子を見て、紫は皆が異世界探索をするのが楽しみなのだろうと察した。
行き先が人間至上主義の国であるのにも関わらず、余裕を見せるレミリアやフランに若干不安感を抱くも、未来の超科学の結晶であるひみつ道具を持つドラえもんが居て、かつ現代旅で姿を偽る経験も積んでいるから問題ないかと考えた。
「ただ、幻想郷が日本に戻る方法を探す調査だと言う、主目的を忘れないように気をつけて。後、問題が起こると面倒だから出来る限り戦闘は控えてちょうだい。それと仮に、レミリアとフランドールの正体がバレたらまずいから、そこのところはしっかりと頭に入れておいて」
そして最後に、今回異世界調査へと出向く上での注意を言い、万が一の時のために側に特殊なスキマが開けるよう、ドラえもんたち全員に妖気を秘めた紐を手渡してから、博麗大結界と異世界の境界線まで普通のスキマで向かった。
ここまで読んで頂き、感謝です。お気に入りと評価をしてくれた方も、ありがとうございます。