【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
球詠という漫画を知っているだろうか?……まぁこれを読んでいる多くの人は知っているだろう。それを前提に話をさせてもらおう。
私は器用貧乏だが、なんでも出来た。
高校野球では、甲子園は行けなかったが3年間ベンチ入りして、投手、捕手、一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手、左翼手、中堅手、右翼手と、全ての守備位置をある程度こなせて(この時点で異常だが)、代打で出れば本塁打こそ公式戦では打てなかったが、ほぼ必ず単打以上は打てた(自分で言ってなんだが異常だ)。
そんな私が3年生の夏の大会を終えたが、たまに打撃投手として下級生の練習相手になるくらいには野球部に顔は出していた。そんな時、運がなかったのだろう。1年生のフリースインガーの子に打撃投手として相手をしていた時、その子が打った打球が防護ネットをすり抜けて頭に命中してしまったのだ。病院に搬送される中で、たまたま家にいた母親が駆けつけてくれたので「彼に責任は無い」と何とか伝えることが出来たのは幸いだった。彼の打撃力なら、2年後には母校は県大会を優勝出来るかもしれないと思える逸材なのだ。こんなことで潰してはいけない…それを伝えた後、私の意識は黒く染まった。
そして、次に光が差し込んだ時には、何故か赤ん坊になっていたのだ。
それから15年。今、私は野球漫画「球詠」の世界で、『川口息吹』として生きている。いや、身体を預かっている…のかもしれない。
「なんでさ!」
そう言いたくなる気持ちも分かる様になってしまった時点で、私は既に末期だろう。
☆☆☆☆☆
今日から、高校生。
私が…JK……いや、もう10年以上もこの体で、仕方ないなぁとかもう諦めてるけどさ、なんか…こう……
「うん、電車に乗らずに高校行けて良かったわ」
マジ息吹ちゃん天使だわ…新越谷高校の制服かわいいし…絶対電車とか乗ってたら痴漢されるわ。息吹ちゃんの身体を預かる身としてはちゃんと守らないとね!
くるっと回ってスカートをヒラリとさせる。うん、かわいい。
芳乃もかわいいんだろうなぁ…双子だし、彼女の方が小動物っぽい。…表面的には。小さい頃からおもちゃにされてきたから、内面は小動物っぽいと言うよりも好奇心旺盛な人懐っこい犬みたいな感じにしか見えないけど。
「息吹ちゃん、そろそろ行くよー」
「分かってるわよ!」
私はスクールバッグにそっと愛用のグラブを忍ばせて、玄関に向かった。
そう、今日は新越谷高校野球部の新たな1歩が刻まれる1日なのだから…