「あの……本当に良いんですか? 僕たちの情報収集にわざわざ付き合ってもらえるなんて」
「なぁに、問題ないさ! むしろ、こちらが感謝したい位だよ!」
中々印象に残る出会いをした冒険者パーティーに、協会へ立ち寄った理由や流れで町を訪れた目的を説明し終えたのび太たち一行は、半ば強引にリーダーの女性に連れられ、とある場所へと向かっていた。
国内外から沢山の商人や商会が集い、各種物品のやり取りを交わす窓口となる『キーナイア』と呼ばれるエリアと、エリア内にあるキーナイア商協会の建物である。
リーダーの女性曰く、その特性故に世界情勢や各国の様子などに関しての情報が冒険者協会よりもかなり集まりやすく、かつ一般人が買い物などにも訪れるのが可能な場所でもあり、誰もが比較的楽しんで過ごせるとの事。
王国経済を支える柱の1つと言っても過言ではないものの、他国の有力者や有名冒険者などの人々も集まり極まった結果、流れで世界的にも注目される『国際機関』の支部も立てられてしまった都合上、ここを経由して逃亡する亜人のくくりに入る人々を国が止めるのが非常に難しい、言わば
なので、冒険者協会の敷地内でも同様だが、のび太たちにとって見たくないであろう光景をほぼ見ずに済む。万が一何者かがやった場合、警官隊に相当する組織につま弾きにされ秩序は保たれる。これらの要素が目的地となった理由だと、話の中で全員に説明された。
「なるほど……
「確かにそうだが、気にしなくても良いのではないか? 答えが近くにあるのに気づけない事なんて、君たちに限らず誰にだってある。無論、私たちにもあるさ」
「まあ、大概はリーダーが持ち前の好奇心を発揮した時ですけど」
「反論出来な……おい、何だその手は? 私が子供とでも言いたいのか?」
「え? ああ、ごめんなさい。今の今まで子供って思ってました!」
「あはは……仲良しなのね、貴女たち」
紫と藍からもたらされた事前情報、泊まっている宿の女性スタッフからもらった解説本に一通り目を通したのに、結構目立つ上に自分達の目的達成に最も有用な場所へ向かう思考に至らなかった事実に、のび太たち一行は何とも言えぬ気分になってしまう。
が、リーダーの女性からの言葉や持ち前の明るさなどのお陰ですぐに元へと戻り、歩きつつ現代地球や幻想郷では実際に見る事が叶わない光景を、再び楽しみ始めた。
「着いたぞ。ここがキーナイア交易協会だ――」
「おやおや、こんなところでガキ共引き連れてお守りでもしてるのか? 『【
「【
そうして歩き続ける事30分と少し、のび太たち一行は目的地であるキーナイア交易協会へと到着したものの、その刹那に背後に3人引き連れた非常に強面な男……ラドアと呼ばれた人物が一行に、正確にはロモハと呼ばれたリーダーの女性へ、蔑む様な視線を向けつつ声をかけてきたため、出鼻を挫かれてしまう。
因縁があるためか、はたまた単純に力量自体に迫るものがある問題人物なためか、ロモハ含めた3人は先程までのリラックスモードから一転、万が一に備えての警戒モードへと入った。
警備兵も何事かと駆けつけてきたものの、実力者同士のいさかいかつ現時点ではまだ言い争いに収まっているため、一定距離を保って様子を伺うに留めていた。
「へぇ、貴女ってロモハと言うのね」
「ああ、自己紹介してなくて済まなかったな。ちなみに――」
「おいおいおい、仕方なく良い話を持ってきてやったと言うのに、オレを無視するとは良い度胸じゃないか?」
「喚き散らさなくても聞こえとるわ、煩い奴め。全く、
なお、レミリアやフランは実力者故に余裕綽々で様子を見守り、のび太たちも『バリアーポイント』や『ひらりマント』などの防御系ひみつ道具を装備しているため、若干気圧される程度で済んでいる。
「ぐっ、仕方ねぇ。じゃあ、手短に……町近くの大森に現れた
「興味自体はあるが、断る。行く事になるなら他の冒険者か、この子供たちと一緒に行った方が、貴様らなんかと行くよりは100倍マシだ」
「ははは! こんなひ弱なガキ共と? あの眼鏡の奴なんか、特段雑魚そうじゃないか」
「……止めろ、この子たちを侮辱するな。それと、見た目で判断すると痛い目見るぞ」
そんな2人のやり取りの折、ラドアが発した文言にフラン以外の全員が反応しかけるも、何とか心の中で驚く程度で抑えられる。
レミリアに至っては、周りに見えぬ様に冒険前に紫に渡された紐を使って特殊なスキマを展開、幻想郷の存在が相当範囲に広まっている可能性が高い事実を、こっそりと伝えていた。
「お兄様を侮辱……ふざけてるの? 壊してやろうかしら?」
「大丈夫、大丈夫だから。フラン、お願いだから落ち着いて」
「分かった。お兄様が良いなら、我慢する」
なお、フランは不思議な土地云々よりも、ラドアがのび太を指して特に侮辱的な態度を取った事の方が重要だった様で、抑えがなければ殺しをしかねない程に怒り狂っている。
隠している吸血鬼としての身体的特徴は表に現さなかったものの、内に秘めていた膨大な魔力と威圧感の一部が漏出してしまったらしく、言い争いをしていた2人が思わずフランの方を向いた。周りの野次馬たちの一部は、恐れるあまりその場から逃走を図る位だ。
「だから言っただろう。ラドア、いい加減懲りろ」
「……ちっ! お前ら、ずらかるぞ」
こうして、最終的にはロモハが心底面倒そうに忠告し、不服ながらも矛を引いたラドアが仲間3人を引き連れ、この場を立ち去る事によって言い争いが幕を閉じた。
と同時に、ラドア程ではなかったのに加えて状況からして仕方なかったとしても、大きな声で騒ぎを起こしてしまった事へ申し訳なさを感じている様で、周りの野次馬含めた人々にロモハは頭を下げて回っていった。
当然、謝罪を受けた人々の中に彼女へ怒りをぶつける者はおらず、むしろ面倒臭い奴に絡まれた事への同情をする者が多かったが。
「さて、本当に済まなかった。君たちの目的達成と私たちの欲も兼ねて、中に入る事にしよう!」
「はい、ありがとうございます」
「私たちの欲……と言うか、大体はリーダーの欲の様な気がします」
「違いない。全く、冒険者としては優秀な癖して子供っぽいところが――」
「2人共、分かってはいるから今は止めてくれ」
「「はーい」」
周囲の人々への謝罪を終えた後は、ラドアに会う前の愉快な性格に戻った彼女に、彼女のパーティーメンバー含めた一行が少々振り回されかけながらも協会の敷地内へと入り、人混みを上手く避けつつ歩いていく。
「えっと……金髪の女の人が『セーヴァ』さん、銀髪の男の人が『シルディ』さんですね。一時期ですけど、よろしくお願いします」
「はい、どうぞ宜しく。のび太くんたち」
「おうよ。お互い色々と話しながら楽しもうや」
途中、何だかんだやっていなかったのび太一行とロモハ一行の自己紹介の他にも、お互い冒険者協会では話していなかった冒険の話や、敷地内にある色々な店に寄り道しつつ行き交う商人などに話を聞いて回ったりなどした。
「いやぁ、まさか【舞天】のロモハ様方に会って話まで出来るなんて……感謝しかごさいませんわ」
「何、この程度なら安いものだ。むしろ、有益な情報にこちらこそ感謝している」
「僕たちもです。旅商人のお姉さん、ありがとうございます!」
「構いません。職業柄、嫌でも入ってくる各所の情報を話しただけですので」
大半は目的に寄与しない不必要な情報ではあったが、中にはのび太一行が求める有益な情報が舞い込んできたり、ロモハ率いるパーティーの名声や性格と言った要素が功を奏し、冒険などに役立つアイテムを提供してもらえたりなど、寄り道で得する場面が割とあったので問題はない。
ちなみに、もらったアイテムの効能は『現代地球の懐中電灯』と同等のものや、ひみつ道具『虫の知らせアラーム』の下位互換とも表せるべきものではあった。
のび太たちにとっては使いどころがさほどなかったが、貴重な異世界の魔法道具なのもあって、一応特殊なスキマを通して紫に引き渡すと決まる。その後に役立つか、使えずガラクタ同然となるかは不明だが。
「ロモハさん、これって僕たちみたいな子供でも入れる場所なんですか?」
「君たちが入れない場所なら、そもそもここの名前を挙げないさ。まあ、強いて言うなら取引可能な物品、珍しい宝石などを持っていればなお良いが」
「それだったら、これとかはどうですか?」
「なっ……君たちはやはり、ただ者ではない様だ。これ程強力な
寄り道をしながら歩き続ける事20分、ようやく協会の建物前に到着したのび太たち一行は警備員の厳しめのチェックを通過、建物内へと歩みを進めていった。
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