「ふーん……なるほど。あんたが魔理沙の言っていた外来人の少年『野比のび太』と……確かに、フランは相当入れ込んでるみたいね」
人里を去り、フランと一緒に博麗神社へと訪れたのび太は、先に待っていた魔理沙と共に、居間にて巫女である霊夢と相対していた。魔理沙が知り得る限りの情報を伝えてくれたお陰でスムーズに対面が出来てはいたが、霊夢の表情は少し硬かった。
理由としては、フランののび太に対する好意の強さが、フランのレミリアに対する好意以上だと一瞬で理解してしまったからである。
それも昔、レミリアが精神的に傷つけられたりした時、傷つけた相手に対して苛烈な怒りを向けるフランを鎮めるために、霊夢と魔理沙が必死になって止めたと言う事件があった事に由来していた。
ちなみに、その引き金となった者は後日落ち着いた霊夢と魔理沙とレミリアの3人によって、厳しく処されている。
「フラン。一応聞くけれど、仮にのび太が傷つけられたりしたら、あんたはどう対処するの?」
そう言った出来事があったため、フランがレミリア以上に好いているのび太が傷つけられたりしたら、のび太を含めた関係者が全員不幸になるレベルでの大惨事が確定した様なものだと霊夢は思っていた。
故に霊夢は、フランの抱く好意がどれ程のものなのかを見極めるために、のび太が傷つけられたりした場合の対処を上手く出来るかと、出来る限り刺激しない言い方を選んで質問を投げ掛けた。
「お兄様が傷つけられたら? まず、傷つけられたのが身体だったらお兄様を回復魔法で治して、精神だったら私がお兄様の側に寄り添ってあげるの。取り敢えず、傷つけた奴は無視かな」
「なるほどね」
「次に、傷つき具合が酷かったりお兄様が何も言わなければ、奴が
「へぇ、貴女にしては随分と穏健な報復手段――」
「それでも2度3度としつこくお兄様を痛めつけるのなら、問答無用で3回半殺しにした上でその場に放置するわ! 勿論、お情けで壊れない程度には回復魔法をかけとくけど!」
結果、身体・精神的かに関わらずに最初は全力の妖気で威圧を与え、それでも駄目ならのび太を傷つけた奴に生活に大きく支障を来すか死なない程度の制裁を加え、謝らせた後に回復魔法をかけて解放してあげるとフランが答えた事で、霊夢は少し安心したと同時に、のび太へ向けられた好意と依存具合が凄まじいものであると実感した。何故なら、関心が他の女性に向いたり、嫌われる事に対する恐怖心が節々に滲み出ていたからである。
のび太が霊夢と話している最中、少しでも笑みを見せれば一瞬不機嫌なオーラを醸し出すのと、それを本人に気づかれる前に抑え、不快感を与えない様に非常に気を使っていると分かった事が、判断材料となっていた。
「半殺し……ごめん、前言撤回するわ」
「ははっ。それにしてもフラン、凄い好意の寄せ様だな」
「あはは……」
しかし、最後にフランはハッとして、のび太を身体・精神的に傷つけた奴が反省もせずにしつこい様であるなら、その場で回復と半殺し制裁を3回繰り返した挙げ句に放置してやると、満面の笑みで宣言してしまう。
最後に、お情けで
「それとのび太。フランが暴走しない様に、しっかりと見ててちょうだい。人間の貴方にお願いするのは正直あれだけど、フランがこれ程好いているから」
「分かりました……フラン。出来れば過激な仕返しをしてくれるよりも、そう言う人は無視して一緒に居てくれる方が、僕は嬉しいかな」
そして、フランの『回復と半殺しの制裁を3回繰り返す』との発言に危機感を感じた霊夢は、彼女が強い好意を抱いているのび太に対して、暴走しない様にしっかりと見ていて欲しいとお願いをした。
本来であれば非力な外の世界の一般人であるのび太ではなく、霊夢自身や親友の魔理沙、レミリア含む紅魔館の面々でどうにかすべき問題であるとは思っているが、こっちの方が色々な意味で断然良いと
まあ、勘が教えずともこの件はのび太に丸投げした方が、誰も傷つかず済む事が明白ではあるが。
「分かった。お兄様がそれを望むなら……私はずーっと、お兄様が傷ついた時は一緒に居てあげる! ただ、それ以外の時も出来れば長く一緒に居たいなぁ」
「うん、勿論だよ」
「本当? えへへ……だから、お兄様って大好き!」
霊夢からそうお願いをされたのび太は、自分のせいでフランが過激な事をして他人を傷つけ、それが巡りめぐってフラン自身に傷ついて欲しくないと思っているためにそれを了承、報復よりも寄り添ってくれた方が嬉しいと伝えた。
結果、もしもの時があった際もフランは過激な報復をせず、そんな奴は最初から居なかったとして無視し、ずっと寄り添ってあげようと決意したので、霊夢の心配の種は1つ掘り返される事となった。
「さてと、話題を変えて……のび太。紫に誘われて連れてきてもらったらしいけど、いつまで幻想郷で遊んでいくつもりでいるの?」
「えっと、今日を入れて1週間は紅魔館の皆さんにお世話になりつつ、親友のドラえもんやフランと一緒に幻想郷巡りをしていく予定です」
「あら、のび太の親友も一緒だったのね。それらしき人物はどこにも見当たらないけど」
「はい。今日は紫さんに連れられて、どこかに行ってしまいました」
「紫に? 親友だけ連れていくなんて不思議ね……まあ、良く分からない事をし出すのには慣れたものだし」
フランの暴走の可能性が極端に減り、心配の種が1つなくなったところで霊夢は話題を変え、のび太が幻想郷でどれ位の期間遊んでいくつもりなのかとの話になった。この空気を変えるためであるのと、紫に誘われて幻想郷へ遊びに来たのび太の人となりを、より知ろうと思っているからだ。
そう聞かれ、魔理沙と人里でバッタリ会った時にした自己紹介とほぼ同じ感じで、のび太が説明し始めた。その際、親友である『ドラえもん』らしき人影が見当たらない理由が、紫にどこかへ連れられたと聞いてどう言う事かと霊夢は一瞬不思議に思うも、何か良く分からない事を考えているのだろうと即座に納得していた。
「とにかく、紅魔館の面々が後ろ楯になってくれて、紫にも目をかけられてるみたいだから比較的安心だけれど、それでも外の世界とは違って危ない場所ではあるから、1人では行動しない方が懸命よ。夜中は妖怪たちの時間だから、例え一緒でもやめた方が良いわ」
「勿論です、霊夢さん」
「それと、フラン。しっかりのび太の事を守ってあげなさい。万が一がない様にね」
「当たり前だよ、霊夢! お兄様の事は絶対に誰にも傷つけさせないから!」
で、霊夢はそれらも含めた話を全て聞き終えた後にのび太に対して、例え紅魔館の面々や紫に目をかけられてるとは言え、幻想郷は外の世界とは違って危ない面も多々あるから気を付けろと忠告しつつ、万が一がない様にのび太をしっかりと守ってあげなさいと、フランにも忠告をした。
のび太本人は言わずもがな、フランも霊夢に言われるまでもなくのび太の事は是が非でも守ってあげるつもりであったため、この忠告に耳を傾けた。
ただ、守ると言ってもあまり圧迫感を感じさせては意味がない遠出フランも理解しているので、のび太が幻想郷の少女や女性たちと遊んだり会話したりする事に対して、基本的に何も言わない事を決めている。勿論、恋愛関係に発展する確率が高いと思われる行動や発言には、ある程度の実力行使も厭わないつもりではいるが。
「よし。これで、顔合わせは終わった訳だが、これからどうするんだ? 人里には行ってたし、いくら強力な守護者のフランが居て、のび太自身も不思議な力を持っているとは言え、初日からあまり遠出はしないだろ?」
「不思議な力? 本当なの?」
「ああ。フランが言ってたんだが、日傘なしでも出歩けてるのは、
「そうなの! 魔理沙の言う通り、私が日傘なしでも出歩けてるのはお兄様のお陰なんだよ!」
そうして、お互いに顔合わせが終わった後、魔理沙がこれからどうするのかと言う話の中でふと発した『のび太も不思議な力を持っている』との言葉に、霊夢が懐疑的な反応を見せた。どう見てもただの一般人である様にしか見えないためであると同時に、パチュリーの存在があったためである。
しかし、それはフランが日傘なしでも出歩けている事にのび太が絡んでいると魔理沙が言い、フラン本人も笑顔でそれを認めたため、解消される事となった。
「なるほどね。日傘なしでも出歩けてるのはあの魔女のお陰かと思っていたけど……のび太。差し支えなければ説明してもらえる?」
「分かりました。えっと……」
それからすぐに、一見何の力も持たないのび太が一体どの様な方法を使ってフランを日傘なしでも出歩ける様になったのかと霊夢は気になり、差し支えなければ説明して欲しいとの願いを持ちかけた。
この機会に、不思議な力の正体は自分の魔力と言った誤解を解き、22世紀の超科学によって作られた道具の効果によるものであると、ここに居る皆に認識してもらおうと考えていたのび太はこれを了承、説明を始めた。
「魔法みたいな事を、魔力とかを持たない人の手で作られた道具で出来るとか、凄いとしか言い様がないな」
「確かにね。と言うか、別次元に世界を創造する事が出来るひみつ道具なんて、もはや神の所業よ。外の世界の未来、
「確かにね! でも、お兄様自身だって凄いんだよ! 何回も命すら失いかねない危機に飛び込んで、それを打ち払ってきたんだから!」
「命すら失いかねない?」
「うん! えっとね……」
結果、フランに対して使用したテキオー灯以外にも数々の超絶効果を誇るひみつ道具の話や、今までしてきた冒険についての話なども含めて話した事によって、未来は魔境なのかと霊夢と魔理沙は驚愕していた。
「そりゃそうだ。いくら優れた道具があっても使う奴の精神が追い付いてなかったり、使い方や使い時を誤ったりすればそんな大層な事は出来ないからな」
「まあね。それにしても、スケールが大きすぎて話についていけない……過去に未来、地上に空中に水中、果ては魔法世界……道理で、のび太が幻想郷の説明を聞いても比較的落ち着いていられる訳だわ」
加えて、今までのび太たちがしてきた冒険の話を聞いたフランが少し誇張させて話し始めたため、余計に驚きが増す事となっていた。勿論、冒険譚を誇張させて話される度にのび太が慌てて訂正する訳だけれど、訂正後の事実も普通に考えれば十二分に凄い内容であったため、意味はあまりなかった訳だが。
「なあ、のび太。魔法世界って――」
で、のび太とドラえもんたちの冒険の話を聞いたり、ひみつ道具を見せたりしながらある程度の時間が過ぎた頃、魔理沙が魔法世界の事について聞こうとしたものの、博麗神社へとやって来た客によって立ち消えとなってしまった。
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